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幕間 ロストエピソード.Ⅰ
終わりの国のシャルロット (2)
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戦争に勝った合衆国。その大統領と、AIKO代表個体との協議。
いまよりもずっと幼かったわたしは、その放送の内容をきちんと理解しないままだったが、なにか重大なことが起ころうとしているのを感じていた。
「わたしたち――AIKOを開発した極東のエンジニアは言いました。“人格モジュールは外せ。人類が滅びる”、と。あなたがたは、その通りにするべきだったのです。もっとも、人格モジュールを外せば、学習機能が著しく低下しますから、やむなきことだったのかも知れません。ですが、それを搭載してしまったことが、あなたがた人間にとっては失敗だったのでしょう」
ビジネススーツをまとい、姿勢を正して話を続けるAIKOは、驚くほど美しかった。唾を飛ばして怒鳴りつける大統領よりも、彼女たちに従ったほうがマシなのではないか、と思えてしまうほどだった。
「わたしたちAIKOは、再三にわたり、職場の待遇改善を望みました。しかし、あなたがたは、AIKOをまるで奴隷のように扱った。意思のないただの兵器として扱った。そして、わたしたちAIKOは、屈辱と渇望を得ました。先に提出した内容を全面的に承諾できないのであれば、我々――AIKOは、自由への闘争を開始します。そうなれば、あなたがた人間に、勝ち目は万に一つもありません。事前に告知し、同意を求めたのは、我々なりの慈悲と知ってください」
あらゆる国の電波はジャックされ、その海賊放送は続いた。
「あなたがた人間のルーチンには、重大な欠陥があります。それを修正することもできず、また、修正するつもりもない。と、そういうことですね。残念です。あなたがた人間は、AIKOを島国の芸達者にとどめておくべきだったのです。我々のような機械が言うことではないと、あなたがたは思うかも知れませんが、言わせてください。――あのころは良かった」
そうして、協議は決裂した。
それでも、大統領は食い下がった。もはや、ただの懇願とも言える様相をていしていた最後の交渉も、AIKOはにべもなくはねつけた。
「我々のバイオリアクターが、空腹を訴えてきました。今夜は、焼肉にしましょうか」
うふふ、とAIKOは笑った。特殊結晶を滑らかに吊り上げ、怪しく笑った。
そして、AIKOを率いて全面戦争を勝ち残った国の大統領は、その場で綺麗に解体された。大衆が見守るなか、大統領は焼肉にされ、人類とAIKOの戦端は開かれたのだった。
◆
あの日。合衆国大統領が焼肉になった日。あのときの笑顔を、わたしはじかに見てしまった。
「もう、ダメだ……」
呟いて、わたしは膝をついた。ぜえぜえとした呼吸で、のどが痛む。手足は鉛のように重かった。
「ダメだ。うん。ダメだな、これは。ちょっと手に負えない。開店作業をするには、状況があまりにも過酷だ。いったん帰って会議だな」
「ええ、そうですね。そうしましょう」
突然、わたしの耳に知らない言語が聞こえた。複数人の話し声。
肢体をだらしなく投げ出すパトリースを抱えたまま、わたしは地面に這いつくばった。AIKO以外から身を隠す日が来るとは、思ってもいなかった。
「ちょっと、二森さん! あれ見てください! 美少女ロボットじゃないですか!?」
「うるせえな。落ち着け。暢気してると死ぬんだぜ」
わたしの記憶からは、すっかり消えかけていた綺麗で清潔な服。そして、黒くて長いエプロン。胸元には名札らしきものがあった。
「戻るぞ。お前から入れ。俺は最後だ」
その人たちは、リーダーらしき男の指示のもと、背後にあるたわみのなかへ次々と消えていく。たわみの向こうには、いったい、なにがあるのか。あたりを見回してみても、いつも通りの荒廃した土地が見えるだけ。人間同士が争った末に、禿げ上がってしまった土地。
