148 / 174
第4章
137 第4学院:1日目
しおりを挟む「………は?全焼したって……え、カミーユは?」
俺の質問にシリウスは綺麗な笑顔で首を振った。
『まだわからない。』
「え、え……なんでだ?偶然…じゃない?」
『アグニ、まだわからないよ。』
シリウスは俺を無理やりベットに横にさせた。
『明日も学校でしょ?お子様は寝なさい。』
「…………寝れるわけないだろ。」
『あはは、そうかそうか。』
シリウスはくるっと後ろを向いて俺の部屋のドアを開けた。
『クルトを起こすよ。学院に行きなさい。』
「え、」
『じゃあ。』
「あ、おい!!!」
シリウスは俺の呼びかけに応じず、そのまま部屋を去っていった。
・・・・・・
「お、アグニおはよう。いつ学院に戻ってきたんだ?」
寮内のダイニングでカールが俺を見つけ、声をかけてきた。
「……今朝、かな。まだ暗い時間だった…。」
「そうか。…なんか顔色悪いぞ?あんまり寝れてないのか?」
結局俺はあの後、寮に帰ってからも眠ることはなかった。
寮まで送ってくれたクルトには「何か情報が入り次第、すぐに知らせてほしい」ということを伝えていた。そんなすぐに情報が入るわけはないとわかっていても、落ち着くことができず眠れなかったのだ。
「しばらくしたら第4へ移動する。その間、少しだけでも目を閉じて身体を休ませたほうがいい。」
第4学院との交流会は、最初の2日半は第1があちらの学院へ行き、残りの日数は第4がこちらの学院に来る。そのため、初日の今日は俺らが第4学院へと移動するのだ。カールはその移動の時間のことを言っているのだろう。
「……ああ、だな。」
俺は軽く返事をして、残りの朝食をまた食べ始めた。
・・・・・・
第4学院は帝都の南部に位置している。
第2学院の建物より壮大さはないが、赤茶のレンガ調の学院は知的で可愛らしい。学院の入り口には芸石による光の演出で、第4学院の紋章が浮かんでいるように見えていた。さすが技術に力を入れている学院だ。
第4学院の生徒はほとんど貴族ではない。商人や技術職の家庭に生まれた子が多いらしい。男女比は6:4程度だ。
食堂へ行き、第4学院の総長であるイサックとシルヴィアの挨拶で交流会は始まった。けれども席が第1と第4で分けられていたので、特に第4の生徒と話すことなくそのまま昼食の時間は過ぎた。
「エベル王子は……いつも通りだな。」
「え?」
食器を片付け終わり、会議室に移動しようとしていた時だった。カールの目線の先を見ると、エベル王子が食堂を汚らしそうに見渡しながら歩いている。たぶん今ここに来たのだろう。第2学院でも初日は昼過ぎに来ていたし。
エベル…………
カミーユの家の火事にあいつは関与してるのか?けど関与してなければこんなタイミングよく家が燃えるなんておかしい気もする。カミーユを口封じとして……殺したのか?
けどエベルの様子・芸素に変化はない。通常通りだ。もし本当にそんなことをしたのなら…こんな平然と過ごせるだろうか?
……エベルの仕業じゃないのか?
「どうしたアグニ?置いてくぞ?」
気が付いたらカールはもう食堂の入り口まで歩いていた。俺も急いでカールのところまで走っていった。
・・・・・・
午後には技術構造の授業があり、その後すぐに研究会の時間だ。第4学院は授業数が少なく、その分、研究会に割り振られる時間数が多いそうだ。
そして初日の今日は俺たち第1の生徒が様々な研究会を自由に見て回るらしい。
「カールはどこ見に行く?」
授業終わりに俺がカールに聞くと、カールは文学研究会の男子数名と席を立った。
「俺たちは文学研究会に行こうかなって思ってる。その後に時間があったら他も見ようかなって。」
「そっか。俺は技術の方に行くから、またあとでな!」
「ああ、わかった。また。」
「コルは?どうする?」
『ん~第4には武芸研究会がないらしいからなぁ。……アグニについていってもいい?』
俺もさっき知ったのだが、第4学院には武芸研究会がないらしい。つまり護衛騎士や軍部志望者はほとんどゼロなのだ。コルネリウスは第1学院でも武芸研究会にしか所属していないので行きたいところがないのだろう。
「おう、いいよ。セシルと一緒にイサックに案内してもらうんだけど、いいだろ?」
『ハストン子爵家のイサック殿だよね?もちろん、構わないよ。』
ここで第4学院の総長って情報よりも貴族家の情報が出てくるところがコルネリウスらしいな。コルネリウスは本当に貴族社会の情報に詳しい。
「よし!じゃあ2人のとこに行こうぜ!」
・・・
「第4学院は技術研究会が分野別で存在しています。日用科、武芸科、治癒科、農業科、工業科、地方科など……まぁ自分達で研究したい分野を『科』と呼んで、どんどん枠を増やしていった感じですね。」
イサックが案内をしてくれながら簡単に説明をしてくれた。第1では技術発展研究会という名だが、第4では技術研究会というらしい。そして「科」というものを作って分野を極めているそうだ。
「アグニは……どこ、行きたい?」
「んー…武芸科かな。俺は鍛冶師だし、第1でも鍛冶してるしな。第4でどんなことをしてるのかを見たいな。」
「うん……じゃあまず、そこ行こ。…イサック、案内…してくれる?」
「うん、もちろんだよ!こっち!」
セシルに頼られたのが嬉しいのか、イサックは頬が落ちるんじゃないかってくらい嬉しそうに笑った。芸素も飛び跳ねている。イサックとセシルは思った以上に仲良くなってたみたいで、俺とコルネリウスは2人の後ろに続いて武芸科へと向かった。
カーン カーン カーン
カコン カコン コンコンコン・・・
キーン! ・・・キーン!!
