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第6話 きれいですね
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私がバカ王太子に婚約破棄を言い渡されてから数日後……
「全く、失礼しちゃうわ。こんな素敵なお姉さまに、婚約破棄を言い渡すなんて、あのエロボケ王太子!」
妹のエリーは怒りのせいか、がっつがっつと料理を食べながら言う。
「ありがとう、エリー。私のためにそんな風に怒ってくれて。けど、あなたの品位が下がってしまうから。落ち着いてちょうだい」
「でも、お姉さま……」
「それに、あなたの方からも大事な報告があるんじゃない?」
「えっ? お姉さま、どうして分かるの?」
「姉妹だからね」
私は軽くウィンクをして言う。
「何だ、エリー。言ってみなさい」
父も促す。
「あの、実は……勤め先の公爵子息さまに見初めていただきまして」
「まあ、本当に?」
「それは誠か!? あの優秀な男に!?」
「う、うん。最初、私なんてまだまだ未熟だから、お断りしようと思ったんだけど……これから、彼のために成長出来れば良いかなって」
「そうか、そうか。嬉しいなぁ……あっ」
父は顔を綻ばせてから、ハッとして私を見た。
「お父さま、気になさらないで。お母さまも、エリーも。これはめでたいことなんだから」「お姉さま……でもやっぱり、悔しいわ。こんなにも優しくて、優秀なお姉さまが……」
「でも、私はそんなに胸が立派ではないので……」
「そんなことないわ! 私、知っているもん! 確かに、大きさこそあのバカ女には及ばないけど、お姉さまのお乳はとてもきれいよ! 美乳だわ!」
「あ、ありがとう。でも、恥ずかしいから落ち着いてちょうだい」
「あ、ごめんなさい……」
エリーは顔を真っ赤にしてうつむいた。
「正直、もう平気なんて言ったら、嘘になるかもしれない。でも、私はもう前を向いているから。こんな風に優しくしてくれる、素敵な家族がいる訳だし」
私が言うと、家族みんなが瞳を潤ませてくれた。
「ちょっと、夜風に当たって来ます。今日は少し飲み過ぎたわ」
「大丈夫? 付き添おうか?」
「ありがとう、エリー。でも、平気よ」
私は1人で席を立った。家の外に出ると、今日は満月だった。
「きれい」
私はふと、思ってしまう。こんな素敵な満月をとなりで一緒に見てくれる、素敵な殿方が居てくれれば、と。まあ、そんな都合の良い話がすぐ転がり込んで来る訳が……
「――きれいですね」
ふいに響いた声に、ビクッとしてしまう。
「えっ、誰?」
普段、あまり物怖じしない私だけど。酔いが回っているせいだろうか?
その時、木陰の方から人影が歩み寄って来た。
私は警戒するけど……月明かりに照らされるその人物を見て、ハッとする。
目の覚めるようなイケメンだった。美形なんだけど、でもそこまで繊細過ぎないと言うか……プチワイルドみたいな。そんなひげボーボーでゴリマッチョって訳じゃないんだけど……男らしい、みたいな。
「あの、どちら様でしょうか?」
「旅の者です、お嬢さん」
彼は余裕の笑みを浮かべてそう言った。
「全く、失礼しちゃうわ。こんな素敵なお姉さまに、婚約破棄を言い渡すなんて、あのエロボケ王太子!」
妹のエリーは怒りのせいか、がっつがっつと料理を食べながら言う。
「ありがとう、エリー。私のためにそんな風に怒ってくれて。けど、あなたの品位が下がってしまうから。落ち着いてちょうだい」
「でも、お姉さま……」
「それに、あなたの方からも大事な報告があるんじゃない?」
「えっ? お姉さま、どうして分かるの?」
「姉妹だからね」
私は軽くウィンクをして言う。
「何だ、エリー。言ってみなさい」
父も促す。
「あの、実は……勤め先の公爵子息さまに見初めていただきまして」
「まあ、本当に?」
「それは誠か!? あの優秀な男に!?」
「う、うん。最初、私なんてまだまだ未熟だから、お断りしようと思ったんだけど……これから、彼のために成長出来れば良いかなって」
「そうか、そうか。嬉しいなぁ……あっ」
父は顔を綻ばせてから、ハッとして私を見た。
「お父さま、気になさらないで。お母さまも、エリーも。これはめでたいことなんだから」「お姉さま……でもやっぱり、悔しいわ。こんなにも優しくて、優秀なお姉さまが……」
「でも、私はそんなに胸が立派ではないので……」
「そんなことないわ! 私、知っているもん! 確かに、大きさこそあのバカ女には及ばないけど、お姉さまのお乳はとてもきれいよ! 美乳だわ!」
「あ、ありがとう。でも、恥ずかしいから落ち着いてちょうだい」
「あ、ごめんなさい……」
エリーは顔を真っ赤にしてうつむいた。
「正直、もう平気なんて言ったら、嘘になるかもしれない。でも、私はもう前を向いているから。こんな風に優しくしてくれる、素敵な家族がいる訳だし」
私が言うと、家族みんなが瞳を潤ませてくれた。
「ちょっと、夜風に当たって来ます。今日は少し飲み過ぎたわ」
「大丈夫? 付き添おうか?」
「ありがとう、エリー。でも、平気よ」
私は1人で席を立った。家の外に出ると、今日は満月だった。
「きれい」
私はふと、思ってしまう。こんな素敵な満月をとなりで一緒に見てくれる、素敵な殿方が居てくれれば、と。まあ、そんな都合の良い話がすぐ転がり込んで来る訳が……
「――きれいですね」
ふいに響いた声に、ビクッとしてしまう。
「えっ、誰?」
普段、あまり物怖じしない私だけど。酔いが回っているせいだろうか?
その時、木陰の方から人影が歩み寄って来た。
私は警戒するけど……月明かりに照らされるその人物を見て、ハッとする。
目の覚めるようなイケメンだった。美形なんだけど、でもそこまで繊細過ぎないと言うか……プチワイルドみたいな。そんなひげボーボーでゴリマッチョって訳じゃないんだけど……男らしい、みたいな。
「あの、どちら様でしょうか?」
「旅の者です、お嬢さん」
彼は余裕の笑みを浮かべてそう言った。
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