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第二章 王都と孤児院
#21 龍と飛竜、そして管理者の責務
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「まずは一番でかいのから片しますか」
―――そういえば最近独り言が増えたなぁ。
なんてくだらないことを考えながら森の中心に向かう。そこには体長8メートルほどの飛竜がいた。僕の存在におびえることなくそこにいるのは強者の証か、それとも力の差も分からぬ愚者の証か。僕のことをなめているのだろう。遊んでやるという雰囲気がビンビンと伝わってくる。ともかくも、それは僕目掛けて攻撃を仕掛けてくる。突進から噛みつこうとこちらに頭を突き出す。それを紙一重で回避したのならば今度はしっぽの追撃が待っている。なるほど、これは少人数では苦労するはずである。回避した先の行動が制限されるのだ。そしてそこに確実に追撃が来る。制限された動きの中での回避というのは大変やりずらい。しかも、相手は羽をもち三次元の動きをする。人は基本的に二次元の動きしかできないのでこういう部分でも苦戦するのである。まあ、相手が人であるのならば、だが。
「グァアア!!」
僕はもう何度目かの突撃を飛んでよけた。まさか自分のように飛ぶと思ってなかったのか一瞬動きが止まったがすぐに攻撃してきた。ただ、空中戦には慣れていないのか、地上で戦っていたときよりもスキが多い。これならすぐに終わるな。
「時間もあんまりないし、そろそろ終わりにしようか」
その瞬間、僕から濃密な殺気があふれ出す。それを真正面から受けたそいつは言葉通りしっぽを巻いて逃げようとする。だが、それはできない。というか、させない。僕を嬲り殺そうとしたんだ。あいつにもそうされる覚悟があって攻撃してきたのだろう。そもそも、そんなことをして生けとし生きるものを殺めるなんてこの世界では許されない。この世界には管理者がいて運命を操作できるのだ。命を弄ぶなんて神にすら許されない禁忌中の禁忌である。それを犯したのだ。世界の管理者として罰するべきだろう。
「ということで、そなたに死を言い渡す。その行い、来世にてしかと反省せよ」
その言葉とともにはるか上空から白い光の柱が降ってきた。辺りが白一色に染め上げられる。次に視界が戻ってきた時にはそこに飛竜の姿はなかった。あいつの次の生は・・・狐か。今度は真面目に生きてその魂の罪を償うんだな。
今回の騒動の原因がいなくなったことで森は元の平穏を取り戻そうとしている。だが、今回の混乱から完全に戻るには多くの時間を必要とするだろう。人間の勝手な都合でこうなってしまったのだからあの飛竜も被害者と言えるだろう。それでも同情なんてしないが。・・・そもそも、よくここまで飛竜を連れてこれたな。ほんと、人の執念には感心する。
「森の様子もだいぶ落ち着いたし、そろそろ戻りますか」
混乱はしばらく続くだろうが、もうスタンピードに発展することはないだろう。僕は白い翼を出してこの場を後にする。放置してしまったレナたちを探しながら。
―――*―――*―――
レナたちは森へ行く前と同じところに待機していた。戻ってくると何やら騒がしくなっていたので近くにいたラーシャ達に話しかける。
「ただいま」
「あっ、アオイさん。おかえりなさい」
「おかえり、アオイ。どこ行ってたのよ。アンタが急にいなくなったから、こっちは軽い混乱状態に陥ったわよ。その後光柱が降ってきたりしたから、余計混乱しているけどね」
この騒ぎは僕のせいだったらしい。
「それは悪いことをしたな。でも、あの時は時間がなかったから。それに、説明したらいろいろと言われそうだったしね。それで、レナはどこにいるの?」
「レナなら王女様方と馬車の中にいるわよ」
「王女様?」
「あんた、まさかシャルロッテ様のことも知らないの?あたしたちが今いる場所を治めているブルシーク王国の第二王女よ。最近15歳のお披露目があって話題になってる人なんだから」
「一緒に乗っておられるのはボルトン公爵の三女のミリアンヌ様です。ミリアンヌ様もシャルロッテ様と同い年でお披露目の際に双姫として有名になりました」
さっき話した彼女、今まで出会った中でも一番か二番に入るほどの美少女だったけど王女様だったのか。さっき鑑定までしたのに全く気付いていなかった。というか、レナって王女とためを張るほどの美少女だったのか。まあ、ラーシャもザーシャもそれに劣らずの美少女なのだけれども。こう思うと僕の周り美少女だらけだな。別に意図して出会ったわけではないんだけど・・・
