異世界転職先がダンジョンな訳だが?

そーまこーた

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健全黒字経営目指します!

食レポもできる男

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第35話 食レポもできる男



 ウキウキのピザパーティー邪魔させんぞと、一応部屋に戻る前に箱庭のビューでぐるりと玄関部屋を見まわしたが、特におかしな所も隠れモンスター的な反応もなかった。そのままタブレットを仕事部屋の入口でもかざしたが、やはりビューには何も変化はなかった。
 んー、こっちの問題じゃないっぽいな!

 ささっと返信を打つ。

『鈴木: 確認終わりました。
 こちらは特に異常はないようです。』

ピコン

『イケオジ: (泣き顔絵文字×3)』

 あっ、イケオジ…。返信しなくてごめんて…。

『総括チーム: 今のメッセは気にしないでくださいね。ちょっと拗ねてるだけなので(全開笑顔絵文字)
 報告ありがとうございます。
 こちらの通信機材が安定してないのかも知れませんね。システム保安部に再点検を申請しておきます。
 しかし通信が途切れたのが丁度外出時間と同じと言うのが気になりますので、次回外出する際は必ず事前連絡をお願いします。』

『鈴木: 事前連絡の件、了解しました。』

 確かに外出時間と被るのは気になるなあ。箱庭は通信が出来てるから、通信圏外って言うのも変な話だ。うう、俺のチート、タブレット様頼みだから心配だよ…。

「コウ、そんな所に突っ立ってどうした?…今、深刻な状況なのか?」

 レオさんがラグからこちらを心配そうに見ている。
 おっと、入口に突っ立ったまま返信をしてたね!俺もラグへ戻る。

「いえ、今、こちらに異常がない事を報告してたんですよ。そしたら向こうの方に問題があるかもって話でした。あ、でもあちらには専門家がいるのですぐ対処予定らしいんで、今のところ問題ないですね。」

 いざとなったらスーパー取締神のイケオジもいるから何とかなるよ…。神の奇跡とやらに期待しよ…。

「俺ができる事があるなら言ってくれよ。コウは俺のあるじなんだぜ?」

 ついっと服からペンダントを引き出し、チャリっと命環めいかんを顔の前で揺らした。
 クッ、やる事がやたらキザすぎる!!
 が、やっぱりしっかり護衛職なんだなあ、この人。俺がいまどう言う状況にいるか確認してるし、護衛対象のメンタルも気にかけてる。レオさん、まじプロだわ。

「ありがとうございます。何かあったらすぐ頼っちゃいますから覚悟して下さいね!」

 ちょっとイケオジの真似してバチコーンとウィンクきめてみた。だが慣れないウィンクはピチンくらいしかならなかった…。恥ずか死ぬ…。

「………。」

「………。」

 レオさんの時が止まった。

 え、ちょ、何、この沈黙??やらかし恥ずか死んだ俺にノーコメントとか言う死体蹴りやめてよお!!もう死体が塵になりそうだから!!はわあーーーっ!!!!

チーン!

 『ご注文ありがとうございます!
  商品をお受け取り下さい。』

 …ありがとう、デリバリー。もう少しで天に召される所でした。死因は愧死きしで。

「レオさん、ご飯来ましたよ!」

 受け取りをタップするとドドンとピザの箱が出現した。Lサイズ、3箱。そしてコーラ!
 総括チームの人、最高にわかってる人だ…。この人とはいい友達になれるわ…。

 ヒャッハー!!ピザパーティータイム!!!!

 Lサイズ3枚なんてテーブルにはのらないので、床に箱を広げる。おお、ベーシックなペパロニピザ!こっちの箱は珍しいシンプルなチーズピザだ!最後は…、やっべえ!これめっちゃ肉乗ってるじゃん!ペパロニ、サラミ、ソーセージ、ベーコン、チキンに謎肉ブロック、あとステーキ。多分肉トッピング全部乗せだ。これ絶対例のオススメピザだよな 笑。

 グラスをストレージから取り出しコーラを注ぐ。

「レオさん、これ俺の故郷のピザって料理です。飲み物はコーラなんですけど、飲み口がかなりシュワシュワするのでゆっくり飲んでくださいね。」

「…おお、ありがとう。」

 怒涛のピザラッシュに呆然とするレオさんにグラスを手渡し、

「お酒じゃないですけど…、今日は熊討伐お疲れ様でした!カンパーイ!」

 乾杯と俺のグラスをカチンと当てた。

「ん?ああ、乾杯!」

 やっとニヤリとしたレオさん。やっぱり酒飲みに乾杯コールは鉄板な。
 俺が先にゴクっとコーラに口をつける。ふひっ、炭酸きくぅ!最高!

