上 下
5 / 21

第5話 聖女さまのお仕事

しおりを挟む
 朝食後、神殿に務めるみなさんの会合が開かれました。

「既にご存知の通り、新たなる聖女ユリナ様が誕生されました。つきましては、この一件を王家に報告をした次第でございます」

 神官長のオクトレイル様がおっしゃいます。

「まだ返事は来ておりませんが、近い内に王城へと招かれることでしょう。ユリナ様、どうか心の準備をお願いいたします」

「か、かしこまりました。王城に招かれるなんて、緊張しますね」

「それくらい、聖女さまは大事な存在ですから。しかも、先代が亡きあと、しばらくずっと不在でしたからね。国王陛下もお喜びのことでしょう。これでまた国の平和が守られると」

「あはは……」

 役割を与えられて嬉しい気持ちはもちろんありますが、それでもやはりプレッシャーが大きすぎて不安な気持ちも抱いてしまいます。所詮はまだまだ小娘の私が果たして、この国を守ることが出来るのかと……

『大丈夫です、あなたら出来ます』

 ふと、神託を賜りました。私はキュッと気持ちが引き締まります。

「あの、オクトレイル様。聖女としての具体的なお仕事、もっと教えて下さい」

 私はやる気が湧いて来たので、積極的に問いかけます。

「かしこまりました。聖女たるユリナ様には、朝、昼、晩に1回ずつ、お祈りをしていただきます」

「はい。それから?」

「あとは……ゆっくりなさって下さい」

「……えっ?」

 私は目をパチクリとさせます。

「そ、それだけで良いのですか?」

「まあ、他にも儀式の際に立ち会っていただくなど、やることはございますが……基本的なお仕事はその1日3回のお祈りだけです」

 な、何と……それはまた……

「も、申し訳ないので、他にも何かお仕事下さい」

「ユリナ様、お気持ちはとてもありがたいです。しかし、あまり無理をなさって体調を崩されると困りますので……」

「平気です。以前はもっと、ハードワークをこなしていましたので」

 私が大きくなると、両親……元両親は仕事を丸投げして来たので。そういえば、私がいなくなってから、ちゃんと仕事は回せているのでしょうか? 貴族と家でも、ただ優雅に過ごすだけではなく、その家を存続させて行くために色々な仕事をこなさなければならないのですから。

「では……私の書類チェックをお手伝いしていただけますか?」

「かしこまりました」

 本当は、それだけだと全然物足りないのですが。まあ、まだ聖女としての仕事を始めてばかりですから。確実に安心してこなせるようになるまでは、きちんと様子を見ましょう。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

わたしを嫌う妹の企みで追放されそうになりました。だけど、保護してくれた公爵様から溺愛されて、すごく幸せです。

バナナマヨネーズ
恋愛
山田華火は、妹と共に異世界に召喚されたが、妹の浅はかな企みの所為で追放されそうになる。 そんな華火を救ったのは、若くしてシグルド公爵となったウェインだった。 ウェインに保護された華火だったが、この世界の言葉を一切理解できないでいた。 言葉が分からない華火と、華火に一目で心を奪われたウェインのじりじりするほどゆっくりと進む関係性に、二人の周囲の人間はやきもきするばかり。 この物語は、理不尽に異世界に召喚された少女とその少女を保護した青年の呆れるくらいゆっくりと進む恋の物語である。 3/4 タイトルを変更しました。 旧タイトル「どうして異世界に召喚されたのかがわかりません。だけど、わたしを保護してくれたイケメンが超過保護っぽいことはわかります。」 3/10 翻訳版を公開しました。本編では異世界語で進んでいた会話を日本語表記にしています。なお、翻訳箇所がない話数には、タイトルに 〃 をつけてますので、本編既読の場合は飛ばしてもらって大丈夫です ※小説家になろう様にも掲載しています。

聖女召喚に巻き込まれた挙句、ハズレの方と蔑まれていた私が隣国の過保護な王子に溺愛されている件

バナナマヨネーズ
恋愛
聖女召喚に巻き込まれた志乃は、召喚に巻き込まれたハズレの方と言われ、酷い扱いを受けることになる。 そんな中、隣国の第三王子であるジークリンデが志乃を保護することに。 志乃を保護したジークリンデは、地面が泥濘んでいると言っては、志乃を抱き上げ、用意した食事が熱ければ火傷をしないようにと息を吹きかけて冷ましてくれるほど過保護だった。 そんな過保護すぎるジークリンデの行動に志乃は戸惑うばかり。 「私は子供じゃないからそんなことしなくてもいいから!」 「いや、シノはこんなに小さいじゃないか。だから、俺は君を命を懸けて守るから」 「お…重い……」 「ん?ああ、ごめんな。その荷物は俺が持とう」 「これくらい大丈夫だし、重いってそういうことじゃ……。はぁ……」 過保護にされたくない志乃と過保護にしたいジークリンデ。 二人は共に過ごすうちに知ることになる。その人がお互いの運命の人なのだと。 全31話

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

公爵令嬢が婚約破棄され、弟の天才魔導師が激怒した。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています

国外追放を受けた聖女ですが、戻ってくるよう懇願されるけどイケメンの国王陛下に愛されてるので拒否します!!

真時ぴえこ
恋愛
「ルーミア、そなたとの婚約は破棄する!出ていけっ今すぐにだ!」  皇太子アレン殿下はそうおっしゃられました。  ならよいでしょう、聖女を捨てるというなら「どうなっても」知りませんからね??  国外追放を受けた聖女の私、ルーミアはイケメンでちょっとツンデレな国王陛下に愛されちゃう・・・♡

婚約破棄された令嬢の父親は最強?

岡暁舟
恋愛
婚約破棄された公爵令嬢マリアの父親であるフレンツェルは世界最強と謳われた兵士だった。そんな彼が、不義理である婚約破棄に激怒して元婚約者である第一王子スミスに復讐する物語。

【完結】小国の王太子に捨てられたけど、大国の王太子に溺愛されています。え?私って聖女なの?

如月ぐるぐる
恋愛
王太子との婚約を一方的に破棄され、王太子は伯爵令嬢マーテリーと婚約してしまう。 留学から帰ってきたマーテリーはすっかりあか抜けており、王太子はマーテリーに夢中。 政略結婚と割り切っていたが納得いかず、必死に説得するも、ありもしない罪をかぶせられ国外追放になる。 家族にも見捨てられ、頼れる人が居ない。 「こんな国、もう知らない!」 そんなある日、とある街で子供が怪我をしたため、術を使って治療を施す。 アトリアは弱いながらも治癒の力がある。 子供の怪我の治癒をした時、ある男性に目撃されて旅に付いて来てしまう。 それ以降も街で見かけた体調の悪い人を治癒の力で回復したが、気が付くとさっきの男性がずっとそばに付いて来る。 「ぜひ我が国へ来てほしい」 男性から誘いを受け、行く当てもないため付いて行く。が、着いた先は祖国ヴァルプールとは比較にならない大国メジェンヌ……の王城。 「……ん!?」

舌を切られて追放された令嬢が本物の聖女でした。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

処理中です...