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第三章 アオイと過去と存在意義と
#40 企み
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※三人称視点
王都の中央に建つ王城を囲むように上級貴族などが住む高級住宅街が広がっている。その一角、とある屋敷にて悪意ある者たちによる会合が開かれようとしていた。
魔術による結界と物理的な防音が施された部屋に男二人と女一人が集う。まあ、魔術による結界も物理的な防音もアオイには通用しなかったが、この世界の人間では盗聴などは不可能であろう。
そのうち、でっぷりと太った腹を揺らして男がもう一人のひょろひょろとやせ細った男へと話しかける。
「どうだ?うまくいきそうか?」
「いや、全くだめだ。そもそもアイツらに近づけない」
「近づけないとはどういうことだ。お前らはこういうことのプロであろうが!」
太った男は痩せた男の言葉に怒鳴り声をあげる。その声に痩せた男は目を細め、太った男のことをその目に捉える。太った男は痩せた男の様子に体を固くする。
「いいか、話を最後まで聞け。続けるぞ。結論から言えば、アイツらの探知能力は異常だ。アイツらが孤児院に行った初日に機会を窺って部下にあとをつけさせたんだが、全員が気絶させられた。部下の話によれば男のほうが一度勧告をしたあと二度目の勧告とともに向けられた殺気で気絶したらしいが、当人たちの話が大分飛躍していて要領を得ない。とりあえず男のほうに何かされて気絶したのは確かのようだが、実際何があったのかは不明だ。その後、男が別行動の時を狙って女の方をつけさせたんだが、ある一定まで近づくと死を覚悟するような寒気がして、それ以上近づくと殺気で気絶させられたそうだ。こっちはまだ何をされたのか把握できているだけマシだな」
ここまで話すと痩せた男は話すのをやめ、自らのアイテムボックスから取り出した水を口に含む。すると、女の方が話しかける。
「男の方はどうしたんだい?まさかそのままほっといたわけじゃあるまいし」
「ああ、まあな。」
「どうした?やけに歯切れが悪いじゃないか」
「男が一人のときに後をつけさせたが、こちらが認識した直後に気絶させられたんだ」
「どういうことだい?」
「いや、うまく説明できないのだが、おそらくこちらが男を対象と認識した瞬間に気絶させられているのだろう。どんな距離にいても気配を探ろうとしたときには気絶させられたからな」
「つまり、監視できないどころか意識を向けると場所まで特定され何をされたかわからないうちに気絶させられると。なんなんだい、その化け物は?」
「俺も知らん。というか、文句はコイツに言ってくれ。もとはコイツの依頼なのだから」
痩せた男はそう言いながら太った男のことを指差す。
「何を言う!そもそも貴様が・・・」
「別に文句を言うつもりはないさ。ただ私は今回のことから降りさせてもらうよ」
「なに!」
「素直に降りれると思っているのか?」
女の言葉に部屋の空気がピリつく。太った男は声を荒げ、痩せた男は女のことを睨みつける。女はそんなこと、どうともないとでも言うようにそのまま話し続ける。
「別にあんたたちの承認なんて得ようと思ってないよ。私が勝手に抜けるだけさ。あんたたちに私を止められるとも思えないしね」
そう言うと女は立ち上がり部屋のドアへと向かう。それを妨害しようと痩せた男がナイフを投げるが、女はそれを素手ではじく。それに太った男は驚愕し、痩せた男は舌打ちをする。女はドアを開けると男たちを一瞥し、金輪際私に関わらないように、と言い残して立ち去っていく。
と、ここでナビーから声がかかり葵の観察は終わりとなった。
王都の中央に建つ王城を囲むように上級貴族などが住む高級住宅街が広がっている。その一角、とある屋敷にて悪意ある者たちによる会合が開かれようとしていた。
魔術による結界と物理的な防音が施された部屋に男二人と女一人が集う。まあ、魔術による結界も物理的な防音もアオイには通用しなかったが、この世界の人間では盗聴などは不可能であろう。
そのうち、でっぷりと太った腹を揺らして男がもう一人のひょろひょろとやせ細った男へと話しかける。
「どうだ?うまくいきそうか?」
「いや、全くだめだ。そもそもアイツらに近づけない」
「近づけないとはどういうことだ。お前らはこういうことのプロであろうが!」
太った男は痩せた男の言葉に怒鳴り声をあげる。その声に痩せた男は目を細め、太った男のことをその目に捉える。太った男は痩せた男の様子に体を固くする。
「いいか、話を最後まで聞け。続けるぞ。結論から言えば、アイツらの探知能力は異常だ。アイツらが孤児院に行った初日に機会を窺って部下にあとをつけさせたんだが、全員が気絶させられた。部下の話によれば男のほうが一度勧告をしたあと二度目の勧告とともに向けられた殺気で気絶したらしいが、当人たちの話が大分飛躍していて要領を得ない。とりあえず男のほうに何かされて気絶したのは確かのようだが、実際何があったのかは不明だ。その後、男が別行動の時を狙って女の方をつけさせたんだが、ある一定まで近づくと死を覚悟するような寒気がして、それ以上近づくと殺気で気絶させられたそうだ。こっちはまだ何をされたのか把握できているだけマシだな」
ここまで話すと痩せた男は話すのをやめ、自らのアイテムボックスから取り出した水を口に含む。すると、女の方が話しかける。
「男の方はどうしたんだい?まさかそのままほっといたわけじゃあるまいし」
「ああ、まあな。」
「どうした?やけに歯切れが悪いじゃないか」
「男が一人のときに後をつけさせたが、こちらが認識した直後に気絶させられたんだ」
「どういうことだい?」
「いや、うまく説明できないのだが、おそらくこちらが男を対象と認識した瞬間に気絶させられているのだろう。どんな距離にいても気配を探ろうとしたときには気絶させられたからな」
「つまり、監視できないどころか意識を向けると場所まで特定され何をされたかわからないうちに気絶させられると。なんなんだい、その化け物は?」
「俺も知らん。というか、文句はコイツに言ってくれ。もとはコイツの依頼なのだから」
痩せた男はそう言いながら太った男のことを指差す。
「何を言う!そもそも貴様が・・・」
「別に文句を言うつもりはないさ。ただ私は今回のことから降りさせてもらうよ」
「なに!」
「素直に降りれると思っているのか?」
女の言葉に部屋の空気がピリつく。太った男は声を荒げ、痩せた男は女のことを睨みつける。女はそんなこと、どうともないとでも言うようにそのまま話し続ける。
「別にあんたたちの承認なんて得ようと思ってないよ。私が勝手に抜けるだけさ。あんたたちに私を止められるとも思えないしね」
そう言うと女は立ち上がり部屋のドアへと向かう。それを妨害しようと痩せた男がナイフを投げるが、女はそれを素手ではじく。それに太った男は驚愕し、痩せた男は舌打ちをする。女はドアを開けると男たちを一瞥し、金輪際私に関わらないように、と言い残して立ち去っていく。
と、ここでナビーから声がかかり葵の観察は終わりとなった。
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