25 / 50
第二章 王都と孤児院
#21 龍と飛竜、そして管理者の責務
しおりを挟む
「まずは一番でかいのから片しますか」
―――そういえば最近独り言が増えたなぁ。
なんてくだらないことを考えながら森の中心に向かう。そこには体長8メートルほどの飛竜がいた。僕の存在におびえることなくそこにいるのは強者の証か、それとも力の差も分からぬ愚者の証か。僕のことをなめているのだろう。遊んでやるという雰囲気がビンビンと伝わってくる。ともかくも、それは僕目掛けて攻撃を仕掛けてくる。突進から噛みつこうとこちらに頭を突き出す。それを紙一重で回避したのならば今度はしっぽの追撃が待っている。なるほど、これは少人数では苦労するはずである。回避した先の行動が制限されるのだ。そしてそこに確実に追撃が来る。制限された動きの中での回避というのは大変やりずらい。しかも、相手は羽をもち三次元の動きをする。人は基本的に二次元の動きしかできないのでこういう部分でも苦戦するのである。まあ、相手が人であるのならば、だが。
「グァアア!!」
僕はもう何度目かの突撃を飛んでよけた。まさか自分のように飛ぶと思ってなかったのか一瞬動きが止まったがすぐに攻撃してきた。ただ、空中戦には慣れていないのか、地上で戦っていたときよりもスキが多い。これならすぐに終わるな。
「時間もあんまりないし、そろそろ終わりにしようか」
その瞬間、僕から濃密な殺気があふれ出す。それを真正面から受けたそいつは言葉通りしっぽを巻いて逃げようとする。だが、それはできない。というか、させない。僕を嬲り殺そうとしたんだ。あいつにもそうされる覚悟があって攻撃してきたのだろう。そもそも、そんなことをして生けとし生きるものを殺めるなんてこの世界では許されない。この世界には管理者がいて運命を操作できるのだ。命を弄ぶなんて神にすら許されない禁忌中の禁忌である。それを犯したのだ。世界の管理者として罰するべきだろう。
「ということで、そなたに死を言い渡す。その行い、来世にてしかと反省せよ」
その言葉とともにはるか上空から白い光の柱が降ってきた。辺りが白一色に染め上げられる。次に視界が戻ってきた時にはそこに飛竜の姿はなかった。あいつの次の生は・・・狐か。今度は真面目に生きてその魂の罪を償うんだな。
今回の騒動の原因がいなくなったことで森は元の平穏を取り戻そうとしている。だが、今回の混乱から完全に戻るには多くの時間を必要とするだろう。人間の勝手な都合でこうなってしまったのだからあの飛竜も被害者と言えるだろう。それでも同情なんてしないが。・・・そもそも、よくここまで飛竜を連れてこれたな。ほんと、人の執念には感心する。
「森の様子もだいぶ落ち着いたし、そろそろ戻りますか」
混乱はしばらく続くだろうが、もうスタンピードに発展することはないだろう。僕は白い翼を出してこの場を後にする。放置してしまったレナたちを探しながら。
―――*―――*―――
レナたちは森へ行く前と同じところに待機していた。戻ってくると何やら騒がしくなっていたので近くにいたラーシャ達に話しかける。
「ただいま」
「あっ、アオイさん。おかえりなさい」
「おかえり、アオイ。どこ行ってたのよ。アンタが急にいなくなったから、こっちは軽い混乱状態に陥ったわよ。その後光柱が降ってきたりしたから、余計混乱しているけどね」
この騒ぎは僕のせいだったらしい。
「それは悪いことをしたな。でも、あの時は時間がなかったから。それに、説明したらいろいろと言われそうだったしね。それで、レナはどこにいるの?」
「レナなら王女様方と馬車の中にいるわよ」
「王女様?」
「あんた、まさかシャルロッテ様のことも知らないの?あたしたちが今いる場所を治めているブルシーク王国の第二王女よ。最近15歳のお披露目があって話題になってる人なんだから」
「一緒に乗っておられるのはボルトン公爵の三女のミリアンヌ様です。ミリアンヌ様もシャルロッテ様と同い年でお披露目の際に双姫として有名になりました」
さっき話した彼女、今まで出会った中でも一番か二番に入るほどの美少女だったけど王女様だったのか。さっき鑑定までしたのに全く気付いていなかった。というか、レナって王女とためを張るほどの美少女だったのか。まあ、ラーシャもザーシャもそれに劣らずの美少女なのだけれども。こう思うと僕の周り美少女だらけだな。別に意図して出会ったわけではないんだけど・・・
「んじゃ、自分で説明しにいくかな」
「行ってらっしゃい」
僕はザーシャ、ラーシャに伝言を頼んで馬車へと向かう。
―――そういえば最近独り言が増えたなぁ。
なんてくだらないことを考えながら森の中心に向かう。そこには体長8メートルほどの飛竜がいた。僕の存在におびえることなくそこにいるのは強者の証か、それとも力の差も分からぬ愚者の証か。僕のことをなめているのだろう。遊んでやるという雰囲気がビンビンと伝わってくる。ともかくも、それは僕目掛けて攻撃を仕掛けてくる。突進から噛みつこうとこちらに頭を突き出す。それを紙一重で回避したのならば今度はしっぽの追撃が待っている。なるほど、これは少人数では苦労するはずである。回避した先の行動が制限されるのだ。そしてそこに確実に追撃が来る。制限された動きの中での回避というのは大変やりずらい。しかも、相手は羽をもち三次元の動きをする。人は基本的に二次元の動きしかできないのでこういう部分でも苦戦するのである。まあ、相手が人であるのならば、だが。
「グァアア!!」
僕はもう何度目かの突撃を飛んでよけた。まさか自分のように飛ぶと思ってなかったのか一瞬動きが止まったがすぐに攻撃してきた。ただ、空中戦には慣れていないのか、地上で戦っていたときよりもスキが多い。これならすぐに終わるな。
