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健全黒字経営目指します!
待人とは?
しおりを挟む第62話 待人とは?
「ところでレオナルド、そろそろ隣りのフードの方を紹介して欲しいのだが?」
そう言って皇子がワクワクした顔でコチラを見ている。
おっと、俺ずっとフード被りっぱなしだった!こりゃ不敬だな!
慌ててフードを頭から外した。
「ほお、異国からの客人とな。なかなか可愛いらしい方ではないか。とてもハロルドと同い年とは思えんな。」
皇子の言葉に深く頷くハロルドさん。
…おうふ、日本人小さ若みえ現象きた。くっ、可愛いらしい背丈で悪かったな。これでも日本だと普通なんだぞ!
「…あー、クソ、取っちまったか。絶対外すなって言えばよかったぜ…。」
「良いではないか、良いではないか。私は異国人に偏見はないぞ。さあ、可愛いらしい異国の方、名はなんと言う?」
ニッコニコな皇子が手を伸ばしてきた。
ん?お手…、じゃなくて握手かな?偉い人に自己紹介の時は握手すんのかな??
一瞬迷ったが、無礼になってはいけないので皇子の手を取ろうとした、
「気安く触るな。減る。」
何故かレオさんが皇子の手をペシッと叩き落とした。
「ひどい。私、皇子ぞ?ちょっと挨拶しようとしただけぞ?おいハロルド、言ってやれ。」
「レオナルド殿、皇子の自業自得だが手厳しいのは少し加減していただこう。一応私も護衛任務中だから扱いに困る。」
「うるさい。初対面のヤツに挨拶がてら直接触れようとするエロ皇族がどこにいる。だからちゃんと皇室規範の躾しろって言ってんだ、アホ。」
…なんか、皇子地味にディスられてね?
「はー、レオナルドは頭が固いのうー。皇室規範なんぞ、今時あって無いようなモノだぞ?まあよい。レオナルド、そちらの客人を紹介せよ。今度は皇子命令ぞ?」
「だ、そうだ。レオナルド殿、そろそろ観念されよ。」
腕を組み踏ん反り返る皇子に、ハロルドさんが仕方ないと首を振りレオさんを促す。
「チッ、無駄に皇子出してきたな…。」
いやいやその人最初から皇子ですよね?
この親戚コント、ツッコミ放題で困るんだが…。
「…こちらは、コウ。リオガまで同行する。以上。」
レオさん、全然紹介する気無いな…。
「短い!紹介、短い!普通もっと何かあるだろう?!関係とか色々と!!」
皇子が轆轤を回す手つきになってる。まあ、エア轆轤で何かを形作りたくなる気持ちわかるわ。名前と同行するしか情報ないもんな…。
「コウは異国人で俺の依頼主だ、護衛のな。後は守秘義務だ。破ったら俺は首括らなきゃならん。」
レオさんは片手で首を絞める真似をし、べっと舌を出した。
うわあ全部わかってる事で通したよ、この人…。しかも首括るって…、全然ウソじゃん!罰金だけじゃん!
「な、なんだと…。紹介だけでそんな重い罰則で縛られておるとは…。どれだけ重要人物なのだ…。」
随分斜め上方に勘違いしたな、皇子…。なんだかちょっと可哀想になってきたよ…。
「気にすんな。詳しくは言えないが、文化交流の一環だから普通に接して大丈夫だ。」
「…ッ。」
あ、ハロルドさんが口元を押さえてそっと視線を窓に向けた。どうやらウソに気づいたっぽい。表情筋は死んでるがアレは笑いを堪えてる、絶対。
「ふうむ、名がわかっただけでも良しとするか。今回は出会う事が予言であったからな。神託にも『願わば、急ぐ事なかれ。縁、真摯に向き合う者にあり。』とあるし、今後ゆるりと親交を深めようぞ。」
その『縁』と言うのは『恋愛』なんで、今後ゆるりと深めるのはマズイと思いますよ…?
やはり皇子には神託の真実 (おみくじ)を教えてあげた方が良いのだろうか…。
「あの…、皇子、その神託なんですけど、おみく…」
俺が思い切って真実を伝えようとした時、皇子がキラキラしながら話を割ってきた。
「コウよ、貴方は私の導き手である。どのような導きかはまだわからぬが、その御心のままに導き道を指し示し給え。」
そして恭しく祈りのポーズを取った。
「えっ?ちょっと皇子様?あの、そんな導きとか、俺、え?え?」
導き手is何…?
いや、まじで突然の導き手認定の意味がわからんのだが…。
おみくじの待人って、導き手って意味あったっけ??あれ、もしかしておみくじの待ち人は文字通りじゃないのか…?
