再創世記 ~その特徴は「天使の血筋」に当てはまらない~

タカナデス

文字の大きさ
上 下
45 / 174
第2章

41 傭兵採用試験

しおりを挟む


「なんで起こしてくれなかったんだよ!!!」

『僕と同じ集合時間だと思ったんだも~ん!』

今、シリウスと二人、猛ダッシュで駐屯地に向かってます。眠れるかな?なんてなんで思ったんだろう。考えてみたら2日間走り続けて身体は疲れ切っていた。そりゃ秒で寝るわ。

そして一応今日はシリウスも「能力を示すため」として採用試験場に行くことになっている。けれど傭兵試験の説明とか聞かなくてもいいので、俺より集合が30分遅かったのだ。

「これで受けられませんってなったらどうすんだよ?!」

『君が自分で起きればよくない??!ねえ、だよね?!!』

「あー!!!!もうそうだけど!!あぁぁ!!!」

やり場のない焦りをエネルギーに変え、風の芸+身体強化で猛ダッシュした。

「はぁはぁはぁ、すいません。はぁ、あの、アグニと言います。傭兵試験、はぁ受けに来ました…」

記録的な速さでなんとか集合時刻ぴったりに辿り着いた。俺の汗を見て受付のお姉さんが若干引いてる。

「あ、はい。アグニさんですね。この奥の外の訓練場でお待ちください。あの、大丈夫…ですか?」

「え?あ、はい。大丈夫です。はぁ、はぁ」


   明らかに遅刻しそうになった人の図。
   めちゃ恥ずかしい……!





・・・・・・





シリウスと一旦別れ、外の訓練場に出ると全部で100人くらい人がいた。


   この中から何人選ばれるんだろ……
   頑張らなきゃいけない気がしてきたな…


暫くすると、何人も軍人か現れ、そのうちの一人、30代くらいの男性が段の上に上がり、よく響く声で告げた。

「志願者諸君!!よく来てくれた。今日一日、シド公国軍の正規軍とともに訓練に出てもらう。ついてこれない者、不適切だと思った者は脱落だ。合格者は明日から再び訓練に出てもらう。良いか!」

「「『「 おう!! 」』」」


   うわびっくりしたぁ~
   今叫ぶタイミングだったのね。
   ・・・・・・あれ?シリウス?!


叫び損ねたまま突っ立って軍人の方を見ていると、後ろの方にシリウスがいるのが見えた。何年も前からいます感を出してる。


   はぁ?!!!
   あいつもうあのポジションかよ!





・・・







軍の訓練自体はたいして難しいものではなかった。ストレッチ、走り込み、筋トレ、対人戦、また筋トレ、そしてまた対人戦。2回目の筋トレが終わった後、20歳くらいの赤茶の髪で茶色の目をした男性が話しかけてきた。

「よう。お前、まだ疲れてねえのか?」

「あ、どうも。いや、疲れてますよ」

実際、朝の猛ダッシュが効いてる。けどあれで無理やり体を起こしたからなのか、訓練を辛いとは感じなかった。俺の答えに、その男性がニヤリと笑った。

「へぇ…俺ヘスト。これからよろしく」

「あ、アグニです。よろしく」

「アグニか。よろしく。この後の対人戦は実際に正規軍とやり合うらしいぜ。さっきお前が剣持ってるの見たけどよ、結構強いな?」

「え、ほんとっすか?ありがとうございます!」

「ずっと傭兵やってるのか?それともどこかの軍に入ってたのか?」

「あー元々鍛治師でした。最近は旅人やってます」


   なんかこう答えるとプー太郎みたいだな俺。
   いや実際そうか。


「あ?…旅人?冒険者か?」

「んーまぁ冒険者登録してるので、冒険者ですかね」

「へぇ~……まぁ頑張ろうぜ!」

「はい!!」

その後再び集合の合図があり、聞いていた通り軍人らと試合をすることになった。軍に入って5年目程度の人らが相手。新人レベルの傭兵はいらないってことだ。俺の番が来て前に出ると、向こうから現れたのは朝、全体の前で喋っていた男の人だった。

「よろしく。早く構えろ。」

「あ、はい!よろしくお願いします!!」

不愛想にそう告げられ、急いで剣を構える。俺も向こうも同じ木剣を使用しているため、オーソドックスに中段構え。しばらく構え合ってると向こうが不審な顔をした。

「どうした?かかってこい。」

「あ、はい!」


   あ、俺からいくのね。


かかってこいと言われたので、言われたとおり斬りつけにいく。剣と剣が合わさり、甲高い音が鳴る。相手の人が顔を顰めた。剣を合わせたままだと力比べになってしまうので俺はそのまま連続で攻め続ける。

「くっ…!!」

男は吐息を漏らしつつも剣を防ぎ続けた。さすがの強さだ。


   うーん結構防ぐな…‥‥よし。
   力を加えていこう。


俺は本気で力を加えた。すると明らかに向こうが押され始めた。


   お?これいけるんじゃない??
   …待って。これ、いけていいのか?


