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第二章 王都と孤児院
#23 王都ベネートル
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「それじゃあ、僕らはそろそろ降りようか」
門の手前で馬車が止まったので僕はそう切り出した。
「えっ?」
なぜ、そんなに絶望した顔で僕を見るんだ?
「だって王女の馬車に赤の他人が乗っていたら騒ぎになるでしょ」
「いえ!ぜひ乗っていって下さい!」
「でも・・・」
「大丈夫だからさー。ほら一緒に行こー?」
シャルが熱烈に一緒に行こうと僕の腕を掴む。それでも僕が渋っていると反対の腕を掴む。そして左右から伝わる感触。や、柔らかい。なんで女の子ってこんなにいい匂いがするんだろう?
「むー・・・お姉ちゃんは私のだもん!」
「うわっ・・・とと。はいはい、僕はレナから離れていかない限りずっと一緒にいるよ」
レナが正面から抱きついてくる。僕を見上げてくるのでついつい頭をなでてしまう。もうかわいいなぁ。そう言えば、レナも目立たないけどけっこうあるんだね。僕はしばらく右から王女、左から公爵令嬢、そして正面からはレナに抱きつかれていることになる。そして、最悪なことにその間に城門についてしまい、馬車のドアがノックされる。そして、すぐにドアが開く。
「はぁ・・・」
「あー・・・」
「あら・・・」
「むー・・・」
『タイミングが悪い((ねー)ですね)』
気づいたときには四人ともが同じ言葉を口にしていた。ただし、他の三人は残念がるように言ったのに、僕の口から出たのは諦めの言葉に近いものだった。
「え・・・はっ、失礼しました」
「待ちなさい。もう過ぎてしまったことで出ていかれても困ります。これからは気を付けるようにしなさい」
呼びに来た騎士は最初は呆けていたもののすぐに持ち直し去ろうとするが、それを姫モードのシャルが引き止める。というか、彼はしっかりとノックしていたし、メイドさんの返事を待って開けていたから、なんの非もないんだけどね。まあ、あの瞬間にドアを開けたのが彼の運の尽きだった。ただ、それだけだ。
「それで、何があったのですか?」
「はっ、国王陛下が今回の件でぜひ古龍様にお会いしたいとのことでしたのでアオイ様を伺った次第であります」
話を聞いたシャルがこちらを向き僕を見上げる。
「アオイ様、城まで一緒に来ていただいてもよろしいですか?」
「よろしいも何も、もともと国王に会うためにここまで来たから向こうから会いたいって言ってもらえるのは大歓迎だよ」
「分かりました。では、このまま城にお連れすると国王に伝えてください」
「はっ、古龍様が王女様と共に城に来訪すると連絡いたします」
そう言うと彼は颯爽と去っていった。
さて、馬車から見る王都は華やかで、そして喧騒に包まれていた。だが、それは上辺だけに過ぎないのだそうだ。王都には選民思考が根強く残っていて上級貴族が幅を利かせており、また貧富の差もひどく貧民街、いわゆるスラムには犯罪組織やならず者が集まっており浅いところならまだしも奥深くへ行くものはいない。そして貧民街は年々拡大していてその対策が大きな問題となっている、とシャルとミリィが教えてくれた。
その間に馬車は大通りを物々しく通り過ぎていく。やがて城の全体像が見えてくる。そばから見る王城は白を基調とした堂々たるもので、それはこの国の権威と栄華を他国及び自国民に知らしめるにたるものであった。
そのうちに馬車は城内へと入り城の入口の前で停止する。
「着いたのか・・・」
「ええ。アオイ様、早速ではありますが我が父、第十六代国王と会っていただけませんでしょうか」
「ああ、構わない。行こうか」
さあ、国王とのご対面だ。どんなことを話すのか、今から楽しみである。
門の手前で馬車が止まったので僕はそう切り出した。
「えっ?」
なぜ、そんなに絶望した顔で僕を見るんだ?
「だって王女の馬車に赤の他人が乗っていたら騒ぎになるでしょ」
「いえ!ぜひ乗っていって下さい!」
「でも・・・」
「大丈夫だからさー。ほら一緒に行こー?」
シャルが熱烈に一緒に行こうと僕の腕を掴む。それでも僕が渋っていると反対の腕を掴む。そして左右から伝わる感触。や、柔らかい。なんで女の子ってこんなにいい匂いがするんだろう?
「むー・・・お姉ちゃんは私のだもん!」
「うわっ・・・とと。はいはい、僕はレナから離れていかない限りずっと一緒にいるよ」
レナが正面から抱きついてくる。僕を見上げてくるのでついつい頭をなでてしまう。もうかわいいなぁ。そう言えば、レナも目立たないけどけっこうあるんだね。僕はしばらく右から王女、左から公爵令嬢、そして正面からはレナに抱きつかれていることになる。そして、最悪なことにその間に城門についてしまい、馬車のドアがノックされる。そして、すぐにドアが開く。
「はぁ・・・」
「あー・・・」
「あら・・・」
「むー・・・」
『タイミングが悪い((ねー)ですね)』
気づいたときには四人ともが同じ言葉を口にしていた。ただし、他の三人は残念がるように言ったのに、僕の口から出たのは諦めの言葉に近いものだった。
「え・・・はっ、失礼しました」
「待ちなさい。もう過ぎてしまったことで出ていかれても困ります。これからは気を付けるようにしなさい」
呼びに来た騎士は最初は呆けていたもののすぐに持ち直し去ろうとするが、それを姫モードのシャルが引き止める。というか、彼はしっかりとノックしていたし、メイドさんの返事を待って開けていたから、なんの非もないんだけどね。まあ、あの瞬間にドアを開けたのが彼の運の尽きだった。ただ、それだけだ。
「それで、何があったのですか?」
「はっ、国王陛下が今回の件でぜひ古龍様にお会いしたいとのことでしたのでアオイ様を伺った次第であります」
話を聞いたシャルがこちらを向き僕を見上げる。
「アオイ様、城まで一緒に来ていただいてもよろしいですか?」
「よろしいも何も、もともと国王に会うためにここまで来たから向こうから会いたいって言ってもらえるのは大歓迎だよ」
「分かりました。では、このまま城にお連れすると国王に伝えてください」
「はっ、古龍様が王女様と共に城に来訪すると連絡いたします」
そう言うと彼は颯爽と去っていった。
さて、馬車から見る王都は華やかで、そして喧騒に包まれていた。だが、それは上辺だけに過ぎないのだそうだ。王都には選民思考が根強く残っていて上級貴族が幅を利かせており、また貧富の差もひどく貧民街、いわゆるスラムには犯罪組織やならず者が集まっており浅いところならまだしも奥深くへ行くものはいない。そして貧民街は年々拡大していてその対策が大きな問題となっている、とシャルとミリィが教えてくれた。
その間に馬車は大通りを物々しく通り過ぎていく。やがて城の全体像が見えてくる。そばから見る王城は白を基調とした堂々たるもので、それはこの国の権威と栄華を他国及び自国民に知らしめるにたるものであった。
そのうちに馬車は城内へと入り城の入口の前で停止する。
「着いたのか・・・」
「ええ。アオイ様、早速ではありますが我が父、第十六代国王と会っていただけませんでしょうか」
「ああ、構わない。行こうか」
さあ、国王とのご対面だ。どんなことを話すのか、今から楽しみである。
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