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第二章 王都と孤児院
#22 王女と公爵令嬢と龍(会話)
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―――コンコン
僕は聞き耳を立てながら馬車の戸を叩く。この馬車に近づいたあたりから中の会話が聞こえてきている。女の子3人でいろいろと盛り上がっているようだ。女三人寄れば姦しいとはよく言ったものである。実際に馬車の外まで漏れ聞こえているからな。
「はい、どうしましたか?」
僕がドアをたたいてからすぐにメイド服の女性がドアを開けた。メイド服の女性は僕のことを見て少し警戒しているようだ。目つきが僕を目に入れた時から鋭くなっている。
「妹がここにいるらしいんだけど」
「ああ、アオイ様ですね。レナ様なら・・・」
「お兄ちゃん!呼んだ?」
メイド服の女性の言葉をさえぎって後ろからレナが顔を出す。いや、人の話をさえぎってはだめでしょう。だんだんレナが幼児退行しているような気もしないでもないな。とりあえず女性に謝ってからレナにこれまでの顛末を話す。
「それじゃあ、もう安全なんだよね?」
「とりあえずは、かな」
「えっ?なんで?」
「人の執念は恐ろしいからねぇ。何をしでかすのか分かったもんじゃないから。とりあえずは、ここは安全だと思うよ」
まあ、どんなことを仕掛けてきても対応して見せるけど。そんな話をしていたら長くなっていたようで中から声がかかった。
「レナさん、まだお話は終わりませんの?」
そういいながら顔を見せたのは少し前に僕と話したばかりの彼女だった。
―――*―――*―――
「改めまして、ブルーラーク王国第二王女のシャルロッテ・ブルーラークと申します」
「初めまして。ボルトン公爵家が三女、ミリアンヌ・フォン・ボルトンと申します。先ほどは救っていただき誠にありがとうございました」
「いえいえ、たまたま通りかかっただけですし、そんなに感謝されるようなことではないですよ。申し遅れました。私は葵と申します」
「再度となりますが、私はレナと言います」
「一応言うと人間ではなく古龍です。なので人の礼儀はあまりわからないので粗相があるかもしれませんがそこは大目に見てもらえると助かります」
あれから僕らはザーシャ、ラーシャと共に馬車の中へと移動して(メイド服の女性は反対したが、彼女が事情を説明して押し切った)、馬車に乗っているメイドさんが入れてくれたお茶を供に自己紹介から会話を再開した。僕が古龍だと明かした時は二人とも驚いたようで目を丸くしていた。
それからは二人から質問攻めにされた。“なんで急にいなくなったのか”とか、“普段はどうしているのか”とか。本当にいろいろなことを聞かれた。最後には普段の言葉使いで喋るまでに仲良くなった。
「今更だけど男と一緒の馬車に乗ってよかったの?」
「・・・そういえば、少しまずいですね。平民や準貴族までならば特に問題ありませんが、公爵令嬢、ましてや王女様が神獣とはいえ男性と同じ馬車に乗ったとなれば騒がれるのは必至だと思います」
「んー・・・きっと大丈夫だと思うよー」
「このままアオイさんに娶っていただければ問題ありません」
「ミリィにシャルも、急にそんなこと言われても困るよ」
何気ない僕の質問で一瞬、時が止まった。ラーシャが答えを教えてくれたけど、ミリアンヌがそれを否定する。理由を尋ねる前にシャルロッテが思った通りのことを答えてくれた。ですよねー・・・騒がれるのに問題ない理由ってお付き合いしてます、ぐらいしか思いつかないよねー。
「ああ、それなら僕が女の子になればいいのか」
すっかり忘れてた。今の僕は性別すら変えることができるんだった。
『えっ?』
「どう?服装なんかも一緒に変えてみたんだけど?」
僕はその場で一回転する。・・・ん?おかしいな?反応がない。おかしな格好だっただろうか?
『かっ』
「か?」
『かわいい~』
はい~?