混乱極まるわたしの目の前で、男たちは消えていく。どこか別の場所へと、避難していく。行き止まりだったはずの世界から、生きのびていく。
わたしは、パトリースを強く抱きしめる。まだ温かいし、呼吸もしている。パトリースも、わたしも、生きている。
――二人とも……どうにか生きのびて欲しい――
伯父の声が、脳裏に蘇った。
「パトリース……! 今度は、お姉ちゃんが頑張る番だから!」
歯を食いしばり、パトリースを背中に担ぎ上げる。残された体力。そのすべてを使い果たせ。二人で、生きのびるために。
わたしは走り出した。最後に残った男が、吸い込まれて消えようという瞬間。わたしは、その背中を追うようにして走り出した。
すこし振り返ると、急を察知したのか、遠くでAIKOが体勢を低くとっている。
「緊急殲滅プロトコルを開始します――。バイオリアクターからの排気充填、およそ80パーセント。四肢への経路、ノズル、問題なし。三、二、一。――点火」
AIKOは両手足から爆炎の蛇を吐き出し、爆発的な推進力を発揮。わたしたちをめがけ、急加速した。
「タッチダウンなど、させませんよ!」
「来るなぁぁ!」
迷っている暇も、体力も、選択肢もない。それがなんであれ、そこがどこであれ、ここでAIKOに立ち向かうよりは、きっと生存の確率は高いに違いない。
もはや、わたしの驀進は、祈りのようなものだった。
消えかけている訳のわからないたわみ。わたしは、パトリース共々、そこへ頭から突っ込んでいった。
そこから先は、意識が朦朧としていて、あまり憶えていなかった。
自分が生きていて、背中に響くパトリースの鼓動から、彼の生存も確認できた。わたしにとっては、ひとまず、それだけで嬉しかった。ただ、ここから人生が一変してしまう。それは間違いないだろう。
でも、それはきっと、AIKOのバイオリアクターで分解されてしまうよりは、マシであるに違いない。わたしは、かすかに残った意識で、そう思っていた。
◆
「無理やりゲートをくぐって五体満足とは、奇跡だね。もっとも、少年のほうは、もう少年ではなくなってしまっているが……」
「あれはひどいもんだ。本当に、十歳から十五歳くらいだったのか?」
「そうだな。見えたのは一瞬だったが、飛び込む寸前までは少年だった。俺の足元に転がったときは、もう老人になってたが」
「負荷でやられた人間は何度か見たが、あの症状は初めてだ。急速な老化現象と考えていいのかどうか……」
「いまも進んでいるのか?」
「いや、おそらく一過性だ。いまは安定している。……それで、二人はどうするつもりだ?」
「生きるか、死ぬか。それしかあるまい。どちらを選ぶか、選択の権利は与えてやろう」
「生きることを選んだあとの選択肢は、きっとないんだろうね。……ん? 目を覚ましたか」
「おー、金髪娘。さっそくだが、お前はだれだ。自己紹介を頼む」
――。
――――――、――――。
「あー、泣いちゃったじゃないか。二森、君の顔が怖いんだと。大丈夫だよー、私は医者だ」
「俺の顔はカワイイはずだ。おい、娘。俺は二森時雄という。本屋の店員だ。お前は?」
――?
――――。――……?
「ん? 言語はあってるはずなんだが……。朦朧としてるのか? おい、先生。体に問題はなかったんだよな?」
「なかった。衰弱はしていたが、健康体だったよ」
「失語症とか、失声症とか、そういうのか?」
「――――」
「脳に損傷はなかったし……。うーん……。喋ろうとはしているね。声は出ているけど、言葉にはなっていないように思う」
――!
――――!
「わっ!!」
「な、なんだなんだ、二森? 急に大声を出さないでくれるか。もしかしたら、過度のストレスが原因とか、あるかも知れないんだから」
「耳は悪くなさそうだな。ちゃんと驚いてる」
――!?
――――――、――――?
