再創世記 ~その特徴は「天使の血筋」に当てはまらない~

タカナデス

文字の大きさ
上 下
32 / 174
第1章

32 我が家

しおりを挟む



『は~疲れた~』

「おい最初からソファに飛び込むな!」

無事に俺たちはスリーター公国の俺の家に辿り着いた。


この、名のついてない村に。


   やっぱインカ村の東にあったよなぁ?
   名前がないって…どういうことだろ?

   けどまぁ、久しぶりの我が家だ!
   締め切って出たからやっぱ埃が溜まってるな
   掃除しなきゃ…


部屋に荷物を置いて、すぐ掃除道具置き場に行く。箒を手に取り、部屋を掃き始めた俺を見て、シリウスが不思議そうな顔をした。

『何してるの?』

「……お前は掃除したことないんか?」

『ないかも。けどそうじゃなくて、箒使う必要ある?』


   ・・・はっ!!!
   そうか。芸!!!


「それって芸で掃除できるってことか?!」

『うん。世の人が芸石を付ける主な目的は日常生活を楽にするためだよ?箒に風の芸を纏わせてみなよ』


   な、なんと……!!!
   これは画期的だ!世紀の発明だ!!!
   誰だ芸を見出したやつ!ありがとう!!!


箒の周りだけに上手に風の芸を出すと、箒の大きさが3倍になったくらい上手く掃ける。その後水の芸で床全体を濡らし、モップをかけた。

掃除の時間が半分以下に短縮された。

「…かっ……画期的だ……!!」

『みんながみんな芸上手なわけじゃいし、風の芸はどうしても出来ないって人とかもいるからさ。こんなにすんなりいくことはないけど、でもみんなこうしてるよ』

「シリウス……今1番お前の弟子になってよかったと思ってる。」

真顔でそう伝えると、シリウスは頭を掻いた。

『えぇ~??そんな…照れるなぁ~』




・・・





帰ってきたことを報告しにシリウスが王城へと行っている間に、鍛冶を始めてしまおうと思う。

この旅で手に入れた素材は4つ。

竜ちゃんの青銀色の鱗

アリの芸獣の黒水晶の卵の殻

ヘビの芸獣の真っ白な金属質の牙

そして妖精の森で手に入れた芸素の混ざった砂鉄


砂鉄は絶対に使うけど、その他のやつはどう組み合わせるか考えないとだな。しかもお孫さん誕生の祝いの剣なわけだから、華やかにしなきゃだろうからなぁ。黒ベースの剣とかはだめだろうしな。うん。きちんと悩もう。




・・・






結局、芯に金属質の蛇の牙を使い、砂鉄を用いて、竜ちゃんの鱗を装飾に使用した剣を作った。薄く金色に輝く剣のところどころに青銀の水晶が装飾されて…いっそ神々しいまでの出来栄えだ。しかも強度もあるし、芸の効果も莫大だ。しかし軍人にしか振り回せないくらい重くなった。なので本当に「飾る用の剣」になってしまうだろう。


帰った時には花々が咲き誇っていたが、剣を作り終わる頃には季節がまた1つ動き、暑さで汗を拭うようになっていた。

『アグニ。明日、王城に上がれって。』

「あぁ、わかった。」

シリウスの言葉を聞いて頷く。
明日、いよいよ王に剣を献上する。

献上するだけでも少し緊張するが、もう一つ伝えようと思っていることがある。

『大丈夫。僕もその場にはいるからさ。』

「…おう。頑張る。」







・・・






スリーター公国の王城には数回招かれたことがある。
父とも行ったらしいがぶっちゃけそれは覚えてない。

王は「天使の血筋」ではないので城に金色の装飾はされていない。けれども美しい白壁に、朱色で統一された柱や屋根は荘厳で美しかった。


「こちらがご令孫に献上致します、祝剣になります」

『……良い剣だ。大変素晴らしい。ご苦労であった』

「恐れ入ります。」

スリーター公国の王、大公閣下は直々に剣を取られて様子を見られた。きっと使う素材のことはシリウスから聞いていたのだろう。なので驚いている様子は言葉には出なかったが、目を見張り、何度も剣を検め、感嘆のため息を出していた。


   よかった。満足してもらえたみたいだな。
   ……よし。


『アグニよ。褒美を与えたい。何か入り用なものはないか?』

俺が発言をしようとしたタイミングで大公様から聞いてきた。ちょうどいい。

「…はい。ございます。私アグニ、誠に恐縮ですが……専属の鍛治師を退任致したく、お願い申し上げます。」


   言えた。
   言えた。
   さぁ、どうだろ……?


俺は再び頭を下げる。すると、大公様と俺の中間辺りで民族衣装姿で立っていたシリウスが大公様の方を向き、発言する。

『大公様。私が…帝都へ連れていこうと思います。』

その言葉を聞いて大公が問うた。

『ほぉ…彼を帝都へ?』

『もちろん帝都以外にも。諸国を見せます。彼は……長く勤めて参ったでしょう?もう十分に羽ばたいてもいい頃ですよ』

シリウスの言葉を聞いて、大公様は足を組みながら大きくため息を吐いた。

『……任せてもいいのだな?』

『えぇ。私が監督役になってきちんと彼を見守ります。』

「……どうか。お願いいたします…!!!!」

長い沈黙の後、大公様が立ち上がっていった。

『アグニ、長きに渡る勤め、誠にご苦労であった。退任を認める。世を渡り、さまざまな事を学んでこい』

「!!!  ありがとうございます!!! 」






・・・・・・







こうして、俺はスリーター公国の鍛冶師を辞め、
世界を知る旅に出ることになった。

大公様は退任を認めてくださる他にも退職金や、今回の褒美金としと相当な額の報酬をくれた。こんだけの金額があれば当分暮らしには困らない。


   いよいよ…俺はただの旅人だ。



   さぁ、とりあえずまずは……帝都へ!!





