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第二章 王都と孤児院
#27 孤児院へ
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「ほー。ここが孤児院か・・・」
あのあと、お城で昼食をいただいてシャルやミリィも加えた全員でラーシャたちが育ったという孤児院に来た。因みにシャルとミリィは僕達と同じような町娘の服に身を包んで帽子を被って粗末ながら変装している。そこは王都の端のほうにあった。だが、そこはもう限界を迎えた古い建物が大小二つとよく言って広々とした庭、悪く言うと草ぼうぼうでその一角が畑となっただだっ広い野原が広がっていた。よく見ると小さいほうは教会のようだ。とはいえすでにボロボロで、今にも壊れるのではないかと思ってしまう。入り口の扉を観察すればどのぐらいの頻度で使用しているのかはなんとなくわかるが、少なくともここ一週間以上は使用していないのではないだろうか。
と、入口で突っ立っていると大きいほうの建物のドアが開く。こちらの建物も所々修繕した跡はあるものの迫りくる老朽化には耐えられずあちこちが限界を迎えてしまっている。開いた扉から出てきたのは初老の女性であった。二人を見るとこちらに駆け寄ってくる。
「おや?そこに立っているのはザーシャにラーシャじゃないかい?」
「ええ。久しぶり、シスターカルラ」
「お久しぶりです。なかなか帰ってくることができなくてごめんなさい」
「そんなこと気にしなくていいよ。元気な顔さえ見せてくれたらね」
三人は久しぶりの再会に盛り上がる。後で話を聞いたら孤児院を出てから一回しか戻っていなかったらしく一年ぶりの再会だったのだそうだ。僕はレナたちに声をかけてから建物の周りを見て回る。王都を囲む城壁の近くにあり周囲と比べ広めの土地に建てられている。周囲の建物も古くからあるのか修繕を重ねているが孤児院に比べ状態はいい。やはり孤児院は資金難なのであろうか。そもそも土地の広さに対して使えている広さが狭く無駄が多いように思える。そういえばこちらでは風呂に入る習慣がなく、庶民は水浴びや体を濡らしたタオルで拭くぐらいである。・・・ふむ。公衆浴場を作って孤児院で経営してもらえば孤児院の金策にも庶民の衛生対策にもなり孤児の仕事対策にもなる。幸いにも土地は余っているのだから、僕が全て作ってしまえば初期費用もほとんどかからない。提案だけしてみるか。言うだけならタダだし。そんなことを考えながら正面へと戻る。
「やっと戻ってきた。いったいどこをほっつき歩いていたのよ?」
「ちょっと思いついた事があってね。」
そういいながらカルラさんの方をみる。そして手を差し出しながら「初めまして、新名葵と言います。どうぞよろしく」 と言った。
「ああ、ラーシャたちから話は聞いているよ。随分と変わったいい人らしいじゃあないか。ああ、自己紹介がまだだったね。私はカルラ。この孤児院の院長をしている。二人の育て親でもあるよ」
カルラさんはそう言いながら僕と握手を交わす。そしてお互いに笑ってから早速僕は本題を切り出す。
「出会って早々こんなことを聞くのもあれですが、カルラさん、この孤児院の財務状況ってどんな感じなんですかね?」
そう聞くとカルラさんは暗い顔をしながら孤児院の現状を教えてくれた。何でも近年は国や貴族からの寄付が減っていて、それでも孤児は減らないのでぎりぎりでやっていたんだそうだ。そこに今回のネウイのスタンピードで必需品である食塩の値段が上がってしまった。それが追い風になって完全に破綻しまったそうだ。それでもここを卒業した人たちの支援や自分たちで畑を耕しているおかげで今いる子たちだけは何とか食いつないでいくことはできそうではあるが、その卒業した人たちも決して余裕があるわけではないのでその中から支援してもらっている現状を心苦しく思っているんだとか。というわけで、さっき思いついたことをこの場でさらっと話す。
「とりあえずここを改築しませんか?」
『はい?』
あのあと、お城で昼食をいただいてシャルやミリィも加えた全員でラーシャたちが育ったという孤児院に来た。因みにシャルとミリィは僕達と同じような町娘の服に身を包んで帽子を被って粗末ながら変装している。そこは王都の端のほうにあった。だが、そこはもう限界を迎えた古い建物が大小二つとよく言って広々とした庭、悪く言うと草ぼうぼうでその一角が畑となっただだっ広い野原が広がっていた。よく見ると小さいほうは教会のようだ。とはいえすでにボロボロで、今にも壊れるのではないかと思ってしまう。入り口の扉を観察すればどのぐらいの頻度で使用しているのかはなんとなくわかるが、少なくともここ一週間以上は使用していないのではないだろうか。
と、入口で突っ立っていると大きいほうの建物のドアが開く。こちらの建物も所々修繕した跡はあるものの迫りくる老朽化には耐えられずあちこちが限界を迎えてしまっている。開いた扉から出てきたのは初老の女性であった。二人を見るとこちらに駆け寄ってくる。
「おや?そこに立っているのはザーシャにラーシャじゃないかい?」
「ええ。久しぶり、シスターカルラ」
「お久しぶりです。なかなか帰ってくることができなくてごめんなさい」
「そんなこと気にしなくていいよ。元気な顔さえ見せてくれたらね」
三人は久しぶりの再会に盛り上がる。後で話を聞いたら孤児院を出てから一回しか戻っていなかったらしく一年ぶりの再会だったのだそうだ。僕はレナたちに声をかけてから建物の周りを見て回る。王都を囲む城壁の近くにあり周囲と比べ広めの土地に建てられている。周囲の建物も古くからあるのか修繕を重ねているが孤児院に比べ状態はいい。やはり孤児院は資金難なのであろうか。そもそも土地の広さに対して使えている広さが狭く無駄が多いように思える。そういえばこちらでは風呂に入る習慣がなく、庶民は水浴びや体を濡らしたタオルで拭くぐらいである。・・・ふむ。公衆浴場を作って孤児院で経営してもらえば孤児院の金策にも庶民の衛生対策にもなり孤児の仕事対策にもなる。幸いにも土地は余っているのだから、僕が全て作ってしまえば初期費用もほとんどかからない。提案だけしてみるか。言うだけならタダだし。そんなことを考えながら正面へと戻る。
「やっと戻ってきた。いったいどこをほっつき歩いていたのよ?」
「ちょっと思いついた事があってね。」
そういいながらカルラさんの方をみる。そして手を差し出しながら「初めまして、新名葵と言います。どうぞよろしく」 と言った。
「ああ、ラーシャたちから話は聞いているよ。随分と変わったいい人らしいじゃあないか。ああ、自己紹介がまだだったね。私はカルラ。この孤児院の院長をしている。二人の育て親でもあるよ」
カルラさんはそう言いながら僕と握手を交わす。そしてお互いに笑ってから早速僕は本題を切り出す。
「出会って早々こんなことを聞くのもあれですが、カルラさん、この孤児院の財務状況ってどんな感じなんですかね?」
そう聞くとカルラさんは暗い顔をしながら孤児院の現状を教えてくれた。何でも近年は国や貴族からの寄付が減っていて、それでも孤児は減らないのでぎりぎりでやっていたんだそうだ。そこに今回のネウイのスタンピードで必需品である食塩の値段が上がってしまった。それが追い風になって完全に破綻しまったそうだ。それでもここを卒業した人たちの支援や自分たちで畑を耕しているおかげで今いる子たちだけは何とか食いつないでいくことはできそうではあるが、その卒業した人たちも決して余裕があるわけではないのでその中から支援してもらっている現状を心苦しく思っているんだとか。というわけで、さっき思いついたことをこの場でさらっと話す。
「とりあえずここを改築しませんか?」
『はい?』
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