異世界転職先がダンジョンな訳だが?

そーまこーた

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健全黒字経営目指します!

講義のお時間です

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※今回は67話と68話(本ページ)の2話同時更新となっております。最新話リンクからお越しの際は前話にお戻り頂けると助かります。

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第68話 講義のお時間です



「そう来たか…。はあ、ちまいのがぬしかよ。」

 ジュードさんがパチンとひたいを叩いた。
 俺が契約しゅって…、マジか…。
 レオさんは優しくエスコートするように、俺の手を水晶に乗せた。

「ええと、『けいしゅコウ・スズキから、レオナルド、エイトール、ジュードへ「われの素性を他者へ口外しない」をけいくさびとす。けいに反する時、"利き手の親指"を代償とす。刻め、レクルト。』」

 レオさんが契約の口上をサポートし、なんとか長台詞を言い切った。水晶と命環めいかんがほんのり光る。

「レクルト。」
「レクルト。」
「レクルト。」

 3人が順に手を乗せレクルトと唱える度に、水晶は一瞬だけ強く光り命環めいかんの中身がひとつずつ消えていく。輪っかは俺の手に渡された。おうふ、命環めいかん5個…。めっちゃジャラついたネックレスになっちゃう…。やっぱヒモにつけようかな。
「まあそう言う訳で、この人が署名のぬしだ。事情は俺の契約上の守秘義務になってるから言えねえが、大金を払い出すぬしがコウってのを皇族や教会にバレたくねえ。権力に金ヅルにされちまったらたまったモンじゃねえからな。ただの外国人として対応して欲しい。」

 全員の契約が済み、レオさんがネタバレをする。
 なるほど。こんな庶民丸出しの俺がスーパー大金持ちってバレたらヤバいもんな。身包み剥がされるだけじゃすまなそう…。

「コウちゃん、お金持ちの王族サマなのかよ~。全然貴族っぽく見えねえわ。なあ、俺の事雇っていいぜ?レオナルドより強いぞ?」

 師匠が猫撫で声で売り込んできたが、レオさんがばっさりシャットアウトした。

「コウは王族とかじゃねえよ。ちょっと出自が特殊なだけだ。あと俺が専属護衛だからお前が入り込む隙間はねえ。」

「しかし、ちまいのが署名のぬしなあ…。確かにバレたら拐われるわなあ…。外国人って言ったが、どこの国から来たんだ?あとそのフード外してくれると、俺も視認できて守りやすいんだが、…ダメか?」

 ジュードさんのお願いなら喜んでー!!
 するりとフードを外してジュードさんにお辞儀する。

「俺、コウって言います。あ、スズキは家名です。日本から来ました。」

 あー、こう言う時は名刺欲しいなあー!懇意にしてもらうチャンスなんだよなー!口惜しいぜー!

「…はあ、またフード取っちまいやがった…。簡単に外せねえ魔法ってないもんかな…。」

 レオさんが何やら小声でぶつぶつ言ってる。

「にふぉん?…ふうむ、聞いた事がねえな。まあ出自が特殊ってんなら知らねえ国でも仕方ねえか。名も知らぬ遠い国からよく来た、黒髪の可愛らしい坊ちゃん。歓迎する。ところで両親は宿にでもいんのか?まさか子供がひとりってのはねえだろ?」

 まあテンプレ通りの反応よな!

「いや、お恥ずかしながらこう見えても31歳でして…。こちらにはひとりで来ました。」

「「は????」」

 そんなハモらんでも…。日本人若見えは異世界テンプレなんで許してくださいよ…。

「…コウちゃん、マジ?俺より2歳も年上って、は?マジ??」

 ふるふるしながら指差し確認してくる師匠。
 こらこら、指差しダメよ!!って、師匠も年下かぁ…。まあ、なんとなく二十代若気の至り的なモノは感じてたから納得っちゃ納得なんだけどね。

「…外国人って言うか、あれか?種族が違うのか…?妖精がイタズラしにでも来てんのか…?」

 ジュードさんは目元を手で覆うめっちゃ頭痛いスタイルになっていた。…若見えテンプレってわかってても、ここまでショック受けるってのは何だかモヤモヤするな。どんだけ若見えだよ、日本人…。

「お前らがショックを受けるのはわかる。俺も未だに信じられんからな…。だが、ジジイは正気に戻ってこい。これからこのふざけた額の金額訂正すっぞ。」

 あ、やっぱ100万トニーはふざけた額なんだ…。レオさんが常識人でよかった…。

「あ、おう。ちょっと待ってろ。書き換えの道具用意する。」

 ジュードさんは席を立って書棚の横のデカい金庫っぽい箱に向かった。

「コウ、金額なんだがな…、相場って言ってもわからんよなあ…。向こうの護衛だとどんなモンなんだ?」

 ええ?地球の相場??
 ドラマでなんか聞いた事もあるような…?1日20万とか言ってたような…?でもアレって3人一組のチームだったかな…??

