乳だけ立派なバカ女に婚約者の王太子を奪われました。別にそんなバカ男はいらないから復讐するつもりは無かったけど……

三葉 空

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第15話 帰って来た男

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「シアラ、昨晩は大丈夫だったか? 具合が悪いと聞いて、心配したぞ」

「ごめんなさい、お父さま。でも、もう平気だから」

「確かに、何だか顔色が良いわね。何か良いことでもあったかしら?」

「な、何でもありませんよ、お母さま」

 私は赤面しそうになるのを押さえながら、朝食をいただく。

 その後、身なりを整えてから、いつも通りに仕事を始めた。

 とても、爽やかな気持ちで。




      ◇




 昨晩から、ずっと疼きが止まらない。

 彼に触れてから、特におかしくなってしまったようだ。

「うっ……」

 マミの目の前で、男が苦悶の表情を浮かべる。

「マ、マミちゃん、そろそろ仕事に行かないとだから……」

「あっそ、別に良いけど……」

 マミが体から降りると、彼はヘナヘナとしながら安堵の息を漏らす。

「まあ、セフレは腐るほどいるから良いんだけどね」

 でも、どれだけの男に抱かれても、この疼きは収まりそうにない。

「……オルさん、だっけ? 抱き付いた時、さりげに触れたアレ……めっちゃご立派だったし」

 マミは基本的に、嫉妬はしない。したことがない。それは彼女が女として魅力的だから、大抵の男が首ったけになってくれるので、嫉妬することがないのだ。

 貴族の作法とか学問に関してはからっきしだけど、それに関しては興味がないからどうでも良いと思っている。

 けど、もし……彼が他の女を抱いていたとしたら、それは死ぬほど嫉妬してしまうだろう。

「また、彼に迫っちゃおうかな。あなたに抱いてもらうために、堕胎までしたのよって……それはドン引きか」

 マミは1人ほくそ笑んでいた。




      ◇




 ホリミックは宮殿の自室にて、ひたすらにボケッとしていた。

「……ああ、マミの乳が揉みたい」

 彼女が流産したことで、縁談も流れてしまった。

 彼は王太子だから、その気になれば抱く女は適当に見繕えるかもしれない。

 けどまたそんなことをすれば、さらに両親の激昂を買ってしまう。いや、今の段階では、既に怒りを通して呆れられている。

 ならば、いっそのこと好き勝手してしまおうか……ドンドン、と扉が叩かれる。

「ホリミック、いるか?」

 父である国王の声がして、ビクリとした。

「な、何でしょうか?」

 また、説教でもされるのかと思い、ホリミックは怯えてしまう。

「開けるぞ」

 扉が開くと、また険しい表情の父がやって来ると思ったが……意外にも笑顔だった。

「ち、父上? 何だか、機嫌がよろしいような……」

「ああ、聞いて驚け、バカ息子」

 国王は言う。

「帰って来たのだ」

「えっ? もしかして、マミが?」

「そんなアバズレは知らん」

「じゃあ、誰が帰って来たんですか?」

 ホリミックが首をかしげると、国王はニヤリとして、背後の様子を伺う。

「おい、お前。いつまで息子にジャレている」

「だって、あなた、嬉しいんだもの。地獄から天国に昇った気分よ」

 と、王妃である母親もいつになくご機嫌な様子だ。

「だから、一体誰が帰って来て……」

 カッ、と音がした。

 そして、1人の人物が入って来る。

「……えっ?」

 ホリミックは絶句した。

「――よう、久しぶりだな、弟よ」

 彼はニカッと笑って言う。

「……あ、兄上?」


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