異世界転職先がダンジョンな訳だが?

そーまこーた

文字の大きさ
上 下
65 / 101
健全黒字経営目指します!

お静かに!

しおりを挟む

第65話 お静かに!



 …おい、一瞬見えたアレ、酒瓶じゃなかったか?

「ニック、エイトールが出したあかし赤足あかあしだ。俺が受けた赤足あかあしの討伐の熊公で間違いない。」

 ちょっと、レオさん?
 アナタ、先程と全然対応違いすぎますけど??
 やはりあの酒瓶か?アレ、やっぱり皇子のお兄さんの秘蔵の酒なのか?

「レオナルドさん、それ手のひら返すの早すぎますから。袖の下は見えない所でもう少し慎みを持ってやってください。ウチは信用商売ですからね?」

「気にしたら負けよ?ニックくぅん?ほれ、あかし。」

 ポイっとゴミ切れな毛皮をカウンターに投げる。ニックさんはチベットスナギツネみたいな顔になった…。

「報酬は経緯を確認してから出します。レオナルドさん、赤足あかあし熊の討伐についてお話しください。」

 ニックさんが異世界定番の羽ペンではないがインクをつけて書くペンと帳簿を取り出して事情聴取を始めた。
 お、獣人さんって手は人みたいな形なんだな。よくあるゲームアバターだと、獣型獣人ってまんま獣だから剣とかどうやって握ってるか謎だったけど、これは納得ですわ。

「あー、そう言えば!俺もそっちに文句があるんだった。あの赤足あかあし、親子だったんだぞ?事前情報が違うじゃねえか。おかげでそこのクズ野郎に…、」

 レオさんがニックさんへ文句混じりに赤足あかあし熊の話をし始めた。
 へえ、俺が迷子になってる間そんな事があったのか…。そりゃレオさんも疲れるわな。

「…ふむ、そう言う経緯だったんですね。個体数はこちらの聞き取り不足で申し訳ありませんでした。追加分の報酬は斡旋所で補填しましょう。経緯は確認できましたが、エイトールさんのそのあかしは不十分ですね。報酬の半額はお支払いいたしますが、残りは一度職員が現地確認してからの払い出しとします。レオナルドさんのあかしは完璧なので、事前契約分満額払出しになります。同意であればサインを。」

 ニックさんが帳簿にサインを求めてきた。レオさんはさらりとサインし、師匠はぶーぶー文句垂れながら渋々サインした。サインを確認すると、ニックさんはカウンター下をゴソゴソし、カウンターに小さな籠を二つ出す。どうやら籠は地球で言うコイントレーらしくて、2人はそこからお金を取り出した。

「ああ、そうだ。ニック、俺の方の赤足あかあしは素材も剥げるから、現地には素材剥ぎ屋も連れて行けよ。これは素材剥ぎの依頼分だ。素材は換金しといてくれ。」

 報酬から銀貨一枚、1トニーを取り出しニックさんへ渡す。ニックさんは受け取り、別な帳簿を取り出すと何かをすらすら書き付けた。それをレオさんに渡すと、レオさんは一読してまたサインをした。

「承りました。換金は時間をいただきますので、日を改めてよろしくお願いします。」

「ああ、頼んだ。…あと、ひとつ確認なんだが、は有効なのか?」

 レオさんがポーチから何かを取り出し、俺達に見えないよう隠しながらニックさんに見せた。

「はい、間違いなく斡旋所発行なので有効ですね。今から換金しますか…って、はああああああ?!?!何だコレえええええ?!?!」

 ニックさんがガバリとレオさんの手を掴み叫んだ!!

「しぃー!ニック、しぃー!!」
「んぐグゥッ…!!」

 レオさんがニックさんの口を塞ぐって言うか、鼻先をガシっと掴んで口を閉じさせた。狐、確かに鼻先長いから掴んだ方が口閉じるけど…。ちょっと動物愛護団体に訴えられそうな絵面…。
 そして狐も驚くと毛がブワっと逆立つらしく、口を押さえられたニックさんは見た事ない感じに膨れた狐になっていた。

「…ニック、静かにな?できるよな?」

 多分いまニックさんの鼻先が大変な事になりかけているっぽい。先程までつまらなそうにカウンターにもたれてた師匠がワクワクした顔で見ているからな…。師匠のワクワク(クズ)センサー、こう言う時は信じられる…。

