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第12話 女として優れている女

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 程よく汗をかいた女は、その場に背を向けていた。

「はぁ、はぁ……こんなジジイを相手に、本気を出しおって」

「あたしの乳揺れ、すごかったっしょ?」

「ああ、確かに……良い冥土の土産だ」

「あはは、ウケる~。けど、オジサンのおかげで助かったよ~。おかげで、バカ男の子供を下ろせたし」

「マミ、このことはくれぐれも内緒だぞ? もし、バレたらわしは処刑される。もちろん、お前もだぞ?」

「分かっているって~」

「ところで、次はいつ相手をしてくれる?」

「ん? その内、気が向いたらね~」

「それ、絶対に気が向かん奴じゃろ」

 とか言われつつ、マミはその場を後にした。

「さてと……」

 マミは大きく息を吸い込むと、ただでさえ大きい胸を膨らませた。

「ふぅ~」

 そして、己の大きな乳とつい先日まで命を宿していた子宮に意識を向ける。

 女としての本能を最大限に引き出し、女としての嗅覚を発動させる。

 あの最上のオスを探すために。マミは貴族のくせにロクに学もないバカと揶揄されているが、女としての武器だけでのし上がれるだけの器であることもまた確かだ。

 ちなみに、王太子のホリミックは本当に無能なだけのバカである。

「……あッ」

 道端で、マミが艶めかしい声を漏らすと、男たちがみんな振り向いた。

「お、お嬢さん、どうしたの? どこか、具合でも悪いの?」

 思い切りマミの胸を見ながら、男は言う。マミは貴族であるが、そこまで貴族意識はない。平民でも、良い男ならば優しく接する。けど、今声をかけて来たのは、ただのエロオヤジだから……

「あたし、伯爵令嬢だけど?」

「ひッ、申し訳ありません!」

 と強引に貴族パワーでねじ伏せて、道をズンズンと歩いて行く。

 最初は不機嫌そうだったその表情が、次第に恍惚の笑みを湛えて行く。

(いる、この近くに、あのお方が……)

 マミはズンズン、と歩調を強めて行く。

 そして――見つけた。マミは獲物を前にした獣のように、舌なめずりをする。

 普通に声をかけるのではなく――自慢の大きな乳をわざと背中に当てた。

「きゃっ」

「んっ?」

 彼は振り向く。

(うっわ、間近で見ると本当にイケメン過ぎて、意識飛びそう……)

 けど、何とか保つと、

「何だい、お嬢さん?」

「あ、ごめんなさい。胸が大きすぎて、足下が覚束なくて、ぶつかってしまいました~」

「へぇ」

 男の目が、マミの胸に向く。

(ふふ、見てる、見てる。所詮、イケメンも巨乳に弱いのよ!)

 普段、オヤジとか冴えない男に見られるのは嫌だけど、イケメンに見られると格段に気分が上がった。

(ゾ、ゾクゾクする~……)

 マミは今までにないくらい、乳と子宮が疼いていた。破裂しそうな勢いで。

「確かに、デカいな」

「でしょ~? 揉んでみます~?」

「ん? いや、良いわ」

 はっ?」

「いえいえ、遠慮なさらずに。あ、人通りで恥ずかしいですか? だったら、人気の無いところで」

「悪い、俺ほかに気になる女がいるからさ。君のこと、眼中にないんだ」

「……はっ?」

「ていうかさ、確かにその乳は大きな魅力かもしれないけど……それ以外に空っぽだと、誰からも本当に愛してもらえないぞ?」

 マミはにわかに体が震え出す。

(え、こいつ、いきなり会ったばかりで、何言ってくれちゃってんの? イケメンだからって、調子に乗り過ぎじゃね?)

 とブチキレそうになるが、彼の少しワイルドながらも整った顔立ち、ローブの上からでも想像できるたくましい肉体、そして、アレもきっと……想像しただけで、また別の意味で体が震えた。

「じゃあ、俺はこれで」

 男は立ち去ろうとする。

「あのッ」

 マミはその背中に抱き付いた。

「まだ、何か?」

「……あなたが言うように、確かにあたしは乳だけの空っぽな女です。けど、そんな自分を変えたくて、だから……1度で良いから、あたしを抱いて下さい」

「その心意気は認めるが、俺が君を抱くのは……」

 彼が言いかけた時――

「――オルさん?」

 マミはその声の主に目を向けた。その女は、美しく有能でありながらも、婚約者を奪い取られた哀れな女。

 そう、この自分によって――

「ごきげんよう、シアラ様」

 普段、ロクに貴族のあいさつもしないマミは、ここぞとばかりにそう言った。

「……マミさん」

 シアラは2人のことを見比べて……

「……ごめんなさい」

 サッと、背を向けてその場から立ち去る。

「シアラ!」

 追いかけようとする彼を、ギュッとホールドした。

「あなた、オルさんって言うんですね」

「良いから、離してくれ」

「ダメでーす。無理やり突き飛ばしたりしたら、叫びますよ?」

「ちっ……面倒な女だな」

「きゃー、ゾクゾクします」

 マミは終始、女として疼きまくっていた。




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