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第2章
52 双子の芸石
しおりを挟む「シリウス!…来るの早すぎないか?」
『え?そう?家に手紙着てすぐ出たからかな?』
「にしても早すぎだろ…どんな脚力してんだよ…。まぁいいや、今日何してたの?」
シリウスは応接間に入ってくるなり紳士さんによくわからない名前のお茶を注文して、ソファに腰を掛けた。なかなか横柄な態度だったにもかかわらず、シドは顔を顰める様子もなく、シリウスが着席した後に席についた。
『シド、元気にしてたかい?』
シリウスがシドの方に目を向けると少し緊張した様子で、それでも嬉しそうに答えた。
『はい!シリウス様もお変わりないようで、安心しました。』
『うん、そうか、よかった。父君も元気かい?』
『父上も元気に執政しておりますよ。』
『そう、それはよかった。……レイ、レベッカ、二人に芸石貰ってきたよ』
そう言ってシリウスは二人を手招きした。そして二人の掌に一つずつ、耳に付ける芸石を渡した。二つとも金色の芸石だ。
『これはね、ピアスって言って耳に付ける芸石だよ。両耳で一つのペアなんだけど、片耳ずつ持ってなさい。芸素を加えれば、もう片方のピアスの持ち主と声で連絡が取れる優れものだよ。』
「なにそれ超すごいじゃん!離れててもこれ付けてればレイとレベッカは連絡取り合えるのか?」
『そう。その方が安心でしょう?あ、それと芸全般の補助効果もあるから、二人の努力次第で全ての芸を使えるようになるかもね。』
「ええ?!それすごくないか?!俺のこの芸石、炎の補助だけで70センもしたのに?!」
隣で騒ぎすぎたようだ。シリウスが氷のような笑顔で俺に一言、『うるさい』と言ってきた。
『シリウス…これ、貰っていいの?』
レベッカが遠慮がちに問う。シリウスはレベッカの頭を撫でながら言った。
『ああ、二人できちんと持ってなさい。なくさないようにね。』
「…シリウス、ありがとう…!!」
『どういたしまして。レイもきちんとつけてなさいね』
「うん!」
シドが顔を強張らせてシリウスを見ていた。
『……シリウス様……失礼ですが…その芸石…どこで……?』
シリウスはソファに背を預けて、考えるような顔で答えた。
『うーん、貰ったんだよね。僕は「こんな感じの石用意しといて」って言っただけだから値段も知らないし…』
「おおい!!それはいくらなんでも払おうよ!誰に払ってもらったんだよ!?」
俺がツッコむと、シリウスはいやらしく笑った。
『アグニ、これ払えると思うの?』
「そりゃめちゃくちゃ高そうなのはわかるけどさ!だからこそ払わないとだろ?」
しかし俺の言葉を遮るようにシドが忠告してきた。
『ア、アグニ…払えるってレベルじゃない気がするぞ……変なことは言わない方がいい…!!』
「へ??うそっ。そんなやばいの?」
『た、たぶんだが……貴族街の小さな屋敷なら買える……』
「……俺別に払いたいとか言ってないヨ」
『だよねぇ?おとなしく貰っとこうね?』
「……ウン!!」
俺は、全力でアホな子のフリをして乗り切った。
しかし…一体誰だよ
シリウスに家やら芸石やら渡す人!
・・・・・・
その後、シドの屋敷を後にして、四人で森の家に帰った。
双子は初めての森の家だ。
『は~い、中へどうぞ~』
「『…わあ~!!!!! 』」
二人とも家に入るなり猛ダッシュしていった。
いやしかし、改めて大きいなこの家。
居間のサイズもえげつねぇ~。
巨大な窓がある吹き抜けの居間。窓の先には私有地の森や川があり、人は通らないし、帝都の中なので危険な獣も芸獣もいない。最高の条件だ。
双子は二人とも居間のソファを飛び跳ねて喜んでいる。確かに「今日からここがお家ですよ」の破壊力は十分にある家だから興奮するのは当たり前だろう。
『二人とも~部屋見せるからついてきて~』
「『はーい!!!』」
二人とも、えらく素直にシリウスの後をついて回る。
双子は俺の部屋の向かいを使うことになった。ベッドは一つしかないが、3人は寝れる大きさのものなのでとりあえずそれを使ってもらう。二人ともそんなことは全く構わないようなのでよかった。なんなら俺も一緒に、3人で寝たいな。
・・・
『アグニ、明日またこの前の洋服店行くよ。』
「うん別にいいけど…」
『彼にどこか、鍛冶できる場所がないか聞いてみようよ。正直剣は自分で作りたいでしょ?』
「え!まじで?!!うわっそれ凄い嬉しい!!助かる!」
帝都は品数も多いし、もちろん剣の質も高いのだが……
俺が1年だと思っていた年数は、実は世界では4年だった。つまり鍛冶に関わっている年数10年は、実は40年だったのだ。40年も鍛冶師をしていればもうベテランだ。
つまり、俺の作ったものの方が意外と質が良いのだ。
その上、シリウスとの旅で得た素材もまだ余っている。だから俺は、双子の剣は自分で作りたいなぁ~なんて考えていた。
『じゃあ決まりね。二人はどうする?一緒に行く?』
『うーん、家探検する!』
『そう?わかった。じゃあ帰ってくるまでこの森から出ちゃだめだからね?』
「『 わかった! 』」
二人とも元気に返事を返した。
「…よぉし!俺も明日が楽しみだ!!!」
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