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第2章
70 過去から学ぶ
しおりを挟む『ねぇ、もう一回やってよ』
「この前やったじゃありませんか」
『お願い!』
「ん~仕方ないですね」
あぁ。 あっぶね、これまた夢か。
一瞬現実かと思っちゃったわ。
見たことも行ったこともない場所に自分がいると気づいて、今いる場所が夢の中だと悟る。毎回夢に出てくるこの場所は…たぶん、空の上。
かつて俺が、天空人だった時の記憶。
この子誰だ?
シリウスっぽいけどなんか幼いな…
今の俺の外見と同い年くらいかな
「では…ここにしますね。」
そして安定の勝手にしゃべるやつね
自分の身体なのに言動が支配できない。
この勝手に動く感じはまだ慣れないな…
青空の元、芝生の上、穏やかな風を感じながら……俺はたぶん微笑んでいる。小っちゃいシリウスみたいな子を相手にして、何かを見せようとしていた。
「では…一つ一つの命にギフトを 藝として 」
撒いてあった花の種が一斉に成長し、俺とその子の周辺は輝かやんばかりの花畑に変わる。花畑の周りにある小さな木の苗までもがぐんぐんと伸び、立派な木に変化した。
『うわぁ…!! やっぱシュネイは上手だねぇ!』
「ふふっ。そのうちあなたの方が上手くなりますよ。」
『そうなのかな?けどシュネイの芸見るの、好きだよ』
何この子…めっちゃいい子やん。
風になびいた俺の金色の髪の毛が視界に入った。
………ええぇ?!あ…俺も金髪?!!
あれ? 待って待って……
俺、女じゃないか?!!
全然気づかなかったけど、天空人の俺は女性のようだ。
あ。でもそっか。別にそんな不思議ではないか
祖先が全員男なわけないもんな。そっかそっか。
へぇ~なんか面白いなぁ~
小さい男の子が楽しそうに幸福そうに笑ってる。俺はその顔を見て言葉を重ねた。
「花畑に1番似合う空はご存知ですか?」
『なぁに?』
わからん。 なんだろ?
「ふふっ。私も小さい頃にあなたの先代から教わったんですよ。空にギフトを 天変乱楽 」
え?! 俺その芸も出来るの?!!
一面の青空に不自然に雲が現れた。
まるで雲が舞っているようだ。
そしてそのまま、光のように細かい雨が降り注いだ。
『うわぁ……!!!』
雲はそのまま舞い去っていった。
残った粒子が陽の光に反射して……
そこはまるで光の国のようだった。
そして、7つの光の帯が空に現れた。
「ふふっ。正解は、虹です。」
『……シュネイ、とっっても綺麗だよ。ありがとう』
「どういたしまして」
あぁ、本当に綺麗だな。
そうか……
こんな世界に、彼らはいたんだな。
『今度ね、あの2人と一緒に下に降りるんだ。』
「どうされたんです?私もご一緒しますか?」
『ううん、大丈夫。2人が木の苗を植えたんだって。だから僕に「藝」をしてほしいんだってさ。』
「そうだったのですね。だから今日私にもう一度、と仰ったのですか?」
『うん。参考にしたくてさ』
「参考になりましたか?」
『もちろん!』
「それはよかったです。」
その子が微笑んでいた。俺は安心していた。
夢のようなこの場所は すでに遠く……
そのことをわかってしまうたび
胸の奥が締め付けられる
あぁ こんな風に感じてしまうなら…
いっそ夢なんか見たくなかった。
もう 夢なんか見せないでくれ
『 目が覚めたかい? 』
「………あれ……シリウス?」
『どうしたの?涙が出てるね』
「え? 嘘。まじ?」
急いで顔を触ると確かに濡れていた。いつのまにか涙が出ていたらしい。
「あれ、俺どうなったの?」
『ん?あぁ、なんか…気づいたら倒れてた。も~びっくりしたよ』
周囲を見渡すと砂漠の上だった。陽避けのテントの下におり、シリウスが冷風を送ってくれてた。
「俺どれくらい寝てたの?」
『んー…丸一日かな。』
「なっ!!一日?!」
いつの間にそんなに経ってた?!!!
驚いた顔でシリウスを見続けていると、シリウスがしたり顔で話してきた。
『夢…いや、過去の記憶を視たんじゃない?』
「え、あ、うん。今視てた。」
『どう?何か学べた?』
「ああ、俺が解名の藝と天変乱楽をして、って…え?」
『方法はわかったよね?』
「お前………まさか!!!!」
『やり方がわかんなければ過去から学ぶのが1番手っ取り早いんだよ。君、意外と体力も芸素もついてたんだね。気絶するまでに4日も費やしてくれちゃって…』
このやろう…!!!!
本当に教える気がなかったのか!!
過去から学べって…どんな荒技だよ!!
「俺が気絶しなかったらどうしてたんだよ!!」
『それはない。気絶するまでさせるつもりだったから』
「こ、このやろう………!!」
『まぁいいじゃん。ほら、やってみなよ。』
「…ちっ。はぁ~…」
俺は諦めてテントから出た。そして砂漠に種を撒き、夢と同じように芸を出す。
ムカつくけど確かに感触を覚えてる。
夢で学んだ方が効率が良いのか……
「ギフトを… 藝 」
その言葉を発した途端、自分の体から芸素が抜けるのを感じた。そして目の前にある種が驚くべき速さで芽吹いていく。
『おぉ~できたじゃ~ん』
「まっ、まじか……」
今までの努力を無視された感。余裕で簡単にできた。
俺が芽吹いた草木を呆然と見つめていると、シリウスが俺の肩に手を置いた。
『どんまい』
・・・
その後引き続き、 藝 の練習をした。そしてシリウスの『天変乱楽 の練習もしたら?』の一言でそっちの練習も行った。
こちらも…悲しいくらい簡単にできた……
けどやはりまだ実力不足なんだろう。一回で結構な量の芸素を使うので、そんな何回もできない。
なので何日も砂漠で練習を重ねた。
そしてシリウスの『ここにオアシス作らない?』の一言で、2人してキャッキャ開拓ながらオアシスを作った。
ここにこの木植えて~この花も植えて~
もうちょっと湖広げて~芝生も欲しいよね~
って感じで、 キャッキャ ワーワー。
そして数日後、
「なっ………なんだここは?!!!」
『あ、あそこに誰かいるぞ!!』
「あ、どうしよう。バレた…シリウス、バレたぞ!」
『えっ うっそ~ん。』
身なりの良さそうなフォード公国の衣装を着た男の子と、同じく身なりの良さそうな天使の血筋の男の子が俺らの作ったオアシスを見て悲鳴をあげたのだった。
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