異世界転職先がダンジョンな訳だが?

そーまこーた

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健全黒字経営目指します!

黒くて速い

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第58話 黒くて速い



 マジか…。ペットボトル、お宝か…。まとめ買いだから100円もしないんだが…。
 誰もいない所で飲もう…。

「気をつけマス…。あ、そうだ、街に行く時ってこの格好でいい?貴族っぽいのがわからなくてさ。」

 その場でクルリと回って全身を見せる。

 尚、もっと貴族っぽいのはもうスーツしかない。1番高いのはブラックフォーマルだな…。タンスの肥やしになってるけど。

 レオさんは真面目な顔で全身を眺めた後、服の生地を触ってきた。多分、護衛仕事モードに入ってたので流石に股間は触って来なかった。って当たり前か。何気にしてんだ、俺…。

「…ケツがエろ、いやなんでもない。異国っぽいがまあまあ貴族風だ。もしタイがあったらした方がいい。でもその格好は街についてからだな。」

 今ケツがエロいって言ったぞ、コヤツ!仕事モードじゃないのか?!
 くッ、シャツ外に出して更にカーデでケツ隠すわ!

 …しかし街についてからってどう言うことだろ??

「道中、貴族っぽいと何か不都合あるの?盗賊に襲われるとか?」

「いや、そこは大丈夫だ。真っ昼間に襲いにくるアホはただのアホだから、そんなの逆に見ぐるみ剥いでやるさ。不都合ってのは、今日はまあまあ歩くから、そのケツまでピッタリした固いズボンだと内股が擦れるかもしれんって事だ。出来れば昨日の服みたいな柔らかいズボンがいいぞ。」

 股ずれかー!!それは地味に怖い!!

「わかったー。ちょっと着替えてくるから待ってて。」

 屋上に昨日着た服を取り込みにいく。トレーナーはまだ乾いてなかったが、ジョガーパンツは薄手だったから乾いていた。

「ハッ!!そう言えば!!…あのビー玉一緒に洗っちゃってたわ…。」

 やべえ、酔っ払って脱いだ服にそのまま入れてたな…。あの一個しかないって言う誘導の魔道具…。壊れてないよな…?壊れてたら弁償か…?

 干していた服のポケットからビー玉を取り出す。

「…無事だ~。良かった~。」

 ヒビもなく綺麗な青もそのままだ。差し込んできた朝日に透かすと透明な青の中に小さなグリーンの石が入ってた。ちょっとレオさんの瞳っぽい。

「綺麗だな。」

 もし街で買えるなら俺も欲しいかも。勿論お値段次第だけど!
 …あ、そうか、お金も準備しないと、だ。
 階下の自室に降りて着替える。上はパーカーにしとこ。フードあるから、異世界定番黒髪隠しに使うぜ。…まあ、多分レオさんの反応からして黒髪はコッチじゃ珍しくないっぽいけどね。
 忘れる前にビー玉をパンツのポケットにしまいリビングに戻る。

「レオさーん。お金持って行きたいんだけど、俺こっちのお金がわからないから、どれくらい必要か教えてほしいな。」

「いいぞ。手持ち、テーブルに出してみ。」

 とりあえず一泊旅行だから5万くらいは準備しとく。ストレージから5万円分を換金メニュー(お金のサブメニューにあった!)を通して、テーブルに出してみた。

 金貨が5枚テーブルにスッと現れた。

「…金貨かよ。」

 レオさんが一気に遠い目になった。
 あ、これは異世界定番の金貨は大金!の気配…。

「これタブレットで両替できるから気にしないで…。えっと、お金の単位はなんて言うの?地球って言うか俺の国だと円って言う単位なんだけど。この金貨だと5万円あるよ。」

「金の単位か…。ちょっと待て。いま俺の持ち金で説明する。」

 ポーチから皮袋を出して、入っていた硬貨を数枚並べる。

「1番少ない額から、この小さくて白いのは石貨せっかで単位は"カ"だ。額が小せえからガキの小遣いか釣り銭以外にはあんまり使わねえな。1カは10枚で次のこの銅貨、"ラル"だな。5ラルあればパン一個買える。次は10ラルで青銅貨、"タイ"。だいたいタイがありゃ街で買い物はなんとかなる。次も10枚で銀貨、"トニー"だな。3トニーで街の宿に一泊だな。銀貨の上に金貨や白金貨があるがソレも全部トニーだ。ちなみに10枚で金貨1枚だから、それで50トニーな。」

 5万円は50トニーね。つまり1円が1カで、10円は1ラル、100円は1タイ、1000円で1トニーか。なるほど、なるほど。

 …ん?あれ?そう言えばレオさんの報酬100万トニーとか言ってなかったっけ?
 100万×1000…、

 って10億円んんんん?!?!100万円じゃないの?!?!

