再創世記 ~その特徴は「天使の血筋」に当てはまらない~

タカナデス

文字の大きさ
上 下
47 / 174
第2章

43 黒の一族

しおりを挟む




黒の一族はシド公国近くの小島に住んでいる。
逆に今まで黒の一族が生存できたのは、その小島にいたからでもある。海の芸獣が陸よりも強く、そんな危険を冒してまでわざわざその小島に行く必要がなかったからだ。


「よ~し、着いたな。この島だろ?」

俺がそう聞くと、4人は頭を上下に動かした。

「…無事着いたな。ヨハンネさんのお陰だ。」

『いいえ~』

マースがシリウスに対して礼を言う。
今回はそれほど大きい芸獣は出ず、シリウスが船の上から一人で対応したのだ。

4人を下ろし終えて戻ろうかというところで、黒の一族の男性が初めて喋った。

「あ、あの…お礼する…村にきて…話す、ます」

「え?お礼?してくれるのか?」

俺がそう聞き返すと、その男性はうなずいた。

「マースさん、どうしますか?」

一度マースに聞いてみるが、マースは疑い深い顔をしていた。

『マースさん行きましょう。彼らの生活がわかりますし……住む場所もわかるでしょう?』

シリウスがマースの耳元でそう囁いた。その言葉を聞いてマースは決断した。

「…わかった。お前ら2人は船と周辺の警戒を頼む。戦闘民族が俺らの船を壊さないとも限らないからな。そうなったら各自しろ」

「「はっ!!」」

マースが連れてきた正規軍2人にそう指示を出し、俺とシリウス、マース、そして4人の黒の一族で村に行くことになった。

ぬかるんだ道を進み続けた。きっと満潮時には海の水がここまで届くのだろう。生えている植物も今まで見たことがないものが多い。周りをきょろきょろしながら奥の村まで進んでいった。

「あ!あれが村か?」

「…そう、村」

村は、根が俺の頭の高さまで出ている木で囲まれていた。その木がバリケードの役割を果たしているのだろう。建物は木や泥で固められたもののように見える。家の位置が高く、どの家にも階段と船があった。

