異世界如何様(チート)冒険記 ~地球で平凡だった僕が神の記憶を思い出して世界を元に戻すまで~

Condor Ukiha

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第二章 王都と孤児院

#18 龍と黒竜

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―――ドン

 二人を降ろし?飛び出した途端に周囲から衝撃音がする。音速を超えたのだ。そしてスピードそのままに竜へと激突する。だが、ぶつかられた相手も腐っても竜。地面にぶつかりはしたもののノーダメージだ。

『何をする!!』

 相手からバカでかい声で文句とブレスが飛んでくる。

『争っているのがいたら普通止めるだろう』

 僕はブレスを払い除け、そいつ目掛けて再び攻撃を放つ。だが、それはそいつを傷つけはしたものの、行動に支障が出るようなものではなく、逆に攻撃したことによってできた隙に攻撃を受けてしまう。まあ、多少痛くても行動に支障はないので問題ないな。というかこの姿、図体がでかくて戦いにくい。

―――“人化”

 僕の体が縮んでいき、人間の背から真っ白な羽が生えた姿になる。ふむ、先ほどよりもずっと戦いやすいな。

「で、なんで人を襲ったんだ?まさかとは思うけど、自分の欲求を抑えられなかったなんてくだらない理由じゃないよね?」

 相手を威圧しながら話す。この間にも絶えず攻撃してくるので避けながらの会話だが、威圧しだした時から動きの切れが落ちている。

『うるさい!あんたにゃ関係ねぇわ!』

「じゃ、死ぬ?」

 唐突に今までとは比べ物にならない殺気と魔力を浴びた竜は声にならない声を漏らしながら固まってしまう。

『な、なっ・・・』

「ねえ、何で襲ったのか聞かせてよ。ね?」

 頭を軽くペチペチたたきながら笑顔で説明を促すとこいつはぺらぺらと聞いてもいないことまでしゃべってくれた。そもそものことの発端は一か月ほど前、マントをかぶった人間の男が王女を襲ってくれと依頼して来たことだったらしい。そして、その対価に王女とそのそばにいた女たちを竜がもらうということで話をつけ、今日ここを通るということを教えてもらった。あとは、知っての通り実際に襲って僕らに阻止されたということである。攫ってきた王女たちは事情を話し名前と顔を変えて開放するつもりだったそうだ。ちなみにうそをついていないか確認するためにこいつの記憶を覗かせてもらっている。これには、当人が思い出せないところまで知ることができるっていう利点もある。なら最初から記憶を覗くだけでいいじゃないかって思うかもしれないけど、何もなしに特定の記憶を覗くのは無秩序に本が並んでいる図書館でただ一つの本を探し出すのをイメージしてくれればいい。やろうと思えばできなくはないが、途方もない苦労がかかる。だから当人に思い出してもらった方がいいのだ。そうすれば見えた記憶に紐付けられた記憶を探ることで体験したことのすべてを知ることができる。苦労して記憶を探す手間がなくなるのだ。

「へえ、ちなみにその男に覚えは?」

『ないです、はい』

 そういえばいつの間にかこいつ、ものすごく従順になってた。竜に好かれてもしょうがないんだが。種族違うし・・・

「ちなみにこれからどうするつもりなのかな?」

『あなた様にお仕えさせていただければ幸いに思います、はい』

「は・・・え?なんていった?」

 唐突に思ってもみなかったことを言われたので理解が追い付かず、聞き返してしまった。

『あなた様にお仕えしたく思います、はい』

「なんで?」

『もともと私の一族は強者にひかれる性質がありましてですね、はい。あなた様はとても、それこそこの世界で五本の指に入るであろう程強くていらっしゃいます、はい。それに私を見詰める冷たい瞳に憧れ、この方に仕えたいという欲が強くなったのです、はい』

 その赤く輝く瞳に強い意志を込めてこちらを見てくる。こんな状態になったら竜はてこでも動かないからな。僕はあきらめ、ため息をつく。

「それで、君は何ができるの?」

『主に情報収集や偵察などを得意としております、はい。あとは執事など多くの職のマナーなどは身に着けております、はい』

 そう言うと、黒い執事服に身を包んだ初老の男性が目の前に現れた。その姿には身のこなしは完璧であると思わせる何かがある。

「私共、黒竜は世界各地に存在しております。それゆえ、情報についてはどこよりも多く知っていると自負しております。私を含めまして皆を手先のようにお使いください」

「お前の一存で決めていいのか?」

「構いませぬ。私が族長でありますゆえに」

「そうか。では、お前の忠義しかと受け取った。して、お前の一族の者をすべて集めよ。そのときに一人ずつその気を確かめ、我が配下に加えるか決めるとする」

「御意。10日以内に全員招集いたします。私のことはクロとお呼び下さい」

そう言うとクロは暗闇に紛れどこかへ消えていった。

「さて、じゃあレナたちのところへ戻りますか」

僕は背中の羽を伸ばし大空へと飛び立つ。

「そういえば、黒竜たちにも覚えがない人物ってどういうことなんだろうか・・・」

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