「んじゃ、自分で説明しにいくかな」
「行ってらっしゃい」
僕はザーシャ、ラーシャに伝言を頼んで馬車へと向かう。
―――そういえば最近独り言が増えたなぁ。
なんてくだらないことを考えながら森の中心に向かう。そこには体長8メートルほどの飛竜がいた。僕の存在におびえることなくそこにいるのは強者の証か、それとも力の差も分からぬ愚者の証か。僕のことをなめているのだろう。遊んでやるという雰囲気がビンビンと伝わってくる。ともかくも、それは僕目掛けて攻撃を仕掛けてくる。突進から噛みつこうとこちらに頭を突き出す。それを紙一重で回避したのならば今度はしっぽの追撃が待っている。なるほど、これは少人数では苦労するはずである。回避した先の行動が制限されるのだ。そしてそこに確実に追撃が来る。制限された動きの中での回避というのは大変やりずらい。しかも、相手は羽をもち三次元の動きをする。人は基本的に二次元の動きしかできないのでこういう部分でも苦戦するのである。まあ、相手が人であるのならば、だが。
「グァアア!!」
僕はもう何度目かの突撃を飛んでよけた。まさか自分のように飛ぶと思ってなかったのか一瞬動きが止まったがすぐに攻撃してきた。ただ、空中戦には慣れていないのか、地上で戦っていたときよりもスキが多い。これならすぐに終わるな。
「時間もあんまりないし、そろそろ終わりにしようか」
その瞬間、僕から濃密な殺気があふれ出す。それを真正面から受けたそいつは言葉通りしっぽを巻いて逃げようとする。だが、それはできない。というか、させない。僕を嬲り殺そうとしたんだ。あいつにもそうされる覚悟があって攻撃してきたのだろう。そもそも、そんなことをして生けとし生きるものを殺めるなんてこの世界では許されない。この世界には管理者がいて運命を操作できるのだ。命を弄ぶなんて神にすら許されない禁忌中の禁忌である。それを犯したのだ。世界の管理者として罰するべきだろう。
「ということで、そなたに死を言い渡す。その行い、来世にてしかと反省せよ」
その言葉とともにはるか上空から白い光の柱が降ってきた。辺りが白一色に染め上げられる。次に視界が戻ってきた時にはそこに飛竜の姿はなかった。あいつの次の生は・・・狐か。今度は真面目に生きてその魂の罪を償うんだな。
今回の騒動の原因がいなくなったことで森は元の平穏を取り戻そうとしている。だが、今回の混乱から完全に戻るには多くの時間を必要とするだろう。人間の勝手な都合でこうなってしまったのだからあの飛竜も被害者と言えるだろう。それでも同情なんてしないが。・・・そもそも、よくここまで飛竜を連れてこれたな。ほんと、人の執念には感心する。
「森の様子もだいぶ落ち着いたし、そろそろ戻りますか」
混乱はしばらく続くだろうが、もうスタンピードに発展することはないだろう。僕は白い翼を出してこの場を後にする。放置してしまったレナたちを探しながら。
―――*―――*―――
レナたちは森へ行く前と同じところに待機していた。戻ってくると何やら騒がしくなっていたので近くにいたラーシャ達に話しかける。
「ただいま」
「あっ、アオイさん。おかえりなさい」
「おかえり、アオイ。どこ行ってたのよ。アンタが急にいなくなったから、こっちは軽い混乱状態に陥ったわよ。その後光柱が降ってきたりしたから、余計混乱しているけどね」
この騒ぎは僕のせいだったらしい。
「それは悪いことをしたな。でも、あの時は時間がなかったから。それに、説明したらいろいろと言われそうだったしね。それで、レナはどこにいるの?」
「レナなら王女様方と馬車の中にいるわよ」
「王女様?」
「あんた、まさかシャルロッテ様のことも知らないの?あたしたちが今いる場所を治めているブルシーク王国の第二王女よ。最近15歳のお披露目があって話題になってる人なんだから」
「一緒に乗っておられるのはボルトン公爵の三女のミリアンヌ様です。ミリアンヌ様もシャルロッテ様と同い年でお披露目の際に双姫として有名になりました」
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「んじゃ、自分で説明しにいくかな」
「行ってらっしゃい」
僕はザーシャ、ラーシャに伝言を頼んで馬車へと向かう。
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