26 / 50
第二章 王都と孤児院
#22 王女と公爵令嬢と龍(会話)
しおりを挟む
―――コンコン
僕は聞き耳を立てながら馬車の戸を叩く。この馬車に近づいたあたりから中の会話が聞こえてきている。女の子3人でいろいろと盛り上がっているようだ。女三人寄れば姦しいとはよく言ったものである。実際に馬車の外まで漏れ聞こえているからな。
「はい、どうしましたか?」
僕がドアをたたいてからすぐにメイド服の女性がドアを開けた。メイド服の女性は僕のことを見て少し警戒しているようだ。目つきが僕を目に入れた時から鋭くなっている。
「妹がここにいるらしいんだけど」
「ああ、アオイ様ですね。レナ様なら・・・」
「お兄ちゃん!呼んだ?」
メイド服の女性の言葉をさえぎって後ろからレナが顔を出す。いや、人の話をさえぎってはだめでしょう。だんだんレナが幼児退行しているような気もしないでもないな。とりあえず女性に謝ってからレナにこれまでの顛末を話す。
「それじゃあ、もう安全なんだよね?」
「とりあえずは、かな」
「えっ?なんで?」
「人の執念は恐ろしいからねぇ。何をしでかすのか分かったもんじゃないから。とりあえずは、ここは安全だと思うよ」
まあ、どんなことを仕掛けてきても対応して見せるけど。そんな話をしていたら長くなっていたようで中から声がかかった。
「レナさん、まだお話は終わりませんの?」
そういいながら顔を見せたのは少し前に僕と話したばかりの彼女だった。
―――*―――*―――
「改めまして、ブルーラーク王国第二王女のシャルロッテ・ブルーラークと申します」
「初めまして。ボルトン公爵家が三女、ミリアンヌ・フォン・ボルトンと申します。先ほどは救っていただき誠にありがとうございました」
「いえいえ、たまたま通りかかっただけですし、そんなに感謝されるようなことではないですよ。申し遅れました。私は葵と申します」
「再度となりますが、私はレナと言います」
「一応言うと人間ではなく古龍です。なので人の礼儀はあまりわからないので粗相があるかもしれませんがそこは大目に見てもらえると助かります」
あれから僕らはザーシャ、ラーシャと共に馬車の中へと移動して(メイド服の女性は反対したが、彼女が事情を説明して押し切った)、馬車に乗っているメイドさんが入れてくれたお茶を供に自己紹介から会話を再開した。僕が古龍だと明かした時は二人とも驚いたようで目を丸くしていた。
それからは二人から質問攻めにされた。“なんで急にいなくなったのか”とか、“普段はどうしているのか”とか。本当にいろいろなことを聞かれた。最後には普段の言葉使いで喋るまでに仲良くなった。
「今更だけど男と一緒の馬車に乗ってよかったの?」
「・・・そういえば、少しまずいですね。平民や準貴族までならば特に問題ありませんが、公爵令嬢、ましてや王女様が神獣とはいえ男性と同じ馬車に乗ったとなれば騒がれるのは必至だと思います」
「んー・・・きっと大丈夫だと思うよー」
「このままアオイさんに娶っていただければ問題ありません」
「ミリィにシャルも、急にそんなこと言われても困るよ」
何気ない僕の質問で一瞬、時が止まった。ラーシャが答えを教えてくれたけど、ミリアンヌがそれを否定する。理由を尋ねる前にシャルロッテが思った通りのことを答えてくれた。ですよねー・・・騒がれるのに問題ない理由ってお付き合いしてます、ぐらいしか思いつかないよねー。
「ああ、それなら僕が女の子になればいいのか」
すっかり忘れてた。今の僕は性別すら変えることができるんだった。
『えっ?』
「どう?服装なんかも一緒に変えてみたんだけど?」
僕はその場で一回転する。・・・ん?おかしいな?反応がない。おかしな格好だっただろうか?
『かっ』
「か?」
『かわいい~』
はい~?
「アオイさん、その服どこで手に入れたんですか?」
「どこでって自分の魔力を消費して作ったんだけど・・・」
「アオイ!それどうやったの!?というか、あたしよりも胸があるんだけど!」
「え?あ、いや、ね。ははは・・・」
その後、しばらくの間全員から質問攻めにされ、そんなことを話しているうちに王都の城門までたどり着いた。
―――*―――*―――
まだ二章は続きますがパート1 旅路 は、これで終わりとなります。次のパートはすでに書きあがっていますので、休むことなく週一更新でいきたいと思います。これからも異世界如何様冒険記をよろしくお願いします。
2022/2/6
シャルの口調を変更
僕は聞き耳を立てながら馬車の戸を叩く。この馬車に近づいたあたりから中の会話が聞こえてきている。女の子3人でいろいろと盛り上がっているようだ。女三人寄れば姦しいとはよく言ったものである。実際に馬車の外まで漏れ聞こえているからな。
「はい、どうしましたか?」
僕がドアをたたいてからすぐにメイド服の女性がドアを開けた。メイド服の女性は僕のことを見て少し警戒しているようだ。目つきが僕を目に入れた時から鋭くなっている。
「妹がここにいるらしいんだけど」
「ああ、アオイ様ですね。レナ様なら・・・」
「お兄ちゃん!呼んだ?」
メイド服の女性の言葉をさえぎって後ろからレナが顔を出す。いや、人の話をさえぎってはだめでしょう。だんだんレナが幼児退行しているような気もしないでもないな。とりあえず女性に謝ってからレナにこれまでの顛末を話す。
「それじゃあ、もう安全なんだよね?」
「とりあえずは、かな」
「えっ?なんで?」
「人の執念は恐ろしいからねぇ。何をしでかすのか分かったもんじゃないから。とりあえずは、ここは安全だと思うよ」
まあ、どんなことを仕掛けてきても対応して見せるけど。そんな話をしていたら長くなっていたようで中から声がかかった。
「レナさん、まだお話は終わりませんの?」
そういいながら顔を見せたのは少し前に僕と話したばかりの彼女だった。
―――*―――*―――
「改めまして、ブルーラーク王国第二王女のシャルロッテ・ブルーラークと申します」
「初めまして。ボルトン公爵家が三女、ミリアンヌ・フォン・ボルトンと申します。先ほどは救っていただき誠にありがとうございました」
「いえいえ、たまたま通りかかっただけですし、そんなに感謝されるようなことではないですよ。申し遅れました。私は葵と申します」
「再度となりますが、私はレナと言います」
「一応言うと人間ではなく古龍です。なので人の礼儀はあまりわからないので粗相があるかもしれませんがそこは大目に見てもらえると助かります」
あれから僕らはザーシャ、ラーシャと共に馬車の中へと移動して(メイド服の女性は反対したが、彼女が事情を説明して押し切った)、馬車に乗っているメイドさんが入れてくれたお茶を供に自己紹介から会話を再開した。僕が古龍だと明かした時は二人とも驚いたようで目を丸くしていた。
それからは二人から質問攻めにされた。“なんで急にいなくなったのか”とか、“普段はどうしているのか”とか。本当にいろいろなことを聞かれた。最後には普段の言葉使いで喋るまでに仲良くなった。
「今更だけど男と一緒の馬車に乗ってよかったの?」
「・・・そういえば、少しまずいですね。平民や準貴族までならば特に問題ありませんが、公爵令嬢、ましてや王女様が神獣とはいえ男性と同じ馬車に乗ったとなれば騒がれるのは必至だと思います」
「んー・・・きっと大丈夫だと思うよー」
「このままアオイさんに娶っていただければ問題ありません」
「ミリィにシャルも、急にそんなこと言われても困るよ」
何気ない僕の質問で一瞬、時が止まった。ラーシャが答えを教えてくれたけど、ミリアンヌがそれを否定する。理由を尋ねる前にシャルロッテが思った通りのことを答えてくれた。ですよねー・・・騒がれるのに問題ない理由ってお付き合いしてます、ぐらいしか思いつかないよねー。
「ああ、それなら僕が女の子になればいいのか」
すっかり忘れてた。今の僕は性別すら変えることができるんだった。
『えっ?』
「どう?服装なんかも一緒に変えてみたんだけど?」
僕はその場で一回転する。・・・ん?おかしいな?反応がない。おかしな格好だっただろうか?
『かっ』
「か?」
『かわいい~』
はい~?
「アオイさん、その服どこで手に入れたんですか?」
「どこでって自分の魔力を消費して作ったんだけど・・・」
「アオイ!それどうやったの!?というか、あたしよりも胸があるんだけど!」
「え?あ、いや、ね。ははは・・・」
その後、しばらくの間全員から質問攻めにされ、そんなことを話しているうちに王都の城門までたどり着いた。
―――*―――*―――
まだ二章は続きますがパート1 旅路 は、これで終わりとなります。次のパートはすでに書きあがっていますので、休むことなく週一更新でいきたいと思います。これからも異世界如何様冒険記をよろしくお願いします。
2022/2/6
シャルの口調を変更
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜
ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。
社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。
せめて「男」になって死にたかった……
そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった!
もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる