20 / 21
第20話 そして、愚かな妹は……
しおりを挟む
~アメリア視点~
あたしの背筋が凍るのに比例して、ティーカップの中にある紅茶も冷めて行くようだった。
「あ、あの、あたしは……」
何とか言葉を発しようとした時、お姉さまの手がそれを制した。
「レオルド様、お気持ち感謝いたします。けれども、これは私と妹の問題ですから。どうか、そこまで深く追及なさらないで下さい」
「お姉さま……」
「ああ、すまない、ユリナ。僕としたことが……申し訳ない」
お姉さまに頭を下げてから、
「アメリア、君にもすまなかった」
「い、いえ、そんな……」
「紅茶が冷めてしまったね、入れ直そうか」
「こ、このままでも平気です。いただきます」
あたしは慌ててティーカップをかたむけて飲んだ。
「お、美味しいです、冷めていても」
「そうかい、ありがとう。君たち姉妹は、何だかあまり似ていないね」
「よ、よく言われます」
あたしはぎこちなく笑いながらそう言った。
「ユリナは、どうだい? 僕が入れた紅茶の味は」
「……はい、とても美味しいです。レオルド様が入れて下さったおかげで」
「ユリナ……」
2人は見つめ合う。え、何よこの空気……
「……あ、あの、ちょっとお伺いしますが……お姉さまとレオルド様のご関係は……?」
「ん? ああ、僕はユリナと結婚するつもりだよ」
ズゴーン!と特大のハンマーでぶん殴られるようだった。
「レ、レオルド様……改めて言われると、恥ずかしいです。妹の前で……」
「でも、ユリナ。何度でも言っておかないと、君が誰かに奪われないか心配で」
レオルド様は、お姉さまの見つめながら、キュッと手を握った。
「大丈夫ですよ。例え離れていたとしても、私はいつもあなたを想っています」
「ユリナ……僕もだよ」
あたしはあんぐりと顎が外れそうになる。
「……あ、あの、もしかしてなんですけど……この前、レオルド様と一緒に街にいたのって……」
「ああ、ユリナだよ」
あっさりと言われる。
「けど、僕のせいで思った以上にギャラリーが集まってしまったからね。その後、2人きりで……おっと、これは内緒の話だ」
「レ、レオルド様」
あたしの前で、2人はイチャついていた。何かもう、ここまで来ると敗北感が強過ぎて、何も言えないレベルだ。
「そういえば、アメリア。何だか困った様子だったけど……私で良ければ、相談に乗るわよ?」
「へっ? いや、その……」
今までのあたしなら、プライドが邪魔をして正直に話せなかっただろう。けど、ここまでくるともう、プライドもクソもないから……
「……実は、ブリックス様の事業がピンチで……お金もヤバそうなの」
「そうなの……ごめんね、私がしっかりと他の人も育てておけば良かったわ」
「ユリナ、そんなことは言うな。お人好しが過ぎるよ」
レオルド様はまたお姉さまの手を握り締めていた。もう、何も言うまい。
「ねえ、アメリア。私で良ければ、ちょっとお金を貸してあげるわよ」
「えっ? でも……」
「ちなみに、これがこの前もらったお給料の明細なのだけど……」
そう言って、お姉さまから受け取ったそれを見て、あたしは目玉が飛び出しそうになった。
「……か、勝ち組すぎる」
もはや、嫉妬も何もかも通り過ぎて、体がガクガク震え始めた。
顎もカタカタと震えて、奥歯がガタガタと鳴る。
「アメリア」
レオルド様が呼ぶ。
「は、はい?」
「もし、僕がユリナと結婚すれば、君は義理の妹ということになる。だから、君にも情けをかけてあげたいと思っている」
「あ、ありがとうございます……」
「だが、そのためには……分かっているね?」
美人が怒ると怖いって言うけど、それは美男もまた然り。あたしはすっくと立ち上がっていた。
「ア、アメリア?」
戸惑うお姉さまを前にして、あたしは両膝を地面についた。そして――
「――大変申し訳ありませんでした! 素敵に無敵すぎるお姉さま、どうかこのダメな妹をお救い下さいませええええええええええええええええええええぇ!」
思い切り、地面に額をこすりつけて。
もはや、ヤケクソも良い所だった。
あたしの背筋が凍るのに比例して、ティーカップの中にある紅茶も冷めて行くようだった。
「あ、あの、あたしは……」
何とか言葉を発しようとした時、お姉さまの手がそれを制した。
「レオルド様、お気持ち感謝いたします。けれども、これは私と妹の問題ですから。どうか、そこまで深く追及なさらないで下さい」
「お姉さま……」
「ああ、すまない、ユリナ。僕としたことが……申し訳ない」
お姉さまに頭を下げてから、
「アメリア、君にもすまなかった」
「い、いえ、そんな……」
「紅茶が冷めてしまったね、入れ直そうか」
「こ、このままでも平気です。いただきます」
あたしは慌ててティーカップをかたむけて飲んだ。
「お、美味しいです、冷めていても」
「そうかい、ありがとう。君たち姉妹は、何だかあまり似ていないね」
「よ、よく言われます」
あたしはぎこちなく笑いながらそう言った。
「ユリナは、どうだい? 僕が入れた紅茶の味は」
「……はい、とても美味しいです。レオルド様が入れて下さったおかげで」
「ユリナ……」
2人は見つめ合う。え、何よこの空気……
「……あ、あの、ちょっとお伺いしますが……お姉さまとレオルド様のご関係は……?」
「ん? ああ、僕はユリナと結婚するつもりだよ」
ズゴーン!と特大のハンマーでぶん殴られるようだった。
「レ、レオルド様……改めて言われると、恥ずかしいです。妹の前で……」
「でも、ユリナ。何度でも言っておかないと、君が誰かに奪われないか心配で」
レオルド様は、お姉さまの見つめながら、キュッと手を握った。
「大丈夫ですよ。例え離れていたとしても、私はいつもあなたを想っています」
「ユリナ……僕もだよ」
あたしはあんぐりと顎が外れそうになる。
「……あ、あの、もしかしてなんですけど……この前、レオルド様と一緒に街にいたのって……」
「ああ、ユリナだよ」
あっさりと言われる。
「けど、僕のせいで思った以上にギャラリーが集まってしまったからね。その後、2人きりで……おっと、これは内緒の話だ」
「レ、レオルド様」
あたしの前で、2人はイチャついていた。何かもう、ここまで来ると敗北感が強過ぎて、何も言えないレベルだ。
「そういえば、アメリア。何だか困った様子だったけど……私で良ければ、相談に乗るわよ?」
「へっ? いや、その……」
今までのあたしなら、プライドが邪魔をして正直に話せなかっただろう。けど、ここまでくるともう、プライドもクソもないから……
「……実は、ブリックス様の事業がピンチで……お金もヤバそうなの」
「そうなの……ごめんね、私がしっかりと他の人も育てておけば良かったわ」
「ユリナ、そんなことは言うな。お人好しが過ぎるよ」
レオルド様はまたお姉さまの手を握り締めていた。もう、何も言うまい。
「ねえ、アメリア。私で良ければ、ちょっとお金を貸してあげるわよ」
「えっ? でも……」
「ちなみに、これがこの前もらったお給料の明細なのだけど……」
そう言って、お姉さまから受け取ったそれを見て、あたしは目玉が飛び出しそうになった。
「……か、勝ち組すぎる」
もはや、嫉妬も何もかも通り過ぎて、体がガクガク震え始めた。
顎もカタカタと震えて、奥歯がガタガタと鳴る。
「アメリア」
レオルド様が呼ぶ。
「は、はい?」
「もし、僕がユリナと結婚すれば、君は義理の妹ということになる。だから、君にも情けをかけてあげたいと思っている」
「あ、ありがとうございます……」
「だが、そのためには……分かっているね?」
美人が怒ると怖いって言うけど、それは美男もまた然り。あたしはすっくと立ち上がっていた。
「ア、アメリア?」
戸惑うお姉さまを前にして、あたしは両膝を地面についた。そして――
「――大変申し訳ありませんでした! 素敵に無敵すぎるお姉さま、どうかこのダメな妹をお救い下さいませええええええええええええええええええええぇ!」
思い切り、地面に額をこすりつけて。
もはや、ヤケクソも良い所だった。
45
お気に入りに追加
919
あなたにおすすめの小説
追放された令嬢は英雄となって帰還する
影茸
恋愛
代々聖女を輩出して来た家系、リースブルク家。
だがその1人娘であるラストは聖女と認められるだけの才能が無く、彼女は冤罪を被せられ、婚約者である王子にも婚約破棄されて国を追放されることになる。
ーーー そしてその時彼女はその国で唯一自分を助けようとしてくれた青年に恋をした。
そしてそれから数年後、最強と呼ばれる魔女に弟子入りして英雄と呼ばれるようになったラストは、恋心を胸に国へと帰還する……
※この作品は最初のプロローグだけを現段階だけで短編として投稿する予定です!
【完結】公爵家のメイドたる者、炊事、洗濯、剣に魔法に結界術も完璧でなくてどうします?〜聖女様、あなたに追放されたおかげで私は幸せになれました
冬月光輝
恋愛
ボルメルン王国の聖女、クラリス・マーティラスは王家の血を引く大貴族の令嬢であり、才能と美貌を兼ね備えた完璧な聖女だと国民から絶大な支持を受けていた。
代々聖女の家系であるマーティラス家に仕えているネルシュタイン家に生まれたエミリアは、大聖女お付きのメイドに相応しい人間になるために英才教育を施されており、クラリスの側近になる。
クラリスは能力はあるが、傍若無人の上にサボり癖のあり、すぐに癇癪を起こす手の付けられない性格だった。
それでも、エミリアは家を守るために懸命に彼女に尽くし努力する。クラリスがサボった時のフォローとして聖女しか使えないはずの結界術を独学でマスターするほどに。
そんな扱いを受けていたエミリアは偶然、落馬して大怪我を負っていたこの国の第四王子であるニックを助けたことがきっかけで、彼と婚約することとなる。
幸せを掴んだ彼女だが、理不尽の化身であるクラリスは身勝手な理由でエミリアをクビにした。
さらに彼女はクラリスによって第四王子を助けたのは自作自演だとあらぬ罪をでっち上げられ、家を潰されるかそれを飲み込むかの二択を迫られ、冤罪を被り国家追放に処される。
絶望して隣国に流れた彼女はまだ気付いていなかった、いつの間にかクラリスを遥かに超えるほどハイスペックになっていた自分に。
そして、彼女こそ国を守る要になっていたことに……。
エミリアが隣国で力を認められ巫女になった頃、ボルメルン王国はわがまま放題しているクラリスに反発する動きが見られるようになっていた――。
冤罪を受けたため、隣国へ亡命します
しろねこ。
恋愛
「お父様が投獄?!」
呼び出されたレナンとミューズは驚きに顔を真っ青にする。
「冤罪よ。でも事は一刻も争うわ。申し訳ないけど、今すぐ荷づくりをして頂戴。すぐにこの国を出るわ」
突如母から言われたのは生活を一変させる言葉だった。
友人、婚約者、国、屋敷、それまでの生活をすべて捨て、令嬢達は手を差し伸べてくれた隣国へと逃げる。
冤罪を晴らすため、奮闘していく。
同名主人公にて様々な話を書いています。
立場やシチュエーションを変えたりしていますが、他作品とリンクする場所も多々あります。
サブキャラについてはスピンオフ的に書いた話もあったりします。
変わった作風かと思いますが、楽しんで頂けたらと思います。
ハピエンが好きなので、最後は必ずそこに繋げます!
小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。
【完結】小国の王太子に捨てられたけど、大国の王太子に溺愛されています。え?私って聖女なの?
如月ぐるぐる
恋愛
王太子との婚約を一方的に破棄され、王太子は伯爵令嬢マーテリーと婚約してしまう。
留学から帰ってきたマーテリーはすっかりあか抜けており、王太子はマーテリーに夢中。
政略結婚と割り切っていたが納得いかず、必死に説得するも、ありもしない罪をかぶせられ国外追放になる。
家族にも見捨てられ、頼れる人が居ない。
「こんな国、もう知らない!」
そんなある日、とある街で子供が怪我をしたため、術を使って治療を施す。
アトリアは弱いながらも治癒の力がある。
子供の怪我の治癒をした時、ある男性に目撃されて旅に付いて来てしまう。
それ以降も街で見かけた体調の悪い人を治癒の力で回復したが、気が付くとさっきの男性がずっとそばに付いて来る。
「ぜひ我が国へ来てほしい」
男性から誘いを受け、行く当てもないため付いて行く。が、着いた先は祖国ヴァルプールとは比較にならない大国メジェンヌ……の王城。
「……ん!?」
聖女召喚に巻き込まれた挙句、ハズレの方と蔑まれていた私が隣国の過保護な王子に溺愛されている件
バナナマヨネーズ
恋愛
聖女召喚に巻き込まれた志乃は、召喚に巻き込まれたハズレの方と言われ、酷い扱いを受けることになる。
そんな中、隣国の第三王子であるジークリンデが志乃を保護することに。
志乃を保護したジークリンデは、地面が泥濘んでいると言っては、志乃を抱き上げ、用意した食事が熱ければ火傷をしないようにと息を吹きかけて冷ましてくれるほど過保護だった。
そんな過保護すぎるジークリンデの行動に志乃は戸惑うばかり。
「私は子供じゃないからそんなことしなくてもいいから!」
「いや、シノはこんなに小さいじゃないか。だから、俺は君を命を懸けて守るから」
「お…重い……」
「ん?ああ、ごめんな。その荷物は俺が持とう」
「これくらい大丈夫だし、重いってそういうことじゃ……。はぁ……」
過保護にされたくない志乃と過保護にしたいジークリンデ。
二人は共に過ごすうちに知ることになる。その人がお互いの運命の人なのだと。
全31話
そんなに聖女になりたいなら、譲ってあげますよ。私は疲れたので、やめさせてもらいます。
木山楽斗
恋愛
聖女であるシャルリナ・ラーファンは、その激務に嫌気が差していた。
朝早く起きて、日中必死に働いして、夜遅くに眠る。そんな大変な生活に、彼女は耐えられくなっていたのだ。
そんな彼女の元に、フェルムーナ・エルキアードという令嬢が訪ねて来た。彼女は、聖女になりたくて仕方ないらしい。
「そんなに聖女になりたいなら、譲ってあげると言っているんです」
「なっ……正気ですか?」
「正気ですよ」
最初は懐疑的だったフェルムーナを何とか説得して、シャルリナは無事に聖女をやめることができた。
こうして、自由の身になったシャルリナは、穏やかな生活を謳歌するのだった。
※この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」にも掲載しています。
※下記の関連作品を読むと、より楽しめると思います。
婚約破棄され聖女も辞めさせられたので、好きにさせていただきます。
松石 愛弓
恋愛
国を守る聖女で王太子殿下の婚約者であるエミル・ファーナは、ある日突然、婚約破棄と国外追放を言い渡される。
全身全霊をかけて国の平和を祈り続けてきましたが、そういうことなら仕方ないですね。休日も無く、責任重すぎて大変でしたし、王太子殿下は思いやりの無い方ですし、王宮には何の未練もございません。これからは自由にさせていただきます♪
国外追放を受けた聖女ですが、戻ってくるよう懇願されるけどイケメンの国王陛下に愛されてるので拒否します!!
真時ぴえこ
恋愛
「ルーミア、そなたとの婚約は破棄する!出ていけっ今すぐにだ!」
皇太子アレン殿下はそうおっしゃられました。
ならよいでしょう、聖女を捨てるというなら「どうなっても」知りませんからね??
国外追放を受けた聖女の私、ルーミアはイケメンでちょっとツンデレな国王陛下に愛されちゃう・・・♡
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる