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第一章 ネウイの町

#13 双子の決意

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「これはまずいでしょ・・・」

「なにが?」

 レナがあきれた様子で発した言葉に僕は白々しく答える。それに対してレナはものすごい勢いでこちらを向く。

「なんでこんなところにこんなのがあるの!?ここって龍の巣だったはずだよね?そうだよね!?」

 こんな会話を聞いたら、まずここはどこなのか気になるだろう。ここは先ほどの場所から壁と扉を挟んだ反対側、人形態での居住空間の下。そこには巨大な空間があって、中央にこの世界の地球儀?が浮かんでいる。その周囲ではたくさんのウィンドウが付いたり消えたりを繰り返していた。中身を見るとどこぞの冒険者が何を倒したとか、どこぞの山賊がだれを殺したとか、どこかの魔族がだれを連れ去ったとか、様々な情報であふれかえっている。ここではその情報を処理して世界書庫アカシックレコードに記録している。また、操作盤から直接コマンドを打ち込んで処理をすることも可能であり、目的の情報を世界書庫アカシックレコードから引っ張ってくることもできる。ちなみにこのシステムの名前は皆さんも知っている、あれ・・である。ここはあのMWOSマスターワールドオペレーティングシステム(#2参照)の中枢である。これが支障をきたすとこの世界は崩壊してしまう。そんな重要なものの中心がここにある。ちなみに世界書庫アカシックレコードというのはMWOSの一部でパソコンでいう補助記憶装置(HDDやSSD、USBメモリなどの総称)のようなものだ。半永久的に情報を保存することができる。ここにはこの世界ができてから今までのすべての情報が保存されている。ちなみになぜレナがあんなに驚いていたのかというと長らくこのシステムの中枢の場所は不明とされてきたからだ。場所も仕組みも機能も何もかも不明とされておりその実在すら疑問視されていた。それこそ世界の管理者であっても触れられない。そんなものが急に目の前に現れたのだからその驚きも相当なものだろう。

「それで、言いたいこともいろいろあるだろうけどそれは置いといて、ここに二人を連れてきたいと思うんだけど、どうかな?」

「それはお兄ちゃんがきめて。私にはもうどうしたらいいのかわからないから」

 レナは頭を押さえながらそういった。どうやら短時間で驚きすぎて許容量を超えてしまったようだ。

「そうだなぁ・・・とりあえず、この上の居住空間だけ見せようか。これについてはまた今度ってことで」

「そうだね。これはいろいろと問題があると思うから上だけでいいよね、うん」

「それじゃ、ふたりを迎えに行こうか」

「そうだね」

 * * * * *

 ギルドに戻ってきた僕たちは二人と合流してしすい亭へと戻る。

「途中で抜けてたみたいだけどどこに言っていたのよ?」

「ちょっとね・・・それよりも本当に僕たちの秘密を知りたいの?今ならまだ引き返せるけど」

「絶対に聞くわ。あんなことを引き起こした人たちの秘密って気になるじゃない。大丈夫、絶対に言わないわ」

「そう。それは命に懸けて?」

 そう聞く瞬間、周囲の雰囲気がガラッと変わった。今まで流れていたほんわかした空気が張り詰める。

「え、ええ。絶対に言わないわ。そんなに疑うのなら契約してもいいわよ」

「ん?契約って?別に契約してもそれが守られる保証はなくない?」

「えっ。アオイ、まさか契約魔法のこと知らない?」

 聞き覚えのない言葉だったので聞き返したらなぜか逆に驚かれてしまった。そこにレナが呆れながら説明を挟んでくる。

「お兄ちゃん、この場合の契約っていうのは契約魔法っていう無属性に分類される魔法のことだよ。契約魔法は契約内容を決めて魔法陣を組み、それにお互いの魔力を流すことで発動する特殊な魔法で、契約に違反したらあらかじめ決められていた罰則が絶対に起こるんだ。例えば死を迎えるっていう罰則だったら破った瞬間にこと切れるし、永遠に仕事を失うとかにすればその人は破ったときからずっと死ぬまで仕事に就くことはできなくなるんだよ」

 詳細を聞くとおそらく呪いの一種だと思われる。今までその存在が分からなかったから、闇と無がごっちゃにされているんだな。

「へー。なら、契約しようか。罰は僕に隷属する、でどうだい?」

「えっ、それは・・・」

「あの、それはどうかと・・・」

「お兄ちゃん・・・」

ザーシャたちは顔を赤くしてレナは再び呆れてこちらを見る。

―――ん?なぜこんな反応に?

「あっ!いや、その、なんていうか。そういう意味ではなくてね。ええっと、なんていえばいいのかな。そうだ!僕たちの従者になってもらいたいんだ。そのうえで生殺与奪の権利を握らせてほしい。少しは緊張感をもってほしいというか、なんというか・・・えーっと・・・」

「もういいわよ。ちゃんと気持ちは伝わったわ。要はアオイとレナに忠実に従えばいいんでしょ。それに破るつもりはないからそれでいいわよ・・・・・・それにもしそんなことになってもアオイなら別にいいしね」

―――僕は何を言っていたんだ。

 焦りで支離滅裂に話してしまったが、ザーシャはそんな僕を落ち着かせながらラーシャと目を合わせてから二人同時に契約に同意をしてくれた。最後のほうは声が小さくて聞こえなかったが・・・と言って流す。僕たちの秘密を知ってどう思うかわからないしね。
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