再創世記 ~その特徴は「天使の血筋」に当てはまらない~

タカナデス

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第2章

73 砂漠の脅威

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「闇の森」から一番近くにあるオアシスに着いた。

このオアシスは一つの村で本来ならば多くの人の姿がみえていたはずだ。しかし芸獣がここに現れてしまったため今は閉鎖されており、全くの無人になっている。

後方にいた、アルベルトとシャルルが兵に囲まれながら近づいてきた。

「アグニ、今は芸獣がきていないようだね。」

「ああ、そうみたいだな。」

『ここで一日過ごして、来なかったら闇の森の方に進むってことでいいか?』

「そうしようか。シリウス、いいか?」

俺がシリウスの方を見ると、フォード公国の民族衣装を身に着けているシリウスが美しく笑った。

『アグニ、君が退治するんだから君が判断しなさい』

「ああ、そうだな。じゃあ、明日の昼前に出発で」

俺が3人に言うと、3人とも了承の意を示したので、夜はこのオアシスに泊まることになった。






・・・・・・









「結局来なかったな~」

『そうだね』

俺とシリウスはまた隊の先頭をラクダで進んでいる。結局芸獣はオアシスには来なかった。なので直接闇の森に向かっているのだ。

「なぁシリウス。なんで来なかったかわかる?」

『ん~そうだねぇ。そもそもあのオアシスに出てきた回数もそんな多くないし、たまたまじゃない?』

「そっか~。闇の森って暗いんだろ?目的の芸獣、見つかるのかな?」

俺の問いかけにシリウスはため息を吐いた。

『なんのために身体強化を学んだの?』

「え、あ、そうか。」


   目に身体強化すればいいのか。
   あったま良いな!


『でもたぶん、大丈夫だと思うよ。』

「え?何が?」

『たぶん、そんなに奥にはいないと思う。だって森の奥にいられないからオアシスまで出てきてたわけでしょう?砂漠近くの森にいるはずだよ。』

「なるほど、たしかに……。」






・・・







砂漠と森の境界に着いた。ここまで全く芸獣に遭遇しなかったので、この後どうしようかとシャルル、アルベルト、シリウスと3人で話し合った。

「アグニ、このまま森の奥に進むのか?」

「そうしようと思ってるけど……アルベルトとシャルルはここに残ってた方がいいよな?」

『……闇の森に入る人間はいないから…入るのに多少躊躇うが…シリウス様とアグニだけを行かせるなんてことなんてできない。』

「それに、ちょっとだけ…行ってみたいよね?」

アルベルトがシャルルにニヤリと笑う。シャルルもそれに答えるように笑った。

『ああ、それもある。』

王子二人は思ったよりも活動的なようで、自ら進んで行動するタイプのようだ。けど後ろの護衛達がみんな嘘だろ??って顔してる。


   あれ?ん?でも、もしかして…


「森に入らなくても平気かもしれない…」

「ん?どういうことだ?」

俺の呟きにアルベルトが反応した。俺はシリウスの方を向いて質問した。

「シリウス、俺が芸素を撒けば目的の芸獣は森から出てこないかな?」

シリウスは腕を組んで妖艶な笑みを見せた。

『うん。説明してみて?』

「シリウスは、芸獣は森の手前側にいるって言ってたよな?」

『ああ。』

「なら、この周辺のみに俺の芸素を撒いて、奴の縄張りを荒らして刺激すれば、自ずから俺を排除しようと出てくるんじゃないか?」

『その時の対策は?』

「他の芸獣も出てくるかもしれないから、それの対策が必要。あとどれくらいの量の芸素をまき散らすのかを考えないと、下手したら最奥の最強の芸獣とかも出てきちゃうかもしれないし。」

俺の答えにシリウスは満面の笑みを見せた。

『上出来だね。芸素を周囲に拡げた時、ついでに芸獣の場所も特定してね。今の君の芸素量で充分な餌になると思うから、出てくるでしょう。もし同時に他の芸獣も出てきたらそっちは僕が対処しよう。けど順番に出てきたら君が相手しなさい。』

「わかった。」

どうやら合格を貰えたようだ。俺は胸をなで下ろしながら、シャルルとアルベルトに砂漠まで退避しといてもらう旨を伝えようとそっちを見ると…二人とも愕然としていた。

「ん?どうした?二人とも大丈夫?」

俺のことをガン見し続ける二人が心配になり問いかける。先に我に返ったシャルルが早口で喋り始めた。

『ア、アグニ。君はそんなに何回も芸獣と戦っているのか??それに…芸素を撒くって、どういうことだ?そんな戦闘法があるのか?!』

「えっ………まぁ、うん。一応冒険者だし。普通に戦ってるけど…。芸素撒く方法は…逆に知らないのか?」

俺がシリウスの方を見て確認するとシリウスはコクンと頷いた。

『残念だけど、ほとんどの人は芸素を撒き散らせるほど芸素量に余裕がないんだよ。だからまずそんな発想はないんじゃないかな。』

「え、そうなの?!!」

アルベルトが一歩俺に近づいて聞いてきた。

「アグニ!芸素を撒き散らしてお前は大丈夫なのか?そんなに芸素量があるのか?!そうするとどうなるんだ?!」

「え、一応身体に負担はないよ。芸素を撒くと、自分の芸素が他の個体とぶつかって、それで相手の居場所がわかるんだよ。けどまぁ、俺の場合は同時に相手にも自分の居場所が割れちゃうんだけどな。」

「俺の場合??」

「ああ。例えばシリウスは俺よりも断然少ない量で均一に、薄く拡げられるんだ。そうすると相手にはバレないんだよ。レベルが高すぎて今の俺には上手くできないから…バレる。」

『今回はそれが功を奏したね。』

「だな!ははっ。」

俺とシリウスの言葉に二人は衝撃を受けたようだ。

『……俺らはまだ全然なんだな……』

「………ああ。もっと練習しなきゃな……」

「二人は芸獣とそんな戦ったことないのか?」

俺の質問に二人はそろって頷いた。

『けど俺たちはまだ多い方だ。まぁ、それでも……10回…とかだけど。』

「10回………」


   家を出て、一週間でその数は越したな。


「けどなアグニ、この数でも多い方なんだぞ?普通、この年齢なら1回か2回程だ。俺たちは実戦経験が多いだよ。」

『大型芸獣相手の実戦はないだろう?』

シリウスの言葉に二人が言葉を詰まらす。

「ありません……」

『中型を…一回…とかです。』

『そう。なら今回はきちんとアグニの後ろで見ていなさい。』

「『 はい………。 』」








・・・









シャルルとアルベルトと護衛の兵を森から離れた砂漠に待機させ、俺はシリウスとともに森の入り口に立つ。戦闘の邪魔になるので俺は民族衣装を取っている。シリウスは付けたままだ。剣を抜き、シリウスに合図を送る。

「シリウス、始めるぞ。」

『ああ。』

俺は自身の芸素を森の中に拡げ、芸素の反射を探した。


   あ、いた。


「シリウス、左斜め前で芸素が衝突した。これだ。やっぱ手前の方にいたな。」

『そう。じゃあ少し砂漠の方に移動しようか』

「え?なんで?」

『森を壊したくないだろ?砂漠で戦った方がいいんじゃないかな?』

「あーなるほど。」

俺とシリウスはそのまま後ろに下がり、芸獣が出てくるのを待った。

やつはすぐに表れた。
赤い目に、ドス黒い甲殻に、空を向く尾。その尾には巨大な針と鋏はさみがついている。大型のサソリの芸獣だった。


   サソリは初めて相手にするな。
   殻が堅そう……んー何の芸がいいかな


『あの殻、欲しいな。売れるから。』

「あーそうでしたそうでした。売り物にするんだった。じゃあ…やっぱ風か水か氷か?」

サソリの芸獣が俺たちの方を向いた。

『雷でもいけるんじゃない?』

「あ、ほんと?」

『それか剣でそのまま斬ってくれば?』

こちらを威嚇している。

「あれ斬れるかな?」

『いけんじゃない?けど逆に雷使えるかどうか試してほしい気がするな。』

「サソリと戦ったことあんの?」

こちらに狙いを定め猛スピードで走ってきている。

『あるけど、雷ではなんだよね~』

「なるほど…」

「お、おい!!アグニ!!!」

『アグニ、シリウス様!!!!!!』

 バリッ! ビリッ パリリ 

「じゃあ雷、当ててみるか。」

『お願いね』


 キュゥ・・・・ドーーーーン!!!!!!


手のひらから出した雷の芸をこちらに向かってきたサソリの芸獣に一直線でぶち当てた。瞬間、辺り一面が雷の光で真っ白の世界に変わる。

ギュルルルルィ…………ドスン。

サソリは最後、一声上げてそのまま倒れた。

「うん。解名無しで、芸だけでいけたな。」

『そうだね。もしかしたら雷が一番苦手なのかも知れないな。』

「そうなのかも?ラッキーだったな。」

『だね。じゃあ二人のとこに一旦戻ろうか』

「そうだな。一応報告しとこっか。」







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