悩んでいる娘を励ましたら、チアリーダーたちに愛されはじめた

上谷レイジ

文字の大きさ
上 下
22 / 40
第3章 佐藤眞耶 - 球技大会の前に

第22話 ……見た?

しおりを挟む
 次の日からは短縮授業に入り、いよいよテスト本番へと入った。
 チア部への転入部前日から毎日教科書を眺めてはノートやドリル、参考書と睨めっこを続けていたこともあって、全く苦にはならない。もともと勉強が得意で授業中も真剣な表情で授業を聞いていることもあって、授業の理解度は高かった。いつもは見た目などで自分のことを低く捉える傾向があったけど、このことに関しては胸を張ってもいいだろう。今回も中学時代と前期中間試験同様に勉強を進めるまでだ。
 ……と、なぜここまで自分のことを考えているのだろうか。
 実は、僕は図書室で高橋さんたちと一緒になって勉強しているからだ。とびきりの美少女で、しかも三人中二人は豊かな胸を揺らしながら勉学に励む様子は思春期男子にはたまらない。
 美少女三人が集まったらさぞかし勉強どころではないのではと思っていたけど、そんなことはない。少しだけ賑やかなほうが勉強出来そうだ。

「真凛、現国は大丈夫?」
「もちろんよ。試験対策は抜かりないわ。それで、奏音はどうかしら?」
「え、何? アタシは今コミュニケーションの復習をやっていたんだけど」
「現国よ、げ・ん・こ・く。奏音、苦手だって言ったじゃない」
「ノ、No problemよ……」
「子供の頃から習っていた英語が出るあたり、ますます怪しいわね。ひょっとして、授業中寝ていたのかしら?」
「寝ているわけないわよ! うちのクラスの現国の先生、早口でついてくのが大変なのよ! それで、真凛はどうなのよ?」
「私は大丈夫よ。なんだったら、私が書いたノートを見せてもいいけど」
「ありがとう、真凛。恩に着るわ」

 小泉さんは米沢さんに授業中の態度を指摘されて真っ赤になりながらも、米沢さんからノートを借りると感謝の言葉を見ながら適宜参照している。話しぶりでは現代国語がちょっと苦手そうで、つい英語が口に出てしまっている。
 正直言って、うちのクラスで現代国語を教えている先生は喋る速度が半端ない。小泉さんはともかく、あの先生についていける生徒は果たして居るのだろうか。僕が不安がっていると、右側の席に座っていた高橋さんがノートなどを移動する物音を立て、ローズの甘い香りを漂わせながら僕のすぐそばに近寄って耳元で囁いた。

「ねえ、優汰君」
「何?」
「優汰君のクラスの現国の先生って、佐々木勇人はやと先生?」
「そうだよ。勇人先生は早口だから何を言っているのかわからなくてね。先生のことを知っているってことは、見覚えがあるのか?」
「うん。勇人先生、うちのクラスと英語科のクラスでは言語文化を教えているよ。ところで、優汰君のクラスでは言語文化はどこまで進んでいる?」
「古文は全部終わって、漢文に入ったところだね。先生の話だと試験範囲には含めないかもって言っていたけど、どうなるかわからないからやっておこうかなと」
「クスッ、私たちのクラスと一緒だね。それじゃあ、私が教えてあげられるところは教えてあげようか?」
「えっ、いいのかな?」

 高橋さんは笑顔を見せて頷いた。

「ありがとう、高橋さん」
「お礼なんてしなくても良いんだよ。入ったばかりとはいえ、同じチア部でしょ。部員同士助け合わないとね」

 彼女の気遣いに感謝すると、高橋さんは自分のノートをそっと僕の手元に寄せる。
 彼女のノートは東大生のノートのような美しい使い方をしていた。僕のノートに比べると見やすくて、わかりやすい。古文と漢文双方とも文章を一言一句書き写していて、おまけに注解まで書き込まれている。授業でわからなかったところに関してもチェックをしていて、さすが好成績の女子生徒は違うなと思わされた。

「随分奇麗にまとめているんだね」
「もちろんだよ。そうしないと古典の文法や現代語訳が出来ないからね」
「なるほど。そういえば、甲子園の予選会で公休だった大会の日の授業についてはどうしていたのかな?」
「同じクラスの子に頼んでノートを写してもらったから、問題ないよ」
「僕は小泉さんの伝手を使って、文芸部の子からノートを借りて写させてもらったよ」
「クスッ、一緒だね」

 そう話すと、僕らは周りに聞こえないように笑いあった。
 それから僕は隣に座っている小泉さんを覗き込む。

「う~ん、小説ならばまだしも、評論って苦手なのよね……」

 小泉さんは相変わらず現代国語で苦戦していた。
 国語教科のうち言語文化は古文と漢文、それと近代以降の文章を扱い、現代国語は評論や実社会での文章を扱っている。言語文化のうち古文と漢文は現代語訳にすればある程度答えが見えてくるからなんとかなりそうだけど、近代編となると苦労しそうだ。吹奏楽部の先輩の話だと近代編は自習になるかもしれないとの話だったけど、佐々木先生のペースだと現代国語の教科書を一冊丸ごとやり尽くしそうだ。

「高橋さん、言語文化は大丈夫そうだから戻ってもいいよ。僕は小泉さんのヘルプに回るから」

 僕がそう耳打ちすると、高橋さんは笑顔で応じてくれた。ノートなどを手に取ってから、周りに気づかれないように椅子を小泉さんの座っているところに向けて移動する。
 予想通り、小泉さんは机に伏せて頭を抱えていた。机の上のノートはほぼ真っ白で、全く手つかずといっても過言ではなかった。

「どうしたの、小泉さん」
「ユータ……」

 小泉さんの顔を眺めると、額から汗がこぼれ落ちていた。
 気のせいか知らないけど、先ほどから少しだけ蒸し暑く感じるようになった。

「エアコン、壊れているんじゃないの?」
「そうかな?」

 そう話すと、小泉さんはブラウスのボタンをひとつ、またひとつ外す。すると、ブラウスで隠されていた小泉さんの素肌が見え隠れする。まだまだ九月とはいえ暑い日が続くのは仕方ないが、何とかならないのだろうか。

「あ~……、やっと暑苦しさから解放されるわ……」

 小泉さんはブラウスを掴みながら手で仰ぐ。
 向かい側で自習している高橋さんや米沢さんに比べるべくもないけど、見事なまでの谷間と可愛らしいピンク色のブラが顔を覗かせた。
 出来ればその素肌を眺めていたい。だけど、今はそれどころじゃない。

「小泉さん」
「何?」
「ブラが見えているけど、大丈夫?」
「!?」

 指摘した途端、小泉さんの顔が真っ赤になった。
 僕の視線を避けるようにして小泉さんはうずくまる。

「どうしたの、小泉さん?」
「はっ、恥ずかしいから見ないでよ! その、アタシ、ナツたちに比べて胸が小さいから……」

 小泉さんは周りに気を遣いながら小声で僕に話す。
 ちょっとだけ見た限りでは、小泉さんの胸は四人が座れる机の向かい側で勉強している高橋さんたちにも負けてはいない感じがした。何せ、チアダンスをしているときもその旨を揺らしていたのだから。

「そ、それより勉強の続きをしましょう! テストも近いんでしょ?」
「そうだね……」

 小泉さんは顔を真っ赤にしながらうつむいて照れ隠しをする。
 試験も間近だし、今のところは自分の胸の中に刻んでおこう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編3が完結しました!(2024.8.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

恐喝されている女の子を助けたら学校で有名な学園三大姫の一人でした

恋狸
青春
 特殊な家系にある俺、こと狭山渚《さやまなぎさ》はある日、黒服の男に恐喝されていた白海花《しらみはな》を助ける。 しかし、白海は学園三大姫と呼ばれる有名美少女だった!?  さらには他の学園三大姫とも仲良くなり……?  主人公とヒロイン達が織り成すラブコメディ!  小説家になろう、カクヨムでも投稿しています。  カクヨムにて、月間3位

処理中です...