おお~!!!打ってる打ってる!
うわ~テンション上がってきた!
第4学院には専用の鍛冶場が存在した。そこには炉や冷却場が複数あり、たまに行くフェレストさんのとこに似ていた。
『うわぁ…!!すごいね!鍛冶場ってこんな感じなんだ~!』
コルネリウスもその場の音や熱気に感動したようで、結構食いつきがいい。
「金属の加工は普段はあまり行われてません。今日は稀な日ですよ。武芸科で行うのは主に、芸石の取り付けです。剣にどう芸石を取り付けたら一番効果を発揮しやすいか、使う芸ごとにどの素材の金属を使うのがいいかなどを研究しています。」
イサックの説明であたりを見渡してみると、確かにみんな、金属を打つのはあまり得意ではなさそうで動きがぎこちなかった。けど他の生徒の鍛冶を見るのは初めてだったから俺はそれだけでなんだか嬉しかった。
「……あ、もう少し火に入れてから打った方が方がいいっすよ。」
「…………え?」
『アグニ~!次行くよ~!』
「あ、おう!!」
やっべ。いらぬ世話を焼くところだった
集中を途切れさせちゃったかな。
俺らはその鍛冶場から出て、次の科に案内をしてもらった。
・・・
「ここは農業科です。」
「『「 お~!!!! 」』」
農業科は、農業で使うと役立つ道具の開発を行っている。金属を使う時は武芸科の鍛冶場を貸してもらうらしい。
「ん?あれは……」
農業科の小屋の中に見覚えのある道具があった。以前洪水が起きたハイセン村に行った時、シリウスが造った土掻き機だった。
俺の目線の先に気づいた生徒の一人が説明をした。
「あぁ、あれは土を掻く道具です。第1の皆さまはご存じないでしょうけど、農業で最も大変なことの一つは種植え前の土ほぐしなんですよ。」
「………いや、知ってる。あれは土掻き機だろ。あの下部に互い違いで刃がついていて回転する。従来の鍬と比べて長時間使いやすい。エール公国ハイセン村が発祥……か?」
俺がその生徒に追加の説明をすると、その生徒は驚いたように眉を上げた。
「………その通りです。いや、驚きです。なぜそこまでご存じなんですか??え、もしかして農業科に興味があるとか?!」
急に俺への態度が変わった。瞳をキラキラさせて同志を見るような目になっている。
「あ、ああ。まぁ……興味はなくはないかな。けど俺、知識が全然なくて…」
「お教えしますお教えします!!!あ、じゃあハイセン村のもう一つの発明はご存じですか?」
「え?もう一つの発明?……いや、ごめん。知らないや。」
「それはですね~」
その生徒は急いで黒板の方へと走っていき、何やら地図と図解を書き始めた。
「この村は洪水のせいで農業に深刻な被害が生じました。最も問題だったのは、畑に流入してくる土砂を防げなかったことです。防ぐ機能がなかったんです。そこで!この村の技術師が混合土で頑丈にした「灌漑用水路」を造ったんです!!!」
ん?それって……
俺が造ったやつのことか?
図解を指さしながらその生徒は話を続けた。
「今も多くの村では土の溝を川まで掘って水を排出しています。そのため壊れやすく、雑草なども生えやすいんです。けれどもこの…混合土で作られた溝は…洪水時には水を防ぐこともできるんです!!!!」
うん。これ俺が造ったやつだ。
俺はハイセン村の農業用水が流れる溝に細工を施した。石の道のようにしたのだ。そして川から流れてくる水の量を調整できる仕組みも作った。
「………すごい…その発想は…なかった!」
「へぇ…あの村でそんな発明があったのか…。」
セシルもイサックも今の説明を聞いて感動している。コルネリウスは何がそこまで凄いのかわからなかったようで、無言で笑顔をキープしている。
「けどこの開発、誰がしたのかわかってないんですよ。村の人間ってのは確かなんですか、誰も名乗り出ないんです。だから結局エール公国に指揮管理権や特許が認められて…これでエール公国は一稼ぎしたって聞きました。」
「ん?特許?」
とっきょ…なんて初めて聞いた。けれども皆はその言葉の意味を知っているらしい。
「特許は…何か有用な発明をした人、とか商家に与えられる権利。……独占権。」
「独占権を持ってるからその発明品を使用したいと申し出る人に対して、お金を要求できるんだ。」
『帝都の文部がその権利を出してたと思うよ。』
3人からの説明を聞き、俺は焦った。
「え、え、え……そ、それって……どれくらい儲かるの…?」
「貧乏なエール公国が一稼ぎして助かってるくらいには…儲かったんじゃないか?」
「まじかよ?!!!!!!!」
ぬあ~!!!!!!
そんな権利があったなんて!!!!
シリウスは教えてくれなかったぞ?!
おおおおいまじかよぉぉぉ!!??
『アグニ?!どうしたの?!』
膝から崩れ落ちた俺を見てコルネリウスが焦ったように外傷を調べるが、これは心の傷だ。問題ない。いや、ある。なんでシリウスは教えてくれなかったんだ。この権利があれば俺は一生遊んでくらせたのに!!!!!!今すぐ理由を聞きに行きたい。
「………今すぐ家に帰りたい!!」
「アグニ……今日まだ1の日…。」
「知ってるよぉ!!!!!!」
・・・・・・
「はぁ~……」
「どうした?寮に帰ってきてからずっとそんな様子じゃないか。」
「いやぁ……大金が…」
「え?」
「あ、いや、なんでも……」
俺たちは今、第4学院内の寮にいる。
第4学院も第2の時と同様に、西と東で男女を区切っただけの巨大な一つの寮だった。いつもは別の寮にいて夜に喋れない生徒たちとも喋れるので楽しい。まぁ結局カールと一緒にいるけども。
今は男子寮の談話室でダベっていた。
意外なことに、第2ではあんなに嫌悪感たっぷりだった第1の生徒は第4ではそんなひどい態度は見せていない。第2に特別対抗心が高かったことと、第2の古めの校舎を経験済みだったことが功を奏したらしい。
「アグニ様はいらっしゃいますか?」
談話室の入り口で寮父さんの声が聞こえたので俺は振り返って手を挙げた。
「あ、はい。俺アグニですけど。」
寮父さんはすぐに俺の近くまで来て、トレーの上に乗せた手紙を差し出してきた。
「シャルト公爵家よりお手紙が届いています。」
「あ、はい……。」
「ん?手紙?なんだ?どうしたんだ?」
カールは後ろから声をかけてきたが、俺はなんでもないように振舞った。
「あぁ……まぁくだらない会話だよ。……ちょっと俺もう部屋に戻るな!おやすみ。」
「お、おう。わかった。おやすみ。」
俺は急いで寮の個室に入り、手紙の内容を確認した。
そこにはシリウスの書いた文字で、ラウルから伝えられた内容が記されていた。
カミーユの家の焼け跡から、複数の焼死体が発見されたとのことだった。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説

「魔王のいない世界には勇者は必要ない」と王家に追い出されたので自由に旅をしながら可愛い嫁を探すことにしました
夢幻の翼
ファンタジー
「魔王軍も壊滅したし、もう勇者いらないよね」
命をかけて戦った俺(勇者)に対して魔王討伐の報酬を出し渋る横暴な扱いをする国王。
本当ならばその場で暴れてやりたかったが今後の事を考えて必死に自制心を保ちながら会見を終えた。
元勇者として通常では信じられないほどの能力を習得していた僕は腐った国王を持つ国に見切りをつけて他国へ亡命することを決意する。
その際に思いついた嫌がらせを国王にした俺はスッキリした気持ちで隣町まで駆け抜けた。
しかし、気持ちの整理はついたが懐の寒かった俺は冒険者として生計をたてるために冒険者ギルドを訪れたがもともと勇者として経験値を爆あげしていた僕は無事にランクを認められ、それを期に国外へと向かう訳あり商人の護衛として旅にでることになった。
といった序盤ストーリーとなっております。
追放あり、プチだけどざまぁあり、バトルにほのぼの、感動と恋愛までを詰め込んだ物語となる予定です。
5月30日までは毎日2回更新を予定しています。
それ以降はストック尽きるまで毎日1回更新となります。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。

世の中は意外と魔術で何とかなる
ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。
神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。
魔石と神器の物語 ~アイテムショップの美人姉妹は、史上最強の助っ人です!~
エール
ファンタジー
古代遺跡群攻略都市「イフカ」を訪れた新進気鋭の若き冒険者(ハンター)、ライナス。
彼が立ち寄った「魔法堂 白銀の翼」は、一風変わったアイテムを扱う魔道具専門店だった。
経営者は若い美人姉妹。
妹は自ら作成したアイテムを冒険の実践にて試用する、才能溢れる魔道具製作者。
そして姉の正体は、特定冒険者と契約を交わし、召喚獣として戦う闇の狂戦士だった。
最高純度の「超魔石」と「充魔石」を体内に埋め込まれた不死属性の彼女は、呪われし武具を纏い、補充用の魔石を求めて戦場に向かう。いつの日か、「人間」に戻ることを夢見て――。

異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ
雑木林
ファンタジー
現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。
第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。
この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。
そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。
畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。
斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる