異世界如何様(チート)冒険記 ~地球で平凡だった僕が神の記憶を思い出して世界を元に戻すまで~

Condor Ukiha

文字の大きさ
上 下
24 / 50
第二章 王都と孤児院

#20 王女と公爵令嬢と龍(出会い)

しおりを挟む
 いつも異世界如何様チート冒険記をお読みいただきありがとうございます。今回これまでのお金の価値に関する設定が間違っていたことが発覚いたしました。ここにお詫びして訂正いたします。詳しくは近況ボード“異世界如何様(チート)冒険記のお金の価値の変更について”をご覧ください。
https://alphapolis.co.jp/diary/view/167737


―――*―――*―――



 抱き上げたレナを降ろすとラーシャとザーシャが近づいてきた。

「お疲れさまでした。アオイさん」

「お疲れ、アオイ」

「そっちもね。ラーシャも、ザーシャも結構大変だったんじゃない?」

「あたしはほとんど何もしてないわ。黒竜しか敵がいなかったから周囲を見ていただけよ。それよりもラーシャのほうが回復魔法を何回も使用しているから疲れてるんじゃない?」

「私も回復魔法の連続使用で少し疲れましたが大変ではなかったです。それよりも回復魔法で蘇生ってどうやったんですか?アオイさん!」

 見たところ二人ともそこまで精神的、肉体的に疲れているわけでもなさそうだ。それよりも回復魔法で蘇生という新たな知識に興奮しているように見える。

「はい、まずは落ち着いて。深呼吸、深呼吸。・・・まあ、別に大した技術でも何でも無いんだけどさ」

 ものすごくキラキラした目で迫って来るので少しやりづらい。別に僕がすごいわけでも、見つけたわけでもないのでそんなにキラキラした目で見られると何というか騙しているのような気分になる。

「そんなことありません。今まで誰も回復魔法で蘇生を成功させられなかったんですよ!」

 そんなことを言われてもそんなに特殊な条件があるわけではない。回復魔法は身体や精神を回復させるものだ。それを念頭に置けば、頭部がしっかり残っていて、脳が正常に活動していれば身体を再生させることで蘇生ができることに気がつくだろう。今回の場合は肉体に頭部の損傷がなかったことが幸いした。こういう場合の脳が正常に働く時間はおよそ3分ほど。3分以内ならば回復魔法で蘇生させられる可能性が高いのだ。まあ、毒殺とかだと変わってくるがおおむねこの条件と言って大丈夫だろう。・・・と、そんなことを説明する。

「なるほど。つまりは脳がしっかりと残っていなければ蘇生はできないということですね」

「そうだね。でも、こうして回復魔法で蘇生すると体は生きているけど目覚めないとか、記憶障害が残ってしまったりとかする場合もあるから一概にいいとは言えないけど。まあ、いくら回復魔法でも脳までは完全には直せないってことかな」

 何事にも限界がある。そういうことだろう。ちなみに、これを応用しても不老や若返りはできない。前にも言ったが魔法にはこういう神からの制限のようなものが存在するのだ。

「っと、忘れてた」

 そういっていまだにいろいろと聞いてくるラーシャと、話している間ずっとくっついていたレナを引き離し馬車のほうに向かう。

「きさ―――」

「黙れ」

「―――うぐっ」

 途中でレナと争っていた騎士が何か言おうとしたが、にらみつけて静止させる。自分たちが守るべき人物を放っておいて何が護衛なのかと問いたくなるな。そんなことを思いながら馬車へと近づき扉を開く。中にはドレスを着た二人の少女とメイド服を着た二十代後半と見える女性がいた。僕は何も言わずに回復魔法とウォッシュをかける。ウォッシュは体や衣服などの汚れを落とす無属性の魔法だ。どうして使ったのかは想像におまかせする。

「う・・・ん・・・」

 そうこうしているうちにドレスを着た少女が目を覚ました。あらためて見るとこの子ももう一人の少女も相当な美少女だな。程度でいえばレナと同じぐらい。

「ここは・・・?」

「目がさめたのかい?」

 少女は声をかけられて初めて僕の存在に気づいたんだろう。

「あ、あなたは?」

「ああ、驚かせてごめんね。僕は葵っていうんだ。よろしく。それでさっきの疑問に対する答えだけど、ここは王都から大体5㎞ぐらい離れたところ。さっきまで馬車で黒竜に襲われてたから、覚えてる?」

 いったん話を区切り少女の方を見ると少女は首を縦に振る。とりあえず思い出せないほどのトラウマにはなってないみたいだな。黒竜に襲われたのは相当な恐怖だっただろうに。しかし、なぜ僕を見て震えているのだろうか?

「多分、最後の記憶の場所からそんなに動いてないと思うよ。それじゃ、僕はこれぐらいで失礼しようかな。お友達も目覚めたようだしね」

「えっ」

 少女がもう一人の少女の方を見てからこちらに向き直る。僕は少女の視界から抜けた一瞬で馬車から離れた。

「あれ?」

 少女の困惑した声が聞こえてくる。馬車から降りて辺りを窺っているのだろう。だが、僕を見つけることはできないだろう。僕はもうその場にはいない。

「・・・まったく人の執念には毎度驚かされるよ。そこまでして彼女たちをどこかへやってしまいたいのかね」

 僕がいるのは馬車から離れた森の中。今ここは騒がしくなっている。ここに飛竜ワイバーンが放されたせいだ。飛竜ワイバーンに竜なんてついているが正確には亜竜で、竜に比べて力が弱く人語を理解するような高度な知能を持った奴もいない。それでも普通の人からしたら十分脅威だが。まあ、高ランク冒険者や近衛騎士が集団で当たれば勝てるだろう。
 だが、今回危険なのはこいつじゃない。本来いないはずのこいつが来たことによって、もともとこの森にいた魔物たちが危険を感じて一斉移動してしまう。つまり、スタンピードの始まりである。ネウイの町でのスタンピードは魔物が繁殖しすぎたここが原因だったがこういう風に生態系が乱されてもスタンピードが起こる場合がある。
 さて、ここまでいろいろ説明してきたけれどこれ以上の放置は危険だな。面倒だけど、元に戻しますか。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

7人のメイド物語

モモん
ファンタジー
理不尽な人生と不自由さ…… そんな物語を描いてみたいなと思います。 そこに、スーパーメイドが絡んで……ドタバタ喜劇になるかもしれません。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...