全員の前でしゃべるってことは、たぶんそれなりに仕切る立場にいる人だ。もしそんな人を負かしたら…なんだかだめな気がする。


   これが空気を読むってことなのか…
   俺も大人になったな。


自分の成長に感動しつつも程よいところで、剣が当たって飛んでいってしまった感を出す。これで俺は戦闘不能、負けになる。

「ありがとうございました!」

俺が元気よく挨拶をすると、男はにやりと笑って俺の耳に顔を近づけて言った。

「お前……ふざけんじゃねぇぞ?」

「ひぃっ!!」


   やばい。抜群に怖い。
   その辺の芸獣より全然怖い。


顔をこわばらせつつもなんとか目線を合わせていると、男がふっと笑った。

「明日から来い。他の奴らに剣を指導してくれ」

「え?………あ、はい!!!」


   俺の合格が決まった瞬間だった。






次の日、同じように駐屯地に行くと俺はシド公国非正規軍傭兵隊副団長になっていた。





しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

(改訂版)帝国の王子は無能だからと追放されたので僕はチートスキル【建築】で勝手に最強の国を作る!

黒猫
ファンタジー
帝国の第二王子として生まれたノルは15才を迎えた時、この世界では必ず『ギフト授与式』を教会で受けなくてはいけない。 ギフトは神からの祝福で様々な能力を与えてくれる。 観衆や皇帝の父、母、兄が見守る中… ノルは祝福を受けるのだが…手にしたのはハズレと言われているギフト…【建築】だった。 それを見た皇帝は激怒してノルを国外追放処分してしまう。 帝国から南西の最果ての森林地帯をノルは仲間と共に開拓していく… さぁ〜て今日も一日、街作りの始まりだ!!

勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした

赤白玉ゆずる
ファンタジー
【コミックス第1巻発売です!】 早ければ、電子書籍版は2/18から販売開始、紙書籍は2/19に店頭に並ぶことと思います。 皆様どうぞよろしくお願いいたします。 【10/23コミカライズ開始!】 『勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる!』のコミカライズが連載開始されました! 颯希先生が描いてくださるリュークやアニスたちが本当に素敵なので、是非ご覧になってくださいませ。 【第2巻が発売されました!】 今回も改稿や修正を頑張りましたので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。 イラストは蓮禾先生が担当してくださいました。サクヤとポンタ超可愛いですよ。ゾンダールもシブカッコイイです! 素晴らしいイラストの数々が載っておりますので、是非見ていただけたら嬉しいです。 【ストーリー紹介】 幼い頃、孤児院から引き取られた主人公リュークは、養父となった侯爵から酷い扱いを受けていた。 そんなある日、リュークは『スマホ』という史上初の『Xランク』スキルを授かる。 養父は『Xランク』をただの『バツランク』だと馬鹿にし、リュークをきつくぶん殴ったうえ、親子の縁を切って家から追い出す。 だが本当は『Extraランク』という意味で、超絶ぶっちぎりの能力を持っていた。 『スマホ』の能力――それは鑑定、検索、マップ機能、動物の言葉が翻訳ができるほか、他人やモンスターの持つスキル・魔法などをコピーして取得が可能なうえ、写真に撮ったものを現物として出せたり、合成することで強力な魔導装備すら製作できる最凶のものだった。 貴族家から放り出されたリュークは、朱鷺色の髪をした天才美少女剣士アニスと出会う。 『剣姫』の二つ名を持つアニスは雲の上の存在だったが、『スマホ』の力でリュークは成り上がり、徐々にその関係は接近していく。 『スマホ』はリュークの成長とともにさらに進化し、最弱の男はいつしか世界最強の存在へ……。 どん底だった主人公が一発逆転する物語です。 ※別小説『ぶっ壊れ錬金術師(チート・アルケミスト)はいつか本気を出してみたい 魔導と科学を極めたら異世界最強になったので、自由気ままに生きていきます』も書いてますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

処理中です...