 うん、全くわからん!!

「ごめん、護衛ってそれこそ偉い人しかつけないものだからちょっと…。こっちの相場に合わせて大丈夫。多分、経費落ちる筈…。」

「きまりで俺から先に提案はダメなんだ。エイトール、お前は指名護衛ならいくらだ?剣聖価格でいいぞ?」

「俺?俺は護衛やんねえからわかんねえわ。あ、そう言やアホ皇子の護衛、3日で1000トニーでやった事あったわ。アイツ、俺を雇うなら1000トニー出せっつーたらポンと出したんだよな。皇族こええ。」

 …ええと1トニーが1000円だから…、は?100万?3日で100万??

「役に立たねえ…。はあ、ジジイ、斡旋所の提案価格をコウに教えてくれ。外国人だから特別に見逃してくれよ。」

 ジュードさんがペンとインク、あと木のハンマーのようなものを持って席に戻ってきた。

「そんぐれえ目ぇ瞑ってやるさ。さてと、じゃあ可愛い嬢ちゃんの為、斡旋所講義始めるか。」

 …嬢ちゃん。新米冒険者とかにありがちな俗称だけど、ちまいのより酷くないか?断固抗議したいのはヤマヤマだが…!
 ちょっと冒険者になった気分かも。無しよりの有りにしよう。

「よろしくお願いします。」

 ジュード教授にペコリと頭を下げた。

「うむ、礼儀正しいヤツは信用できるぜ。まずはな、斡旋所で護衛依頼する時は依頼主から金額提示すんだ。これはマーシナリー側からのゆすりたかりから依頼主を守る為さ。で、いきなり安い額出すヤツは俺らの仕事をバカにしてるから信用できねえし、高すぎるのは最初から払う気がねえと思われる。じゃあ適正価格はどこで知りゃいいのかってのは、知り合いからの口ききか斡旋所の募集情報を吟味ぎんみするんだ。」

 口コミか~。なるほど。

「募集情報ってどこで調べるんですか?」

「受付に纏めてある。今日ならニックが仕切ってんな。で、ニックに言えば依頼と募集の帳簿を出してくれる。それを見て判断するのさ。まあ、依頼はわかんだろ?あの熊の討伐とかな。募集は逆に、仕事待ちのヤツらが自分に出来る事と希望報酬を簡単な経歴付きで出すんだ。」

 お、今流行りの人材紹介じゃん。求人サイトに情報登録すると企業からスカウトのオファーが入るヤツ。たまにSNSの広告に流れてきて、ちょっと転職したくなるヤツね。

「希望報酬だからやたらバカ高いヤツもいるが、経歴と希望報酬を平均して見ればなんとなく相場がわかる仕組みさ。」

「へえ、斡旋所の相場はそう言うふうに読むんですね。わかりやすいです。」

「まあな。俺らの仕事は個人の能力差がありすぎて、価格を一律ってのが難しいから苦肉の策ってとこさ。おっとそう言えば、1番最初を吹っ飛ばしちまった。指名依頼じゃねえ場合は、受付に期間と金額提示すりゃ仲介料は頂くが募集帳簿から合いそうなヤツをあてがってやるぜ。で、今日はサービスだ、嬢ちゃん。レオナルドぐらいのヤツを1日護衛で雇うなら…、まあ軽く見積もって10トニーだな。何年契約か知らねえが100万トニーはやりすぎって事さ。」

 ですよね…。10億ですもの…。

「わかりました。ええと、なら年契約で3500トニー…、「出し過ぎだ、コウ。1500トニーで充分だ。」…、え、だって1日10トニーじゃ?」

 350万もかかるけど必要経費だから落ちると思うし、落ちないならイケオジにレオさんを子会社社員扱いで雇わせる強硬策もやぶさかではないですぞ??

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