777番目に転生した俺の職業はチャラ男でした！ -隠しスキル777で俺は理想の彼女をゲットし大商人になり上がる-

昼から飲むビールは上手い

(さて……じゃあ冒険に出る前にホテル……じゃなかった宿をとりますか……) 

　色々リュックの中身を整理したいし、女神様が言っていた追加の道具も気になる。

　アイテムやスキルの整理整頓は冒険の基本中の基本だしね。

(と……その前に宿に泊まるお金はと……)　

　俺はリュックから1枚の金貨を取り出す。

　なるほどこのリュック、どうやら手を入れると欲しい物が自動的に出て来る仕組みになってる模様。

　それはさておき、この金貨の人物の顔……女神アステラ様にくりそつだ……。

　間違いなくこの世界の貨幣だし、女神様が初期アイテムとしてリュックに入れてくれたものとみてよいだろう……。

　そして、お金はこの金貨1枚のみの模様……。

(うーん、となると価値が分かんないし有効活用するしかないかなあ……)

　という事で、俺は迷うことなく最寄りの宿屋に向かう。

　道中で見かけるのは西洋の中世世界の服装の人々……。

　町の中では作業着を着て野菜畑を耕しているもの……果物を露店で売っている小太りのおばちゃんもいた。

　稀に、プレートメイルを着たいかつい戦士や木の杖を持った初老の魔法使いっポイ人なども散見される。

　なるほど……この感じ良く見る異世界転生の世界って事で間違いなさそうだ……。

(折角なんで色々異世界を楽しみたいし、何だかワクワクしてきたなあ！)

　そんなこんなで、数分後……二階建ての木造りの一般的な宿に到着する……。

「あの、すいませーん！」
「はいよ！」

　受付の木造りのカウンターから、初老のエプロン姿の元気なお婆さんが俺を出迎える。

　外の太陽の上り具合、それに焼き魚のいい香りが漂ってくるところを見ると昼飯の支度中だったってとこだろうな。

「これで、ここの宿に何日間泊まれます？」
「……んん？　……どれどれ？」

　おばあさんは細かった目を見開き、まじまじと俺の掌の上の金貨を見る……。

「……ふむ、この金貨の価値が分らんとは……。お前さん……さては異世界からの転生者じゃな？」
「当たりだし、やっぱ何人か此処に来たことあるんだな？」

　驚くことなく淡々と作業のように喋るお婆さんの態度に俺は軽く頷く。

「そうかやはりか……。そうじゃな、その金貨1枚で此処で好きなだけ飲み食いし、宿も泊まり放題出来るぞ？」
「じゃ、それでいいよ！」

　俺はにっこりと婆さんに笑いかける。

『①職業チャラ男スキルの内訳　【チャラ男スマイルレベル2】にアップ！　会話相手を明るくし、警戒心を解く』

(ありゃ？　何かいつの間にか派生スキルが増えていて、しかもレベルアップしたぞ？　そういや、なんか職業安定所から出る時に何か聞こえてたような？)

　

「ほ？　ほっほ……お前さん真っすぐな人間じゃなあ……。転生者にしては珍しいタイプじゃ……」
「え？　そうか？　まあ、それなりの打算計算はあるけどな！」

(やはり此処に別の転生者が来たことがあったか……)　

　珍しいタイプって言われても、比較対象がいないし分かんないからな……。

「ほっほっほ……よかろう……。じゃ早速飯を食べていけ……」
「ありがとよ婆さん！　丁度腹が減っていたところだしな！」

　その時、宿屋の外でざわつく声が聞こえてくる……。

「すまんな婆さん！　ちょっと気になるから見て来るわ！」

　俺は金貨を婆さんに手渡し、宿屋の外に小走りで出ていく。

「……ほ……なるほど、流石は777番目の選ばれし転生者、器もでかいの……。どれ支度してまっとくとしようか……」

　外に出ると角が生えている馬……あ、これユニコーンか……に乗った子供が弱った状態で跨っていた……。

(なるほど、それで周りがざわついていたわけか……)

『①職業チャラ男スキルの内訳　努力により追加スキル会得　【チャラ男の勘レベル1】？？？　頑張れチャラ男！』

(って……え？　は？　何やら新しいスキルをまた覚えたんだけど？　しかも裏スキルっぽいぞ？　な、なんで？　あ……も、もしかしてこの子供に関係しているのか……？　俺の勘だとこの手のやつは……よ、よしでは……)

「お、おい！　お前大丈夫か！」

　俺はとりあえず、ユニコーンに跨った子供に近寄り声をかける。

「ご、ご飯……お、お腹が空いて……」

(……な、なるほど確かにお腹が鳴っている音が聴こえてくる……。こ、こいつ……驚かせやがって……てっきり死にかけているものかと……。まあ、いいや……)

「うん、じゃ俺についてこい。飯おごってやる」
「た、助かります……」

　俺は弱った子供をおんぶして宿屋に連れて行く事にした。

　丁度飯食べようとしていたし、あの人の良さそうな婆さんなら文句言わんだろうしな……。

『①職業チャラ男スキルの内訳　【チャラ男の勘レベル2】にアップ！　？？？』

(やはり、コイツ何かあるな……)　

