120 / 174
第3章
111 期末試験
しおりを挟む雷の月7週目
いよいよ噂の期末試験の週になった。
1の日は数学、芸、生物、技術構造のテストだった。
数学は時間が足りなかった。けど解いたところまではたぶん……大丈夫だと思う……。
芸は余裕だ。的に当てられるか程度の簡単なもので、合否もその場で伝えられるようなテストだった。そして案の定誰も試験には落ちなかった。
生物の授業は芸獣や野草のパートは余裕だったが、人体はミスった気がする。人体は覚えてるか否かで治癒の仕方に大きく関わってくるだろうから、今度シリウスにきちんと教えてもらおうと思う。
技術構造は……あかんな!!!セシルに教えてもらったところすら忘れてた!技術構造のテストは自信を持って底辺を争う点数を取ると断言できる。
そして2の日は音楽、武術、身体構造、ダンスのテストだった。
音楽は課題曲をリュウで弾けるかをチェックするやつで、芸の試験と同様にその場で合否を言い渡されるタイプのテストだ。これは余裕だ。自慢じゃないがそこそこリュウの演奏はできる。どちらかと言うと今後、授業内容が別の楽器に切り替わった後が問題だ。
武術も軽い打ち合いのテストで余裕。
身体構造は生物で出た人体の部分を復習しておいたお陰でなんとか不合格は免れそうだ。まぁそれに包帯の巻き方とかは一人暮らし歴の長い俺の方が貴族の子女よりもわかってるしな。
ダンスもテストがある。ランダムで相手を組まされ(今回はセシルだった)、課題曲を失敗なく踊れるかってテストだ。自分のミスで相手の評価にも影響するって考えると少し緊張したが、無事合格を言い渡された。
3の日のテストは歴史と礼法だ。そして1の日に受けた数学と技術構造のテストが返却された。
歴史はだめな気がする。でも神話に関する部分は完璧に埋められた。ありがとう、過去の記憶。
礼法はまぁ大丈夫だろう。挨拶の仕方とか天使の血筋に対する礼儀とかをテストされたが、家に3人もいるんだもん。余裕だ。
そして返却された数学は無事合格、技術構造も先生に凄い渋い顔をされたけどギリ合格。クラス内で最低点だったらしい。今まで扱ってきたはずの芸石に関する知識がここまで疎いことに先生は疑問を持っているようだった。怪しまれないためにもまじで勉強しなきゃな。
そして4の日、最後のテストの地理だ。あとは身体構造のテストが返却された。
地理はできた。なぜならシリウスと一緒に各国を周ってたから。
身体構造は生物の反省を生かして復習をしておいたおかげで、可もなく不可もない点数を取った。そして生物のテストが余計心配になった……。
この日の音楽の授業は宮廷楽団の見学に行った。宮廷楽団はたまに学園内の巨大な講堂を借りて練習をしているらしく、その様子を見させてもらったのだ。
宮廷楽団というのは舞踏会やパーティー、必要な神事の際などに演奏しているらしい。宮廷所属の楽団ということで、帝国一の音楽集団だと言われている。
演奏者はパーティーには参加できない。なので基本的にパーティーに参加しなくてもいい、貴族以外の人たちが宮廷楽団に所属する。にもかかわらず結構有名だし、憧れの的なのだ。
練習中の曲を聞いたが、確かに格好良かった!演奏中、全体の音が一気に合わさる瞬間はぞわっとした。次のパーティーからはもっとちゃんと音楽を聞こうと思う。
そして無事テストを終えた学生の放課後の弾けようはすごかった。皆身体を動かしたくてうずうずしていたらしい。この日の武芸研究会の学生は本当にいつまでもずっと剣を振っていた。
5の日に残りの歴史、地理、生物の問題を返却された。
一番不安だった生物は……合格だった!!芸獣と野草のところの点数でなんとか逃げ切ったようだ。あいからわず点数は低いけど、まぁいいでしょう。
実は来週一週間はテスト休みってことで授業が一切ないのだ。なので今週末から合計で11日休み!!その間の事をみんなとお話合いの時間に話し合った。そして俺は何人もの生徒がシルヴィアの元へ挨拶しにいっていることに気がついた。
「なぁカール、なんで皆シルヴィアに挨拶してんの?」