「時間もあんまりないし、そろそろ終わりにしようか」
その瞬間、僕から濃密な殺気があふれ出す。それを真正面から受けたそいつは言葉通りしっぽを巻いて逃げようとする。だが、それはできない。というか、させない。僕を嬲り殺そうとしたんだ。あいつにもそうされる覚悟があって攻撃してきたのだろう。そもそも、そんなことをして生けとし生きるものを殺めるなんてこの世界では許されない。この世界には管理者がいて運命を操作できるのだ。命を弄ぶなんて神にすら許されない禁忌中の禁忌である。それを犯したのだ。世界の管理者として罰するべきだろう。
「ということで、そなたに死を言い渡す。その行い、来世にてしかと反省せよ」
その言葉とともにはるか上空から白い光の柱が降ってきた。辺りが白一色に染め上げられる。次に視界が戻ってきた時にはそこに飛竜の姿はなかった。あいつの次の生は・・・狐か。今度は真面目に生きてその魂の罪を償うんだな。
今回の騒動の原因がいなくなったことで森は元の平穏を取り戻そうとしている。だが、今回の混乱から完全に戻るには多くの時間を必要とするだろう。人間の勝手な都合でこうなってしまったのだからあの飛竜も被害者と言えるだろう。それでも同情なんてしないが。・・・そもそも、よくここまで飛竜を連れてこれたな。ほんと、人の執念には感心する。
「森の様子もだいぶ落ち着いたし、そろそろ戻りますか」
混乱はしばらく続くだろうが、もうスタンピードに発展することはないだろう。僕は白い翼を出してこの場を後にする。放置してしまったレナたちを探しながら。
―――*―――*―――
レナたちは森へ行く前と同じところに待機していた。戻ってくると何やら騒がしくなっていたので近くにいたラーシャ達に話しかける。
「ただいま」
「あっ、アオイさん。おかえりなさい」
「おかえり、アオイ。どこ行ってたのよ。アンタが急にいなくなったから、こっちは軽い混乱状態に陥ったわよ。その後光柱が降ってきたりしたから、余計混乱しているけどね」
この騒ぎは僕のせいだったらしい。
「それは悪いことをしたな。でも、あの時は時間がなかったから。それに、説明したらいろいろと言われそうだったしね。それで、レナはどこにいるの?」
「レナなら王女様方と馬車の中にいるわよ」
「王女様?」
「あんた、まさかシャルロッテ様のことも知らないの?あたしたちが今いる場所を治めているブルシーク王国の第二王女よ。最近15歳のお披露目があって話題になってる人なんだから」
「一緒に乗っておられるのはボルトン公爵の三女のミリアンヌ様です。ミリアンヌ様もシャルロッテ様と同い年でお披露目の際に双姫として有名になりました」
さっき話した彼女、今まで出会った中でも一番か二番に入るほどの美少女だったけど王女様だったのか。さっき鑑定までしたのに全く気付いていなかった。というか、レナって王女とためを張るほどの美少女だったのか。まあ、ラーシャもザーシャもそれに劣らずの美少女なのだけれども。こう思うと僕の周り美少女だらけだな。別に意図して出会ったわけではないんだけど・・・
「んじゃ、自分で説明しにいくかな」
「行ってらっしゃい」
僕はザーシャ、ラーシャに伝言を頼んで馬車へと向かう。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※


クラス転移で神様に?
空見 大
ファンタジー
空想の中で自由を謳歌していた少年、晴人は、ある日突然現実と夢の境界を越えたような事態に巻き込まれる。
目覚めると彼は真っ白な空間にいた。
動揺するクラスメイト達、状況を掴めない彼の前に現れたのは「神」を名乗る怪しげな存在。彼はいままさにこのクラス全員が異世界へと送り込まれていると告げる。
神は異世界で生き抜く力を身に付けるため、自分に合った能力を自らの手で選び取れと告げる。クラスメイトが興奮と恐怖の狭間で動き出す中、自分の能力欄に違和感を覚えた晴人は手が進むままに動かすと他の者にはない力が自分の能力獲得欄にある事に気がついた。
龍神、邪神、魔神、妖精神、鍛治神、盗神。
六つの神の称号を手に入れ有頂天になる晴人だったが、クラスメイト達が続々と異世界に向かう中ただ一人取り残される。
神と二人っきりでなんとも言えない感覚を味わっていると、突如として鳴り響いた警告音と共に異世界に転生するという不穏な言葉を耳にする。
気が付けばクラスメイト達が転移してくる10年前の世界に転生した彼は、名前をエルピスに変え異世界で生きていくことになる──これは、夢見る少年が家族と運命の為に戦う物語。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
異世界の錬金術師 〜数百年後のゲームの世界で目覚めた僕は、最強の女の子として頑張ります〜
フユリカス
ファンタジー
『レベルが999になりました』――アルケミスト・オンライン、通称『AOL』と呼ばれるフルダイブ型のMMORPGでいつものように遊んでいた僕の元に、レベルカンストの報酬として『転生玉』が送られてきた。
倉庫代わりに使ってるサブキャラの『ソーコ』に送ってログアウトすると……。
目が覚めると、なんとそこはゲームの世界!
しかも僕は女キャラのソーコになっていて、数百年過ぎてるから錬金術師が誰もいない!?
これは数百年後のゲームの世界に入ってしまった、たったひとりの錬金術師の少女?の物語です。
※小説家になろう、カクヨムでも投稿しています。小説家になろうでは先行投稿しています。

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる