再創世記 ~その特徴は「天使の血筋」に当てはまらない~

タカナデス

文字の大きさ
上 下
74 / 174
第2章

70 過去から学ぶ

しおりを挟む



『ねぇ、もう一回やってよ』

「この前やったじゃありませんか」

『お願い!』

「ん~仕方ないですね」


   あぁ。 あっぶね、これまた夢か。
   一瞬現実かと思っちゃったわ。


見たことも行ったこともない場所に自分がいると気づいて、今いる場所が夢の中だと悟る。毎回夢に出てくるこの場所は…たぶん、空の上。


かつて俺が、天空人だった時の記憶。


   この子誰だ?
   シリウスっぽいけどなんか幼いな…
   今の俺の外見と同い年くらいかな


「では…ここにしますね。」


   そして安定の勝手にしゃべるやつね
   自分の身体なのに言動が支配できない。
   この勝手に動く感じはまだ慣れないな…


青空の元、芝生の上、穏やかな風を感じながら……俺はたぶん微笑んでいる。小っちゃいシリウスみたいな子を相手にして、何かを見せようとしていた。

「では…一つ一つの命にギフトを げいとして 」

撒いてあった花の種が一斉に成長し、俺とその子の周辺は輝かやんばかりの花畑に変わる。花畑の周りにある小さな木の苗までもがぐんぐんと伸び、立派な木に変化した。

『うわぁ…!! やっぱシュネイは上手だねぇ!』

「ふふっ。そのうちあなたの方が上手くなりますよ。」

『そうなのかな?けどシュネイの芸見るの、好きだよ』


   何この子…めっちゃいい子やん。


風になびいた俺の金色の髪の毛が視界に入った。


   ………ええぇ?!あ…俺も金髪?!!
   あれ? 待って待って……

   俺、女じゃないか?!!


全然気づかなかったけど、天空人の俺は女性のようだ。


   あ。でもそっか。別にそんな不思議ではないか
   祖先が全員男なわけないもんな。そっかそっか。
   へぇ~なんか面白いなぁ~


小さい男の子が楽しそうに幸福そうに笑ってる。俺はその顔を見て言葉を重ねた。

「花畑に1番似合う空はご存知ですか?」

『なぁに?』


   わからん。 なんだろ?


「ふふっ。私も小さい頃にあなたの先代から教わったんですよ。空にギフトを 天変乱楽てんんぺんらんがく 」


   え?! 俺その芸も出来るの?!!


一面の青空に不自然に雲が現れた。
まるで雲が舞っているようだ。

そしてそのまま、光のように細かい雨が降り注いだ。

『うわぁ……!!!』

雲はそのまま舞い去っていった。

残った粒子が陽の光に反射して……
そこはまるで光の国のようだった。

そして、7つの光の帯が空に現れた。

「ふふっ。正解は、にじです。」

『……シュネイ、とっっても綺麗だよ。ありがとう』

「どういたしまして」


   あぁ、本当に綺麗だな。
   そうか……
   こんな世界に、彼らはいたんだな。
  

『今度ね、あの2人と一緒に下に降りるんだ。』

「どうされたんです?私もご一緒しますか?」

『ううん、大丈夫。2人が木の苗を植えたんだって。だから僕に「藝」をしてほしいんだってさ。』

「そうだったのですね。だから今日私にもう一度、と仰ったのですか?」

『うん。参考にしたくてさ』

「参考になりましたか?」

『もちろん!』

「それはよかったです。」

その子が微笑んでいた。俺は安心していた。


夢のようなこの場所は すでに遠く……

そのことをわかってしまうたび
胸の奥が締め付けられる


   あぁ こんな風に感じてしまうなら…
   いっそ夢なんか見たくなかった。


   もう 夢なんか見せないでくれ









『 目が覚めたかい? 』

「………あれ……シリウス?」

『どうしたの?涙が出てるね』

「え? 嘘。まじ?」

急いで顔を触ると確かに濡れていた。いつのまにか涙が出ていたらしい。

「あれ、俺どうなったの?」

『ん?あぁ、なんか…気づいたら倒れてた。も~びっくりしたよ』

周囲を見渡すと砂漠の上だった。陽避けのテントの下におり、シリウスが冷風を送ってくれてた。

「俺どれくらい寝てたの?」

『んー…丸一日かな。』

「なっ!!一日?!」


   いつの間にそんなに経ってた?!!!


驚いた顔でシリウスを見続けていると、シリウスがしたり顔で話してきた。

『夢…いや、過去の記憶を視たんじゃない?』

「え、あ、うん。今視てた。」

『どう?何か学べた?』

「ああ、俺が解名の藝と天変乱楽をして、って…え?」

『方法はわかったよね?』

「お前………まさか!!!!」

『やり方がわかんなければ過去から学ぶのが1番手っ取り早いんだよ。君、意外と体力も芸素もついてたんだね。気絶するまでに4日も費やしてくれちゃって…』


   このやろう…!!!!
   本当に教える気がなかったのか!!
   過去から学べって…どんな荒技だよ!!


「俺が気絶しなかったらどうしてたんだよ!!」

『それはない。気絶するまでさせるつもりだったから』

「こ、このやろう………!!」

『まぁいいじゃん。ほら、やってみなよ。』

「…ちっ。はぁ~…」

俺は諦めてテントから出た。そして砂漠に種を撒き、夢と同じように芸を出す。


   ムカつくけど確かに感触を覚えてる。
   夢で学んだ方が効率が良いのか……


「ギフトを… げい 」

その言葉を発した途端、自分の体から芸素が抜けるのを感じた。そして目の前にある種が驚くべき速さで芽吹いていく。

『おぉ~できたじゃ~ん』

「まっ、まじか……」

今までの努力を無視された感。余裕で簡単にできた。

俺が芽吹いた草木を呆然と見つめていると、シリウスが俺の肩に手を置いた。


『どんまい』







・・・









その後引き続き、 藝 の練習をした。そしてシリウスの『天変乱楽 の練習もしたら?』の一言でそっちの練習も行った。

こちらも…悲しいくらい簡単にできた……

けどやはりまだ実力不足なんだろう。一回で結構な量の芸素を使うので、そんな何回もできない。
なので何日も砂漠で練習を重ねた。

そしてシリウスの『ここにオアシス作らない?』の一言で、2人してキャッキャ開拓あそびながらオアシスを作った。

ここにこの木植えて~この花も植えて~
もうちょっと湖広げて~芝生も欲しいよね~

って感じで、 キャッキャ ワーワー。



そして数日後、

「なっ………なんだここは?!!!」

『あ、あそこに誰かいるぞ!!』

「あ、どうしよう。バレた…シリウス、バレたぞ!」

『えっ うっそ~ん。』


身なりの良さそうなフォード公国の衣装を着た男の子と、同じく身なりの良さそうな天使の血筋の男の子が俺らの作ったオアシスを見て悲鳴をあげたのだった。









しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

「魔王のいない世界には勇者は必要ない」と王家に追い出されたので自由に旅をしながら可愛い嫁を探すことにしました

夢幻の翼
ファンタジー
「魔王軍も壊滅したし、もう勇者いらないよね」  命をかけて戦った俺(勇者)に対して魔王討伐の報酬を出し渋る横暴な扱いをする国王。  本当ならばその場で暴れてやりたかったが今後の事を考えて必死に自制心を保ちながら会見を終えた。  元勇者として通常では信じられないほどの能力を習得していた僕は腐った国王を持つ国に見切りをつけて他国へ亡命することを決意する。  その際に思いついた嫌がらせを国王にした俺はスッキリした気持ちで隣町まで駆け抜けた。  しかし、気持ちの整理はついたが懐の寒かった俺は冒険者として生計をたてるために冒険者ギルドを訪れたがもともと勇者として経験値を爆あげしていた僕は無事にランクを認められ、それを期に国外へと向かう訳あり商人の護衛として旅にでることになった。 といった序盤ストーリーとなっております。 追放あり、プチだけどざまぁあり、バトルにほのぼの、感動と恋愛までを詰め込んだ物語となる予定です。 5月30日までは毎日2回更新を予定しています。 それ以降はストック尽きるまで毎日1回更新となります。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

魔石と神器の物語 ~アイテムショップの美人姉妹は、史上最強の助っ人です!~

エール
ファンタジー
 古代遺跡群攻略都市「イフカ」を訪れた新進気鋭の若き冒険者(ハンター)、ライナス。  彼が立ち寄った「魔法堂 白銀の翼」は、一風変わったアイテムを扱う魔道具専門店だった。  経営者は若い美人姉妹。  妹は自ら作成したアイテムを冒険の実践にて試用する、才能溢れる魔道具製作者。  そして姉の正体は、特定冒険者と契約を交わし、召喚獣として戦う闇の狂戦士だった。  最高純度の「超魔石」と「充魔石」を体内に埋め込まれた不死属性の彼女は、呪われし武具を纏い、補充用の魔石を求めて戦場に向かう。いつの日か、「人間」に戻ることを夢見て――。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ
ファンタジー
「ディーナ。お前には今日で、俺たちのパーティーを抜けてもらう。異論は受け付けない」  勇者ラジアスはそう言い、私をパーティーから追放した。……異論がないわけではなかったが、もうずっと前に僧侶と戦士がパーティーを離脱し、必死になって彼らの抜けた穴を埋めていた私としては、自分から頭を下げてまでパーティーに残りたいとは思わなかった。  ほとんど喧嘩別れのような形で勇者パーティーを脱退した私は、故郷には帰らず、戦闘もこなせる武闘派聖女としての力を活かし、賞金首狩りをして生活費を稼いでいた。  そんなある日のこと。  何気なく見た新聞の一面に、驚くべき記事が載っていた。 『勇者パーティー、またも敗走! 魔王軍四天王の前に、なすすべなし!』  どうやら、私がいなくなった後の勇者パーティーは、うまく機能していないらしい。最新の回復職である『ヒーラー』を仲間に加えるって言ってたから、心配ないと思ってたのに。  ……あれ、もしかして『ヒーラー』って、完全に回復に特化した職業で、聖女みたいに、防御の結界を張ることはできないのかしら?  私がその可能性に思い至った頃。  勇者ラジアスもまた、自分の判断が間違っていたことに気がついた。  そして勇者ラジアスは、再び私の前に姿を現したのだった……

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ

雑木林
ファンタジー
 現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。  第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。  この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。  そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。  畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。  斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。

処理中です...