「アオイさん、その服どこで手に入れたんですか?」
「どこでって自分の魔力を消費して作ったんだけど・・・」
「アオイ!それどうやったの!?というか、あたしよりも胸があるんだけど!」
「え?あ、いや、ね。ははは・・・」
その後、しばらくの間全員から質問攻めにされ、そんなことを話しているうちに王都の城門までたどり着いた。
―――*―――*―――
まだ二章は続きますがパート1 旅路 は、これで終わりとなります。次のパートはすでに書きあがっていますので、休むことなく週一更新でいきたいと思います。これからも異世界如何様冒険記をよろしくお願いします。
2022/2/6
シャルの口調を変更
僕は聞き耳を立てながら馬車の戸を叩く。この馬車に近づいたあたりから中の会話が聞こえてきている。女の子3人でいろいろと盛り上がっているようだ。女三人寄れば姦しいとはよく言ったものである。実際に馬車の外まで漏れ聞こえているからな。
「はい、どうしましたか?」
僕がドアをたたいてからすぐにメイド服の女性がドアを開けた。メイド服の女性は僕のことを見て少し警戒しているようだ。目つきが僕を目に入れた時から鋭くなっている。
「妹がここにいるらしいんだけど」
「ああ、アオイ様ですね。レナ様なら・・・」
「お兄ちゃん!呼んだ?」
メイド服の女性の言葉をさえぎって後ろからレナが顔を出す。いや、人の話をさえぎってはだめでしょう。だんだんレナが幼児退行しているような気もしないでもないな。とりあえず女性に謝ってからレナにこれまでの顛末を話す。
「それじゃあ、もう安全なんだよね?」
「とりあえずは、かな」
「えっ?なんで?」
「人の執念は恐ろしいからねぇ。何をしでかすのか分かったもんじゃないから。とりあえずは、ここは安全だと思うよ」
まあ、どんなことを仕掛けてきても対応して見せるけど。そんな話をしていたら長くなっていたようで中から声がかかった。
「レナさん、まだお話は終わりませんの?」
そういいながら顔を見せたのは少し前に僕と話したばかりの彼女だった。
―――*―――*―――
「改めまして、ブルーラーク王国第二王女のシャルロッテ・ブルーラークと申します」
「初めまして。ボルトン公爵家が三女、ミリアンヌ・フォン・ボルトンと申します。先ほどは救っていただき誠にありがとうございました」
「いえいえ、たまたま通りかかっただけですし、そんなに感謝されるようなことではないですよ。申し遅れました。私は葵と申します」
「再度となりますが、私はレナと言います」
「一応言うと人間ではなく古龍です。なので人の礼儀はあまりわからないので粗相があるかもしれませんがそこは大目に見てもらえると助かります」
あれから僕らはザーシャ、ラーシャと共に馬車の中へと移動して(メイド服の女性は反対したが、彼女が事情を説明して押し切った)、馬車に乗っているメイドさんが入れてくれたお茶を供に自己紹介から会話を再開した。僕が古龍だと明かした時は二人とも驚いたようで目を丸くしていた。
それからは二人から質問攻めにされた。“なんで急にいなくなったのか”とか、“普段はどうしているのか”とか。本当にいろいろなことを聞かれた。最後には普段の言葉使いで喋るまでに仲良くなった。
「今更だけど男と一緒の馬車に乗ってよかったの?」
「・・・そういえば、少しまずいですね。平民や準貴族までならば特に問題ありませんが、公爵令嬢、ましてや王女様が神獣とはいえ男性と同じ馬車に乗ったとなれば騒がれるのは必至だと思います」
「んー・・・きっと大丈夫だと思うよー」
「このままアオイさんに娶っていただければ問題ありません」
「ミリィにシャルも、急にそんなこと言われても困るよ」
何気ない僕の質問で一瞬、時が止まった。ラーシャが答えを教えてくれたけど、ミリアンヌがそれを否定する。理由を尋ねる前にシャルロッテが思った通りのことを答えてくれた。ですよねー・・・騒がれるのに問題ない理由ってお付き合いしてます、ぐらいしか思いつかないよねー。
「ああ、それなら僕が女の子になればいいのか」
すっかり忘れてた。今の僕は性別すら変えることができるんだった。
『えっ?』
「どう?服装なんかも一緒に変えてみたんだけど?」
僕はその場で一回転する。・・・ん?おかしいな?反応がない。おかしな格好だっただろうか?
『かっ』
「か?」
『かわいい~』
はい~?
「アオイさん、その服どこで手に入れたんですか?」
「どこでって自分の魔力を消費して作ったんだけど・・・」
「アオイ!それどうやったの!?というか、あたしよりも胸があるんだけど!」
「え?あ、いや、ね。ははは・・・」
その後、しばらくの間全員から質問攻めにされ、そんなことを話しているうちに王都の城門までたどり着いた。
―――*―――*―――
まだ二章は続きますがパート1 旅路 は、これで終わりとなります。次のパートはすでに書きあがっていますので、休むことなく週一更新でいきたいと思います。これからも異世界如何様冒険記をよろしくお願いします。
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