異世界転職先がダンジョンな訳だが?

そーまこーた

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健全黒字経営目指します!

めしあがれ!

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第41話 めしあがれ!



§


「…ふぁ、」

 …あー、よく寝たなぁ。

 …んー、なんか体が少し重いような…?うーあ、ダルくてぜんぜん動かない…。
 これは…風邪、いや筋肉痛かー…。昨日、めっちゃ走ったから相当キてんのな…。つらぁ…、もう少し寝よっかな…、まだ目覚ましなんないし…、

 二度寝の誘惑に勝てず開きかけたまぶたが仕事放棄をしようとした時、

「おはよう、コウ。」

 突然の耳元イケボ。は、イケボ…?イケボ…?!イケボーーーッ!!!!

「はわあああ?!」

「やっと起きたな。」

 朝からイケメンが俺の前髪をかきあげチュッと額にキスをしてきた。
 そう、目を開けたら上半身裸のセクシーレオさんがベッドに腰掛け、額に優しくモーニングキスでお目覚めなの!って、なんでモーニングキス?!つーかこの人、なんで俺の上にいんの?!その肉布団めっちゃ重いんですけどー?!

「声かけても全然目が覚める気配がねえから、キスで起こしてやろうかと思ったんだぜ?」

 先程髪をかき上げた手が頬をするりと撫で、唇にキスをしようと顎クイしてきた。
 が、頭を振ってキスのモーションを阻止!
 朝から何をしようとしてんだ、このイケメンは!そのキスモーション、自然すぎてイケメン怖い!

「も、目覚めたから、そう言うのわ結構れすッ!」

 ひぃぃぃんん、朝イチすぎて全然呂律がまわってねええよ!!遺憾の意表明なのにクッソ恥ずかしいい!!
 縮こまりすぼっと頭まで布団に潜り隠れる。

「…プッ、まだしっかり起きてねえんだな。その舌っ足らずも可愛いぜ。」

「可愛くありません!」

 宥めるようにポンポンと布団の上から優しく叩かれる。

「うんうん、寝起きのコウは舌っ足らずじゃないし、可愛くない可愛くない。ほら、もう何もしねえから出てこいよ。」

 くっ、完全に幼児扱い!

 レオさんがベッドから立ち上がり、布団が軽くなったのでモゾモゾと這い出る。

「ゔっ、いたた…。」

 さっきの体の重さはレオさんの重みだけかと思ったが、残念無事筋肉痛であった…。腹筋と足が痛た重いぜ…。

「ん、何処か怪我でもしてんのか?昨日見た時は何も異常なかったが、…病気の可能性か?」

 そして脳筋風な割に繊細な男、レオさんに気遣われてしまう訳ですな…。目聡いな、さすがプロ護衛…。

「大丈夫です。ちょっと昨日走り過ぎての筋肉痛だからオキニナサラズ…。」

 腹筋を庇うようにヨボヨボと起き上がり、リビング部屋に向かう。俺の運動不足申告に合点がいったレオさんも小さく笑いながらついてきた。


 なんとかダイニングテーブルについた。

「ところで…、なんで上着着てないんですか?」

 朝からそのバッキバキなシックスパックを無駄に露出しおって!

「面倒だったからまだ着てねえだけ。ここ出る時に着るわ。」

至極しごく明快な回答ありがとうございます。風邪引く前に着て。」

 半裸族…。全裸族よりはマシか。まあ、地球にもいるもんな、家で服着ないヤツ…。
 
「ああ、そう言えば夜メシありがとな。夜中に頂いたぜ。」

 頬杖をついたレオさんが昨日夜メシにつけたメモを摘んで、パチリとウィンクをする。…クッ、イケオジもレオさんも、ちょいウィンクがサマになりおって…!※但しイケメンに限る、かよ!ぐぬぬ!

「…ああ、サンドイッチね。口に合って良かったです。夜メシの話からアレなんだけど、これから朝メシにしようかと。レオさん、米ってわかります?」

 さて朝メシタイム。
 昨日はピザパーティーにサンドイッチとパン系続きだったから、俺的には朝メシに米が食いたいのですよー。米狂信者ではないけどたまには原点回帰のように米を挟みたい、そんな日本人感覚ね。

 さあ!この異世界の米認知度いかほど??

「こめ?」

 オーマイガー…!米、ダメだったぁ…!

「あー、米は穀物の仲間なんだけどね。こっちでは一般的じゃ無いみたい。残念。」

「こめはコウの故郷の料理か?」

「いや、原材料。位置付けはパンの材料の小麦に近いのかなぁ。…うーむ、どうしようか。米を初めて見る外国の方には、米の白い粒の見た目が苦手って言う方もいて出していいか迷うんだよね。」

 主にラノベ界隈では炊き立ての白米が虫扱いされてるからな!うう、想像するだけで寒気がするわ。そのネタ考えたヤツ許さん…!俺のほうがメシが食えなくなる…!
 おっと、ムダ暴走してしまった。落ち着け、俺。すていくーるだ、俺。

 ま、そんな感じで米へ嫌悪感を持たれるのはちょっとね。はい、召しあがれとは簡単に出せんのよね。などと供述する前に、イカすプロ護衛様のお優しいお言葉頂きました!

「ふうん、俺は多分平気だと思うぞ。戦場メシにも慣れてるから、臭せえ魔獣肉のごった煮とか最悪その辺の草でも食えるしな。」

 草…。中々強者つわものですな、おヌシ…。
 但し、虫って言ったらお米は撤収よ!

「じゃあ、朝メシは米炊いて味噌汁つけちゃいますか!ちょっとキッチン準備するんで、一時間くらい待っててくださいねー。」

 もう動くのが面倒なので、タブレットで隣りの自室から作業机をダイニングテーブルの横に設置し、そこから超特急でキッチンを増設整備する。竈門かまどと横に作業が出来るようテーブルを一台、あと天井に排気をざざっと設置した。

 さあ、米炊いてしまいますよ!
 テーブルまでヨタヨタ歩き、ストレージから食材、炊飯器やら鍋やらを出して、朝メシを作り始める。
 ふっふっふ、最近新調した炊飯器、めっちゃ早炊きできるスゴイヤツなのだ!と言っても仕事が忙し過ぎてあんまり使ってないんだけどね…。
 ジャコジャコと米をとぎ炊飯器にセットして、次は味噌汁。しかし、我が家のお味噌汁はレトルトである…。四食分くらいレトルトの袋から捻り出し、水が入った鍋にぶち込んで竈門かまどオンで終了ー。まさに3分クッキング。
 社畜男の料理なんてそんなモンでいいだろ…。

「さすがに食い盛りのレオさんに、白米と味噌汁だけじゃたんないよなー。あとなんかおかずになるモンあったかな?」

 ストレージ内の食品リストをざっと見る。

 あ!冷凍唐揚げあるじゃん!俺のおつまみに買ってたやつ!!

 いそいそと取り出し、炊飯器の炊き上がり時間に合わせてレンチンした。

「よっしゃ!豪華鶏唐朝定食完成ー!レオさーん、ちょっとこっち来てご飯テーブルに持っていってくださーい。」

 さてご開帳。白米様オープン!

カパッ

 ひょー!白米最高だーーーっ!
 このツヤッツヤでさらに炊き立て感溢れる芳醇な香り…。はあああ、これはたまらないですわ…。今だけは米狂信者になれる…。

 炊き立てほっかほかご飯を茶碗によそう。
 背後にきたレオさんに茶碗を手渡し、反応を見る。

 さあ!コレが白米じゃあ!

「お、これがこめか。ふさ玉草の蒸したヤツに似てるな。コウが脅すからもっとヤバい食いモンかと思ったぜ。」

 よかった~!いけそうじゃん!と言うかふさ玉草とは…?米に似てるのか…?

 ダイニングテーブルに朝メシを並べて、レオさんには箸がわりにフォークを渡してやる。

「じゃあ、いただきまーす!!」



 鶏唐朝定食はしっかり俺とレオさんの腹におさまり、余裕を持って3合炊いた米も全て完売でした!
 さすが体が資本な傭兵さん。朝からガッツリ派だな。尚、俺は普段コンビニパン一個にコーヒー程度な朝なのでお茶碗一杯が限界でしたね…。
 食器などを片付け、まったり食後の白湯さゆ。(我が家には淹れるお茶など無いのだった…)

「うん、朝から食べた、食べた。レオさん、米もだけど味噌汁も平気で良かったよ。」

「ああ、全部が初めて食ったモンだったが美味かった。しかしコウは料理も自分でするんだな。」

「うんまあ、一人暮らしだったからちょっとは自炊するかな。簡単なモノしか作れないけどね。」

「一人暮らし?コウには従者がいないのか?」

 ん?従者?お手伝いさんかな?

「俺の故郷だと、住んでる地域によるけど一人暮らしは結構普通かな?結婚とかすれば家族と暮らすけどね。あとすんごいお金持ちならお手伝いさんとか家にいるかも。」

 こちらしがない庶民な単身男でサーセン。

「…ええと、少し踏み込んで聞くが…、コウは何処の国から来たんだ?周辺国の貴族や魔法使いではないよな?俺が知る近隣諸国の知識からは…、コウの料理や魔法、ーーー全て外れてるんだが?」

 白湯のマグカップから目線を上げると、そこには眉をひそいぶかしげな眼差しのレオさん。

 おっふー!そう言えば全然説明してなかったー!!

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