異世界如何様(チート)冒険記 ~地球で平凡だった僕が神の記憶を思い出して世界を元に戻すまで~

Condor Ukiha

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第二章 王都と孤児院

#25 対面

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 開かれた扉の先、一段高くなったところにひときわ豪華な椅子がある。そこに座っているのがシャルの父にしてブルーラーク王国第十七代国王ゲオルグ八世。その左(王様から見ると右)に立っているのが王妃のミレーヌ妃、その反対に立っているのが王太子でシャルの弟にあたるエリオドロ殿下だ。そこから下がってレッドカーペットの左右に各大臣、位の高い貴族家の順で並んでいる。
 そんなレッドカーペットをレナ、ラーシャ、ザーシャ、シャル、ミリィ、僕の六人でゆっくりと進む。ミリィはここにいなくてもいいし、シャルは本来エリオドロ殿下の隣にいるはずなんだけど、当人たちの強い要望で僕らと一緒にここにいる。シャルたちに教わった位置まで来たらシャルとミリィは跪いた。だけど、僕らはただ突っ立て前を見ている。ただ、まあ。そんな状態であることに文句を言うバカもいるもので。

「貴様ら、王の御前であるぞ。無礼であろう」

 でっぷりと太った男が僕らを怒鳴りつける。と、その場が固まる。まあ、僕とレナが神獣であることは事前に知らされているはずなので、こんなこと言って機嫌を損ねて報復でもされたらどうしてくれるんだ、と言うのがこの場にいる全員の心情であろう。

「ねえ、君には私達が何に見えてるの?」

 その言葉に反応してレナが周囲を威圧しながらそいつを睨む。そのせいでただでさえ悪化していた空気がさらに悪化した。目の前の王でさえすでにあきらめ顔になっている。だが、シャル、ミリィ、ザーシャ、ラーシャの四人は男に呆れた目を向けてそれから僕を見て苦笑する。まあ、馬車のなかでいろいろと話して僕らの事をだいぶ知った彼女たちには僕たちがこれからどんな選択をするのかもなんとなくわかるのだろう。

「レナ、やめて」

「でも―――」

「やめなさい」

「―――はい・・・」

 レナがシュンとなって落ち込んじゃったから、後でなにかしてやろうっと。だけど、今はこの男だ。データ持ってきたけど、こいつがゴーベック侯爵で間違いない。いろいろと裏で画策してたようだし、僕たちがどんな存在なのか忘れられないようその心の奥底に恐怖と共に植え付けてやる。

「さて、今一度聞く。お前は我らを何と心得る?」

 僕はレナが周囲まで威圧してしまったので悪くなった空気を解消するためにレナの頭をポンポンと撫で、自分の雰囲気を緩ませる。その後、ゴーベックだけを威圧して再びレナと同じことを聞く。だが、ゴーベックは威圧のせいで「あ」とか、「うっ」とかしか声として出ないのでまともに答えられない。

「ものすら言えぬか・・・まあ、よい。自身の勘違いすらわからない者に責められるなど不愉快だ。この場から消えよ」

 僕がそう言うやいなやゴーベックはこの部屋から城の前に転移させられた。僕もこんな空気を長く続けたくはなかったのでさっさと終わらせたが、本人は納得していない様子だったので警戒だけはしておこう。

「さて、馬鹿がいなくなったところで話の続きをしようか」

 そう言って僕は満面の笑みを浮かべる。そもそも僕はシャルのお父さんと話に来たんだからね。あんな馬鹿のことは忘れるに限る。まあ、周りの人間は国王含めて呆然としているのだが。

「あー、申し訳ありませんがこのまま続けるのは少し難しいので、また別の機会でもよろしいでしょうか?それと今更にはなりますが、このような場所で対面することとなってしまった事、謝罪いたします。お恥ずかしい話となりますが、貴族も全員入れる部屋が此処しかなかったのです。そのせいで、あの者のような愚か者を生み出してしまい不快な思いをさせててしまった事も、重ねて謝罪いたします。申し訳ございません」

 少しばかり間があいてから国王の一段下のすぐ隣にいた白髪の男性がそう言ってきた。

「謝罪は受け入れる。それでも、僕たちは今回のことを忘れたりはしないけど。それにさ、もともと僕はシャルのお父さんに会って欲しいって願いを聞いてここに来た。つまり国王と話せればそれでいいんだ。だから別に家族を除くその他有象無象いてもいなくても僕の態度とか感情とかは変わらない。というか、わざわざ用意してくれたところ申し訳ないけど、ぶっちゃけいらないかな。また馬鹿たちの相手するのも面倒くさいし」

 ここまで言うと周りがかなりざわついた。こうなるだろうとは思っていたが、予想よりもざわつきが大きい。まあ、自分たちのことを有象無象と言われたのでざわつくのもわからなくはないが、ここは王の前であり王が何も言わなくとも静かにしているべきであろう。ただこれが王の力の弱まっているこの国の現状なのかもしれないが。

「静かにしてくれる?・・・・・・うん、ありがとう。話の続きをするけど、今ここにも僕らのことを舐めてるとしか考えられない人がけっこういるんだよね。んで、毎回その人たちの相手をするのもこっちとしてみれば面倒くさいし、話が通用しないから大変なんだよね。だから王家の人さえいれば僕は構わないし、大勢を集めるにしてもここで力関係をはっきりさせておきたいな」

「アオイさん、一回戻りましょう?今ここで何を言っても通じません」

「・・・なるほど。確かに通じないみたいだね。じゃ、僕らは退室させてもらうよ」

 どうにも収集がつかないのでまた僕が威圧しながら話をやめさせる。まだ僕らのことを舐めている人がいるって言ったときに上級貴族たちの中でわかっている人たちがこんだけされてまだわかってないやつがいるのかって雰囲気になって、それでも雰囲気が変わらず偉そうな貴族を見てこいつらかって睨んでいた。相手は全く気づいていなかったが。力関係をはっきりさせておきたいって言ったところで国王周辺の人の顔が青くなって僕を見てきたりもしたが、シャルの一言で解散になった。
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