再創世記 ~その特徴は「天使の血筋」に当てはまらない~

タカナデス

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第2章

74 推薦

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   うん!よかった!そんなに強くなくて
   スピードが遅い芸獣はやっぱ楽だな。


「うん。解名無しで、芸だけでいけたな。」

『そうだね。もしかしたら雷が一番苦手なのかも知れないな。』

「そうなのかも?ラッキーだったな。」

『だね。じゃあ二人のとこに一旦戻ろうか』

「そうだな。一応報告しとこっか。」


俺は後ろに離れて待ってるシャルルとアルベルトの方に向かってった。

「シャルル、アルベルト!芸獣もう倒れたよ。なぁ、あれの殻貰っていい?」

剣を納めながら聞くが2人は呆然とするのみで、全く返答がない。

「ん?貰ってもいい?」


   聞こえなかったのかな?


『も、もらっていい…』

「あ、ああ…」

「あ、ほんと?ありがとう。シリウス大丈夫だって~」

『よかった~』

「『 いやそうじゃなくて!!!!!! 』」

シャルルとアルベルトが同時に騒ぎ出した。

「アグニ!!!!今の芸はなんだ?!!!お前何をして倒した??!」

「え、普通に…雷の芸だけど…」

『ただの芸か?!解名でもなくて?!!!』

「いや、解名じゃないよ。」

「なんでそんなに威力があるんだ?!!!」

「え?そ、そう?まぁ力込めて芸を出したけどさ…」

『だからってアレを一撃で倒せるわけないだろ!!!』

「えっ…え~……そうなの、かな?」

「『 そうなんだよ!!! 』」

2人とも大興奮だ。周りの護衛の兵は青白い顔でこちらを見ている。

『まぁまぁ、倒したんだしいいじゃないの。アルベルト、推薦状のこと、よろしくね。』

シリウスが俺らの間に割って入った。アルベルトはキレ気味に答えた。

「こんなに力があるのなら推薦しないわけにはいきません!絶対書きますよ!」

『そう。よかったね、アグニ。』

「アルベルト、ありがとう!」

シャルルが片手を上げて申し出た。

『アグニ。俺も推薦状を書いていいか?』

「え?シャルルも書いてくれるのか??なんで?」

シャルルは腕を組見ながら答えた。

『推薦状はある意味「保証人」と同じだ。推薦された人の能力や働き次第で推薦人の評価も変わる。けど…アグニにこれほどまで力があるのなら、俺も推薦状を書いた方が良いと感じた。ある意味、将来のアグニへの「投資」だ。』

推薦は一種の賭け

推薦者の努力や働きが良ければ推薦人にも拍が付く。
逆にもし推薦者が失敗すれば、保証人にも悪評が付く。

その賭けに乗りたいとシャルルが自ら申し出たのだ。

「………ありがとう。是非、書いてくれると嬉しい。」

『ああ。必ず。』

俺とシャルルは固く握手して笑い合った。








・・・・・・








夜、アルベルトの宮殿の一室にまた4人で集まった。明日、俺はシリウスとこの国を出る。


「編入試験はいつなんだ?」

アルベルトが聞いてきた。

「風向かう1週目の6か7の日かな?」

『そうか。じゃあ確かにそろそろ帝都に行った方が良さそうだな。』

シャルルが葡萄酒を飲みながら言った。

今は火の月の終わりの方だ。次の風向かう2週間が来る。

「けど…今日の芸力を見てたら、たぶんアグニは大丈夫だろうな。」

アルベルトが笑いながら言ってくれた。

『本当にな。なんなら俺の国の軍にそのままスカウトしたいくらいだよ。』

「それはうちもだ!是非我が軍に入って欲しい。今日の戦いは満点だったんじゃないか?」

俺は照れて頭をかきながらシリウスを見た。

「そんなに言われると嬉しいなぁ。シリウス、今日の俺、どうだった?」

褒められることを前提に聞いたが、シリウスから予想外の答えが帰ってきた。

『ん?まだ戦い慣れしてないなって思った。』

「『「 えっ 」』」

『ん?』

シリウスが黄色の葡萄酒を飲みながら首を傾げた。

「え、シリウス…なんで?どこが?」

『君の発想は良かったよ。芸素を撒き散らすってやつ。僕もたぶんそうした。あと戦闘もスマートでよかったよ。』

「え、じゃあどこがダメだったんだ?」

『芸素を撒き散らすのは森の手前じゃなくてもできたよね?』

「……………あっ」

俺の呟きにシャルルとアルベルトが突っ込んで聞く。

『ん?どういうことだ?アグニ。』

「どういうこと???」

「オアシスで芸素を撒けばわざわざ森に移動しなくてもよかったってこと、だろ?」

俺の説明にシリウスが頷いた。

『その方が効率良かったよね。』

「たしかに………」

シャルルが前のめりになって俺を見た。

『アグニ、お前オアシスから芸素を撒き散らして、芸素が尽きないのか??』

「んーたぶんギリ大丈夫だけど、もしそうしてたら万全の状態で芸獣を相手できなかったかもしれないな。」

俺が腕を組んで答えるとシリウスはため息を吐いた。

『君の芸素が少ないのは別に知らないのよ』

シリウスの言葉にシャルルとアルベルトが口を開いて固まった。

『アグニの芸素量が…少ない…?』

「シ、シリウス様…それはあまりにも…求めるレベルが高いのでは…?」

「だよな!?やっぱこいつスパルタだよな!?」

俺が王子二人の肩を叩きながら同意を求める。一方のシリウスはもうのんびり外を見ながら、生ぬるい夜風を気持ちよさそうに浴びている。


本当に…俺をどんな最強人間にしたいんだよ…








・・・・・・










「シャルル、アルベルト。じゃあ、また。」

『ああ、編入試験頑張れよ。』

「アグニなら大丈夫だと思うけど、気を抜かずにね。頑張って。」

「ああ、ありがとう!」

俺は二人と固く握手を交わした。

火の月がそろそろ終わる。
俺は編入試験のため、帝都の戻る。

「シリウス様、道中お気をつけて」

アルベルトがシリウスに対し、綺麗に礼をとった。

『シリウス様、お気をつけて。』

シャルルは腰は折らず、代わりに敬礼をした。シリウスはそれらの様子をみて、ふっと笑った。

『ああ、二人も元気でね。そのうち帝都で会うだろうから、またその時。』

「『 はい!! 』」



こうして 俺たちはフォード公国を後にした。









・・・










『アルベルト、出てきたか?』

「いや、出なかった。そっちは?」

『こっちも出なかった。父上にも直接聞いたが、知らないと仰った。』

「そうか………」

天使の血筋は神の血筋。その血筋は帝国の財産。その財産を損なわないために、全ての天使の血筋の情報は厳密に管理されており、全ての天使の血筋の名は記録されている。


しかし、シリウスという名は記録になかった


去りゆくアグニとシリウスを見ながら、シャルルは呟いた。

『シリウス様、 あなたはいったい何者なのですか……?』

シャルルの声は風の音にかき消され、2人に届くことはなった。





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