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第2章
37 出発前に
しおりを挟むシド公国に行くことが決まったが・・・
『ちょっと行きたいところ3つあるんだけど』
「おう。……俺ついていけばいい?」
『うん。それで大丈夫!ついてきて!』
「はいよ」
ってことで後ろをついていくと、
最初に着いたのはお高そうな洋服やドレス、生地が売ってるお店だった。
4階建てで、木枠の装飾が外に出ている木骨造りの建物。なかなかの大きさだ。他の店と比べても一目で高級店だとわかる。
「ここ?服買うのか?」
『今僕が来てる民族衣装を作ってくれてるんだよ』
えーこんな良いとこのやつ着てたのー
たっかそう。金持ちかよ。
シリウスの後に続いて中に入ると、お店に立っていたマダムがすぐ近寄ってきた。
「いらっしゃいませ。本日は…あ、大変失礼いたしました。すぐにオーナーを呼んでまいります。」
『よろしくー』
ふぉー!顔パスか!さすがですねぇ
するとすぐに物腰柔らかだけど、芯の強そうな紳士が現れた。
絶対この人が店主だ。
しかも絶対…身分高い。
「お久しぶりですシリウス様。本日も、いつものでよろしいでしょうか?」
『うん。あ、それとね、お願いがあって』
「私にできることでしたら、なんでも仰ってください」
『この子、アグニ。この子の冒険者登録の後ろ盾になってくんない?』
おっつ。急に俺の紹介。
紳士の前に立たされ、唐突の自己紹介タイムが始まった。
「初めまして。アグニと申します。今、シリウスと一緒に旅?…してます」
紳士は俺に少し驚きの表情を見せたが、すぐにこちらに礼をとった。
「初めまして、アグニ様。そしてご来店ありがとうございます。私、当店のオーナーをしておりますコール・ハーローと申します。立ち話も何ですので、奥へご案内いたします。こちらへ」
コールという名のダンディ紳士が俺とシリウスを奥へと案内する。歩いてる際、シリウスが小声で伝えてきた。
『苗字のある人は貴族だよ。あ、天使の血筋には無いけど。彼は男爵ね。』
「なっ!!やっぱそうなのか!なんとなくわかったわ…」
・・・・・・
奥の応接間に通され、紅茶と焼き菓子が出された。
「さて。それで、アグニ様の冒険者登録の保証人ということでしょうか?」
『そう。彼はスリーター公国の大公に直接剣を卸す鍛冶師だったんだ。けど僕が拾って、これからいろんな国見て回りたいの。だから各国に簡単に入れる冒険者登録がしたくて』
「…なるほど。保証人が市民か貴族かで入国の手続きの早さが違いますものね…」
『どうして僕に?って思ってる?』
「……お教え願えますか?」
うん。俺も気になる。なんで?
『うーん理由はそんな大したものじゃないよ。旅の途中で素材を手に入れたら、欲しいでしょ?どう?今騒がれてるトラの芸獣の毛皮とか欲しくない?』
え待ってそんな理由?!
『あとは…アグニね。来年君の娘と同じ学年に転入するよ』
「え?なに?転入?」
急になんの話?
俺が質問するとシリウスは俺の方を向いて会心の笑顔を見せた。
『君、来年第一学院に転入しようね』
「なぁ?!!」
ほんとうに急だな?!!
「第一学院って…たしか貴族の学校じゃなかったか?そこに俺、転入するのか?!無理だろ!」
『無理ではないよ。ただまぁ…難しいだけ』
こいつ何言ってんだ?と呆然としていると、コールは難しそうな顔でシリウスに話しかけた。
「第一学院への転入は、異例中の異例。相当な「格」の推薦状と実力が必要です。」
『もちろん知ってるよ。だからこそ推薦状を集める旅に出るんだよ。今のところスリーター公国の推薦状はあるよ。あとシリアドネ公国の武術大会優勝はしてるよ。』
「なっ!!この前の武術大会で少年が優勝したということは聞きましたが…それはアグニ様なのですか?」
「あ、はい。この前のやつ優勝しました。…そういえばシリウス。シリアドネ大公も推薦状書いてくれるって言ってたわ」
『なーんでそれ教えてくれなかったの?!じゃあ推薦状2つ手に入るじゃん』
その会話を聞いてコールは前のめりになりながら聞いてきた。
「アグニ様!それでは本当に第一学院への転入を?!」
「いやそれは俺…じゃなくて僕も今聞きました!」
「シリウス様!!」
『だからそう言ってるじゃん。きっと君の娘さんにとっても良い繋がりになると思うよ~?』
シリウスの発言に、コールがため息をついて椅子の背もたれに寄っかかる。
「娘のことを言われると…もうお手伝いをするしかありません。それにお二方の大公様から推薦状を頂けるような方だとわかったので…もちろん、保証人になりましょう。あぁ、それとは別に良い素材を入手してくださいましたら最大限良い値で買いますよ」
「あ、ありがとうございます。本当にいいんですか?」
俺が不安気にそう聞くとコールはウィンクして答えた。
「もちろんですよ。アグニ様、期待しておりますよ。」
「は、はい!!ありがとうございます!」
俺は冒険者になって各国に入れるようになるらしい。
ランクアップだ!
コールは優しい笑顔を浮かべて応援してくれた。
そして急いで保証書を書いてくれている間に、シリウスの民族衣装を一つ買った。いつも着ているのは濃い赤色のものだったが、次は茶色の布にところどころ藍色の装飾が入ったものだ。
そして再度お礼を言い、店を出た。
『アグニ、行きたいところ、2つ目いくよ~』
「はーい。冒険者登録だな?」
『そう!』
ということでまたしばらく歩き、白い石のこれまた大きい建物に入ってそこで冒険者登録を行った。保証人のお陰なのか、だいぶすんなりと終わった。
『行きたいところ3つ目は少し遠いから、帝都から出る準備してから出よう』
「うん? わかったー」
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