俺が同じ卓に座っているカールに質問すると、カールはシルヴィアの方をちらっと見て理由に気づいたようだ。
「あぁ…彼らはこの休みの間にシルヴィア公国の別荘に行くんだろう。シルヴィア様の領土だから挨拶しに行ってるんだろうな」
「あっそうなんだ!そういえば前にシルヴィア公国は貴族の別荘が多いって聞いたことあったな。」
「あぁ。気候も良いし帝都からほどよく近いし、治安もいい。それになんていってもイミタラッサにも大きく面しているからな。避暑地には最高なんだよ。」
イミタラッサとは帝国最大の湖だ。本当に海みたいに大きい。シャノンシシリー公国もイミタラッサに大きく面してるが、シルヴィア公国の方が帝都から近いので、帝都貴族からはこちらの方が好かれているようだ。
「アグニはこの休みはどうする予定だ?」
カールの質問に俺は首を傾げた。
「予定ないな。そもそも連休があることを昨日知ったし。家に帰ったらあの2人に聞いてみるつもりだ。」
「そうか。まぁ暇だったら連絡くれ。俺はずっと帝都にいると思うから、いつでも遊びに誘ってくれて構わないよ。」
「おう!今日帰ったら予定を聞いて、手紙出すな!」
・・・
その日の午後は時間一杯まで学校で鍛治をし、セシルを送ってから家へ帰った。
『アグニ、双子に会いに行こうか』
「えっ!!!!!!」
夕飯の時、ちょうど明日以降の予定を聞こうとしていたタイミングでシリウスから告げられた。めちゃくちゃ嬉しい一言。
ここでいう双子とは、もうレイとレベッカしかいない。
『シャノンシシリーまでは距離があるからこの前みたいに走っていかなきゃだけど……どうする?行くかい?』
「行く!行く行く!!!!!絶対行く!!」
シリウスが挑戦的な目で俺にどうするか聞いてきたが答えは一択だ。双子と会うのは実に1年ぶり。
彼らはアルダと呼ばれるシャノンシシリー公国の特殊部隊へ1年間仮入隊していた。2人からの手紙の内容では無事入隊できそうとのことだが……上手くやっていけてるのかはずっと心配だった。
『よし!じゃあ明日から向かうよ。向こうに家はあるから荷物はいらない。最小限の支度だけしといてね。』
「おう!わかった!うわ~!!!凄い楽しみだ!!あ、シーラは?一緒に行くか?」
ダイニングテーブルで俺の向かいに座るシーラに話しかけるとシーラは首を横に振った。
「いやよ。疲れるじゃない。」
「ははっそっか!それじゃあクルト、留守を頼むな!」
俺はシーラの斜め後ろに立っているクルトに声をかけると元気な笑顔が返ってきた。
「お任せください!あとで旅の準備、手伝いますね!」
「おうありがと!」
俺はその日の夜にカール宛に手紙を出し、次の日の朝食後にシリウスと帝都を後にした。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説

「魔王のいない世界には勇者は必要ない」と王家に追い出されたので自由に旅をしながら可愛い嫁を探すことにしました
夢幻の翼
ファンタジー
「魔王軍も壊滅したし、もう勇者いらないよね」
命をかけて戦った俺(勇者)に対して魔王討伐の報酬を出し渋る横暴な扱いをする国王。
本当ならばその場で暴れてやりたかったが今後の事を考えて必死に自制心を保ちながら会見を終えた。
元勇者として通常では信じられないほどの能力を習得していた僕は腐った国王を持つ国に見切りをつけて他国へ亡命することを決意する。
その際に思いついた嫌がらせを国王にした俺はスッキリした気持ちで隣町まで駆け抜けた。
しかし、気持ちの整理はついたが懐の寒かった俺は冒険者として生計をたてるために冒険者ギルドを訪れたがもともと勇者として経験値を爆あげしていた僕は無事にランクを認められ、それを期に国外へと向かう訳あり商人の護衛として旅にでることになった。
といった序盤ストーリーとなっております。
追放あり、プチだけどざまぁあり、バトルにほのぼの、感動と恋愛までを詰め込んだ物語となる予定です。
5月30日までは毎日2回更新を予定しています。
それ以降はストック尽きるまで毎日1回更新となります。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