 さあレオさん、ユーもコーラ初体験の時だヨ!(ニヤリ)

「グフッ!!」

「ヨシっ!!」

 うっかり声が出てしまった 笑。
 キツい炭酸の洗礼をうけ、すんごい顔したレオさんに思わず笑いが漏れる。

「笑うな。しかしこれ凄えな!口がビリビリする。でも酒の辛味じゃねえ。すこぶる甘いのが面白い。」

「んふ、ふふふ!ごめんなさい。初めて飲む人はみんなそんな風に驚くんで、つい。そう、それ酒じゃないんですよ。炭酸って言う気体を込めた、シュワっとした感覚を楽しむ飲み物なんです。このピザって料理によく合うんですよ。」

 一口目の刺激が凄かったせいで、二口目は強い酒を舐めるようにチビチビ飲みはじめたレオさんに、今度はピザをすすめる。
 ちょっとお行儀悪いですけど、と直接手に取ってピザを食べてみせる。おわ、Lサイズちょっとデカいな…。皿くらい出せば良かったかな…。
 はー!しかしピザうま!!最高!!

 俺のモグモグっぷりに触発され、レオさんもピザに手を出す。お、肉ピザいっちゃいます?肉大事。総括チームさんオススメなんで、どんどんいっちゃって下さい!

「おっ美味いな、これ!パンみたいだが全然固くねえし、上に乗ってる肉やソースとすごく合う。あと白くて伸びんのはチーズの味に似てる。こんな高級料理が手掴みってとこもいいな。」

 お、チーズもこちらにあるのな。
 でもトロけないっぽい。時代的に保存食なハード系が主流なのかな?

「口に合ってよかった。ピザはパンの一種なんで手掴みでよく食べますね。国によってはナイフとフォークでお上品に食べるみたいですよ。あと白いのはチーズで正解です。レオさんって結構食通なんですね。」

 食レポもできる護衛さんってなんか万能感が凄いな!

「ははは、俺は食通じゃねえよ。ただお貴族サマの毒味したりするから、色々食う機会が多いんだ。さすがに牛のチンポ料理の時はフォークぶん投げそうになったけどな。」

 さらっと毒味とか怖い事言ったよ、この人…。でも牛のアレは食いたくねえ…。護衛職しんどいな…。

「わあ…酷い…。あの、このピザは普通の食材しか入ってないんで、安心してどんどん食べちゃってください!俺だけじゃこの量ムリなんで!」

 今日は心置きなくモリモリ食べなよ…。

「出されたモンは遠慮なくいただくさ。つーか、こんな美味うまいモン残す気はねえよ。」

「あははは、出した甲斐がありますね。」

 もう一回コーラで乾杯した。



 2人でピザとコーラをペロッと平らげ、ピザパーティーは腹の虫さん大満足の内に終わった。

「はあ、お腹いっぱい…。」

「コウは見た目通り少食なんだなあ。」

「…普通ですから。全然普通ですから…。」

 ゴロリと体を横向きにし、胃の消化を促す30代。食べ過ぎると消化が追いつかない体になってまいりました。ふー…。

 片付けも終わり、満腹の俺達はラグで寝っ転がっていた。尚、レオさんははみ出している。デカいからな…。

「レオさん、今日はお疲れ様でした。」

「んー、お疲れさん。」

 レオさんからゆるい返事が返ってくる。ほんとにお疲れみたいでもう眠そうだ。

「この後はもう外に出ないので、今日のレオさんの業務はこれで終わりにして大丈夫です。後でベッドも用意しますんでゆっくり休んで下さいね。」

「そうか、ならちょっと休ませてもらうな。思ったよりも魔力削られたから助かるぜ。」

「魔力切れってヤツですか。本当にお疲れ様です。」

「まあなぁ。エイトールの野郎に引っ掻き回されたのが効いた。最後のウォールにかなり持ってかれたぜ。ま、少し寝れば回復するさ。メシも食ったしな。」

 熊狩り&師匠だもんなぁ。そりゃ削られるよ。俺もメンタル削られたもん…。

「俺はあとちょっとだけ仕事するんで、何かあったら声かけてください。」

「わかった。コウも何かあったらすぐ起こしてくれよ。」

「はい。」

 俺の返事を聞くと、レオさんはすぅっと寝落ちた。

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