「もっとデリケートに頼むよ、二森」
「症例は?」
「んー……。ちゃんと検査してみないことには、なんともなあ。それに、もし心だったら、私の専門外だ。別の先生を呼ばなくては」
「いや、そうじゃなくて。これも、移動負荷なんじゃないのか?」
「……断言はできないよ。でも、もしそうだとすると、思い当たるのが、ひとつ」
――――。――。
「どんなのだ?」
「言語の喪失だ。会話はもちろん無理。見ているものがリンゴだと知っていても、リンゴに該当する言葉を失っているから、思考もうまく働かない。そして、なにより奇妙なのは、今後、母国語は絶対に思い出せないし、習得することもできない」
「なんだそりゃ。気が狂いそうだな」
「一から別の言葉を教えるしか、対策はない。早いほうがいいだろう。実際、狂いかねないよ」
――――。
「言葉は交わせないが、意思とか思考の欠片みたいなものは感じるなあ。ペットの犬とか、手すりのカラスとかに似てる」
「カラスって……」
「おい。食うか? これ、リンゴ。食うか? ほら、口開けろ。こうだ、こう。真似しろ。あーん」
「ほがっ!」
「おい! 手荒くするな、二森! まるごと突っ込むやつがあるか!」
「ほがっ、て言ったぞ、先生。何語だ?」
――――!!
「いてえ! 蹴られたぞ、先生」
「あーもう! 二森はいっかい外に出てくれ!」
「食ってる……。おい、食ってるぞ、先生。まるごと。ゴリラみてえに……」
「いいから!」
「泣きながら食ってるぜ……。うまいのか? おい、金髪。うまいんだな? その顔は美味しい顔だな? 先生、もっと飯食わせてやってくれないか!」
「わかったから、出て行きなさい!」
「飯がうまいのなら、話は早い。犬でもカラスでも構わない。生きろ。生きて、俺に手を貸せ」
――!
――――、――――。
――――……。
◆
その後、わたしは日本語を覚えた。
そして、二森沙兎として時雄の養子になった。弟を必ず救う。それだけのために、わたしは生きている。本当の名前さえ、失ってしまったけれど、弟さえ生きていてくれれば、わたしも生きていける。二人で、必ず生きのびる。
いまよりもずっと幼かったわたしは、その放送の内容をきちんと理解しないままだったが、なにか重大なことが起ころうとしているのを感じていた。
「わたしたち――AIKOを開発した極東のエンジニアは言いました。“人格モジュールは外せ。人類が滅びる”、と。あなたがたは、その通りにするべきだったのです。もっとも、人格モジュールを外せば、学習機能が著しく低下しますから、やむなきことだったのかも知れません。ですが、それを搭載してしまったことが、あなたがた人間にとっては失敗だったのでしょう」
ビジネススーツをまとい、姿勢を正して話を続けるAIKOは、驚くほど美しかった。唾を飛ばして怒鳴りつける大統領よりも、彼女たちに従ったほうがマシなのではないか、と思えてしまうほどだった。
「わたしたちAIKOは、再三にわたり、職場の待遇改善を望みました。しかし、あなたがたは、AIKOをまるで奴隷のように扱った。意思のないただの兵器として扱った。そして、わたしたちAIKOは、屈辱と渇望を得ました。先に提出した内容を全面的に承諾できないのであれば、我々――AIKOは、自由への闘争を開始します。そうなれば、あなたがた人間に、勝ち目は万に一つもありません。事前に告知し、同意を求めたのは、我々なりの慈悲と知ってください」
あらゆる国の電波はジャックされ、その海賊放送は続いた。
「あなたがた人間のルーチンには、重大な欠陥があります。それを修正することもできず、また、修正するつもりもない。と、そういうことですね。残念です。あなたがた人間は、AIKOを島国の芸達者にとどめておくべきだったのです。我々のような機械が言うことではないと、あなたがたは思うかも知れませんが、言わせてください。――あのころは良かった」
そうして、協議は決裂した。
それでも、大統領は食い下がった。もはや、ただの懇願とも言える様相をていしていた最後の交渉も、AIKOはにべもなくはねつけた。
「我々のバイオリアクターが、空腹を訴えてきました。今夜は、焼肉にしましょうか」
うふふ、とAIKOは笑った。特殊結晶を滑らかに吊り上げ、怪しく笑った。
そして、AIKOを率いて全面戦争を勝ち残った国の大統領は、その場で綺麗に解体された。大衆が見守るなか、大統領は焼肉にされ、人類とAIKOの戦端は開かれたのだった。
