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第二章 王都と孤児院

幕間3 やりすぎクリエーター

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「な、何ですか?これは・・・」

 私、ラーシャ・アーレントは、いま孤児院であろう建物の前で立ち尽くしています。四日前までは一緒に来ていたものの、アオイさんの言っていた公衆浴場が完成した時にそのあまりの出来に驚き精神的に疲れてしまったので、ここのところはお姉ちゃんやシャルさん、ミリィさん、それとレナさんとナナさんでホテルの方に手伝いに行っていました。そして今、孤児院が完成したということで私たちはアオイさんに案内していただいてますが、正直ここまでのものになるとは予想していませんでした。もちろん、共同浴場が完成した段階である程度の覚悟はしていましたが、外観と庭の時点でそれを大きく超えるようなものになってしまっています。王族であるシャルさんでも今回のことは予想外だったようで、私と同じように呆然と孤児院の外見についてアオイさんの説明を聞いています。
 というか、おそらくレナさん以外はみんな程度の差はあれ、予想外の事態ことになっていると思います。レナさんだけは別ですね。今も「流石お兄ちゃん!」とか言っていますし。まあ、義理ということですが、アオイさんの妹なので慣れているのでしょう。半分違う感情のような気もしないでもないですが。


 * * * * * *


 今度は室内へと移動して、それぞれの部屋を見ながらアオイさんが熱く説明されているのですが、何なのでしょうか、ここは。少なくとも公衆浴場の時点で王城を越える価値を持っていたのは間違いありません。ただ、全てが完成した状態で改めて案内されると、王城ですら比較対象となりえないものとなってしまっていることがよくわかります。本当に孤児院として使ってしまって大丈夫なのでしょうか。アオイさんに
好意で作っていただいたものですが、ここまですごいものとなると孤児院として使用しているだけで嫌がらせなどを受けそうです。ただでさえ孤児院というのはいろいろと問題が生じやすいのに、この施設を使い始めたらもっと様々な問題が生じそうで怖いです。
 と、こんなことを考えていたのですが、アオイさんの一言でそんな心配は吹き飛んでしまいました。何でもこの敷地内の警備は万全であり、もし嫌がらせを受けても対応出来る範囲で神獣として対応してもらえるのだそうです。例えば、物の購入を拒否されたり、ぼったくられたりした場合にはアオイさんとレナさんの伝手で用意していただけるそうです。
 アオイさんとレナさんなら安心して任せられると思っていたのですが、「あとはザーシャとラーシャに任せようと思ってる」との一言でそんなものは崩れ去ってしまいました。えっ。私たちがやるんですか?・・・適任でしょって言われてもどうしようもないんですけど・・・ま、まあもういいです。孤児院のことならばよく知っていますから適任であるということも理解しています。でも。でも、です。そんなことをいきなりいうのはどうかと思うのですよ。せめてそんな確定事項のようにではなく、相談として伝えてほしかったです。まあ、そんなことを言ってももう過ぎたことなのでどうにもなりませんが・・・
 そんなことを考えている間にもアオイさんの案内は進んでいきます。音楽室や図書室など王城でなければつくられないであろう部屋には驚きました。特に体育館という室内修練場とは別で用意された部屋には見慣れない道具や機械が並んでいて、そのどれもが世界でここにしかないようなものでした。詳しく話を聞くと全てアオイさんが作ったものらしいです。
 アオイさんの案内はまだ続きます。そして最後に金属製の扉の前にたどり着きました。これまでの雰囲気には似つかないその扉は金庫やお金の集計を行う機械がある部屋の入口だそうで、この孤児院の中でも最も警備の厳しい場所ということです。中も見せていただきましたが、中にはいった瞬間に目の前の巨大な金庫に目を引かれます。私とほぼ同じ高さで横幅も一般的なベットの長辺ほどの長さがあるこの金庫は見たことのない黒っぽい色をしています。これは素材の色だそうで、なんとアダマンタイト製!世界でもっとも固く加工のしずらい鉱物で、その特性から採掘すらも難しく王族でもなかなか手に入れることのできないそれをこれほどの物に加工してしまうとは。改めてアオイさんは神獣であると思わせられます。ただ、ついていく私たちからするともう少しヒトの常識の範囲内に抑えてほしいと思ってしまいますが・・・
 おそらくこれからもこの兄妹に振り回されるのでしょう。その時、私たちが常識を捨てられていることを願うばかりです。
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