上 下
3 / 18

魔王転生ってマジ?

しおりを挟む
「……?」
「……おお、お気づきになりましたか」

 目を覚ますと、俺は再びベッドに横になっていた。

 どうやら、目の前にいる執事が俺を看病してくれていた模様。
 
(まじか……) 

 残念ながら夢じゃないようだ。

 睡眠を取り、現実を直視出来た俺は気を取り直す。

(よし、この際だからこの執事に色んなことを聞くことにしよう)

「じ、実は先ほど顔を洗う時に頭を打って、ちょっとした記憶喪失になってね……」

 この執事の名前は、シツジイと言う名前でとても覚えやすかった。

 ここはアデレという異世界で、どうやら俺は魔王の次男らしい。

 俺がいるこの部屋は魔王の居城内の俺の個室とのこと。

「ちなみに知っての通り、この世界は大きく三つの国に別れてますぞ……」
「そ、そうだったね……。そこら辺も、頭うって記憶が飛んでるから詳しく頼むね?」

 執事は咳払いすると、再び三国について簡略的な説明をしてくれた。

 一つは『魔族の国ザイアード』で俺らが統治している国。

 この世界の北側に存在する豪雪地帯である。

 魔族は怪我して死ぬことがなければ実質不老不死。

 闇魔法を使う攻撃に特化した種族であり、闇の力が強い高位魔族が支配する国である。

 血筋で生まれた時の闇の力の強さが決まり魔王の子は次期魔王が確定しているらしく、内乱が起きても一瞬で反乱は終わるとのこと。

 次っ!

 二つ目はこの世界の中央に存在する『人の国ファイラス』。

 イメージとして四季がある中世のヨーロッパってところか。

 これといった特徴はなく個々の力はそれほどでもないが、勇者の血筋が厄介らしく、伝説の武具を使い今まで何人もの魔王が倒されたんだとか。

 実は今の俺の両親達も何十年前に勇者達に倒されたらしく、その時に人族は多大な損害を被ったため俺達魔族とは停戦状態になっているんだとか。

 次っ!

 そして最後の三つ目は『エルフの国エルシード』、場所はこの世界の南側に存在し豊かな森に覆われている。

 エルフ達は自然と共に共存する習慣があるらしく、争いごとを極端に嫌い、森に隠れ住んでいるんだとか。

 人口は他国と比べると極端に少なく、強力な戦力はない、防御や瞬間転移などの補助系魔法が得意であり、何でも先代の王が特殊な魔法異次元結界を張ったんだそうだ。

 その関係でここ数百年、人族も魔族もエルフの国にたどり着いたものはいないらしい。

「と、以上ですじゃ……。ちなみに三国は現在は停戦中となっております……」
「な、成程。ありがとうシツジイ! そうだったよねー、なんか記憶が戻ってきたっ、ははっ……」

 めっさ大嘘こき、乾いた笑いをする俺。

(罪悪感で胸が痛い、許せシツジイ……。見た目は魔王になっているが、ハートは人間なんだ……うん) 

 てかね、見た目で気がついたけど、中世ヨーロッパの王族みたいな恰好してるんだな今の俺……。

 黒色の装飾燕尾服に胸の場所に白色の刺繍のディテールがもうね、我ながらはずかしい……。

 それは置いといて、ざっくりとした国の状況は掴めたが、さてどうしたものか。

(だってさ、俺転生したらいきなり魔王だぜ? 普通勇者とか冒険者じゃないの? しかもバチバチの争いごとの最中じゃん? どーするんだこれ) 

 ……とか考えていると、何やら周りがざわつき騒がしい。

「この感じは、マナブ様が帰ってこられましたな……」

 シツジイは白いアゴヒゲを片手で整えながら、ぼそりと呟く。

(マナブ? はて学?! いや、まさかね?)

 俺は何処かで聞いたことがある名前だなと思った。
 
 早速先ほど執事に教えてもらった魔法アイテム『魔水晶』を使うことにした俺。

 『魔水晶』とはアニメや映画で魔女が良く使っている対象を映し出すもの。

 なんでも、条件として使い手が一度映したい対象の姿を見てしまえば、魔水晶に映しだせるらしい。

 俺は学のことを思い出し念じて、ボーリングの球くらいの大きさの魔水晶を見る。

 するとなんと、魔水晶に一本の立派な角を生やし、悪魔の翼を広げ意気揚々と城に向かって飛んでくる学の姿が映しだされたのだった。

 ちな、服装は俺と同じ、ベースの色が赤色で違うくらいだ。

「ぷっ、こ、こいつ変わってねー。しかも超絶似合ってるよ!」

 その姿が似合いすぎて、笑い転げてしまう俺。

(でも、学が無事でホントに良かったな……) 

 更には、俺以外の知り合いがこの世界に転生していることに心の底から安堵する。

 という事で、数時間後……。

 ここは守の魔王部屋。

「ま、学うー……。良かったなー無事で」
「ははっ……。お前こそ……な」

 俺達はしばらく、再会の会話を楽しんでいた。

 そして、この会話で分かったことだが、この世界では不思議なことにどの種族間でも言語が統一されているらしい。

 早い話、ある程度知恵があるものなら会話が可能ってこと。

 ドラゴンでも、魔族でも、人でもだ。 

 うんまあ、異世界転生あるあるだし、正直便利に越したことないしどうでもいいかな。

 そしてこの悪友が長男と言う事実を知り驚くことになる。

(腐れ縁すぎるやろ……。うんまあ、嬉しいけど) 
しおりを挟む
1 / 3

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!


処理中です...