異世界如何様(チート)冒険記 ~地球で平凡だった僕が神の記憶を思い出して世界を元に戻すまで~

Condor Ukiha

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第二章 王都と孤児院

#32 風呂(温泉)編

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 間に合った!!

―――*―――*―――


 次の日、孤児院の隣に建てた建物の内装を進める。この建物は通りに面して建っており、孤児院がここの奥に建っている。この建物の特徴は通りに面したところが日本家屋のような木の柱に白い壁、瓦葺きで大きな木製の両開き引き戸が取り付けられていることだろう。
 そう、この建物こそが今回改築をすることを思いついた要因である大衆浴場・・・・である。一階にはロビーと休憩所に食堂、従業員向けの設備全て、水の濾過循環設備や加温設備などの必要設備が設置されている。二階には更衣室と温水プールがあり、そして三階には脱衣所とお風呂がある。お風呂は内湯と外湯に分かれていて外からは見えないように腰のあたりまでの隙間のない柵と軽い認識阻害結界(意識してもそこに人がいる程度しかわからないもの)が設置してある。
 お湯は地下に設置してある貯水槽から汲み上げて加熱している。貯水槽の水はガホンフニク山の湧き水を転移させてまかない、そのほかに温泉もガホンフニク山に湧いていたのでそれも転送させてお風呂に源泉かけ流しにしている。
 下水に関してはまた後で説明しよう。

「ここはすごいわね。今更だけど、本当にただで孤児院が使っていいの?」

「ああ、もちろん。というか、孤児院のために作ったのに使ってもらえないとか悲しすぎる」

「でも、王城よりもすごいものを孤児院で使ってるなんてある意味で不安になるのも分かります。私は王族ですけど、それでも神獣様が自分や親しい者のために作ったものを使うなんて緊張しますもの」

「だよねー。この建物って普通に王城よりもすごいもんねー」

「・・・そうなのか」

「そうですよ。そもそも神獣様の作ったモノは利用用途が不明でも国宝になっているんです。こんな未知の技術のふんだんにつまったもので、作るところを最初から最後まで見ることのできたこれの価値はもうすでに計り知れないものになってます」

 完成した公衆浴場を案内している途中でザーシャが不安そうな顔でこちらに尋ねる。僕は何を当たり前なことを聞いてくるのだろうかと思ったが、僕とレナの作ったものは必ずと言っていいほど国宝級のものになるらしい。というか、国宝級ってシャルに言われるとすごく実感がわくから不思議だ。

「レナ、僕は知らなかったんだけどそうなの?」

「私にも分からないよ・・・でも、前に朱雀が作ったっていうなんだかわからないものが特別に公開されるって大騒ぎになっていた気がする」

 僕は朱雀とは面識がない。地球の知識をそのままここにあてはめられるのならば、朱雀は四獣の一つで南方を守護する神獣のはず。その姿は赤い鳥と伝えられていた。

『こちらでも赤い鳥ですよ、マスター』

 こっちでも同じように赤い鳥なのね。調べる前に教えてくれてありがとう。・・・ん?なんも感じなかったけど、君、誰?

『私はMWOSマスターワールドオペレーティングシステム付属ナビゲーションAIです。準備が完了したのでこれからマスターの補佐をさせていただきます』

 ナビゲーションAI?僕専任のナビゲーターっていう認識であってる?

『あっていると思います。正確には世界の管理補佐兼世界書庫アカシックレコード管理者ですけど。詳しくは先代であるレナ様から聞くといいでしょう。私より詳しく説明して下さるとおもいます』

 なんでレナのほうが詳しく説明できるの?勝手なイメージではあるけどAIは自分で自分のことを詳しく説明できると思ったんだけど。

『それは私が生まれたてだからです。MWOSマスターワールドオペレーティングシステム付属ナビゲーションAIは管理者が変わるごとに古いモノは旧管理者に付いていき、新しいモノが新管理者の補佐に付きます。なので、おそらくレナ様のナビゲーションAIのほうが詳しく説明できると思われます』

 なるほど、後でレナに聞いてみよう。

「お兄ちゃん、大丈夫?」

「ん?」

「さっきから何か考え事をしているような、ボーとしているような微妙な顔をしてたから」

「ああ、いや。なんでもない」

そうか、ナビゲーションAI・・・長いな。ナビゲーションAIさん、ナビーって呼んでもいい?

『安直な呼び方ですが、まあいいでしょう』

 ナビーとの会話は聞こえていないから周囲にはボーッとしているように見えるのか。これからは高速思考下でのみ使用して通常思考では使用しないことにしよう。並列思考を持っていても通常思考でいくつもタスクを並べる同時に会話するより高速で処理できることはさっさと処理してできないものを通常思考でコツコツと潰していくひとつずつ会話する方が負担が少ないからな。

「それよりも、今日完成させたここは孤児院のお風呂となるとともに、公衆浴場としても稼働することになるけどその準備は進んでる?」

「孤児院のみんなは年長の子が中心となって準備を進めています。ただ、受付や掃除などの子供でもできることはいいんですが、お湯の循環装置や料理などは大人がやらなければならないんです。しかし、現状の職員の負担を考えるとこれ以上負担を増やすわけにもいかず、かといって人を増やすのも厳しいのでそこが解決しないと・・・」

「なるほどね。料理の手伝いや機械の整備の補佐なら子どもたちでもできるんじゃない?大人はしばらくは僕が手伝うから軌道に乗ってきたら卒業した人たちに戻ってきてもらうなり孤児院を卒業する子の働く先にできたりしないかな?」

 こう言うとそれにシャルが反応する。まあ、この反応は予想していたのだが。

「あら?孤児院の卒業生たちだけですか?専門の知識を持った人を雇ったほうがいいのでは?」

「もともと僕は孤児院を卒業しても生き残れる人は半分しかいないと聞いてその解決のためにここを作ったんだ。酷いようだけど、僕は孤児院の人を優先させるし、その他の人への対応もしっかりと考えてあるから付き合いのある人を先にしてもいいと思うんだ・・・っと、こんなところで立ち話っていうのもあれだから食堂に移動して座って話そうか」

 今僕たちがいるのは露天風呂の間にある通路のど真ん中。こんなところで話すことではないし、長くなると思われるので僕は室内で多くの椅子が設置してある食堂で続けることを提案する。

「そうですね。話の続きは食堂で聞きましょうか」

 ということで、僕たちは食堂へと移動する。


―――*―――*―――

 次回も来週の日曜日の15時に投稿したいと思います。・・・間に合わなかったら、ごめんなさい。
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