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第二章 王都と孤児院
#20 王女と公爵令嬢と龍(出会い)
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いつも異世界如何様冒険記をお読みいただきありがとうございます。今回これまでのお金の価値に関する設定が間違っていたことが発覚いたしました。ここにお詫びして訂正いたします。詳しくは近況ボード“異世界如何様(チート)冒険記のお金の価値の変更について”をご覧ください。
https://alphapolis.co.jp/diary/view/167737
―――*―――*―――
抱き上げたレナを降ろすとラーシャとザーシャが近づいてきた。
「お疲れさまでした。アオイさん」
「お疲れ、アオイ」
「そっちもね。ラーシャも、ザーシャも結構大変だったんじゃない?」
「あたしはほとんど何もしてないわ。黒竜しか敵がいなかったから周囲を見ていただけよ。それよりもラーシャのほうが回復魔法を何回も使用しているから疲れてるんじゃない?」
「私も回復魔法の連続使用で少し疲れましたが大変ではなかったです。それよりも回復魔法で蘇生ってどうやったんですか?アオイさん!」
見たところ二人ともそこまで精神的、肉体的に疲れているわけでもなさそうだ。それよりも回復魔法で蘇生という新たな知識に興奮しているように見える。
「はい、まずは落ち着いて。深呼吸、深呼吸。・・・まあ、別に大した技術でも何でも無いんだけどさ」
ものすごくキラキラした目で迫って来るので少しやりづらい。別に僕がすごいわけでも、見つけたわけでもないのでそんなにキラキラした目で見られると何というか騙しているのような気分になる。
「そんなことありません。今まで誰も回復魔法で蘇生を成功させられなかったんですよ!」
そんなことを言われてもそんなに特殊な条件があるわけではない。回復魔法は身体や精神を回復させるものだ。それを念頭に置けば、頭部がしっかり残っていて、脳が正常に活動していれば身体を再生させることで蘇生ができることに気がつくだろう。今回の場合は肉体に頭部の損傷がなかったことが幸いした。こういう場合の脳が正常に働く時間はおよそ3分ほど。3分以内ならば回復魔法で蘇生させられる可能性が高いのだ。まあ、毒殺とかだと変わってくるがおおむねこの条件と言って大丈夫だろう。・・・と、そんなことを説明する。
「なるほど。つまりは脳がしっかりと残っていなければ蘇生はできないということですね」
「そうだね。でも、こうして回復魔法で蘇生すると体は生きているけど目覚めないとか、記憶障害が残ってしまったりとかする場合もあるから一概にいいとは言えないけど。まあ、いくら回復魔法でも脳までは完全には直せないってことかな」
何事にも限界がある。そういうことだろう。ちなみに、これを応用しても不老や若返りはできない。前にも言ったが魔法にはこういう神からの制限のようなものが存在するのだ。
「っと、忘れてた」
そういっていまだにいろいろと聞いてくるラーシャと、話している間ずっとくっついていたレナを引き離し馬車のほうに向かう。
「きさ―――」
「黙れ」
「―――うぐっ」
途中でレナと争っていた騎士が何か言おうとしたが、にらみつけて静止させる。自分たちが守るべき人物を放っておいて何が護衛なのかと問いたくなるな。そんなことを思いながら馬車へと近づき扉を開く。中にはドレスを着た二人の少女とメイド服を着た二十代後半と見える女性がいた。僕は何も言わずに回復魔法とウォッシュをかける。ウォッシュは体や衣服などの汚れを落とす無属性の魔法だ。どうして使ったのかは想像におまかせする。
「う・・・ん・・・」
そうこうしているうちにドレスを着た少女が目を覚ました。あらためて見るとこの子ももう一人の少女も相当な美少女だな。程度でいえばレナと同じぐらい。
「ここは・・・?」
「目がさめたのかい?」
少女は声をかけられて初めて僕の存在に気づいたんだろう。
「あ、あなたは?」
「ああ、驚かせてごめんね。僕は葵っていうんだ。よろしく。それでさっきの疑問に対する答えだけど、ここは王都から大体5㎞ぐらい離れたところ。さっきまで馬車で黒竜に襲われてたから、覚えてる?」
いったん話を区切り少女の方を見ると少女は首を縦に振る。とりあえず思い出せないほどのトラウマにはなってないみたいだな。黒竜に襲われたのは相当な恐怖だっただろうに。しかし、なぜ僕を見て震えているのだろうか?
「多分、最後の記憶の場所からそんなに動いてないと思うよ。それじゃ、僕はこれぐらいで失礼しようかな。お友達も目覚めたようだしね」
「えっ」
少女がもう一人の少女の方を見てからこちらに向き直る。僕は少女の視界から抜けた一瞬で馬車から離れた。
「あれ?」
少女の困惑した声が聞こえてくる。馬車から降りて辺りを窺っているのだろう。だが、僕を見つけることはできないだろう。僕はもうその場にはいない。
「・・・まったく人の執念には毎度驚かされるよ。そこまでして彼女たちをどこかへやってしまいたいのかね」
僕がいるのは馬車から離れた森の中。今ここは騒がしくなっている。ここに飛竜が放されたせいだ。飛竜に竜なんてついているが正確には亜竜で、竜に比べて力が弱く人語を理解するような高度な知能を持った奴もいない。それでも普通の人からしたら十分脅威だが。まあ、高ランク冒険者や近衛騎士が集団で当たれば勝てるだろう。
だが、今回危険なのはこいつじゃない。本来いないはずのこいつが来たことによって、もともとこの森にいた魔物たちが危険を感じて一斉移動してしまう。つまり、スタンピードの始まりである。ネウイの町でのスタンピードは魔物が繁殖しすぎたここが原因だったがこういう風に生態系が乱されてもスタンピードが起こる場合がある。
さて、ここまでいろいろ説明してきたけれどこれ以上の放置は危険だな。面倒だけど、元に戻しますか。
https://alphapolis.co.jp/diary/view/167737
―――*―――*―――
抱き上げたレナを降ろすとラーシャとザーシャが近づいてきた。
「お疲れさまでした。アオイさん」
「お疲れ、アオイ」
「そっちもね。ラーシャも、ザーシャも結構大変だったんじゃない?」
「あたしはほとんど何もしてないわ。黒竜しか敵がいなかったから周囲を見ていただけよ。それよりもラーシャのほうが回復魔法を何回も使用しているから疲れてるんじゃない?」
「私も回復魔法の連続使用で少し疲れましたが大変ではなかったです。それよりも回復魔法で蘇生ってどうやったんですか?アオイさん!」
見たところ二人ともそこまで精神的、肉体的に疲れているわけでもなさそうだ。それよりも回復魔法で蘇生という新たな知識に興奮しているように見える。
「はい、まずは落ち着いて。深呼吸、深呼吸。・・・まあ、別に大した技術でも何でも無いんだけどさ」
ものすごくキラキラした目で迫って来るので少しやりづらい。別に僕がすごいわけでも、見つけたわけでもないのでそんなにキラキラした目で見られると何というか騙しているのような気分になる。
「そんなことありません。今まで誰も回復魔法で蘇生を成功させられなかったんですよ!」
そんなことを言われてもそんなに特殊な条件があるわけではない。回復魔法は身体や精神を回復させるものだ。それを念頭に置けば、頭部がしっかり残っていて、脳が正常に活動していれば身体を再生させることで蘇生ができることに気がつくだろう。今回の場合は肉体に頭部の損傷がなかったことが幸いした。こういう場合の脳が正常に働く時間はおよそ3分ほど。3分以内ならば回復魔法で蘇生させられる可能性が高いのだ。まあ、毒殺とかだと変わってくるがおおむねこの条件と言って大丈夫だろう。・・・と、そんなことを説明する。
「なるほど。つまりは脳がしっかりと残っていなければ蘇生はできないということですね」
「そうだね。でも、こうして回復魔法で蘇生すると体は生きているけど目覚めないとか、記憶障害が残ってしまったりとかする場合もあるから一概にいいとは言えないけど。まあ、いくら回復魔法でも脳までは完全には直せないってことかな」
何事にも限界がある。そういうことだろう。ちなみに、これを応用しても不老や若返りはできない。前にも言ったが魔法にはこういう神からの制限のようなものが存在するのだ。
「っと、忘れてた」
そういっていまだにいろいろと聞いてくるラーシャと、話している間ずっとくっついていたレナを引き離し馬車のほうに向かう。
「きさ―――」
「黙れ」
「―――うぐっ」
途中でレナと争っていた騎士が何か言おうとしたが、にらみつけて静止させる。自分たちが守るべき人物を放っておいて何が護衛なのかと問いたくなるな。そんなことを思いながら馬車へと近づき扉を開く。中にはドレスを着た二人の少女とメイド服を着た二十代後半と見える女性がいた。僕は何も言わずに回復魔法とウォッシュをかける。ウォッシュは体や衣服などの汚れを落とす無属性の魔法だ。どうして使ったのかは想像におまかせする。
「う・・・ん・・・」
そうこうしているうちにドレスを着た少女が目を覚ました。あらためて見るとこの子ももう一人の少女も相当な美少女だな。程度でいえばレナと同じぐらい。
「ここは・・・?」
「目がさめたのかい?」
少女は声をかけられて初めて僕の存在に気づいたんだろう。
「あ、あなたは?」
「ああ、驚かせてごめんね。僕は葵っていうんだ。よろしく。それでさっきの疑問に対する答えだけど、ここは王都から大体5㎞ぐらい離れたところ。さっきまで馬車で黒竜に襲われてたから、覚えてる?」
いったん話を区切り少女の方を見ると少女は首を縦に振る。とりあえず思い出せないほどのトラウマにはなってないみたいだな。黒竜に襲われたのは相当な恐怖だっただろうに。しかし、なぜ僕を見て震えているのだろうか?
「多分、最後の記憶の場所からそんなに動いてないと思うよ。それじゃ、僕はこれぐらいで失礼しようかな。お友達も目覚めたようだしね」
「えっ」
少女がもう一人の少女の方を見てからこちらに向き直る。僕は少女の視界から抜けた一瞬で馬車から離れた。
「あれ?」
少女の困惑した声が聞こえてくる。馬車から降りて辺りを窺っているのだろう。だが、僕を見つけることはできないだろう。僕はもうその場にはいない。
「・・・まったく人の執念には毎度驚かされるよ。そこまでして彼女たちをどこかへやってしまいたいのかね」
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だが、今回危険なのはこいつじゃない。本来いないはずのこいつが来たことによって、もともとこの森にいた魔物たちが危険を感じて一斉移動してしまう。つまり、スタンピードの始まりである。ネウイの町でのスタンピードは魔物が繁殖しすぎたここが原因だったがこういう風に生態系が乱されてもスタンピードが起こる場合がある。
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