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夏のビールは上手い
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アルカディアアドベンチャーでの戦闘後……俺は瑠璃さんの自宅に来ていた。
ちな、カチカチの青カニコアモンスターは時間をかけ何とか撃破する事が出来た。
あの戦闘を通して、「クロノ小隊は強敵用の火力不足が課題」ということが各自理解出来、解散となったのだ。
「……で、相談とは?」
瑠璃さんは白いソファーに深く腰かけ、美味しそうに缶ビールを飲んでいる。
いわゆるくつろぎ状態ってやつだ。
俺もその隣で、ジンジャーエールを美味しく飲ませて頂いている。
瑠璃さん曰く、甘さを除けばビールに近い風味だそうな……。
それはそれとして……。
「あ、あの……実はですね……」
俺はさっきの戦闘中に考えていた内容、すなわち自分の歌のマンネリ化を瑠璃さんに相談する。
「なるほど、成長の壁に当たったからか……」
瑠璃さんは、手のひらサイズのガラスコップに手慣れた動作でビールを注いでいく……。
程よい感じで注がれたビールの量……更には白い泡が何だかとても美味しそうだ。
いやまあ、飲んだことないから分からないんだけどね……。
「君はそして私達もだが、日々間違いなく強くなっている。そうだな例えるなら、君の天使の刻印に使える刻印量も最初はこのコップに注がれたビールの三分の一くらいの量だった……」
「はい……でも……今はその三倍くらいの量。今のコップの量にはなってますよね」
そう、瑠璃さんの言う通り、天使の刻印に使える量は昔に比べ増えている……。
だからこそ、先程の持久戦でもデバフ効果を切らさず俺達は勝つことが出来た……。
豪山パイセンは間違いなく、持久力・火力共に向上している。
優も天使の刻印に使える量が増えているし、【神氷の盾】という中々壊れた技も覚えている。
桃井さんも回復能力が向上している。
瑠璃さんは今回の戦闘では、見守っていただけだから正直わかんないかな……。
分かっている事は、まだ何か技を隠し持ってそう……。
これは俺のゲーマーの感だけどね……。
だからこそ、俺は何か知ってそうな瑠璃さんにアドバイスを求めてここに来た。
「……そうだな、クロノ様の影であり、君の上司である私にアドバイスを求めるのは正しい。だが……これは課題だ……」
「……え? か……課題ですか?」
俺はすんなり答えを頂けると思っていたから、その言葉にすげー困惑する。
じゃあ、此処に来たのは無駄骨……? ま、マジ……?
「そうだな……そのまま帰すのは訪ねてきた礼に反するだろうからヒントだけあげようかな……」
「……あ、ありがとうございます!」
ホッとし、俺はジンジャーエールをグイッと飲みほす。
ああ……ホント、運動後の炭酸ジュースは美味いな……。
「君はビールは飲んだ事ないだろうしな……。そうだな、そのジンジャーエールは何故上手いと思う?」
「え? ……えっと……?」
よくわからない瑠璃さんの例え話に更に困惑し、パニくる俺。
なんで、美味しいかって……あんまりそんな事深く考えたことないよな……。
と言っても、回答しないと先に進まないしな……。
「一つはジンジャーの上手さですね」
「そうだな……ジンジャーエールだしな……。更にそれを深堀りしてみろ」
え? そもそも論かあ……となれば。
「ジンジャーの苦みですね」
「正解だ。そのドライなまでの苦みがジンジャーエールの上手さなんだよ。私の飲んでいるこのビールもそうだ。地上にいた頃はなんでも夏の定番だったそうだな」
……一体瑠璃さんは何を伝えようとしているんだろうか……?
俺にはさっぱり分からない……。
「そうだな……じゃ、もう一つ。更にジンジャーエールが美味しい理由を言ってみろ」
俺は、瑠璃さんの目の前にあるガラスコップに注がれたシュワシュワのビールと俺のジンジャーエールを見比べる。
ええと共通点は……。
「えっと……炭酸ですよね?」
「当たりだ……そのままだと美味しさはそこまでない、相乗効果があってこそ美味しさは際立つ。覚えておけ」
瑠璃さんはそう言うと、目の前の泡立つビールを美味しそうに喉を鳴らしながら飲み干す。
「……は、はあ……」
どうでもいいけど、飲み物の美味しさの講習会に来たわけじゃないんですが……。
俺は心の中で瑠璃さんに突っ込みを入れていたりする。
まあ、多分、瑠璃さんの事だから全く無意味な事はさせていないだろうけど。
「では、最後にもう一つ、それらを美味しくしている要素があるが君はソレがわかるか……?」
「……え? ええ……?」
さ、さっぱり、わ、わかんねえ……。
「……分らんか?」
「ええ……」
正直本当に分からない……。
一体なんだろうか……?
