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番外編 兄と弟

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 人生で最大の屈辱を受けたあの日から、彼の人生は変わった。

「ホリミック、お前を国外追放とする」

 国王となった兄に、そう告げられた。

「そ、そんな……俺、ちゃんと反省するから。何でも下働きをするから。この宮殿においてくれよ!」

「ダメだ。お前の顔を見ると、シアラが嫌なことを思い出すかもしれないだろ」

「うっ……けど、あの女は……」

「あの女?」

「……王妃さまは、強い女だから、平気だと思います」

「確かに、あいつは強い女だ。自分でもそう言っていた。けど、同時に脆い部分を持った、普通の女でもある。だから、分かってくれ」

 優しい顔で肩をポンと叩かれると、何も反論できなくなった。

「……俺はもう、この家の帰って来られないのか」

「……10年」

「えっ?」

「外で勉強して来い」

「え、それって……」

「お前のがんばり次第では、5年、3年となるかもしれない。ただ、いつまでも変わらないままなら、一生この家に帰って来られないぞ」

 兄のゼリオルは言う。まだ国王になりたての彼だけど、すっかり威厳を纏っていた。

 弟のホリミックは、自分と彼との差をまざまざと見せつけられるようだった。

 思えば小さい頃からずっと、兄に対して劣等感を抱き続けて来た。

 兄がいなくなって自分が王太子になった際も、一時は彼みたいになろうと努力したこともあった。

 けど、それはすぐに無理なことだと分かり、努力することをあきらめて、バカ王太子に成り下がっていた。

「……兄上……いや、国王」

「兄上で良いよ」

「俺……今からでも、やり直せるかな?」

 そう尋ねるホリミックは、久しぶりに純粋な瞳で兄を見ていた。

「簡単じゃないけどな。お前が本気で変わろうと思うなら、変われるさ」

 兄は優しい笑顔を向けてくれる。

「……そっか」

 兄弟は久しぶりに笑い合った。




 fin




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