再創世記 ~その特徴は「天使の血筋」に当てはまらない~

タカナデス

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第2章

44 話し合い

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ドルガともう一人の男の人(イナという名前らしい)が仮設テント内の椅子に座り、俺とシリウスがその両脇に立って待っていると、初老の軍人が入ってきた。その人の後ろから連隊長が入ってきた。

ドルガとイナが急いで立ち上がった。

「初めまして。シド公国軍師団長をしています、ビルドと言います。あぁ、座ったままでいいですよ」

「ドルガといいます。こちらはイナです。よろしくお願いします」

「えぇ。よろしくお願いしますね。さて早速ですが、シド公国への移住を考えておられると?」

ビルドという名の軍人がドルガとイナの前に座り、その後ろに連隊長が立った。

「村に住み続けるのには…限界があります。あなたの国でも、それ以外の土地でも構いません。この大陸で我々が安心して住める場所を…いただきたいです。」

ドルガが頭を下げた。それを見てイナも頭を下げる。ビルドは優しい笑顔を携えたまま問う。

「あなたがたに、我々を害す心づもりはありますか」

「なっ!!ありません!我々は…殺そうと思ったことはありません…!」

ドルガが必死の表情でそう告げる。その顔を見て、ビルドが言う。

「そうですか、そうですよね。……もう何十年も前になりますが、一度こちらに漂流した女性を助けたことがあります。彼女は一切攻撃的な姿勢を見せず、助けた私に太陽のような笑顔を見せました。…未だに忘れられません。」

「…そうでしたか…ありがとうございます。」

ビルドの言葉に、ドルガが少し緊張を和らげた。

「……我々はあなたがたを知らな過ぎた。だからこそ、これほどまでに敵視してしまった…。もう、十分でしょう…。私、ビルマが責任を持ってシド公国大公閣下に進言しましょう。」

「!!……あ、ありがとうございます!!!!」

ドルガが泣きそうな声で頭を下げた。イナも目に涙を浮かべて、嬉しそうな顔をしていた。





・・・





話し合いは順調に進んだ。黒の一族は、様子見のためにしばらく軍の敷地の一部に集団で住むことになった。

彼らは戦闘に特化してると言われる通り、身体強化の使い手だった。そのため、目ぼしい者はシド公国軍に仮所属し、その他の者は漁などで生計を立てられるように手配する、というところまで話が進んだ。

「いやぁ、よかった!本当によかったです!」

「アグニ…ありがとう…ありがとう!この老いぼれの願いを…一族を救ってくれて」

「アグニありがとう」

「そ、そんな!!…何もしてないっすよ~!」

ドルガとイナに感謝され、俺も泣きそうになりながら言葉を返した。この後、一旦二人を島に戻し、来週から徐々に移住を始めるのだ。

「…なぁ、なんだ?どうしたんだよ?」

シリウスは話し合いの時からずっと作り笑顔を浮かべていた。それがなんだか気持ち悪くて問いかけた。

『……気持ち悪い』

「は?それ今俺も思ってる。え、具合悪いの?」

『違う。…こんな順調にいくはずないんだよ』

「は?どういうこと?」

俺が聞き返すが、その答えはビルドにさえぎられた。

「君かい?今回の立役者は」

俺の方を見て笑顔でそう言うビルドに俺はペコっと頭を下げて言う。

「あ、傭兵隊…の副団長のアグニです。彼らのこと、ありがとうございました!」

俺の言葉を聞いてビルドはより深く笑顔を作った。

「いいえ。こちらこそありがとう。彼らを殺さずに、信じてあげて。…これでやっと初恋の女性と再会できるよ、ははっ。君が彼らの信頼を一番得ているだろうから、引き続き彼らの事をよく見てくれ。よろしくな、少年。」

「はい!!!」

そう言ってビルドと、その後ろを歩く連隊長が去っていった。

「ほら!やっぱ上手くいくよ!……シリウス?」

シリウスがずっと連隊長を見ていた。

そして、ヘビのような笑顔を見せて呟いた。


『あぁ…隙間だ あそこだ あれだ 』


「……隙間?」

『いいや、なんでもない。君はそのまま動いていて』




一週間後、
シド公国の大公閣下が正式に黒の一族の受け入れを許可し、彼らの移住が始まった。





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