「……なぁ。家の位置が高いのは、水が来るからか?」

俺がそう聞くとその4人はうなずいた。


   やっぱそうなのか。
   これは生活が大変そうだな…


「村の長の家、連れていく。…来て」

「あぁ、ありがとう!」

村の中に入ると、黒の一族たちは武器を片手にこちらを見ていた。

しかし攻撃はしてこなかった。

「ヨハンネさん、すぐに芸を出せるようにしといてくださいね」

『はい。』

マースが柄に手を添えてシリウスに告げる。シリウスはにっこりと笑って返事をした。

「ここ、長の家。待つ、ここで」

「おお。ここで待ってればいいんだな?」

たぶん村長に、俺らを連れてきたことを言うのだろう。
暫く待ってると入っても良いと言われたので、階段を上り、家の中に入った。

「ようこそ。我が一族の村へ。彼らを助けてくださりありがとうございました。」

優しそう…だけど筋肉の目立つ老人が奥に座っていた。


   なんかすげぇ強そう…
   おじいちゃんかっこいいな。


「いえいえこちらこそ。怪我無くて良かったです。お招きありがとうございます」

俺は丁寧に礼を返したが、マースとシリウスはしなかった。

「私は一族の長、ドルガと申します。どうぞ、おかけになってください」

「あ、はい!僕はアグニと申します。後ろの二人はマース、シ…ヨハンネです。」

『ドルガ、ヨハンネです。よろしく』

「……マースだ。」

辛うじて自己紹介が終わり、俺らは村長に勧められた席に座る。
するとすぐにシリウスがドルガに話しかけた。

『ドルガ、この村…海が入ってくるのでしょう?食糧と水はどうしてるのです?』

「食糧は狩りを、水は木から取ってます。木が海水を純水に変えるので、その木を切ってね。けど…毎夜村には海水が入ってくるのですよ。なかなか…安全な暮らしではない。」

『そう……そうは大変ですね。』

するとドルガは覚悟を決めたような顔でこちらを見て言った。

「…我々が、一族が陸へ上がることはできないでしょうか?」

「あぁ?どういうことだ?」

マースが眉をひそめて聞き返す。

「ここに住み続けるのには……限界がきております。どうか、陸地へ上がって、一族があなたがたとともに生活できる方法はないのでしょうか?」

「マースさん……どうなんですか?」

マースは疑いの表情のまま、それでも驚いているようだった。まさか一族側からそのような提案が出るとは思わなかったのだろう。

「……わからない。シド公国で受け入れるか、それとも別の土地を与えるのか…受け入れないか…。話し合う必要がある。」

マースは、この島で初めて表情に迷いを見せた。
きっと、今まで聞いていた通りの人間じゃなかったからだろう。彼らはあまりにも理性的だった。

「……そうですか。では…私を陸へ連れて行ってもらえませぬか。話し合いをする場を、設けてはもらえませぬか。」

眉を寄せ、深く考えている様子のマースに、シリウスがぽつりと呟いた。

『初めての試みになりますね。成し遂げられたら、これは偉業となるでしょうね……』

マースはシリウスの言葉にピクリと反応し、ゆっくりと顔をあげた。

「わかった。では、ドルガ。あなたを公国へ連れて行こう。話し合いの場を設けるよう上司に進言しよう。」

「!! あ、ありがとうございます…」

周りにいた他の黒の一族は皆、笑顔を見せた。
彼らの表情は明るく、心から嬉しがっていると十分に伝わった。





・・・・・・







再度、船に乗り、シド公国へと戻る。
村に案内をしてくれた男性と、ドルガも一緒だ。

シド公国の海岸に着くと、すぐ正規軍が周りを囲った。
そしてその真ん中で連隊長が声を張り上げる。

「マース!!!どういうことだ!!!!」

マースは一定の距離まで近づいた後、連隊長に敬礼をした。

「連隊長!の一族は帝国民になることを考えています!そのために、話し合いをしたいとのことです!したがって、黒の一族から2名、代表の者を連れ戻ってまいりました!!」

マースの宣言に周囲の軍人はら一斉にざわついた。

「なに?言葉が通じるのか?」

「帝国民になってもいいっていうのか?」

「話し合いだと?どうせ隙を見て我らを殺そうとするに決まってる。」

「シド公国に住むのかな?」


「黙れ!!!!!!」


連隊長の一言で一瞬で場が静まりかえる。連隊長は険しい顔のまま告げた。

「……とりあえず、一室設ける。そこに連れていけ。報告後、検討する。…行け!!!」

「「「 はっ!!!! 」」」

軍人らが一斉に動き出し、二人を連れていく。
俺とシリウスは彼らと一緒に付いていくことにした。





・・・





「連隊長……」

「……ちっ!!!!!!!」

「…どうするのですか?あんなを受け入れるのですか?」

「そんなわけないだろう!だがマースが全体の前で言ってしまった。報告を怠ればすぐにバレる。私は報告せざるを得ない…!!」

「…どうするのですか?」


「……今後、いくらでも軋轢を起こせばいい。」

にやりとした笑みを浮かべて静かにそう言っていた。





しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

魔石と神器の物語 ~アイテムショップの美人姉妹は、史上最強の助っ人です!~

エール
ファンタジー
 古代遺跡群攻略都市「イフカ」を訪れた新進気鋭の若き冒険者(ハンター)、ライナス。  彼が立ち寄った「魔法堂 白銀の翼」は、一風変わったアイテムを扱う魔道具専門店だった。  経営者は若い美人姉妹。  妹は自ら作成したアイテムを冒険の実践にて試用する、才能溢れる魔道具製作者。  そして姉の正体は、特定冒険者と契約を交わし、召喚獣として戦う闇の狂戦士だった。  最高純度の「超魔石」と「充魔石」を体内に埋め込まれた不死属性の彼女は、呪われし武具を纏い、補充用の魔石を求めて戦場に向かう。いつの日か、「人間」に戻ることを夢見て――。

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

(改訂版)帝国の王子は無能だからと追放されたので僕はチートスキル【建築】で勝手に最強の国を作る!

黒猫
ファンタジー
帝国の第二王子として生まれたノルは15才を迎えた時、この世界では必ず『ギフト授与式』を教会で受けなくてはいけない。 ギフトは神からの祝福で様々な能力を与えてくれる。 観衆や皇帝の父、母、兄が見守る中… ノルは祝福を受けるのだが…手にしたのはハズレと言われているギフト…【建築】だった。 それを見た皇帝は激怒してノルを国外追放処分してしまう。 帝国から南西の最果ての森林地帯をノルは仲間と共に開拓していく… さぁ〜て今日も一日、街作りの始まりだ!!

「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!

七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ? 俺はいったい、どうなっているんだ。 真実の愛を取り戻したいだけなのに。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

処理中です...