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第3章
111 期末試験
しおりを挟む雷の月7週目
いよいよ噂の期末試験の週になった。
1の日は数学、芸、生物、技術構造のテストだった。
数学は時間が足りなかった。けど解いたところまではたぶん……大丈夫だと思う……。
芸は余裕だ。的に当てられるか程度の簡単なもので、合否もその場で伝えられるようなテストだった。そして案の定誰も試験には落ちなかった。
生物の授業は芸獣や野草のパートは余裕だったが、人体はミスった気がする。人体は覚えてるか否かで治癒の仕方に大きく関わってくるだろうから、今度シリウスにきちんと教えてもらおうと思う。
技術構造は……あかんな!!!セシルに教えてもらったところすら忘れてた!技術構造のテストは自信を持って底辺を争う点数を取ると断言できる。
そして2の日は音楽、武術、身体構造、ダンスのテストだった。
音楽は課題曲をリュウで弾けるかをチェックするやつで、芸の試験と同様にその場で合否を言い渡されるタイプのテストだ。これは余裕だ。自慢じゃないがそこそこリュウの演奏はできる。どちらかと言うと今後、授業内容が別の楽器に切り替わった後が問題だ。
武術も軽い打ち合いのテストで余裕。
身体構造は生物で出た人体の部分を復習しておいたお陰でなんとか不合格は免れそうだ。まぁそれに包帯の巻き方とかは一人暮らし歴の長い俺の方が貴族の子女よりもわかってるしな。
ダンスもテストがある。ランダムで相手を組まされ(今回はセシルだった)、課題曲を失敗なく踊れるかってテストだ。自分のミスで相手の評価にも影響するって考えると少し緊張したが、無事合格を言い渡された。
3の日のテストは歴史と礼法だ。そして1の日に受けた数学と技術構造のテストが返却された。
歴史はだめな気がする。でも神話に関する部分は完璧に埋められた。ありがとう、過去の記憶。
礼法はまぁ大丈夫だろう。挨拶の仕方とか天使の血筋に対する礼儀とかをテストされたが、家に3人もいるんだもん。余裕だ。
そして返却された数学は無事合格、技術構造も先生に凄い渋い顔をされたけどギリ合格。クラス内で最低点だったらしい。今まで扱ってきたはずの芸石に関する知識がここまで疎いことに先生は疑問を持っているようだった。怪しまれないためにもまじで勉強しなきゃな。
そして4の日、最後のテストの地理だ。あとは身体構造のテストが返却された。
地理はできた。なぜならシリウスと一緒に各国を周ってたから。
身体構造は生物の反省を生かして復習をしておいたおかげで、可もなく不可もない点数を取った。そして生物のテストが余計心配になった……。
この日の音楽の授業は宮廷楽団の見学に行った。宮廷楽団はたまに学園内の巨大な講堂を借りて練習をしているらしく、その様子を見させてもらったのだ。
宮廷楽団というのは舞踏会やパーティー、必要な神事の際などに演奏しているらしい。宮廷所属の楽団ということで、帝国一の音楽集団だと言われている。
演奏者はパーティーには参加できない。なので基本的にパーティーに参加しなくてもいい、貴族以外の人たちが宮廷楽団に所属する。にもかかわらず結構有名だし、憧れの的なのだ。
練習中の曲を聞いたが、確かに格好良かった!演奏中、全体の音が一気に合わさる瞬間はぞわっとした。次のパーティーからはもっとちゃんと音楽を聞こうと思う。
そして無事テストを終えた学生の放課後の弾けようはすごかった。皆身体を動かしたくてうずうずしていたらしい。この日の武芸研究会の学生は本当にいつまでもずっと剣を振っていた。
5の日に残りの歴史、地理、生物の問題を返却された。
一番不安だった生物は……合格だった!!芸獣と野草のところの点数でなんとか逃げ切ったようだ。あいからわず点数は低いけど、まぁいいでしょう。
実は来週一週間はテスト休みってことで授業が一切ないのだ。なので今週末から合計で11日休み!!その間の事をみんなとお話合いの時間に話し合った。そして俺は何人もの生徒がシルヴィアの元へ挨拶しにいっていることに気がついた。
「なぁカール、なんで皆シルヴィアに挨拶してんの?」
俺が同じ卓に座っているカールに質問すると、カールはシルヴィアの方をちらっと見て理由に気づいたようだ。
「あぁ…彼らはこの休みの間にシルヴィア公国の別荘に行くんだろう。シルヴィア様の領土だから挨拶しに行ってるんだろうな」
「あっそうなんだ!そういえば前にシルヴィア公国は貴族の別荘が多いって聞いたことあったな。」
「あぁ。気候も良いし帝都からほどよく近いし、治安もいい。それになんていってもイミタラッサにも大きく面しているからな。避暑地には最高なんだよ。」
イミタラッサとは帝国最大の湖だ。本当に海みたいに大きい。シャノンシシリー公国もイミタラッサに大きく面してるが、シルヴィア公国の方が帝都から近いので、帝都貴族からはこちらの方が好かれているようだ。
「アグニはこの休みはどうする予定だ?」
カールの質問に俺は首を傾げた。
「予定ないな。そもそも連休があることを昨日知ったし。家に帰ったらあの2人に聞いてみるつもりだ。」
「そうか。まぁ暇だったら連絡くれ。俺はずっと帝都にいると思うから、いつでも遊びに誘ってくれて構わないよ。」
「おう!今日帰ったら予定を聞いて、手紙出すな!」
・・・
その日の午後は時間一杯まで学校で鍛治をし、セシルを送ってから家へ帰った。
『アグニ、双子に会いに行こうか』
「えっ!!!!!!」
夕飯の時、ちょうど明日以降の予定を聞こうとしていたタイミングでシリウスから告げられた。めちゃくちゃ嬉しい一言。
ここでいう双子とは、もうレイとレベッカしかいない。
『シャノンシシリーまでは距離があるからこの前みたいに走っていかなきゃだけど……どうする?行くかい?』
「行く!行く行く!!!!!絶対行く!!」
シリウスが挑戦的な目で俺にどうするか聞いてきたが答えは一択だ。双子と会うのは実に1年ぶり。
彼らはアルダと呼ばれるシャノンシシリー公国の特殊部隊へ1年間仮入隊していた。2人からの手紙の内容では無事入隊できそうとのことだが……上手くやっていけてるのかはずっと心配だった。
『よし!じゃあ明日から向かうよ。向こうに家はあるから荷物はいらない。最小限の支度だけしといてね。』
「おう!わかった!うわ~!!!凄い楽しみだ!!あ、シーラは?一緒に行くか?」
ダイニングテーブルで俺の向かいに座るシーラに話しかけるとシーラは首を横に振った。
「いやよ。疲れるじゃない。」
「ははっそっか!それじゃあクルト、留守を頼むな!」
俺はシーラの斜め後ろに立っているクルトに声をかけると元気な笑顔が返ってきた。
「お任せください!あとで旅の準備、手伝いますね!」
「おうありがと!」
俺はその日の夜にカール宛に手紙を出し、次の日の朝食後にシリウスと帝都を後にした。
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