魔石と神器の物語 ~アイテムショップの美人姉妹は、史上最強の助っ人です!~
エール
ファンタジー
古代遺跡群攻略都市「イフカ」を訪れた新進気鋭の若き冒険者(ハンター)、ライナス。
彼が立ち寄った「魔法堂 白銀の翼」は、一風変わったアイテムを扱う魔道具専門店だった。
経営者は若い美人姉妹。
妹は自ら作成したアイテムを冒険の実践にて試用する、才能溢れる魔道具製作者。
そして姉の正体は、特定冒険者と契約を交わし、召喚獣として戦う闇の狂戦士だった。
最高純度の「超魔石」と「充魔石」を体内に埋め込まれた不死属性の彼女は、呪われし武具を纏い、補充用の魔石を求めて戦場に向かう。いつの日か、「人間」に戻ることを夢見て――。

世の中は意外と魔術で何とかなる
ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。
神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

回復力が低いからと追放された回復術師、規格外の回復能力を持っていた。
名無し
ファンタジー
回復術師ピッケルは、20歳の誕生日、パーティーリーダーの部屋に呼び出されると追放を言い渡された。みぐるみを剥がされ、泣く泣く部屋をあとにするピッケル。しかし、この時点では仲間はもちろん本人さえも知らなかった。ピッケルの回復術師としての能力は、想像を遥かに超えるものだと。

ハイエルフの幼女は異世界をまったりと過ごしていく ~それを助ける過保護な転移者~
まぁ
ファンタジー
事故で亡くなった日本人、黒野大河はクロノとして異世界転移するはめに。
よし、神様からチートの力をもらって、無双だ!!!
ではなく、神様の世界で厳しい修行の末に力を手に入れやっとのことで異世界転移。
目的もない異世界生活だがすぐにハイエルフの幼女とであう。
なぜか、その子が気になり世話をすることに。
神様と修行した力でこっそり無双、もらった力で快適生活を。
邪神あり勇者あり冒険者あり迷宮もありの世界を幼女とポチ(犬?)で駆け抜けます。
PS
2/12 1章を書き上げました。あとは手直しをして終わりです。
とりあえず、この1章でメインストーリーはほぼ8割終わる予定です。
伸ばそうと思えば、5割程度終了といったとこでしょうか。
2章からはまったりと?、自由に異世界を生活していきます。
以前書いたことのある話で戦闘が面白かったと感想をもらいましたので、
1章最後は戦闘を長めに書いてみました。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?
小平ニコ
ファンタジー
「ディーナ。お前には今日で、俺たちのパーティーを抜けてもらう。異論は受け付けない」
勇者ラジアスはそう言い、私をパーティーから追放した。……異論がないわけではなかったが、もうずっと前に僧侶と戦士がパーティーを離脱し、必死になって彼らの抜けた穴を埋めていた私としては、自分から頭を下げてまでパーティーに残りたいとは思わなかった。
ほとんど喧嘩別れのような形で勇者パーティーを脱退した私は、故郷には帰らず、戦闘もこなせる武闘派聖女としての力を活かし、賞金首狩りをして生活費を稼いでいた。
そんなある日のこと。
何気なく見た新聞の一面に、驚くべき記事が載っていた。
『勇者パーティー、またも敗走! 魔王軍四天王の前に、なすすべなし!』
どうやら、私がいなくなった後の勇者パーティーは、うまく機能していないらしい。最新の回復職である『ヒーラー』を仲間に加えるって言ってたから、心配ないと思ってたのに。
……あれ、もしかして『ヒーラー』って、完全に回復に特化した職業で、聖女みたいに、防御の結界を張ることはできないのかしら?
私がその可能性に思い至った頃。
勇者ラジアスもまた、自分の判断が間違っていたことに気がついた。
そして勇者ラジアスは、再び私の前に姿を現したのだった……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる