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情報過多でパニくる俺

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「あ、貴方もしかして、スイ……?」
「え?」

(え? まじ? このエ〇フもとい、エルフの女王らしき人ってあのスイさんなのか……? それにそうだとしたら何故彼女が此処に……? それに何故知人である俺達とコンタクトをとろうとしなかったんだ?) 

 煌びやかな青のドレスを身に纏ったエルフの統治者らしき人物はよく見ると確かにスイさんに瓜二つだった。

 当然再び会えた嬉しさもあったが、何故スイさんがファイラス残党兵と共闘しているのかなどの疑問もあった。

 俺は色んな事が沢山ありすぎて少しパニック状態だ。

「……スイさん何故此処に? それにさっきの話は……?」

 俺達はこの時、きっと困惑した顔でスイさんを見つめていたんだと思う。

 彼女の両耳が長いことからエルフの王女に転生していることは俺でも理解出来た。

 しかし、俺はスイさんの言ってる意味が全然分からなかったし、何故ここにこのタイミングで俺達の前に姿を現したのかが分からなかった。

「ごめんなさい、挨拶がまだだったわ、お久しぶりね? そして時間が勿体ないから担当直入に聞くわね。貴方達『Fプロジェクト』って知ってる?」
「……知らないな?」

 俺はあまりにも自分勝手すぎるスイさんの物言いに警戒し、言葉を慎重に選ぶ。

(時間が無いからだって? ふざけるなよ! 学や沢山の人が目の前で死んでるんだぞ!)

 それに『Fプロジェクト』? なんだそれ?

「やっぱ知らないか。……じゃ、別の質問。学さんが人造人間だということは?」
「……は?」

(? スイさんはさっきからなにを言っているんだ?) 

 正直俺にはさっきから彼女が言っている意味が分からなかった。

 分かっている事は逆にスイさんは俺達の様子を見て、何やら色々確認作業している事。

「はあ、ホントに何も知らなかったみたいね……。学さんは貴方を護衛するために『Fプロジェクト』で作られた人造人間なのよ?」
「え、仮にそれが本当だとしたら女性型のってこと?」

 雫さんはスイさんによくわからない質問をするっ……て⁉

「えっ、え? さっきからホント何の話?」

 俺は訳が分からなくなり、思わずそれが言葉に出てしまう。

 色々確認したいことが多いが、何事にも優先順序ってものがある。

 と、とりあえず学がおっぱ……じゃなくて女性かどうか確認したい。

「あ、あの、も、もしかして、あの時に雫さんが学と車で喧嘩した理由って……」
「そ、俺は女性って言われ触って確認したのよね……。見事に胸にサラシを巻いていたわ」

(な、成程……。あの時、後部座席で雫さん達がボディタッチしてイチャこらしていたように見えたのは……その確認作業ってことか) 

「いやいや、喉と声で普通一発でわかるでしょ」

 スイさんからとっても鋭い突込みが入る。

(た、確かに……でも)

「いや、俺とりあえずおっぱいで異性か識別してるから!」

 俺はスイさん達の胸をガン見し、真顔で答える。

「うわ、サイテー……」

 二人は声を綺麗に揃えて、俺を魚の腐ったような目で軽蔑する。

 何やら「ファイラスの軍」からも、ボソボソと悪口が聞こえて来るが……。

(なんだよこいつら? 人格否定か? あー、そうさ俺はおっぱい大スキーだよ! 人を悪者みたいな扱いしやがって……。まあ、この世界では魔王ですがそれが何か?) 

 しかし、それは置いといて、確かに学の着替えは今まで見たことなかったし、アレも見たことなかったな。

(あ、そーいや、学の奴、孤児院時代のあの時『俺に大事な事を言わないと何とか言ってた』けど、もしかしてそれってこの関係なのか……?) 

 や、やべーな、俺……。女性に喧嘩を教えたばかりか、女みたいな奴だなって罵倒していたよ。

 そ、そりゃ「守って」っていうわな、か弱いボッチの女性だから……。

(あ、アレ? しかも、あいつの性格がガサツになり口が悪くなったのって……⁈ う、うわあ……完全にやらかしたわ俺……) 

 暫く沈黙が流れる……というか俺はしばらく色々ショックで申し訳なくなって、地面とにらめっこしていた。

「まあ、何も知らないんだったらいいわ……。とりあえず、貴方達が持っているその腕輪を渡してよ」

 今の状況でのスイさんは申し訳ないけど全く持って信用出来ない。

 俺は雫さんとアイコンタクトを取る。

 対して静かに頷く雫さん。

(だよな……信用できるはずがない) 

「……嫌だと言ったら?」
「半殺にしてでも奪い取る……」

 まるでなにかの有名なセリフのように殺気立つセリフを放つスイさん。

 そのスイさんの声に応じるかのようにファイラスの残存兵数万が俺達の周りを取り囲み武器を構える。

「本性を現したわねスイ……」

 眉を潜めスイさんを睨め付ける雫さんだが……。

(くそっ、絶対絶命の四面楚歌だ! どうする俺、コマンド?) 
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