「……ああ、ビールを飲むと暑くなるな……」
「……そ、そうなんですね」
正直俺はビールを飲んだことがないので、そこら辺の状態が良く分からない……。
俺は瑠璃さんが自らの手で顔に風を送る姿を見て、ふと気が付く。
……あ、も、もしかして……。
というか、何気に俺……最初から気が付いてたよな?
「……もしかして、運動後や暑さ、更には喉の渇き……とかですか?」
「……ふふ……気が付いたか……ご名答だ……。という事で、私はビールが更に美味しく飲める」
「……あ、つまみとかもか……」
「よく出来たな……。そうだ、言いたかったことは環境や相性の良い食事などだな」
なるほど……言葉にだして整理してみると分かりやすいな……。
「あ、ありがとうございました!」
「いいか覚えておけ……。技というものはな、基本が理解出来、研磨した先で習得できるものだ」
……⁉ な、なるほど……。
それで、こんなまわりくどい会話を瑠璃さんは……。
「という事でだ私だけじゃなく、他にも相談してこい……。情報やアイディアは多い方がいいだろう?」
「……あ、はいそうですね! し、失礼します!」
俺の脳裏に育児休暇中のもう一人の師匠の顔が思い浮かび、早速電話してお邪魔することに……。
と、いう事で、数十分後……俺は力丸さんの自宅に来ていた!
「力丸さんお久しぶりです!」
「ああ……」
俺は律さんの事を考え、外で買って来た果物ゼリーとか体によさそうなものを居間のテーブルに置く。
それはそうとして、力丸さんは一人でソファーに腰かけビール缶片手にくつろいでる状態だ。
そして、その顔は物凄く赤らんでおり、例えるならゆでだこ状態だ……。
「え、えっと……あの? 律さんは?」
「入院中……」
「……え?」
も、もしかして……?
「……そんな顔するな……いい方だ……」
優しい笑みを浮かべ、ビールを飲み干す力丸さん。
「あ……じゃあ……」
「そうだ……さっき病院に見舞いに行ってきたが、間もなく生まれるらしい……」
な、なんだ……それで飲んでいたのか……。
それを酒のつまみに力丸さんは気持ちよくなっていたわけだな……。
推察するにきっと近くの病院では飲めないから、一時帰宅して家で飲んでたって事か……。
これは納得である……し、力丸さんが帰宅していたのはとてもラッキーである。
「……で、今日は何の用かな?」
「えっとですね……実は……」
俺は瑠璃さんに話した先程の内容を、力丸さんにも話す。
「……なるほどね。うーんしかし、こればっかりは俺も瑠璃さんと同意見なんだよな」
「ええ……そんなあ」
「というのも俺は印のコントロールとか剣技なら教えれるけど、歌は専門外だからね」
「……ですよね」
いっそのこと天使クロノに聞きたいのだが、瑠璃さん曰く、今は力を温存しているから無理だとか……。
く、くっそー……無駄骨かあ……。
ま、まあ……おめでたい話が聞けたからそれでいいか……。
と、とほー……。
「あの無紅君……歌は社長がスペシャリストなの忘れてないか?」
「……あ」
そ、そうだった……。
「……お土産のお礼に明日以降で段取りして上げるから行って来なよ」
「あ、ありがとうございます!」
俺は嬉しくて力丸さんに深く頭を下げる。
力丸さんの本名は国津力丸……。
よくよく考えると国津那岐社長とは遠縁だから、顔が効くんだよな……。
一社員の俺では軽々しく相談にいけないし、これは助かる……。
「まあ、社長も喜ぶと思うよ……? なんてったって、レッドサンの戦力アップとVの売り上げの両方に繋がりそうな案件だしね……。それに俺と同じで教えたがりな一面もあるし……」
「な、なるほど……」
そうか……そうだよな……。
じゃ、安心して相談にいけるな!
何かきっかけがつかめそうなこの流れに、思わず俺は心の中でガッツポーズを取る!
ちな、カチカチの青カニコアモンスターは時間をかけ何とか撃破する事が出来た。
あの戦闘を通して、「クロノ小隊は強敵用の火力不足が課題」ということが各自理解出来、解散となったのだ。
「……で、相談とは?」
瑠璃さんは白いソファーに深く腰かけ、美味しそうに缶ビールを飲んでいる。
いわゆるくつろぎ状態ってやつだ。
俺もその隣で、ジンジャーエールを美味しく飲ませて頂いている。
瑠璃さん曰く、甘さを除けばビールに近い風味だそうな……。
それはそれとして……。
「あ、あの……実はですね……」
俺はさっきの戦闘中に考えていた内容、すなわち自分の歌のマンネリ化を瑠璃さんに相談する。
「なるほど、成長の壁に当たったからか……」
瑠璃さんは、手のひらサイズのガラスコップに手慣れた動作でビールを注いでいく……。
程よい感じで注がれたビールの量……更には白い泡が何だかとても美味しそうだ。
いやまあ、飲んだことないから分からないんだけどね……。
「君はそして私達もだが、日々間違いなく強くなっている。そうだな例えるなら、君の天使の刻印に使える刻印量も最初はこのコップに注がれたビールの三分の一くらいの量だった……」
「はい……でも……今はその三倍くらいの量。今のコップの量にはなってますよね」
そう、瑠璃さんの言う通り、天使の刻印に使える量は昔に比べ増えている……。
だからこそ、先程の持久戦でもデバフ効果を切らさず俺達は勝つことが出来た……。
豪山パイセンは間違いなく、持久力・火力共に向上している。
優も天使の刻印に使える量が増えているし、【神氷の盾】という中々壊れた技も覚えている。
桃井さんも回復能力が向上している。
瑠璃さんは今回の戦闘では、見守っていただけだから正直わかんないかな……。
分かっている事は、まだ何か技を隠し持ってそう……。
これは俺のゲーマーの感だけどね……。
だからこそ、俺は何か知ってそうな瑠璃さんにアドバイスを求めてここに来た。
「……そうだな、クロノ様の影であり、君の上司である私にアドバイスを求めるのは正しい。だが……これは課題だ……」
「……え? か……課題ですか?」
俺はすんなり答えを頂けると思っていたから、その言葉にすげー困惑する。
じゃあ、此処に来たのは無駄骨……? ま、マジ……?
「そうだな……そのまま帰すのは訪ねてきた礼に反するだろうからヒントだけあげようかな……」
「……あ、ありがとうございます!」
ホッとし、俺はジンジャーエールをグイッと飲みほす。
ああ……ホント、運動後の炭酸ジュースは美味いな……。
「君はビールは飲んだ事ないだろうしな……。そうだな、そのジンジャーエールは何故上手いと思う?」
「え? ……えっと……?」
よくわからない瑠璃さんの例え話に更に困惑し、パニくる俺。
なんで、美味しいかって……あんまりそんな事深く考えたことないよな……。
と言っても、回答しないと先に進まないしな……。
「一つはジンジャーの上手さですね」
「そうだな……ジンジャーエールだしな……。更にそれを深堀りしてみろ」
え? そもそも論かあ……となれば。
「ジンジャーの苦みですね」
「正解だ。そのドライなまでの苦みがジンジャーエールの上手さなんだよ。私の飲んでいるこのビールもそうだ。地上にいた頃はなんでも夏の定番だったそうだな」
……一体瑠璃さんは何を伝えようとしているんだろうか……?
俺にはさっぱり分からない……。
「そうだな……じゃ、もう一つ。更にジンジャーエールが美味しい理由を言ってみろ」
俺は、瑠璃さんの目の前にあるガラスコップに注がれたシュワシュワのビールと俺のジンジャーエールを見比べる。
ええと共通点は……。
「えっと……炭酸ですよね?」
「当たりだ……そのままだと美味しさはそこまでない、相乗効果があってこそ美味しさは際立つ。覚えておけ」
瑠璃さんはそう言うと、目の前の泡立つビールを美味しそうに喉を鳴らしながら飲み干す。
「……は、はあ……」
どうでもいいけど、飲み物の美味しさの講習会に来たわけじゃないんですが……。
俺は心の中で瑠璃さんに突っ込みを入れていたりする。
まあ、多分、瑠璃さんの事だから全く無意味な事はさせていないだろうけど。
「では、最後にもう一つ、それらを美味しくしている要素があるが君はソレがわかるか……?」
「……え? ええ……?」
さ、さっぱり、わ、わかんねえ……。
「……分らんか?」
「ええ……」
正直本当に分からない……。
一体なんだろうか……?