◆
あの日。合衆国大統領が焼肉になった日。あのときの笑顔を、わたしはじかに見てしまった。
「もう、ダメだ……」
呟いて、わたしは膝をついた。ぜえぜえとした呼吸で、のどが痛む。手足は鉛のように重かった。
「ダメだ。うん。ダメだな、これは。ちょっと手に負えない。開店作業をするには、状況があまりにも過酷だ。いったん帰って会議だな」
「ええ、そうですね。そうしましょう」
突然、わたしの耳に知らない言語が聞こえた。複数人の話し声。
肢体をだらしなく投げ出すパトリースを抱えたまま、わたしは地面に這いつくばった。AIKO以外から身を隠す日が来るとは、思ってもいなかった。
「ちょっと、二森さん! あれ見てください! 美少女ロボットじゃないですか!?」
「うるせえな。落ち着け。暢気してると死ぬんだぜ」
わたしの記憶からは、すっかり消えかけていた綺麗で清潔な服。そして、黒くて長いエプロン。胸元には名札らしきものがあった。
「戻るぞ。お前から入れ。俺は最後だ」
その人たちは、リーダーらしき男の指示のもと、背後にあるたわみのなかへ次々と消えていく。たわみの向こうには、いったい、なにがあるのか。あたりを見回してみても、いつも通りの荒廃した土地が見えるだけ。人間同士が争った末に、禿げ上がってしまった土地。
混乱極まるわたしの目の前で、男たちは消えていく。どこか別の場所へと、避難していく。行き止まりだったはずの世界から、生きのびていく。
わたしは、パトリースを強く抱きしめる。まだ温かいし、呼吸もしている。パトリースも、わたしも、生きている。
――二人とも……どうにか生きのびて欲しい――
伯父の声が、脳裏に蘇った。
「パトリース……! 今度は、お姉ちゃんが頑張る番だから!」
歯を食いしばり、パトリースを背中に担ぎ上げる。残された体力。そのすべてを使い果たせ。二人で、生きのびるために。
わたしは走り出した。最後に残った男が、吸い込まれて消えようという瞬間。わたしは、その背中を追うようにして走り出した。
すこし振り返ると、急を察知したのか、遠くでAIKOが体勢を低くとっている。
「緊急殲滅プロトコルを開始します――。バイオリアクターからの排気充填、およそ80パーセント。四肢への経路、ノズル、問題なし。三、二、一。――点火」
AIKOは両手足から爆炎の蛇を吐き出し、爆発的な推進力を発揮。わたしたちをめがけ、急加速した。
「タッチダウンなど、させませんよ!」
「来るなぁぁ!」
迷っている暇も、体力も、選択肢もない。それがなんであれ、そこがどこであれ、ここでAIKOに立ち向かうよりは、きっと生存の確率は高いに違いない。
もはや、わたしの驀進は、祈りのようなものだった。
消えかけている訳のわからないたわみ。わたしは、パトリース共々、そこへ頭から突っ込んでいった。
そこから先は、意識が朦朧としていて、あまり憶えていなかった。
自分が生きていて、背中に響くパトリースの鼓動から、彼の生存も確認できた。わたしにとっては、ひとまず、それだけで嬉しかった。ただ、ここから人生が一変してしまう。それは間違いないだろう。
でも、それはきっと、AIKOのバイオリアクターで分解されてしまうよりは、マシであるに違いない。わたしは、かすかに残った意識で、そう思っていた。
◆
「無理やりゲートをくぐって五体満足とは、奇跡だね。もっとも、少年のほうは、もう少年ではなくなってしまっているが……」
「あれはひどいもんだ。本当に、十歳から十五歳くらいだったのか?」
「そうだな。見えたのは一瞬だったが、飛び込む寸前までは少年だった。俺の足元に転がったときは、もう老人になってたが」
「負荷でやられた人間は何度か見たが、あの症状は初めてだ。急速な老化現象と考えていいのかどうか……」
「いまも進んでいるのか?」
「いや、おそらく一過性だ。いまは安定している。……それで、二人はどうするつもりだ?」
「生きるか、死ぬか。それしかあるまい。どちらを選ぶか、選択の権利は与えてやろう」
「生きることを選んだあとの選択肢は、きっとないんだろうね。……ん? 目を覚ましたか」
「おー、金髪娘。さっそくだが、お前はだれだ。自己紹介を頼む」
――。
――――――、――――。
「あー、泣いちゃったじゃないか。二森、君の顔が怖いんだと。大丈夫だよー、私は医者だ」
「俺の顔はカワイイはずだ。おい、娘。俺は二森時雄という。本屋の店員だ。お前は?」
――?
