異世界転職先がダンジョンな訳だが?

そーまこーた

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健全黒字経営目指します!

甘いもの

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第40話 甘いもの



 デリバリー待ちにちょろよいとポテチをつまみ、暇つぶしがてらスマフォを開く。
 おふ、充電切れそう。…ん、あれぇ??

「…これって、やっぱおかしいよな?」

 スマフォは電池残量30パー、タブレットは未だ90パーと言うかほぼ100パー…。え、なんでや…。
 確かにスマフォで通話したり検索したりしたが、今日の使用頻度は箱庭三昧のタブレットの方がダントツだった筈。…この電池消費量の違いはなんなんだ??

 ついっとメッセアプリを開く。
 機材についてはやはり総括チームさんだよな!

『鈴木: 夜分遅くすいません。
 ちょっと質問があるのですがよろしいでしょうか。』

ピコン

『総括チーム: はい、なんでしょう?』

 レスポンス秒で早すぎる件。
 総括チームさん、マジでちゃんと休んでる…?休憩とれない環境はコンプラ違反の可能性よ…?

『鈴木: 使用中のタブレットなんですが、スマフォと比べて電池残量があまり減らないのは何故ですか?
 今後持ち出す時の参考にしたいので、仕様を教えて頂けると助かります。』

『総括チーム: このタブレットは作業机に設置すると急速充電される仕組みです。
 コウさんは主に作業机に設置してタブレットを使用されているようなので、バッテリー残量が減らなかったと推測されます。』

 ほうほう、なるほど。確かにタブレットは机に差して使ってたわ。電源取ってたら減らないよな。

『鈴木: 確かに拠点内では作業机に設置してました。それは減らなくて当たり前ですね。』

 …おや?いつも秒で返信くるけど…?
 俺の返し、なんか失礼だったかな?

 1分くらい間が空いて、すいませんとでも打とうとした時、総括チームさんから返信がきた。

『総括チーム: あとそちらの拠点にイミナルディアの神の加護が付加され小規模な聖域になったようです。
 その恩恵で拠点内で使用する分にはバッテリーが減りにくいようです。
 ボス曰く聖域はサービスだそうです。』

 は?神の加護で聖域?!待って、壮大すぎるサービスなんだが?!

『鈴木: 聖域って、例の『神の奇跡』みたいなんですが、それいいんですか?!』

 あわわ、驚きすぎて変な文章打ってしまった!
 すまない…、総括チームさんうまく解読して…。

『イケオジ: サービス!サービスぅ!
 聖域と言っても小さな神殿レベルで、根底を揺るがす神の奇跡って程じゃないので大丈夫だよ。
 シン君もそう言う加護は自身のプラスになるから、全然オッケーって言ってたよ。(スマイル絵文字)』

 聖域、ユルっ!!こっちの神、ユルっ!!

『総括チーム: そう言う事らしいです。
 こちらの支給タブレットに関しては拠点なら使いたい放題ですから遠慮なく使ってください。
 あ、コウさんのスマフォは地球からの持ち込みなので、加護の恩恵は受けられないようですよ。
 忘れずにちゃんと充電して下さいね。』

『鈴木: お心遣いありがとうございます。
 イミナルディアの神様にも、加護を与えて下さりとても感謝していますとお伝え下さい。』


 ため息と一緒にメッセを閉じる。

「まさかの拠点聖域化…。タブレットよりそっちがビックリなんだが…。」

 イケオジ、小さな神殿レベルの聖域とか書いてたけど、神殿って神様まつってる場所だよな?こっちの神様、シン様だっけ?シン様像とか建てないとまずいのかな?
 この拠点一体何を目指してたんだっけ…?ダンジョンとは…?
 
 そして今現在聖域でちょろよい片手の俺、場違いじゃ…、
 
「あー!もうわからーん!」

 そうだ、ネコチャンライブラリー見よっと!!俺の聖域だー!!
 ちょろよいをクビッと飲み干し、検索アプリ内のネコチャンライブラリーを楽しんだ。今日のネコチャンはラグドール特集でした。あは、ふわもこでかわいいなぁー…。

 ただの現実逃避である…。


 ネコチャン天国からしばらくして夜メシのデリバリーがきたが、レオさんに軽く声を掛けてみたが全く起きる気配がなかった。のぼせたせいと言うよりも、今日の熊狩りの疲れが出たんだろう。
 無理には起こさず、夜メシは起きたら食べてくださいとメモをつけてダイニングテーブルに置いた。
 尚、プチ驚き案件なんだが、なんとこちらの世界の文字でメモ書けた…!言語チートさん、すげえな!