「……ああ、ビールを飲むと暑くなるな……」
「……そ、そうなんですね」
正直俺はビールを飲んだことがないので、そこら辺の状態が良く分からない……。
俺は瑠璃さんが自らの手で顔に風を送る姿を見て、ふと気が付く。
……あ、も、もしかして……。
というか、何気に俺……最初から気が付いてたよな?
「……もしかして、運動後や暑さ、更には喉の渇き……とかですか?」
「……ふふ……気が付いたか……ご名答だ……。という事で、私はビールが更に美味しく飲める」
「……あ、つまみとかもか……」
「よく出来たな……。そうだ、言いたかったことは環境や相性の良い食事などだな」
なるほど……言葉にだして整理してみると分かりやすいな……。
「あ、ありがとうございました!」
「いいか覚えておけ……。技というものはな、基本が理解出来、研磨した先で習得できるものだ」
……⁉ な、なるほど……。
それで、こんなまわりくどい会話を瑠璃さんは……。
「という事でだ私だけじゃなく、他にも相談してこい……。情報やアイディアは多い方がいいだろう?」
「……あ、はいそうですね! し、失礼します!」
俺の脳裏に育児休暇中のもう一人の師匠の顔が思い浮かび、早速電話してお邪魔することに……。
と、いう事で、数十分後……俺は力丸さんの自宅に来ていた!
「力丸さんお久しぶりです!」
「ああ……」
俺は律さんの事を考え、外で買って来た果物ゼリーとか体によさそうなものを居間のテーブルに置く。
それはそうとして、力丸さんは一人でソファーに腰かけビール缶片手にくつろいでる状態だ。
そして、その顔は物凄く赤らんでおり、例えるならゆでだこ状態だ……。
「え、えっと……あの? 律さんは?」
「入院中……」
「……え?」
も、もしかして……?
「……そんな顔するな……いい方だ……」
優しい笑みを浮かべ、ビールを飲み干す力丸さん。
「あ……じゃあ……」
「そうだ……さっき病院に見舞いに行ってきたが、間もなく生まれるらしい……」
な、なんだ……それで飲んでいたのか……。
それを酒のつまみに力丸さんは気持ちよくなっていたわけだな……。
推察するにきっと近くの病院では飲めないから、一時帰宅して家で飲んでたって事か……。
これは納得である……し、力丸さんが帰宅していたのはとてもラッキーである。
「……で、今日は何の用かな?」
「えっとですね……実は……」
俺は瑠璃さんに話した先程の内容を、力丸さんにも話す。
「……なるほどね。うーんしかし、こればっかりは俺も瑠璃さんと同意見なんだよな」
「ええ……そんなあ」
「というのも俺は印のコントロールとか剣技なら教えれるけど、歌は専門外だからね」
「……ですよね」
いっそのこと天使クロノに聞きたいのだが、瑠璃さん曰く、今は力を温存しているから無理だとか……。
く、くっそー……無駄骨かあ……。
ま、まあ……おめでたい話が聞けたからそれでいいか……。
と、とほー……。
「あの無紅君……歌は社長がスペシャリストなの忘れてないか?」
「……あ」
そ、そうだった……。
「……お土産のお礼に明日以降で段取りして上げるから行って来なよ」
「あ、ありがとうございます!」
俺は嬉しくて力丸さんに深く頭を下げる。
力丸さんの本名は国津力丸……。
よくよく考えると国津那岐社長とは遠縁だから、顔が効くんだよな……。
一社員の俺では軽々しく相談にいけないし、これは助かる……。
「まあ、社長も喜ぶと思うよ……? なんてったって、レッドサンの戦力アップとVの売り上げの両方に繋がりそうな案件だしね……。それに俺と同じで教えたがりな一面もあるし……」
「な、なるほど……」
そうか……そうだよな……。
じゃ、安心して相談にいけるな!
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