再創世記 ~その特徴は「天使の血筋」に当てはまらない~

タカナデス

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第2章

38 3つ目の場所

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「おい……」

『はい』

「行きたいところって……」

『はい』

「…………ここどこだよ!!」

『はい!シャルル公国です!』

「シリウスてめぇ…!!!!!!」

『あっははははははは!!!!!!』



…………説明しよう!

シリウスに「行きたいところ3つめ」「ちょっと距離がある場所」と言われてからもう幾日。帝都を出て永遠と北に進み、着いた場所は・・・シャルル公国。

噂のトラの芸獣出没国だ。

「シド公国に向かってたんじゃなかったのかぁ?!」

シリウスの胸倉を掴んでぶんぶんすると、あうあう言いながらシリウスが言い訳をする。

『この前コールに言っちゃったじゃんトラの毛皮渡すって!だから早く退治してシド公国に向かおうよ~』

「とっととやっつけられるレベルなのか?トラの芸獣は!帝都で噂が聞こえるくらいだろ?相当強いんじゃないのか?!」

『……そんなこと言わずにさ!頑張ろう!』

「こんのやろ……!!!」

『あぅあぅあ~』




・・・・・・







シャルル公国は帝都からずっと北にある公国だ。
国のほとんどが高低差の激しい崖や山でできており、活火山もある。そのため、地熱を利用した自然のお風呂ー温泉ーが存在し、観光や休養にもよく利用される。

そして「天使の血筋」が代々国を治めている。

シリアドネ公国と同様に、シャルル公国の首都の名前も「シャルル」だ。そんで今、その「シャルル」の街に着いたのだった。

「なんか今までに見たことない街だな!面白い!!」

『でしょ?!絶対気に入ると思ったんだよ~』

シリウスにキレるのもそこそこにして、街を楽しむことにした。この街は今まで見てきた街と少し作りが違う。城壁なるものは存在せず、あるのは入口の門だけ。

とっても説明が難しいんだが…いくつかの町がそれぞれ崖の上にあって、それが網の目のようにいくつもの橋で繋がって、一つの大きな「街」になってるんだ。

大小さまざまな橋がかけられていて、それらは全て朱色で統一されている。その他にも家の窓枠やドアなどは朱色で、崖の岩肌と街全体の朱色のコントラストがとても美しい。

随分と特徴的で印象的な街だ。

『とりあえず、宿屋探してそこの主人にでも芸獣のこと聞こうよ』

「了解。宿屋は…どこの町にあるんだろ…」

『うーんと、あっちかな』

「あ、ほんとだ」


俺らは橋で隣の崖にある町に移り、宿屋で部屋を取った後、店主に話を聞いた。

「今この国でトラの芸獣が出るって聞いたんですけど、どこで出るんですか?」

すると店主は明らかに焦った顔をして答えた。

「こらこら!面白半分で見に言っちゃだめだよ?!もう何人も食われてるんだからやめときなさい!」

「あ、俺ら別に見に行くわけじゃないですよ。逆に、間違えてそっちに行かないために知りたいんです!」


   俺も口から出まかせが上手になったなぁ


そう言うと、店主はほっと息を吐いて安心した表情になった。

「あぁ、そりゃそうだよね。いやぁ、さすがに泊めた客が次の日に食われた、なんて聞きたくないからさ。この街から西に言った崖によく出没するらしい。あの辺は崖が急だから討伐が難しいし、逃げづらいんだよ。だから行かないようにするのが1番だよ」

「へぇ~そうなんですね。わかりました!」


   いえす。情報ゲット。


宿の部屋に入り、シリウスと戦いに持っていく道具を精査する。

『アグニ。一応剣は妖精の方持っていきな』

「あ~そうだな。そうする。シリウスも短剣だけでいいからなんか持っといて」

『え~……』

「持ってってください。」

『……ちっ』

シリウスが言った「妖精の」とは、前に妖精の森で手に入れた芸素入り砂鉄で作った剣だ。大公様にあげる剣を作った時に使わなかったアリの芸獣の卵の殻(黒水晶)と組み合わせて作ったのだ。

出来上がった剣は、
芯の部分が金色に光り、周りが黒水晶で覆われた剣

自分で言っちゃあなんだが、めちゃくちゃ美しい。
しかも強い。

シリウスにも同じもので短剣を作ったんだが、一回も使っていないのは知ってる。






・・・







「……けっこう、崖だな」

『けっこう崖だね』

トラの出没場所付近に着いた。が、思った以上に崖だった。

「なぁシリウス。こういう場所はどうやって戦うのが吉?」

『そうだなぁ。ん~それこそ身体強化じゃない?』

「あー…なるほどねぇ……難しいな」

『アグニ、足だけでもいいから身体強化できる?』

そう言われ、以前耳に身体強化をかけた時を思い出して、足にも芸素を循環させる。

すると、若干…足が軽くなった気がした。

「うーん。なんか、少し…できたかな?」

『少しってどれくらい?飛んでみて』

言われた通りに真上へジャンプすると、シリウスの腰辺りまで飛べた。

「おお!俺できてるじゃん」

『…本当に少しだけだね。』

「え?ほんとに?シリウスってどれくらい飛べるの?」

『…これくらい?』

そう言ってシリウスは建物4階分くらいまで飛んだ。


   はぁ?!!飛びすぎだろ!!!!!


「身体強化ってそんなに飛べるの?!」

するとシリウスはなぜか物凄く遠慮がちに、申し訳なさそうに話し始めた。

『…あの、アグニ。今ね、僕が飛んだら…向こうにいたトラと目が合っちゃった』

「……はぁ!????まじかよっ?!!!」

するとシリウスの言葉通り、反対側の崖の上からトラが姿を現した。こちらを見据え、風のようなスピードで走り寄ってきた。

「っの、ばか野郎~~!!!!!!!」

『ほんと!ほんとにごめん!あはははは!!!』


こうして、
急遽トラの芸獣との闘いの火蓋が切られたのだった。








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