異世界転職先がダンジョンな訳だが?

そーまこーた

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健全黒字経営目指します!

冒険者ギルドならいるアレ

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第64話 冒険者ギルドならいるアレ



「…すごい、ゲームみたいだ。」

「ゲームって何か店先に面白いのがあったのか?」

 レオさんがキョロキョロと店舗を見渡す。

「え、違う、そうじゃなくてさ、えーと…、種族の違いに驚いたんだ。俺の世界って、人しかいないからさ。動物っぽい姿の人とか羽が生えた人、初めて見たんだ。」

 そう、行き交う人々にはケモ耳の人や、まんま動物っぽい人、背中から羽が生えた人やら様々な姿の人が入り混じっていた。まるでMMORPGのVRだ。
 あー!俺もアバター変えたい!一時期やってたゲームのアバターのエルフで街歩きたいな!…なーんて、ゲームの世界じゃないから無理なんですけどね…。

「なるほど。リオガは田舎と言えども馬車の拠点だからな。今までそんな気にした事もなかったが人族以外も多いかもしれん。」

「色々な種族がいてびっくりだよ。今度この世界にどう言う種族がいるか教えてね。」

 エルフいたらいいな~。あの長い耳と高身長に憧れてたんだぜ…。いいな、エルフ…。

「いいぜ。夜、飲みに行ったら教えてやるよ。さ、とりあえず斡旋所行くぞ。赤足あかあしの報告しねえとな。」

 レオさんが店舗が並ぶメインストリートから右手側に抜ける方に歩き出した。
 こちら側は土産物屋など賑やかしい店はなく、武器屋やら防具屋、鍛冶屋的な無骨な店が建ち並び、店先を冷やかす人々も厳つい鎧や魔法使いっぽいローブのTHE冒険者といった様子だった。
 あまりの物珍しさにキョロキョロして、うっかり隣りを歩くレオさんにぶつかってしまった。

「うわ、ごめん!ちょっとぼやっとしてた!」

「おっと、大丈夫か?」

 ぶつかった拍子にふらついた俺をレオさんが捕まえ支えてくれた。そのまま顔を覗きこみ、ちょっと困った笑顔で何故か謝ってきた。

「…悪りぃな、コウ。せっかく街に来たのに、コッチは斡旋所やシーカーの組合なんて色気のねえのしかなくてよ。用が終わったらいちまで連れってやるからな。」

「え?あ、大丈夫!俺の世界じゃこんな風景、ゲームや物語の中しかないから今すごい楽しい。はあ、あんな冒険者とか憧れるな~。」

 大剣を背負った戦士風の人がすれ違っていくのを横目で見る。
 あれ絶対バスターソードだよな?すげえデッカくてカッコイイ…!

「…冒険者?そう言う職業があるのか?」

 レオさんが首を捻り、何故か通り過ぎて行った戦士風の人の背中を睨んでた。
 おっと、コッチの世界は冒険者なかった!

「物語の中だけど、魔物を倒したり迷宮を探索したりする職業があってね。基本、自由業だからレオさんみたいに傭兵とかもしたりするよ。魔法や武器を使って物語で活躍するんだ。カッコいいんだよな~。」

「そうか、傭兵みたいな職業か…。魔法や武器を使うのがカッコいいのか。そうか…。」

 レオさんは口元を手で押さえ、何かに頷いている。…俺、なんか変な事言ったかな?

「レオさん?」

「ん?ああ、なんでもねえ。じゃあ、斡旋所行くぞ。あの双頭の犬の看板の所だ。」

 指さされた先には双頭の犬、よくゲームなんかで出てくるオルトロスがデザインされた看板がかかっていた。建物の外観は黒っぽい石壁で纏められ、木製のドアも重厚なデザインの黒い金具を使っており、まさに心の奥底にねむる中学二年生が歓喜するヤツ!!や、ヤバ!!か、カッコいい!!

「行きましょう!!ぜひ!!」

 ウキウキと斡旋所に足を運ぶ。
 ドアの近くまで来ると、レオさんがパーカーのフードを被せてきた。

「コウ、フードは外すな。あと斡旋所内ではあまりキョロキョロしてはダメだ。あとは、」

 お、か?お約束か?

「話さない、かな?」

「正解。なるべく下を見て、アホ共は無視してくれ。」

「オーケー!」

 はー、ドキドキする!冒険者ギルドみたいに昼間っからたむろしてるゴロツキいるのかな?!
 新人冒険者を揶揄うゴロツキテンプレみたいなのきちゃう?!

