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健全黒字経営目指します!
お静かに!
しおりを挟む第65話 お静かに!
…おい、一瞬見えたアレ、酒瓶じゃなかったか?
「ニック、エイトールが出した証は赤足だ。俺が受けた赤足の討伐の熊公で間違いない。」
ちょっと、レオさん?
アナタ、先程と全然対応違いすぎますけど??
やはりあの酒瓶か?アレ、やっぱり皇子のお兄さんの秘蔵の酒なのか?
「レオナルドさん、それ手のひら返すの早すぎますから。袖の下は見えない所でもう少し慎みを持ってやってください。ウチは信用商売ですからね?」
「気にしたら負けよ?ニックくぅん?ほれ、証。」
ポイっとゴミ切れな毛皮をカウンターに投げる。ニックさんはチベットスナギツネみたいな顔になった…。
「報酬は経緯を確認してから出します。レオナルドさん、赤足熊の討伐についてお話しください。」
ニックさんが異世界定番の羽ペンではないがインクをつけて書くペンと帳簿を取り出して事情聴取を始めた。
お、獣人さんって手は人みたいな形なんだな。よくあるゲームアバターだと、獣型獣人ってまんま獣だから剣とかどうやって握ってるか謎だったけど、これは納得ですわ。
「あー、そう言えば!俺もそっちに文句があるんだった。あの赤足、親子だったんだぞ?事前情報が違うじゃねえか。おかげでそこのクズ野郎に…、」
レオさんがニックさんへ文句混じりに赤足熊の話をし始めた。
へえ、俺が迷子になってる間そんな事があったのか…。そりゃレオさんも疲れるわな。
「…ふむ、そう言う経緯だったんですね。個体数はこちらの聞き取り不足で申し訳ありませんでした。追加分の報酬は斡旋所で補填しましょう。経緯は確認できましたが、エイトールさんのその証は不十分ですね。報酬の半額はお支払いいたしますが、残りは一度職員が現地確認してからの払い出しとします。レオナルドさんの証は完璧なので、事前契約分満額払出しになります。同意であればサインを。」
ニックさんが帳簿にサインを求めてきた。レオさんはさらりとサインし、師匠はぶーぶー文句垂れながら渋々サインした。サインを確認すると、ニックさんはカウンター下をゴソゴソし、カウンターに小さな籠を二つ出す。どうやら籠は地球で言うコイントレーらしくて、2人はそこからお金を取り出した。
「ああ、そうだ。ニック、俺の方の赤足は素材も剥げるから、現地には素材剥ぎ屋も連れて行けよ。これは素材剥ぎの依頼分だ。素材は換金しといてくれ。」
報酬から銀貨一枚、1トニーを取り出しニックさんへ渡す。ニックさんは受け取り、別な帳簿を取り出すと何かをすらすら書き付けた。それをレオさんに渡すと、レオさんは一読してまたサインをした。
「承りました。換金は時間をいただきますので、日を改めてよろしくお願いします。」
「ああ、頼んだ。…あと、ひとつ確認なんだが、コレは有効なのか?」
レオさんがポーチから何かを取り出し、俺達に見えないよう隠しながらニックさんに見せた。
「はい、間違いなく斡旋所発行なので有効ですね。今から換金しますか…って、はああああああ?!?!何だコレえええええ?!?!」
ニックさんがガバリとレオさんの手を掴み叫んだ!!
