15 / 24
第15話 帰って来た男
しおりを挟む
「シアラ、昨晩は大丈夫だったか? 具合が悪いと聞いて、心配したぞ」
「ごめんなさい、お父さま。でも、もう平気だから」
「確かに、何だか顔色が良いわね。何か良いことでもあったかしら?」
「な、何でもありませんよ、お母さま」
私は赤面しそうになるのを押さえながら、朝食をいただく。
その後、身なりを整えてから、いつも通りに仕事を始めた。
とても、爽やかな気持ちで。
◇
昨晩から、ずっと疼きが止まらない。
彼に触れてから、特におかしくなってしまったようだ。
「うっ……」
マミの目の前で、男が苦悶の表情を浮かべる。
「マ、マミちゃん、そろそろ仕事に行かないとだから……」
「あっそ、別に良いけど……」
マミが体から降りると、彼はヘナヘナとしながら安堵の息を漏らす。
「まあ、セフレは腐るほどいるから良いんだけどね」
でも、どれだけの男に抱かれても、この疼きは収まりそうにない。
「……オルさん、だっけ? 抱き付いた時、さりげに触れたアレ……めっちゃご立派だったし」
マミは基本的に、嫉妬はしない。したことがない。それは彼女が女として魅力的だから、大抵の男が首ったけになってくれるので、嫉妬することがないのだ。
貴族の作法とか学問に関してはからっきしだけど、それに関しては興味がないからどうでも良いと思っている。
けど、もし……彼が他の女を抱いていたとしたら、それは死ぬほど嫉妬してしまうだろう。
「また、彼に迫っちゃおうかな。あなたに抱いてもらうために、堕胎までしたのよって……それはドン引きか」
マミは1人ほくそ笑んでいた。
◇
ホリミックは宮殿の自室にて、ひたすらにボケッとしていた。
「……ああ、マミの乳が揉みたい」
彼女が流産したことで、縁談も流れてしまった。
彼は王太子だから、その気になれば抱く女は適当に見繕えるかもしれない。
けどまたそんなことをすれば、さらに両親の激昂を買ってしまう。いや、今の段階では、既に怒りを通して呆れられている。
ならば、いっそのこと好き勝手してしまおうか……ドンドン、と扉が叩かれる。
「ホリミック、いるか?」
父である国王の声がして、ビクリとした。
「な、何でしょうか?」
また、説教でもされるのかと思い、ホリミックは怯えてしまう。
「開けるぞ」
扉が開くと、また険しい表情の父がやって来ると思ったが……意外にも笑顔だった。
「ち、父上? 何だか、機嫌がよろしいような……」
「ああ、聞いて驚け、バカ息子」
国王は言う。
「帰って来たのだ」
「えっ? もしかして、マミが?」
「そんなアバズレは知らん」
「じゃあ、誰が帰って来たんですか?」
ホリミックが首をかしげると、国王はニヤリとして、背後の様子を伺う。
「おい、お前。いつまで息子にジャレている」
「だって、あなた、嬉しいんだもの。地獄から天国に昇った気分よ」
と、王妃である母親もいつになくご機嫌な様子だ。
「だから、一体誰が帰って来て……」
カッ、と音がした。
そして、1人の人物が入って来る。
「……えっ?」
ホリミックは絶句した。
「――よう、久しぶりだな、弟よ」
彼はニカッと笑って言う。
「……あ、兄上?」
「ごめんなさい、お父さま。でも、もう平気だから」
「確かに、何だか顔色が良いわね。何か良いことでもあったかしら?」
「な、何でもありませんよ、お母さま」
私は赤面しそうになるのを押さえながら、朝食をいただく。
その後、身なりを整えてから、いつも通りに仕事を始めた。
とても、爽やかな気持ちで。
◇
昨晩から、ずっと疼きが止まらない。
彼に触れてから、特におかしくなってしまったようだ。
「うっ……」
マミの目の前で、男が苦悶の表情を浮かべる。
「マ、マミちゃん、そろそろ仕事に行かないとだから……」
「あっそ、別に良いけど……」
マミが体から降りると、彼はヘナヘナとしながら安堵の息を漏らす。
「まあ、セフレは腐るほどいるから良いんだけどね」
でも、どれだけの男に抱かれても、この疼きは収まりそうにない。
「……オルさん、だっけ? 抱き付いた時、さりげに触れたアレ……めっちゃご立派だったし」
マミは基本的に、嫉妬はしない。したことがない。それは彼女が女として魅力的だから、大抵の男が首ったけになってくれるので、嫉妬することがないのだ。
貴族の作法とか学問に関してはからっきしだけど、それに関しては興味がないからどうでも良いと思っている。
けど、もし……彼が他の女を抱いていたとしたら、それは死ぬほど嫉妬してしまうだろう。
「また、彼に迫っちゃおうかな。あなたに抱いてもらうために、堕胎までしたのよって……それはドン引きか」
マミは1人ほくそ笑んでいた。
◇
ホリミックは宮殿の自室にて、ひたすらにボケッとしていた。
「……ああ、マミの乳が揉みたい」
彼女が流産したことで、縁談も流れてしまった。
彼は王太子だから、その気になれば抱く女は適当に見繕えるかもしれない。
けどまたそんなことをすれば、さらに両親の激昂を買ってしまう。いや、今の段階では、既に怒りを通して呆れられている。
ならば、いっそのこと好き勝手してしまおうか……ドンドン、と扉が叩かれる。
「ホリミック、いるか?」
父である国王の声がして、ビクリとした。
「な、何でしょうか?」
また、説教でもされるのかと思い、ホリミックは怯えてしまう。
「開けるぞ」
扉が開くと、また険しい表情の父がやって来ると思ったが……意外にも笑顔だった。
「ち、父上? 何だか、機嫌がよろしいような……」
「ああ、聞いて驚け、バカ息子」
国王は言う。
「帰って来たのだ」
「えっ? もしかして、マミが?」
「そんなアバズレは知らん」
「じゃあ、誰が帰って来たんですか?」
ホリミックが首をかしげると、国王はニヤリとして、背後の様子を伺う。
「おい、お前。いつまで息子にジャレている」
「だって、あなた、嬉しいんだもの。地獄から天国に昇った気分よ」
と、王妃である母親もいつになくご機嫌な様子だ。
「だから、一体誰が帰って来て……」
カッ、と音がした。
そして、1人の人物が入って来る。
「……えっ?」
ホリミックは絶句した。
「――よう、久しぶりだな、弟よ」
彼はニカッと笑って言う。
「……あ、兄上?」
14
お気に入りに追加
1,223
あなたにおすすめの小説

皇太子殿下の御心のままに~悪役は誰なのか~
桜木弥生
恋愛
「この場にいる皆に証人となって欲しい。私、ウルグスタ皇太子、アーサー・ウルグスタは、レスガンティ公爵令嬢、ロベリア・レスガンティに婚約者の座を降りて貰おうと思う」
ウルグスタ皇国の立太子式典の最中、皇太子になったアーサーは婚約者のロベリアへの急な婚約破棄宣言?
◆本編◆
婚約破棄を回避しようとしたけれど物語の強制力に巻き込まれた公爵令嬢ロベリア。
物語の通りに進めようとして画策したヒロインエリー。
そして攻略者達の後日談の三部作です。
◆番外編◆
番外編を随時更新しています。
全てタイトルの人物が主役となっています。
ありがちな設定なので、もしかしたら同じようなお話があるかもしれません。もし似たような作品があったら大変申し訳ありません。
なろう様にも掲載中です。
王太子殿下から婚約破棄されたのは冷たい私のせいですか?
ねーさん
恋愛
公爵令嬢であるアリシアは王太子殿下と婚約してから十年、王太子妃教育に勤しんで来た。
なのに王太子殿下は男爵令嬢とイチャイチャ…諫めるアリシアを悪者扱い。「アリシア様は殿下に冷たい」なんて男爵令嬢に言われ、結果、婚約は破棄。
王太子妃になるため自由な時間もなく頑張って来たのに、私は駒じゃありません!

【完結済】次こそは愛されるかもしれないと、期待した私が愚かでした。
こゆき
恋愛
リーゼッヒ王国、王太子アレン。
彼の婚約者として、清く正しく生きてきたヴィオラ・ライラック。
皆に祝福されたその婚約は、とてもとても幸せなものだった。
だが、学園にとあるご令嬢が転入してきたことにより、彼女の生活は一変してしまう。
何もしていないのに、『ヴィオラがそのご令嬢をいじめている』とみんなが言うのだ。
どれだけ違うと訴えても、誰も信じてはくれなかった。
絶望と悲しみにくれるヴィオラは、そのまま隣国の王太子──ハイル帝国の王太子、レオへと『同盟の証』という名の厄介払いとして嫁がされてしまう。
聡明な王子としてリーゼッヒ王国でも有名だったレオならば、己の無罪を信じてくれるかと期待したヴィオラだったが──……
※在り来りなご都合主義設定です
※『悪役令嬢は自分磨きに忙しい!』の合間の息抜き小説です
※つまりは行き当たりばったり
※不定期掲載な上に雰囲気小説です。ご了承ください
4/1 HOT女性向け2位に入りました。ありがとうございます!

幼馴染の親友のために婚約破棄になりました。裏切り者同士お幸せに
hikari
恋愛
侯爵令嬢アントニーナは王太子ジョルジョ7世に婚約破棄される。王太子の新しい婚約相手はなんと幼馴染の親友だった公爵令嬢のマルタだった。
二人は幼い時から王立学校で仲良しだった。アントニーナがいじめられていた時は身を張って守ってくれた。しかし、そんな友情にある日亀裂が入る。

婚約者を友人に奪われて~婚約破棄後の公爵令嬢~
tartan321
恋愛
成績優秀な公爵令嬢ソフィアは、婚約相手である王子のカリエスの面倒を見ていた。
ある日、級友であるリリーがソフィアの元を訪れて……。

【完結】許婚の子爵令息から婚約破棄を宣言されましたが、それを知った公爵家の幼馴染から溺愛されるようになりました
八重
恋愛
「ソフィ・ルヴェリエ! 貴様とは婚約破棄する!」
子爵令息エミール・エストレが言うには、侯爵令嬢から好意を抱かれており、男としてそれに応えねばならないというのだ。
失意のどん底に突き落とされたソフィ。
しかし、婚約破棄をきっかけに幼馴染の公爵令息ジル・ルノアールから溺愛されることに!
一方、エミールの両親はソフィとの婚約破棄を知って大激怒。
エミールの両親の命令で『好意の証拠』を探すが、侯爵令嬢からの好意は彼の勘違いだった。
なんとかして侯爵令嬢を口説くが、婚約者のいる彼女がなびくはずもなく……。
焦ったエミールはソフィに復縁を求めるが、時すでに遅し──
悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。
香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。
皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。
さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。
しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。
それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?

断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません
天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。
私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。
処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。
魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる