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健全黒字経営目指します!
熊パーティーにご招待
しおりを挟む第23話 熊パーティーにご招待
「さあ主、お手をどうぞ。」
手をすっと差し出され、俺はその手を…、
「…はっ!!いやいや、レオさんのエスコートなんて俺には恐れ多いですから。そんな危なくなければ現場まで普通に着いてきますよ。この辺の様子も知りたいんで。」
うわっ、危ねえ、危ねえ!うっかり流されてお嬢様よろしくお手を拝借され熊パーティーへエスコートされそうだったわ。
異世界ラテン系、自然に流れるようなナンパスキル半端ない。地球だったら女子の二、三人は軽く熊パーティーにご招待されてたな!こわ!
「ハハ、つれねえな。少し歩くが疲れた時は遠慮なく言ってくれ。おぶってやるよ。」
「…大丈夫ですから。一応、これでも歩き回る仕事してましたし。」
ふっふっふっ、徒歩で外回りしてたからね!
どっさりサンプルもって取引先のスーパーさんハシゴしてたから、結構体力には自信があるのだよぉ、レオくん。(但し、筋肉モリモリ力はない)
「…ふうん、意外だな。細っこいから大事に箱にでも入れられてんのかと思ってたぜ。」
ぐぬぬ!細っこい箱入り扱い!
…いや、レオさんレベルで考えたら負けだ。屈強な傭兵さん達と比べたら、大抵のサラリーマンは細っこいですから!一部例外のモリモリはいるがな!高橋とか言うヤツとかな!
「人は見かけに寄らないモノなんですって。…あ、ちょっと準備していいですか?」
「ああ、いいぞ。」
念の為、スマフォとタブレットは持っていかないと!特にタブレット、会社の備品だから盗まれたらマジやばい。神ご謹製のタブレット紛失なんて始末書どころじゃ済まないぜ…。
たしか高校の時のバックパックがあったはず。あれなら通勤バックより動きやすいし、両手も空くから森歩きにいい感じだろ。
ストレージからバックパックを取り出し、タブレットを突っ込む。ついでに買い置きしてた残業のお供なカロリーバーと缶コーヒーも入れた。勿論、遭難対策ダヨ!
「準備できました。行けます。」
「へえ、コウはシーカーみたいな旅装備持ってんだな。本当に意外だな…。」
ちょっと大きめなバックパックを背負った俺を、上から下へとまじまじと眺める。
そんな見なくてもいいよ!俺も社会人になってからあんまりこういう格好してなくてちょっと違和感なんだから!
視線から逃げるように、準備していたスニーカーに足を突っ込む。
「コウ、お前その靴で行くのか?」
ん?スニーカーは駄目?
「ええ、これ歩きやすい靴なんです。長距離歩く時なんか重宝してますけど、もしかしてダメですか?」
「そうだな、それは底が薄いからダメだな。街道や街ならいいが、森ん中じゃ足痛めるぞ?もう少し厚手のブーツはないか?」
おっと!アウトドア舐めてた!
しかし流行りのキャンプには目覚めなかったから、流石にトレッキングシューズやレオさんみたいなゴツいブーツなんて持ってない。
うーん、どうすっかなあ…。
「あっ、そうか!」
あるわ!イカすブーツが!
すっかり忘れてたけど箱庭はモンスターと戦う為に武器や防具が作れるんだったわ!
「どうした?」
「ちょっと待ってください!今ブーツ作ってしまいますんで!」
「は?作る…?」
よし!スマフォの箱庭ON!
鉱石系はちょっとアレだから、モンスター皮を選択。あとは合成ポチポチっとね!
スッ。
目の前に皮のブーツが現れた。
ばっちり箱庭グラフィック通りの茶色のワークブーツだ。
うん、鉱石系はゴム長靴みたいなグラだったから避けてよかった。さすがに異世界とは言えども、ゴム長靴装備はイヤだからな!オッさん力が上がってしまう!