 レオさんが重そうなドアを開け、中に入っていくのに俺も続いた。ちなみにドアは重そうではなく本当に重かった…。くっ、筋肉仕様か…。

 斡旋所内は俯きながらだから全体の様子はイマイチわからないが、外観と違い明るめの色の木材で作られていて柔らかいイメージだった。窓からも陽の光がよく入ってきて、昼間っから酒を煽るゴロツキがたむろする冒険者ギルドの気配はまるでなかった。しかし、しかしだな、

「あ゛あ?なんで報酬出ねえんだよ?ほら、あかしあんだろ?あかしがよお!」

 …ヤバめのゴロツキがいた。
 受付カウンターらしき所をバンバン叩いてる音が聞こえる。

 前にいるレオさんからため息が聞こえた。

「出るぞ。」

 レオさんはそう言ってクルリときびすを返し、俺を押して出口に向かおうとした。

 が、

「レオナルド~!いい所に来たじゃねえか~!!」

 見つかった…。
 ヤバめのゴロツキ…、改めに。

「無視だ、無視。」

「おいおいレオナルドぉ、何無視キメこもうとしてんだよぉ?それともアレか?剣聖様が素敵すぎて恥ずかしくて声も出ませんってか?」

 …師匠、相変わらずウザ絡みが酷い。

「死ねよ、エイトール。」

 勿論レオさんは指で首を切るポーズをした。
 …あまりにも自然すぎる流れ、もしかしたらこの人達の挨拶なのかもしれん。お友達だもんな…。

「なあなあ、オメエからもニックに言ってくれ。コイツが赤足あかあしあかしだってよお。」

ズイッ!

 師匠の突き出したあかしは、こんがりとチリチリに焦げた手のひら大の毛皮だった。多分、赤っぽい所がほんの少~しあるから赤足あかあし熊のものには違いないが…。

「ダメだろ、それ。」

 ばっさり。
 ですよねー。わかりますー。それ正直、知らない人がみたらゴミですもの…。

「はー?オメエが持ってけって言ったじゃねえかよ。わざわざ剥いできたんだぞ?マテウスが。」

 マテウスさん、雑用も…。師匠の弟子業、超絶ブラックっぽいよな…。

「丸焦げでいいなら、だ。そう言えばあの覆面弟子の姿が見えねえがどうした?」

「教会でお祈りさ。街に居る間はご奉仕なんだとよ、あの下僕。ソレはどーでもいいからよ、…おいニック!レオナルドが証人だ!」

 師匠はカウンターにいるスタッフのニックさんへ向かって、ほらとレオさんを押し出す。

「ああ、レオナルドさんこんにちは。証人になられるんですか?」

 少し低めの落ち着いた声の人だ。
 ちょっと目線をあげて声の主であるニックさんを伺うと、

 ーーー彼はなんと狐だった!

 ケモ耳だけ獣人じゃなく全部が狐の狐獣人だ!めちゃめちゃ毛艶が良い、多分イケメン獣人さん!尻尾が見えないのが残念だ…。絶対フッワフワの狐尻尾だよな…。

「よう、ニック。証人なんで真っ平御免だ。」

「レオナルド、オメエ人の心がねえの?冷てえよな、コウちゃん。」

「ギャッ!!」

 いつの間にか師匠が俺の横に立ち、唐突にケツを揉んできた!
 すかさずレオさんが俺を引き寄せ、背後に隠し師匠からガードする。護衛サマ~!

「ぜってえ、証人にならん。」

「ケツの一揉みくらいいいだろ?俺とコウちゃんは仲良しなんだからさ。」

 いつ仲良しに?!

「ニック、バカにつける薬は売ってねえか?あったら箱で買ってやるよ。」

 背中に隠れて見えないが、多分また中指お下品ポーズしてるな、コレ。

「そんな威嚇すんなよ、レオナルド。ニックがビビって泣いちゃうだろ?」

「は?泣きませんよ?エイトールさん、用がないなら帰ってもらっていいですか?」

 意外にニックさんメンタル強そう…。

「ニックも冷てえ。はあ、仕方ねえな。おい、レオナルドちょっとこっち。」

 レオさんに来い来いと手招きする師匠。

「はあ?何で俺がそっちに行かねえとならねえんだ?バカか?」

「うっせー、いいからちょっと来いって。」

 渋々とレオさんが師匠に近づく。
 近づいたレオさんの肩を掴み師匠が何やら小声で囁いた。レオさんの眉がピクリとして、師匠と共に俺達に背を向けた。

(ヒソヒソ)
「…これ……な…酒で、どう…、」
「…たない、…とう、」
(ヒソヒソ)

 師匠が自分のポーチから何かを凄い速さで取り出し、レオさんが開けて待っていたポーチにサッとぶっ込んだ。

 …おい、一瞬見えたアレ、酒瓶じゃなかったか?

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