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健全黒字経営目指します!
一級かと思ったら違った
しおりを挟む第22話 一級かと思ったら違った
「じゃあ、ちょっと見てくるな。コウも体を拭いたら服を着ておいてくれ。」
服と一緒に床に置いてあった濡れタオルを俺に放ると、レオさんは部屋から出て行った。
ぐぬぬ、濡れタオル準備とはさり気なく気遣いイケメンめ…。
濡れタオルで体を拭き、新しい服を着る。今度は外に出るかも??なんで、土に汚れてもいいような着古したトレーナーとジョガーパンツにした。うん、スニーカーも出しとこ。
身支度を整えたから、次は…片付けだなー。床の服どもをどうにかせんと。繁忙期の俺の汚部屋状態にまっしぐらだ。
おしっ、と気合いを入れて服を拾い始める。
「ふむ、このレオさんのシャツは乾かしとくか。生成りの麻みたいな感じだし、吊るしとけばすぐ乾くだろ。」
ストレージからハンガーを出し、レオさんのシャツを吊して冷蔵庫のフチに引っ掛けとく。俺のスーツもかかってるから、見た目冷蔵庫なんだか衣類ハンガーなんだかわからん状態だ。うーん、物干し竿って大事だわ。今更ながらJAPANなアパート、色々便利だったんだなあと遠い目になってしまう。
…さて気を取り直してお次は俺の服。もう見た目からわかる、例の液体のせいでそれはもうしんなりなされて…。くっ。
…水回り設置したらすぐ洗濯な…。はあ…。
洗濯カゴを出して、汚れモノを突っ込んでいく。デニムもエイヤと突っ込もとしたら、ポロリとポケットから契約の命環が落ちた。
「おっと忘れてた。証、チェーンに通さなきゃ。」
汚れモノを突っ込んだ洗濯カゴを水桶横に置いて、早速チェーンに証を通し首に下げてみる。勿論、ドッグタグは引き抜き済みですよ!!小っ恥ずかしい!!
「おー、なんかオシャレ芸能人とかが着けてる謎アクセみたいだな。でも契約の度に証増えたら、金属じゃらじゃらですげえ首が重そうだよなあー。…って言うかこれ、どっちがどの契約なんだ??見分けってどこですんだ??」
証をひとつ目の前にもってくと、よく見れば内側に"契"の一文字と数字が何個かが書かれてた。
「契?」
リングを摘んだまま呟いたら、頭の中にレオさんの声が聞こえてきた。
(契。主コウ・スズキから、我レオナルドへ「今より陽が三度沈む間、主命を重んじ守護する事」を契の楔とす。)
おおー!音声録音機能!すげー!
なるほど、これならどれがどれかわかる。しかも、文字読めなくても内容わかるヤツだ。あと俺はこちらの暦がまだわからないからなんとも言えないが、書かれてる数字は日付や時刻などのタイムレコードのような気がする。音声を聞くのが面倒なら日付を見ろみたいな作りなんだろう。マジ、この命環作った人すげえな。
ガチャ。
「戻ったぞ。」
命環のハイレベルっぷりに感心してたらレオさんが戻ってきた。だがあんまりいい顔ではない。
「お帰りなさい。もしかして隣、なにか居ました?」
「いや、隣は何も居なかった。入口はロックスで少し石積んだから獣は入って来ねえだろう。だがなあ…。」
レオさんは腕を組み、眉根を寄せ難しい顔になる。
「え、なんか大変な事でもあったんですか??」
現地人でも攻めてきたんだろうか…?
「赤足熊のヤロウが近くにいるんだよ。」
「ええええ?!?!熊ぁ?!?!」
熊が攻めてきたーーーッ!!!!
「ちょっと外に出てな、偵察がてらアースマーカーで軽く近隣をさらったんだ。そしたら、5ルイヤ(※こちらでのキロメートル)先の大木に反応があった。しかも即時反応だ。」
えっ、ルイヤがどれくらいかわからないが?!
…でもレオさんの難しい顔からすると、かなり熊との距離が近いって事だよな?