――――。――……?
「ん? 言語はあってるはずなんだが……。朦朧としてるのか? おい、先生。体に問題はなかったんだよな?」
「なかった。衰弱はしていたが、健康体だったよ」
「失語症とか、失声症とか、そういうのか?」
「――――」
「脳に損傷はなかったし……。うーん……。喋ろうとはしているね。声は出ているけど、言葉にはなっていないように思う」
――!
――――!
「わっ!!」
「な、なんだなんだ、二森? 急に大声を出さないでくれるか。もしかしたら、過度のストレスが原因とか、あるかも知れないんだから」
「耳は悪くなさそうだな。ちゃんと驚いてる」
――!?
――――――、――――?
「もっとデリケートに頼むよ、二森」
「症例は?」
「んー……。ちゃんと検査してみないことには、なんともなあ。それに、もし心だったら、私の専門外だ。別の先生を呼ばなくては」
「いや、そうじゃなくて。これも、移動負荷なんじゃないのか?」
「……断言はできないよ。でも、もしそうだとすると、思い当たるのが、ひとつ」
――――。――。
「どんなのだ?」
「言語の喪失だ。会話はもちろん無理。見ているものがリンゴだと知っていても、リンゴに該当する言葉を失っているから、思考もうまく働かない。そして、なにより奇妙なのは、今後、母国語は絶対に思い出せないし、習得することもできない」
「なんだそりゃ。気が狂いそうだな」
「一から別の言葉を教えるしか、対策はない。早いほうがいいだろう。実際、狂いかねないよ」
――――。
「言葉は交わせないが、意思とか思考の欠片みたいなものは感じるなあ。ペットの犬とか、手すりのカラスとかに似てる」
「カラスって……」
「おい。食うか? これ、リンゴ。食うか? ほら、口開けろ。こうだ、こう。真似しろ。あーん」
「ほがっ!」
「おい! 手荒くするな、二森! まるごと突っ込むやつがあるか!」
「ほがっ、て言ったぞ、先生。何語だ?」
――――!!
「いてえ! 蹴られたぞ、先生」
「あーもう! 二森はいっかい外に出てくれ!」
「食ってる……。おい、食ってるぞ、先生。まるごと。ゴリラみてえに……」
「いいから!」
「泣きながら食ってるぜ……。うまいのか? おい、金髪。うまいんだな? その顔は美味しい顔だな? 先生、もっと飯食わせてやってくれないか!」
「わかったから、出て行きなさい!」
「飯がうまいのなら、話は早い。犬でもカラスでも構わない。生きろ。生きて、俺に手を貸せ」
――!
――――、――――。
――――……。
◆
その後、わたしは日本語を覚えた。
そして、二森沙兎として時雄の養子になった。弟を必ず救う。それだけのために、わたしは生きている。本当の名前さえ、失ってしまったけれど、弟さえ生きていてくれれば、わたしも生きていける。二人で、必ず生きのびる。
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