 夜メシを軽く食べ、歯磨きなどをしてしまうと流石に俺もまぶたが重くなってきた。もう自室で寝る事にした。
 ベッドに潜り込む。はー、まだ寝るには全然早い時間だけどもうおやすみ五分で寝れるわ。
 …おっと、スマフォの充電忘れずに!枕元の充電器にスマフォをセットし、ばふりと布団を被った。

 本日の業務は終了です…。おやすみなさい…。


§


「ボス、話しがあるんだけどぉ!」

 階下のラウンジで仁王立ちのルーカス君に呼び止められる。ルーカス君の手にはホイップもりもりにチョコソースたっぷりのチョコレートシェーク(ラージサイズ)。前回と同じくまた顎でそっち座れと合図されている。んー、デジャヴ!

「ははは、ルーカス君、そのチョコシェークは新作「座ろうか、ボスぅ。」…、はい。」

 素直に窓際のテーブル席についた。
 ルーカス君がドスっと椅子に座り、人差し指でカフェテーブルをトントンし始めた。

「さっきのコウ君とのやり取りなんだけど、…聖域ってどう言う事なんですか?めっちゃ初耳なんですけど!」

「あー、アレね。アレはサービスで「サービスで普通聖域なんて作んねーよッ!!どんな慈悲深い神だよッ!!」…、ははは…。」

 おお、またカフェテーブルにルーカス君の一撃が…。シェークが軽く跳ねたね。

「いやあ、シン君がさあ、なんか今回のプロジェクトに微力ながら協力したいって申し出てきてね。無理しなくて良いよとは言ったんだけど、どうしてもと言うからね。じゃあ、シン君の力がコウ君に供給される感じにしたらいいんじゃないかな?って提案したんだよ。」

「…それで?」

「シン君の力じゃ異世界人のコウ君に加護は与えられないから、それなら今いる場所に加護与えるのはどうかって事に落ち着いたんだ。ほら、ダンジョンって人が集まるから上手くいけばシン君の信仰心にも見返りがあるし、まさにウィンウィン!」

 ナイスアイディア!とパチーンとひとつウィンクしてみせた。

イラッ

 おや、何かルーカス君からイラッって心の声が激しく聞こえたな?
 ヂューッと凄い勢いでチョコシェークを吸うルーカス君。みるみるシェークが減っていく。冷たいドリンクを一気に摂取して、アタマは痛くならないのだろうか?

「(プハっ)で、聖域にしたと。あああ、神の考える事意味わかんねえよ。加護の加減できねえの?慈悲深いも程々にして?…はあ、ところでその案件、チームの承認は、

どうしたんですかねぇぇ??

まさか独断なんて事はないんですよねぇぇ??」

 んん、忘れてた。どんな加護にするかシン君とかなり盛り上がってしまったからなあ。

「…ええとサービスだから特に報告や承認はいらない、かなぁ?」

「あ~~~!!!!なんなのこのボス!!!!前回も独断でやらかしてるのに!!!!」

「あ、ルーカス!いた…、ってボスと一緒か。」

 ふと、ラウンジに響くいい声。
 なんとリアム君がルーカス君を探しに来たのだ!
 ふふふ、リアム君いいタイミングだ…。今度、私のおすすめランチをご馳走するよ。

 バッとルーカス君がリアム君に振り向く。

「ちょっとリアム先輩!聞いて下さい!またボスが勝手にやらかしてるんすよ!!さっきの聖域の話しなんですけど!!」

「…え?何?え、何この状況?」

「(ありがとう、リアム君。)」

 リアム君、君の尊い献身、神はしっかり見てるよ…。ルーカス君のお小言は長いから頑張ってね…。
 私はそっと気配を消してラウンジからオフィスへ戻った。


 お取り寄せしたエスプレッソ片手に窓際へ歩み寄る。窓の外は美しい星空。色々な星々が色々な世界達がひしめき煌めいていた。

「ーーーまあ、シン君も一生懸命に考えて申し出たんだ。私はその大局を見守る事にしよう。」

 呟きと共にエスプレッソの良い香りがあたりに溶けていった。

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