   







しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

魔石と神器の物語 ~アイテムショップの美人姉妹は、史上最強の助っ人です!~

エール
ファンタジー
 古代遺跡群攻略都市「イフカ」を訪れた新進気鋭の若き冒険者(ハンター)、ライナス。  彼が立ち寄った「魔法堂 白銀の翼」は、一風変わったアイテムを扱う魔道具専門店だった。  経営者は若い美人姉妹。  妹は自ら作成したアイテムを冒険の実践にて試用する、才能溢れる魔道具製作者。  そして姉の正体は、特定冒険者と契約を交わし、召喚獣として戦う闇の狂戦士だった。  最高純度の「超魔石」と「充魔石」を体内に埋め込まれた不死属性の彼女は、呪われし武具を纏い、補充用の魔石を求めて戦場に向かう。いつの日か、「人間」に戻ることを夢見て――。

初めて入ったダンジョンに閉じ込められました。死にたくないので死ぬ気で修行したら常識外れの縮地とすべてを砕く正拳突きを覚えました

陽好
ファンタジー
 ダンジョンの発生から50年、今ではダンジョンの難易度は9段階に設定されていて、最も難易度の低いダンジョンは「ノーマーク」と呼ばれ、簡単な試験に合格すれば誰でも入ることが出来るようになっていた。  東京に住む19才の男子学生『熾 火天(おき あぐに)』は大学の授業はそれほどなく、友人もほとんどおらず、趣味と呼べるような物もなく、自分の意思さえほとんどなかった。そんな青年は高校時代の友人からダンジョン探索に誘われ、遺跡探索許可を取得して探索に出ることになった。  青年の探索しに行ったダンジョンは「ノーマーク」の簡単なダンジョンだったが、それでもそこで採取できる鉱物や発掘物は仲介業者にそこそこの値段で買い取ってもらえた。  彼らが順調に探索を進めていると、ほとんどの生物が駆逐されたはずのその遺跡の奥から青年の2倍はあろうかという大きさの真っ白な動物が現れた。  彼を誘った高校時代の友人達は火天をおいて一目散に逃げてしまったが、彼は一足遅れてしまった。火天が扉にたどり着くと、ちょうど火天をおいていった奴らが扉を閉めるところだった。  無情にも扉は火天の目の前で閉じられてしまった。しかしこの時初めて、常に周りに流され、何も持っていなかった男が「生きたい!死にたくない!」と強く自身の意思を持ち、必死に生き延びようと戦いはじめる。白いバケモノから必死に逃げ、隠れては見つかり隠れては見つかるということをひたすら繰り返した。  火天は粘り強く隠れ続けることでなんとか白いバケモノを蒔くことに成功した。  そして火天はダンジョンの中で生き残るため、暇を潰すため、体を鍛え、精神を鍛えた。  瞬発力を鍛え、膂力を鍛え、何事にも動じないような精神力を鍛えた。気づくと火天は一歩で何メートルも進めるようになり、拳で岩を砕けるようになっていた。  力を手にした火天はそのまま外の世界へと飛び出し、いろいろと巻き込まれながら遺跡の謎を解明していく。

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

うちのポチ知りませんか? 〜異世界転生した愛犬を探して〜

双華
ファンタジー
 愛犬(ポチ)の散歩中にトラックにはねられた主人公。  白い空間で女神様に、愛犬は先に転生して異世界に旅立った、と聞かされる。  すぐに追いかけようとするが、そもそも生まれる場所は選べないらしく、転生してから探すしかないらしい。  転生すると、最初からポチと従魔契約が成立しており、ポチがどこかで稼いだ経験値の一部が主人公にも入り、勝手にレベルアップしていくチート仕様だった。  うちのポチはどこに行ったのか、捜索しながら異世界で成長していく物語である。 ・たまに閑話で「ポチの冒険」等が入ります。  ※ 2020/6/26から「閑話」を従魔の話、略して「従話」に変更しました。 ・結構、思い付きで書いているので、矛盾点等、おかしなところも多々有ると思いますが、生温かい目で見てやって下さい。経験値とかも細かい計算はしていません。 沢山の方にお読み頂き、ありがとうございます。 ・ホトラン最高2位 ・ファンタジー24h最高2位 ・ファンタジー週間最高5位  (2020/1/6時点) 評価頂けると、とても励みになります!m(_ _)m 皆様のお陰で、第13回ファンタジー小説大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます。 ※ 2020/9/6〜 小説家になろう様にもコッソリ投稿開始しました。

(改訂版)帝国の王子は無能だからと追放されたので僕はチートスキル【建築】で勝手に最強の国を作る!

黒猫
ファンタジー
帝国の第二王子として生まれたノルは15才を迎えた時、この世界では必ず『ギフト授与式』を教会で受けなくてはいけない。 ギフトは神からの祝福で様々な能力を与えてくれる。 観衆や皇帝の父、母、兄が見守る中… ノルは祝福を受けるのだが…手にしたのはハズレと言われているギフト…【建築】だった。 それを見た皇帝は激怒してノルを国外追放処分してしまう。 帝国から南西の最果ての森林地帯をノルは仲間と共に開拓していく… さぁ〜て今日も一日、街作りの始まりだ!!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

処理中です...