「しぃー!ニック、しぃー!!」
「んぐグゥッ…!!」
レオさんがニックさんの口を塞ぐって言うか、鼻先をガシっと掴んで口を閉じさせた。狐、確かに鼻先長いから掴んだ方が口閉じるけど…。ちょっと動物愛護団体に訴えられそうな絵面…。
そして狐も驚くと毛がブワっと逆立つらしく、口を押さえられたニックさんは見た事ない感じに膨れた狐になっていた。
「…ニック、静かにな?できるよな?」
多分いまニックさんの鼻先が大変な事になりかけているっぽい。先程までつまらなそうにカウンターにもたれてた師匠がワクワクした顔で見ているからな…。師匠のワクワク(クズ)センサー、こう言う時は信じられる…。
ニックさんはオッケーと言うように手で丸を作った。レオさんは頷き、鼻先から手を離してやった。
尚、師匠はまたつまらなそうな顔に戻った。
「っプハァーッ!!」
解放されたニックさんがブルブルと顔振って目をシパシパさせている。多分涙目だ、アレ。
「…レオナルドさん、さすがに俺じゃ対応出来ないんで所長呼んできます。あちらに座って待っててください。」
心的ダメージで丁寧語が若干崩れたニックさんがあちらと指さしたエリアは窓際で、そこにはカフェのようなテーブルセットが4つあった。内2つは冒険者風の装備をしたパーティーが座って談笑をして…、いや、先程の騒ぎのせいかめっちゃ所内は静かだった…。
レオさんが席に向かうと、何故か二つのパーティーはスッと席を立ち、目を合わせないようにそそくさと所内から出て行ってしまった。…もしかして俺達がゴロツキポジション…。
「はー。昼間は酒が出ねえから斡旋所なんて来たくねえんだよなあ。でも昼間来ねえと金払ってくんねえって、マジ斡旋所クソだわ。」
俺とレオさんが席に着くと、師匠も俺の横にどかっと座り文句を垂れる。
この師匠、自然に同席してるんだが…?暇なのかな…?
「酔っ払いに金払うと思ってんのか?お前みたいなクソ酔っ払いが貰っただの貰ってねえだの騒いだから、夜間は支払いしねえってなったんだろ。アホ。」
「つまんねえー、もっと話ノッてこうぜえ?なあ、コウちゃん?」
いやいや、なんでそのノリ俺にふるよ?
あと俺にお酒の話はNGですから…。俺はクソ酔っ払い側ですから…。つら…。
「コウに絡むな。用がないなら宿に帰って寝てろ。」
シッシッと追い払う真似をするが、師匠は笑いながら中指お下品ポーズで流す。
やっぱ仲良しだよな…、この2人。
「ところでコウちゃん、今日は街に何しに来たんだ?買い物か?エッチな下着なら俺が買ってやんぜ?」
…何故買い物がエッチな下着に行き着くんだ、この人。
「だからなんでお前はシモの話しか出来ねえんだ?そんなんだから花飲み屋(※綺麗どころがお酌してくれる飲み屋)から出禁になるんだ。」
そうだ!そうだ!レオさん、もっと言っちゃって!!
「はー?出禁いま関係ねえし?つーか、コウちゃんのケツがエロいから仕方ねーだろ?オメエもその小ちゃいケツにエロい下着履かせてアンアン言わせてえと思うだろ?」
「………いや、そんな思わないな。」
…今なんで間があった?あと何故完全否定せんの?
「なあコウちゃ~ん、俺が特別に街を案内してやんぜえ?エッチな下着は売ってねえが貴族の服屋に連れて行ってやんよ?それとも宝飾屋がいいか?ブルームーンジェム(※こちらの女子に人気の青い宝石)の耳飾り買ってやるぞ~。」
キャバ嬢に言い寄るオッさんかよ!!
「はっ、コウにブルームーンジェムとか。グリーンウォーター(※こちらも女子に人気の緑の宝石)のほうが似合うに決まってんじゃねえか。」
やれやれと、お手上げジェスチャーのレオさん。若干勝ち誇った顔なんだが、
…お前ら、なんか論点ズレてんぞ?
「あの、俺、普通の買い物したいんでアクセサリーは結構です。そう言うのは俺みたいなオッさんじゃなくて、もっと可愛い恋人とかにあげてください。」
「………。」
「………。」
あれ?何で2人ともチベットスナギツネみたいな目になってんの??俺、今ド正論だったよね??
「レオナルドぉ、あれマジ?」
「…そうだな、多分マジだな。」
「うああ、マジもん怖ええ。」
「ああ、手強いぜ…。」
キミタチ!目配せ主語抜かしヨクナイ!!
何がアレでマジもん手強くて怖ええだよ?!ちゃんとわかるようにお話しなさいよ!!
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