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役者はかわる

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(え? ここ何処?) 

 意識を取り戻した俺は周囲を見回していく。

 白壁に銀の装飾壁時計、更には風景画が掛けられている。

 天井を見て見ると硝子細工の豪華なシャンデリアが吊るされ火が灯されていた……。

 窓から外を見ると、闇夜に真ん丸お月様が輝いていた。

(成程今、夜なのか……。何処かの城内みたいだけど? ザイアードの城内では……無い?)
 
 理由は前住んでいた城には無かった赤い絨毯が敷かれていたからだ。

 ただし、部屋の広さは前と変わらなくかなり広い。

(どゆこと? そしてここは何処だ? そして皆は?) 

 俺はフカフカのベットから慌てて飛び起きる。

(……実は今までのひっくるめて夢オチ? おいおい……取り敢えず、顔を洗って……)

 ……デジァヴ。

 いや、このフラグは回避しよう。

 俺は色々先読みして、おそるおそる髪の毛辺りを触る。

(んんんっ? つ、角が無いっ? い、いや普通はないよ? でも、この世界じゃ……あったはず)

 その時、部屋のドアが静かに開く。

(し、しまったっ、いや、ドアは空いたんだけどもっ!) 

 お、落ち着け俺。

 ここで、まさかのシツジイ?

(い、いや、そうだとしても今度はもう驚かないぞっ!) 

 俺はそんな事を考えながら咄嗟に身構える。

「あ、やっぱり、守君もいたいた!」
「な、何だ……。雫さんか……」

 そう、入ってきたのは紫色のドレスに身を纏った雫さんだったのだ。

 安心した俺は、ほっと胸をなでおろす。

(て、どーなってんだコレ?) 

 というのもね、さっきまであった俺のねじくれた角や逞しい翼はない。

 でも、雫さんの見た目は変わっていないのだ。

「えっと、もしかしてここは……?」
「そっ、ファイラス!」

(あ、ああ、成程……) 

「お、俺角と翼生えてないよね?」
「そりゃね? はい手鏡」

 手鏡で自分の状態を確認する俺。

(うん、服装は変わってない) 

 その代わりに当然、魔族のように角や翼はない。

 どうやら、今度は人に戻ったらしい。

(うーん、能力とかはどうなってんだろうな? 気になる) 

 と、その前に……。

「えっと、雫さん、学は?」

 学には色々聞いておきたいことがある。

「いるよ? 照れて部屋に入ってこないのよね」

 ああ、そうか、ドアの向こうにいるわけだなアイツ。

 じゃ、先に謝って置くか。

「学、そ、その色々すまんな。俺お前の事何も知らなくてさ……」
「……」

 俺はドア越しに回廊に佇んでいると思われる学に聞こえるように大声で話していく。

「さっきも、俺の事守ってくれたんだろ? お前は最高にカッコイイ奴だよ……だから」

 今まで通り、親友でいようぜって言おうとした瞬間だった……。

「ほ、本当か守?」

 部屋に入ってきたのは、赤いゴシック式ドレスを着た可愛らしい華奢な女の子だった⁉

「    」

 俺は事態がつかめず、頭が真っ白状態になる。

(あ、イカンイカン……)

 俺は気を取り直し、その子の胸をチラ見する。

(け、結構で、でかいっ。Cはあるな……) 

 大きさだけじゃなく、形も良くてまるで白い餅のようなそれはもう……。

 あ、いかん! 俺の下半身の尊いレーダーが元気に反応している⁈

 顔もボーイッシュだけどそこがまた可愛いし……。

 うるんだ顔と赤面した頬がまたたまらない……。

「と、尊い……。じゃなくてえ。えっと、ゴ、ゴメンこの子誰?」
「いや、だから学なんだけど?」

 雫さんは当然の様にさらっと話す。

「え、ええええええええええええっ――――――――――――⁉」 

 俺の心からの叫びがファイラス城の個室に静かに響き渡る……。
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