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第2章
41 傭兵採用試験
しおりを挟む「なんで起こしてくれなかったんだよ!!!」
『僕と同じ集合時間だと思ったんだも~ん!』
今、シリウスと二人、猛ダッシュで駐屯地に向かってます。眠れるかな?なんてなんで思ったんだろう。考えてみたら2日間走り続けて身体は疲れ切っていた。そりゃ秒で寝るわ。
そして一応今日はシリウスも「能力を示すため」として採用試験場に行くことになっている。けれど傭兵試験の説明とか聞かなくてもいいので、俺より集合が30分遅かったのだ。
「これで受けられませんってなったらどうすんだよ?!」
『君が自分で起きればよくない??!ねえ、だよね?!!』
「あー!!!!もうそうだけど!!あぁぁ!!!」
やり場のない焦りをエネルギーに変え、風の芸+身体強化で猛ダッシュした。
「はぁはぁはぁ、すいません。はぁ、あの、アグニと言います。傭兵試験、はぁ受けに来ました…」
記録的な速さでなんとか集合時刻ぴったりに辿り着いた。俺の汗を見て受付のお姉さんが若干引いてる。
「あ、はい。アグニさんですね。この奥の外の訓練場でお待ちください。あの、大丈夫…ですか?」
「え?あ、はい。大丈夫です。はぁ、はぁ」
明らかに遅刻しそうになった人の図。
めちゃ恥ずかしい……!
・・・・・・
シリウスと一旦別れ、外の訓練場に出ると全部で100人くらい人がいた。
この中から何人選ばれるんだろ……
頑張らなきゃいけない気がしてきたな…
暫くすると、何人も軍人か現れ、そのうちの一人、30代くらいの男性が段の上に上がり、よく響く声で告げた。
「志願者諸君!!よく来てくれた。今日一日、シド公国軍の正規軍とともに訓練に出てもらう。ついてこれない者、不適切だと思った者は脱落だ。合格者は明日から再び訓練に出てもらう。良いか!」
「「『「 おう!! 」』」」
うわびっくりしたぁ~
今叫ぶタイミングだったのね。
・・・・・・あれ?シリウス?!
叫び損ねたまま突っ立って軍人の方を見ていると、後ろの方にシリウスがいるのが見えた。何年も前からいます感を出してる。
はぁ?!!!
あいつもうあのポジションかよ!
・・・
軍の訓練自体はたいして難しいものではなかった。ストレッチ、走り込み、筋トレ、対人戦、また筋トレ、そしてまた対人戦。2回目の筋トレが終わった後、20歳くらいの赤茶の髪で茶色の目をした男性が話しかけてきた。
「よう。お前、まだ疲れてねえのか?」
「あ、どうも。いや、疲れてますよ」
実際、朝の猛ダッシュが効いてる。けどあれで無理やり体を起こしたからなのか、訓練を辛いとは感じなかった。俺の答えに、その男性がニヤリと笑った。
「へぇ…俺ヘスト。これからよろしく」
「あ、アグニです。よろしく」
「アグニか。よろしく。この後の対人戦は実際に正規軍とやり合うらしいぜ。さっきお前が剣持ってるの見たけどよ、結構強いな?」
「え、ほんとっすか?ありがとうございます!」
「ずっと傭兵やってるのか?それともどこかの軍に入ってたのか?」
「あー元々鍛治師でした。最近は旅人やってます」
なんかこう答えるとプー太郎みたいだな俺。
いや実際そうか。
「あ?…旅人?冒険者か?」
「んーまぁ冒険者登録してるので、冒険者ですかね」
「へぇ~……まぁ頑張ろうぜ!」
「はい!!」
その後再び集合の合図があり、聞いていた通り軍人らと試合をすることになった。軍に入って5年目程度の人らが相手。新人レベルの傭兵はいらないってことだ。俺の番が来て前に出ると、向こうから現れたのは朝、全体の前で喋っていた男の人だった。
「よろしく。早く構えろ。」
「あ、はい!よろしくお願いします!!」
不愛想にそう告げられ、急いで剣を構える。俺も向こうも同じ木剣を使用しているため、オーソドックスに中段構え。しばらく構え合ってると向こうが不審な顔をした。
「どうした?かかってこい。」
「あ、はい!」
あ、俺からいくのね。
かかってこいと言われたので、言われたとおり斬りつけにいく。剣と剣が合わさり、甲高い音が鳴る。相手の人が顔を顰めた。剣を合わせたままだと力比べになってしまうので俺はそのまま連続で攻め続ける。
「くっ…!!」
男は吐息を漏らしつつも剣を防ぎ続けた。さすがの強さだ。
うーん結構防ぐな…‥‥よし。
力を加えていこう。
俺は本気で力を加えた。すると明らかに向こうが押され始めた。
お?これいけるんじゃない??
…待って。これ、いけていいのか?
全員の前でしゃべるってことは、たぶんそれなりに仕切る立場にいる人だ。もしそんな人を負かしたら…なんだかだめな気がする。
これが空気を読むってことなのか…
俺も大人になったな。
自分の成長に感動しつつも程よいところで、剣が当たって飛んでいってしまった感を出す。これで俺は戦闘不能、負けになる。
「ありがとうございました!」
俺が元気よく挨拶をすると、男はにやりと笑って俺の耳に顔を近づけて言った。
「お前……ふざけんじゃねぇぞ?」
「ひぃっ!!」
やばい。抜群に怖い。
その辺の芸獣より全然怖い。
顔をこわばらせつつもなんとか目線を合わせていると、男がふっと笑った。
「明日から来い。他の奴らに剣を指導してくれ」
「え?………あ、はい!!!」
俺の合格が決まった瞬間だった。
次の日、同じように駐屯地に行くと俺はシド公国非正規軍傭兵隊副団長になっていた。
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