　俺は今まで培ったゲームや転生物の知識で、そう確信していた……。

　それから数分後……。

「……で、お前何処から来たんだ……？」
「うごっ、うごっ！　はむ゛がびな゛びのぐにがら……うまっ！」　

　えっと……な、何て言ってるかわかんねえ……。

　ということで、俺達は宿の食堂で昼飯を食べていた。

　俺の隣でもごもご言っているやつは、さっきユニコーンに跨っていた子供だ。

　栗色のおかっぱ頭が微笑ましい……。

　肌の色がややこげ茶色なのと耳がややとんがっているのは、そんな種族なのかもしれない。

　この感じだととりあえず、空腹が癒えるまで待った方が良さそうだ……。

　しかし、このままだと木づくりの丸テーブルに置かれた、ステーキ・シチューなど山積みされた料理……コイツ全部食っちまいそうだな……。

(本来ならこのボリューム子供の食える量じゃないんですが……？)　

　どんな異次元の胃袋してんだよコイツ……お前あれか？　女神様が作った異次元胃袋持ってんのか？　ああ……？

　という事で、無くなる前に俺は目の前のサンマの塩焼きに似た料理を食べることに……。

　フォークで魚の身を一つまみし、口に入れる……。

「お……うまいな……！」

(この魚の正式名称は知らんけど、サンマみたいで美味い！　旬の物だからか脂がのってて、シンプルに塩だけでいける！

　ということで、こりゃ、チャラ男らしく飲むしかねえ……！

「婆さん！　ビール一杯ジョッキで！」
「あいよ！」

　俺はそれを一気に飲み干す……。

　喉が鳴り、あっという間に空になるジョッキ……。

「……あーうめえ……婆さんおかわり！」
「おー！　いい飲みっぷりだねえ！　はいよ！」

(いやあ……やはり平日に昼間から飲むビールは美味しい！　ま、まあ、此処だと毎日が日曜日なんだけどね……)

『①職業チャラ男スキルの内訳　努力により追加スキル会得　【チャラ男スタイルレベル1】チャラ男道に少し近づく　頑張れチャラ男！』

　こらこら……これ努力なんか？　あと何だよ、チャラ男道って？

「……あ、僕も！」
「了解！」

　隣でステーキをもしゃもしゃ食べてる子供も、生意気にもビールを所望しようとしている。

(い、いかん、これは止めねば……色々とマズイ……)

「……あ？　お前子供だろ？」
「実は……こう見えて僕、大人なんだよね……」

「な……なに？」

(……この感じ、もしかしてあれか？　コイツ姿は子供でも、種族的に大きくなれない成人済って種族か……？　ファンタジー系の物語では常識のアレか……)

　だとすると察するになんか訳ありっぽいし、飲ませた方がいいな……。

「よし飲め！　俺のおごりだ！　飯も好きなだけ食うといい……」
「わーい、ありがとう！　いっただきまーす！」

「こらこら……今言うか？　その言葉？」

　それから数十分後……無言で飲み食いし、子供が満足したのを見計らい会話することに。

「……で、お前何処から来たんだ……？」
「さっきも言ったけど、遥か南の国からかな……？」

「……そうか」

(そんなこと言われても、俺この世界に来たばっかりで土地感さっぱりなんだよね……)

　正直ここは何処？　状態である。

　理解出来ているのは職業はチャラ男という事だけ……納得は出来ていないけどな。

　という事で……。

「なあ婆さん……ここはなんて町でどんなところなんだ？」

　そう、俺が婆さんに金貨を払ったのは、当面の宿と食事もだけど情報を集める為でもある。

(宿と情報と時間が金貨1枚で買えるなら安いもんだ……。……金貨1枚の価値がどんなもんかは、まだよくわかってないけどな)

「ここは田舎町ファースト……農業が盛んな辺鄙な町じゃよ……。ああ……そうそう……転生者連中は始まりの町と呼んでいたな……」
「なるほど、そのまんまで分かりやすいな……」

　さっきも道中で見たが、確かに畑などで農作業している連中が多かったしな……。

　広大な平原が広がり、山も海も周囲には無いので尚更だろう。

(さて、少し情報が集まったし、次のステップにいってみますか……)　

「なあ、婆さん？　この世界で俺達転生者が稼げそうな仕事って無いのか？」
「そうさなあ……手っ取り早いのが冒険者ギルドに登録して、モンスター退治やら薬草の採取やらしてギルドから報酬を貰うのが早いじゃろうなあ……」

(なるほど……基本はまんまですね……)

「えっ？　あんた転生者なのか？」

　驚いた顔した子供が、金色の瞳でこちらを見つめている……。

　澄んだその瞳に少しドキッとする俺。

『①職業チャラ男スキルの内訳　【チャラ男の勘レベル3】にアップ！　？？？』

(は？　何故？　このタイミングで？　これが何に反応しているかがよくわからん……)

　俺はシスターみたいなセクシー系がタイプなんだ。

　だからこそ、その証拠に口説き系のスキルがシスターには自動発動した。

　そして、こいつには当然発動していない……婆さんにも。

　何故ならキッズとキッズスタイルとご年配の方は俺の恋愛の対象外だからだ。

(……ま、まあ、いい……)

「え？　あ、ああ、そうだ。そういや自己紹介がまだだったな。俺の名前は杉尾……お前は？」
「僕の名前はレイン＝ノア……。略してレノアでいいよ！　ねえ杉尾！　冒険者ギルドに用事があるなら食事のお礼に連れて行くし、登録方法も教えるけどどう？」

「お？　そうか……じゃ、すまんがよろしくレノア。てかお前、この町のギルドの場所わかるの？」

(確かコイツも流れ者のハズなんだけど？)

「うん、そこ！　ここの隣！」

　俺はレノアが指さした方向を見る……。

　なるほど、確かに食堂の窓の外には【冒険者ギルド】と書かれたでっかい木製の看板がかかげられた立派なレンガで出来た建物が見えていた。