「?!」
「これなら大丈夫かと!」
いそいそとブーツに足を通してみるとサイズも不思議な事にピッタリだ。いやあ、さすがGOD ver.は違うな。色々なところに神の配慮だわ。
「………、なら良かったよ。」
ふと隣を見上げれば、レオさんはまた眉間を揉んでいた。
「…えっと、じゃあ行きましょうか。」
この件は後で説明します…。すまん…。
入口の部屋を抜け、レオさんの後について外に出る。
「おわああ、異世界すげえ…。」
ーーー初めて見た外の景色は本当に『異世界の森』だった。
樹齢500年は優に超えたどデカい針葉樹、だが周りには針葉樹の気候帯を無視した広葉樹が枝を広げていて、寒暖が絶妙に入り混じった不思議な森。上を見上げると抜けるような青空をカラフルなオレンジ色の鳥が飛んで行った。
まるで北米タイガと南米アマゾンが融合したようだ。
「どうした?何か居たか?」
あまりの異世界森っぷりにぼうっと景色を眺めてていたら、レオさんが数メートル先で来ないのか?と言う風にこちらを見ている。
「あ、鳥がいたんでつい!今行きます!」
熊退治に行くのに物見遊山気分でいたらダメだな、俺。タッと軽くダッシュでレオさんの後ろにつく。レオさんは大丈夫、置いてかねえよ、とクツクツ笑い、ついでにマメ知識を披露してくれた。
「あの鳥な。アイツは焼いて食うと結構美味いぞ。羽根も人気があって猟師もよく獲りにくる。ただ、巣に近づくと集団で襲ってくるから気をつけろよ。」
あのオレンジ鳥、焼き鳥にすると美味いのか。しかし野生の集団バイオレンス鳥…。レオさんから離れないようにしよ…。
森は深いが針葉樹のおかげなのか少し開けた獣道が多く、あまり苦も無く進んだ。ただ足元は、木の根やたまに出てくる岩でゴツゴツしていた。ちょっと油断すると足を取られそうになる。
これは確かに普段使いのスニーカーじゃヤバかったな。絶対すぐ足痛くなって、最悪レオさんの背中にお邪魔しなきゃならんかった…。
そんな事を考えながらどんどん歩を進める。たまに聞こえる謎の物音に若干ビビったりもしたけどね。
「よし、ここで一旦アースマーカーをかけるぞ。」
体感20分くらい歩いた所でストップがかかった。目の前には大きな針葉樹が立っていた。どうやらチェックポイントってとこみたいだ。
「"アースマーカー"」
レオさんが地面に両手をつき、アースマーカーと唱える。一瞬、さざ波のような不思議な感覚が足裏を通り過ぎる。
おお!魔法、魔法!!
今回も全然光ったりしてないけど、アースマーカーって一言でなんかが発動したぞ??アースマーカーってなんだろ?!やっぱアースだから土魔法よな?!うああ気になる~!!
レオさんの魔法にウズウズしながら、待つ事ほんのちょっと。いや全然待ってない。カップラより全然早い。
レオさんは屈んだまま針葉樹の右手側の森を眺める。俺もつられてそっちを見る。何かかしらの実がついた木が多い気がする。あの方向に熊いるのか?
「木の振動位置はほぼ同じか。これならこの辺からウォールをはっても良さそうだ。」
今度はさっき入ってきた獣道へ移動し、ドンと大地を踏みウォールと唱える。
ズズズン!
「うお!壁だ!!!!」
なんと壁が地面から生えてきた!!
すっげー!地面ドンってやったら土壁出てきた!!何これ!カッコいい!!俺もドンってやりたいわ!!
こっそりトンっと地面を踏んで頭の中でウォールと言ってみたが、勿論魔法が使えないので壁は生えてこなかった。はー、魔法チート羨ましっ!
「コウはウォールがそんな珍しいか?」
キョトンとした顔のレオさん。
おわ、もしかしてウォールとか言う魔法、よくあるあるな魔法だったか?やべ、俺、はしゃぎすぎた?
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