 ニックさんはオッケーと言うように手で丸を作った。レオさんは頷き、鼻先から手を離してやった。
 尚、師匠はまたつまらなそうな顔に戻った。

「っプハァーッ!!」

 解放されたニックさんがブルブルと顔振って目をシパシパさせている。多分涙目だ、アレ。

「…レオナルドさん、さすがに俺じゃ対応出来ないんで所長呼んできます。あちらに座って待っててください。」

 心的ダメージで丁寧語が若干崩れたニックさんがあちらと指さしたエリアは窓際で、そこにはカフェのようなテーブルセットが4つあった。内2つは冒険者風の装備をしたパーティーが座って談笑をして…、いや、先程の騒ぎのせいかめっちゃ所内は静かだった…。

 レオさんが席に向かうと、何故か二つのパーティーはスッと席を立ち、目を合わせないようにそそくさと所内から出て行ってしまった。…もしかして俺達がゴロツキポジション…。

「はー。昼間は酒が出ねえから斡旋所なんて来たくねえんだよなあ。でも昼間来ねえと金払ってくんねえって、マジ斡旋所クソだわ。」

 俺とレオさんが席に着くと、師匠も俺の横にどかっと座り文句を垂れる。
 この師匠、自然に同席してるんだが…?暇なのかな…?

「酔っ払いに金払うと思ってんのか?お前みたいなクソ酔っ払いが貰っただの貰ってねえだの騒いだから、夜間は支払いしねえってなったんだろ。アホ。」

「つまんねえー、もっと話ノッてこうぜえ?なあ、コウちゃん?」

 いやいや、なんでそのノリ俺にふるよ?
 あと俺にお酒の話はNGですから…。俺はクソ酔っ払い側ですから…。つら…。

「コウに絡むな。用がないなら宿に帰って寝てろ。」

 シッシッと追い払う真似をするが、師匠は笑いながら中指お下品ポーズで流す。
 やっぱ仲良しだよな…、この2人。

「ところでコウちゃん、今日は街に何しに来たんだ?買い物か?エッチな下着なら俺が買ってやんぜ?」

 …何故買い物がエッチな下着に行き着くんだ、この人。

「だからなんでお前はシモの話しか出来ねえんだ?そんなんだから花飲み屋(※綺麗どころがお酌してくれる飲み屋)から出禁になるんだ。」

 そうだ!そうだ!レオさん、もっと言っちゃって!!

「はー?出禁いま関係ねえし?つーか、コウちゃんのケツがエロいから仕方ねーだろ?オメエもその小ちゃいケツにエロい下着履かせてアンアン言わせてえと思うだろ?」

「………いや、そんな思わないな。」

  …今なんで間があった?あと何故完全否定せんの?

「なあコウちゃ~ん、俺が特別に街を案内してやんぜえ?エッチな下着は売ってねえが貴族の服屋に連れて行ってやんよ?それとも宝飾屋がいいか?ブルームーンジェム(※こちらの女子に人気の青い宝石)の耳飾り買ってやるぞ~。」

 キャバ嬢に言い寄るオッさんかよ!!

「はっ、コウにブルームーンジェムとか。グリーンウォーター(※こちらも女子に人気の緑の宝石)のほうが似合うに決まってんじゃねえか。」

 やれやれと、お手上げジェスチャーのレオさん。若干勝ち誇った顔なんだが、

 …お前ら、なんか論点ズレてんぞ?

「あの、俺、普通の買い物したいんでアクセサリーは結構です。そう言うのは俺みたいなオッさんじゃなくて、もっと可愛い恋人とかにあげてください。」

「………。」
「………。」

 あれ?何で2人ともチベットスナギツネみたいな目になってんの??俺、今ド正論だったよね??

「レオナルドぉ、あれマジ?」

「…そうだな、多分マジだな。」

「うああ、マジもん怖ええ。」

「ああ、手強いぜ…。」

 キミタチ!目配せ主語抜かしヨクナイ!!
 何がアレでマジもん手強くて怖ええだよ?!ちゃんとわかるようにお話しなさいよ!!

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

俺が総受けって何かの間違いですよね?

彩ノ華
BL
生まれた時から体が弱く病院生活を送っていた俺。 17歳で死んだ俺だが女神様のおかげで男同志が恋愛をするのが普通だという世界に転生した。 ここで俺は青春と愛情を感じてみたい! ひっそりと平和な日常を送ります。 待って!俺ってモブだよね…?? 女神様が言ってた話では… このゲームってヒロインが総受けにされるんでしょっ!? 俺ヒロインじゃないから!ヒロインあっちだよ!俺モブだから…!! 平和に日常を過ごさせて〜〜〜!!!(泣) 女神様…俺が総受けって何かの間違いですよね? モブ(無自覚ヒロイン)がみんなから総愛されるお話です。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

処理中です...