「…もしかして100万トニーあると、一生遊んで暮らせる…?」

「まあな。だから俺は一生コウの専属だぜ。報酬分存分にこき使ってくれな。」

 レオさんはニヤリと笑い、バッチーンとウィンクきめた…。

 イケオジ頼む、アレは会社の経費って言ってくれ…。俺の生涯給、年金(あるのかな?)合わせても10億は払えない…。
 しかしメッセは来なかったね…。イケオジ、こう言う時に心読もう?後でメッセしてやる!

「さてと、そろそろ出発すんぞ。金は心配すんな。持って5トニー10タイだけでいいさ。」

 クッ、お金持ちめ…!甘えます!
 ストレージで金種替えし言われた金額をいつもの長財布に…、入れたらめっちゃパンパンになった。全部硬貨だもんなー!!
 小さめのサコッシュがあったのでそちらに詰め替え、見えないようにパーカーの下に下げた。一応盗難対策ね。

「準備オッケー!」

「じゃあ出るか。」

 レオさんはいつの間か腰丈のマントを羽織っていた。おお、なんかゲームの冒険者っぽい。いいな~、マント。やっぱファンタジーならマントだよなぁ。服買う時、いいマントあったら買おっかな。
 
 バックパックを背負い、リビングを抜けエントランスから出ようとしたが…、

「あ、ちょっと待って。レオさん、コッチこっち。」

 手招きで隣りへ呼び寄せる。

「ん?忘れモンか?」

「そう、忘れ物。」

パンッパンッ!!

「マッチョ、じゃなくてダンジョン守護神様、ちょっと街まで行ってきます!留守の間どうぞ拠点をお守り下さい!」

 礼!

 コッチのお祈りの作法がわからんから、神社式で柏手を打ってダンジョン守護神に留守をお願いした。

「コウは面白い事するんだな。じゃあ、俺もひとつ祈ってくか。」

 レオさんは無言で頭を下げ、二本指で額から胸にトントンと切った。やっぱソレ、お祈りのポーズなんだな。今度真似しよ。

「今度こそ出発ー!」


 拠点から森を抜けるのはさほど時間も掛からず、すぐ街道へと出た。街道は地球のようにアスファルトで舗装はされてはいないが、馬車も走る道との事で自動車2台は余裕で走れる幅広かつ固く踏み締められた立派な道だった。レオさん曰く、遥か昔隣国と戦争用に土魔法で引いた道が元になっているそう。隣国との境には戦場跡が跨っているので隣国へは綺麗に繋がっていないが、帝都、この国の首都まではこの街道が続いていて真っ直ぐ行けるらしい。但し、帝都まではレオさんの足でも4~5日はかかるとの事。遠いな…。
 そんな街道やそれにまつわる話を話しながら歩いていると、後ろから小さくドドドと地響きが聞こえてきた。

「コウ、馬車がくる。道端みちはしへ避けるぞ。」

 レオさんに促され道端に寄る。どんどん地響きが近づいてくる。
 へえ、この地響きは馬車が来る音か。確かにお馬さんレースの音に似てるかも。

ドドドドドドドド!!

 馬車を見ようと後ろを振り返るとそこには驚きの光景が…。

「は?アレが馬車??」

「お、馬車じゃねえな。ゆう車だ。珍しいな。」

「ゆう車??」

 後ろから地響きをあげて迫り来るのは馬車ではなく、


 パンダ車だった…!


 しかも二頭立て。あとなんか俺の知ってるパンダよりやたら強そうなんだが…。


「…え?あれがゆう車?ゆう車ってくま車?熊、いやパンダは熊か?」

「コウの世界だと黒足くろあし熊はぱんだって名なのか?」

 …え、黒足くろあし熊?くろあし?待って、もしかしてあの討伐したって赤足熊は、まさかの赤いパンダ…?熊はこの世界だとパンダなの…?

 熊パンダ問題に困惑してる俺の横を、車かと思うレベルの猛スピードで走り抜けていくパンダ車。
 一瞬、窓からこちらを見る中の人と目が合った気がした。チラッとだけだから金髪の若い男ってしかわからなかったけどね。

「…ゆう車って速いんだね。」

「まあゆう車は速いのがウリだからな。でも車用に熊を躾けるって言うか、熊自体が脚速すぎて捕まえるのが難しくてな。ゆう車はすげえ珍しいんだ。…あと、一応教えとくがアレは軍のゆう車だ。黒塗りで後ろに赤の星が三つ入ってるヤツは見かけても近寄るなよ。」

 黒で赤の三連星…、いやなんでもない。

「軍は怖そうだから近寄らないよ!」
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