「あの!その赤足熊って、こっちに来るんですか?!」
おわあああ…、熊が来たらどうしよう…!地球じゃ、東北とか北海道で民家に侵入した熊に襲われて死亡とかたまにニュースに流れるよ?!?!
「わからん。だが、ここらにもデカい木が生えてるから来る可能性はある。」
「あるんだぁ…。」
あるんだぁ…。マジかぁ…。
「ああ、あの赤足は今ちょうど休眠明けで餌探しに動きまわってるから余計にだな。」
「餌…探し…。」
待って、これ完全にフラグ立ってない?
その餌探しってセリフ、完全にこっち来るフラグじゃない??え、レオさん1級フラグ建築士とかじゃないよね??
「ま、丁度いい。素材剥ぎ屋が居ないのは痛いが、このまま赤足の討伐依頼片付けるか。アイツは魔獣の割に打たれ弱いから、穴に落としちまえば簡単に仕留められる。コウは攻撃系の魔法かスキルはあるのか?それとも魅了眼持ちだから、補助系メインってとこか?」
フラグ建築士どころじゃねえ…!フラグ持って突っ込むフラグ突撃兵じゃねえか!!
しかも俺まで巻き添えにする気満々!!あとその魅了眼って言う謎スキル?はありませんから!!
「俺は何も使えません…。だから熊退治はちょっと…、」
むーりーでーすー!!
ちっさい虫くらいしか退治した事がない現代っ子に、熊退治なんて無理ゲーやめて下さい。
「いや、赤足は俺ひとりで充分やれるヤツだが、補助があればちょい楽できるって、な。それだけだから気にすんなよ。」
ニカッと笑い、俺の腰をグイッと引き寄せた。あっと言う間にレオさんの腕の中へ収まる。
「大丈夫だ、そんな顔しなくてもコウには絶対近づけねえさ。高みの見物でもしてくれよ、俺の主。」
チェーンに下がった証をついっと持ち上げ、証ごしに俺の唇へキスを落とした。
「?!?!」
うああああ何やってんだ!!このイケメンんんん!!
突然めっちゃ甘い雰囲気出してんじゃねえ!!
ヨソでやれ、ヨソで!!!!
だが俺の頬をするりとひと撫ですると、さっきまでの甘いイケメンは消え一気に戦う男の顔になる。
「赤足は脚こそ早いが、デカい図体と深い森のせいで、動線さえ作っちまえば小回りが効かずすぐ追い込める。」
ぽんと背中を押されて腕の中から解放される。
「誘導に小さなウォール(※土魔法)を何個か仕込んで、後ろからロックスで追い立てるのが俺の定石だな。誘導先はこの近くにある窪地だ。そこにエクスケイブ(※土魔法)で穴を作って落とす。あとはロックスをガンガン降らせば終了だ。」
魔法の名前っぽい専門用語まみれだが、多分魔法で誘導路を作って追い込み漁をするのはなんとなくわかった。
「レオさんは魔法がメインなんですね。武器とかで戦う系の人かと思ってました。」
見た目はすんごく筋肉押し通るぅ系なんだけどな。意外だわ。
「あー、今日は下見に来ただけから、得物はナイフくらいしか持ってきてねえんだ。本来は戦鎚が得物だ。」
ウォーハンマー使い…。
ガチの筋肉押し通るぅ系だった。
だが逆に安心したぜ…、筋肉は裏切らないな(意味違い)
「さて、そろそろ罠仕掛けに行くか。悪りぃがコウも一緒に来てくれ。ここに居ると何かあった時、すぐ戻ってこれねえんだ。討伐の時はロックスで囲い作るから安心しな。」
初 外 出 !!
「え、着いていっていいんですか?」
「高みの見物って言ったろ?特等席にエスコートするぜ、主。」
レオさんがウィンクひとつして、胸に手を当て軽くお辞儀する。映画で見た事ある紳士みたいなお辞儀だ。
クソ、めっちゃカッコいい事するじゃん!
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