ヤバ、日本語の方に自信無くなってきた…。
「…おいキアニグ、あんまり無茶言うな。突然導き手なんて言われてコウが困ってるだろうが。」
目が泳ぎまくってる俺にナイス助け船がきた。ありがとうございます、深めの日本語海で溺れる所でした…。
「しかし神託で示されたのだからわざわざ熊車を飛ばしてだな、」
「ほら、その導き手云々は後で聞いてやるから。ハロルドが。」
「それは私の役目ではない。レオナルド殿が聞いて差し上げろ。」
「レオナルド、聞いてくれ!」
「あー、後で書にまとめろ。ゆ~っくり読ませてもらうわ。」
「わかった!後で書にしたためて送るぞ!神託についての論文も送るから、是非コウと一緒に読んでくれ!」
「はいはい、わかったわかった。」
皇子、適当にあしわられる。
皇子良いのか、それで…。
それにしてもこの親戚トリオ面白すぎるな。ボケとツッコミのテンポが良すぎて、とても偉い人達の集団に見えないよ!
「ところでレオナルド、最近エイトールに会ったか?」
「おう、一昨日会ったな。エイトールがどうかしたのか?」
おや、師匠も知り合いなのか?
「城に遊びに来るのは良いが、あやつ来る度に修練場を荒らし、兄上達の秘蔵の酒に手を出すのだ。どちらからも苦情が出ていてな…。」
…師匠、何やってんの。
「剣聖殿が訓練に参加するのは我が兵の良い経験になるのだが、弟子殿をからかい始めると2人で暴れ始めて最終的に修練場に大穴を開けるのだ。火に巻き込まれる兵も何人かいて、ちょっとした惨事になっている…。」
惨状を思い出したらしいハロルドさんの目が遥か彼方遠くに行ってしまった。
「いや、暴れる前に止めろよ…。ハロルドの力量ならエイトールを止められんだろ?」
「止めようにも必ず私がいない時に修練場へ来るようなのだ。あと流石に私でも全力を出さねば剣聖殿は止められんぞ。単騎なら最強だからな、あの方は。」
偉い人がいない隙にくるとかクズすぎる、師匠…。
「その大暴れした後に酒蔵から高価な酒を持ち帰って、私の部屋で飲んで帰るのだ。最初は珍しい酒の差し入れと聞いて私も一緒に楽しんでおったのだが、最近兄上達の従者から泣きつかれてな…。」
皇子、巻き込まれてる…。それ確信犯やで…。
「…今度ヤツに会ったら、城に遊びがてら行くなって言っとくわ。」
「そう言ってくれるとありがたい。そろそろ兄上達にバレそうだからな。あやつ悪戯は過ぎるが悪い奴ではないんだがな…。」
いやいや、その人全然悪いヤツですよ?お兄さんの大事な酒勝手に掻っ払ってるですよ?
「キアニグ、お前騙されてんぞ。アイツはただのクズだ。出入り許可取り消して出禁にしろ、出禁に。」
「エイトールは私の友人だから出禁などせん。」
キリッ!って…、もう皇子がアホの子にしか見えないんだが…。やっぱワンコのジョン君、皇子に転生したのかな…。
「コウ殿、」
「え、はい?」
従兄弟同士が師匠ネタでワーワー騒いでる中、そっとハロルドさんが話しかけてきた。
「先程は無体な事をしてすまなかったな。怪我は無かっただろうか?」
無表情だがほんの少しだけ眉尻を下げて、ハロルドさんが謝ってきた。
「あ、はい、大丈夫です。俺もちょっと気が動転してしまって…。むしろハロルド将軍にご迷惑をおかけしてしまってすみません。」
「いや、私のアレは職務だからな。あとコウ殿はレオナルド殿の客人であるから将軍と付けなくて良い。気軽にハロルドと呼んでくれ。」
そう言ってハロルドさんの口元がほんのり緩んだ。
やだ、ハロルドさんめっちゃいい人じゃん…。
「お気遣いありがとうございます。ではハロルドさんとお呼びしますね。」
「おいハロルド、妻子持ちのクセにコウをナンパしてんじゃねえ。マリアーノにチクるぞ。」
師匠談義をぶった斬ってレオさんがこちらに割り込んできた。
ちょっとレオさん…、アンタあれをどうナンパと解釈したんだ…?
「私の白薔薇(※こちらでの最愛の人と言う例え)はマリアーノだけだ。」
「レオナルド、男の嫉妬は見苦しいであるぞ?このような可愛らしい方なら誘いのひとつふたつされて当然であろう?」
ええええ、皇子も何言ってんの…。
いくら日本人が小さいからって可愛いはないでしょ!隣りのハロルドさんと同い年のオッさんだからね、俺!
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