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第1章
18 対人戦with山賊
しおりを挟む「なんか、いい場所だったな~エッセン町。」
エッセン町を出て、再び北に向かっている。いつものように出てきた芸獣を倒しながら丘陵を歩いている最中だ。シリウスはエッセン町を出てから髪と瞳を隠す民族衣装を着けていた。
『いい場所だったな~で済ませられるくらいの感性なのがある意味いいよね、君。』
「え?それ褒めてない感じ?」
『え?逆にわからない感じ?』
なんだとう!
いや、本当に綺麗だったし忘れがたいよ。
けどそれよりもさ!!
「なぁ!俺やっぱ強くなってるよな?よな?!」
『どうしてそう思ったの?』
「だって!討伐不可能って言われて皆が困ってたくらいの芸獣を一人で倒したんだぜ?結構なもんじゃないか?」
自惚れでなくそう思う。普通にすごいと思う。けれどシリウスはあほな子をなだめるような笑顔で言った。
『あの程度のヘビで何言ってるんだ?君は。』
「あの程度?!それ町の人らに言えないだろ!」
『悪いが…君と彼らは違う。伸びしろで考えたら今の君のレベルはゴミだ』
ゴミ?!そこまで?!ていうか期待値高すぎない?!
シリウスは俺をどんな存在にしたいんだいったい…。
「でもさ。俺本当に芸を知って良かった。人を守れる力があるっていうのは、本当にいいことだと思う。だからこれからもたくさん教えてくれ。」
改めてそう言うと、シリウスは片方の眉を上げ訝しそうな顔をした。
『指導方針は変えませんよ。それに素材採取のこと忘れてるような人にそんなこと言われてもなあ』
「あ!!素材!やばい!あぁぁぁぁぁ!」
『落ち着いて、採ってあるから。はぁ~…』
すっかり忘れてた。
そもそもの目的は素材採取なのに。
けど、本当に採っといてくれてよかった!
「ありがとう!!ヘビだよな?素材」
『そっ。町出る前に採っといたよ、牙。』
「ほぉ。牙か…」
そう言ってシリウスは肩にかけていた袋の中からヘビの芸獣の牙を取り出した。
それは牛の乳のように真っ白で軽くたたくとキンッと金属のような音を出した。
「すごいな、これ。金属みたいだ」
『耐凍性があるから氷系の芸獣に対していい武器になるんだ。上手く使いなさい。』
「おう!ありがとう!本当に楽しみだ!」
今までに見たこともないような素材がたくさん揃っている。これを使って、芸にも対応できる武器を作る。とても楽しそうで心が躍るな!
牙をじっくり見ながら歩いているとシリウスが言った。
『けど君、あんまり対人戦ができてないよね』
「当たり前だろ。人に芸なんて使ったら殺しちゃうだろ」
『ふ~ん。じゃあ君は人に芸を使うまでもなく人を殺せると?』
「いや、そもそも人は殺さないよ。自分が殺されそうにならない限りは」
『随分と余裕だねぇ。芸を使わなくても襲ってきた人は制圧できるって?』
「前にサントニ町でも喧嘩止めれただろ?余裕でできるよそれくらい」
『へぇ~そう?じゃあ、どうして君は気づかないの?』
ん?
「え? 何に?」
『 今、囲まれてるってことに。 』
………なに?!!!
俺は急いで辺りを見て、耳を澄ませる。
芸素は・・・まずい。
芸獣と比べると全然隠すのが上手かった。
まったく気づかなかった!
1,2,3・・・15人??!!どうして…!
「シリウス!15人くらいに囲まれてる…!」
焦りながらそう言うと、シリウスは悲しそうな顔をして言った。
『さっきからずっとだよ。はぁ~まだまだだね、ほんと…』
「なんで囲まれてるんだ?!」
『山賊だよ。大きい町の近くまで来たからね。本来は馬車とかを狙うんだろうけど。2人だけなら殺しやすいから狙ったんだろう。片方は女に見えるだろうし』
シリウスは民族衣装を着けている。傍から見ると一見女性だ。確かにこの場所で男女1組相手なら確実に殺せると思うだろう。
「……シリウス。俺が彼らを抑えてもいいか?」
辺りを伺いながらそう言うと、シリウスは口角をヘビのように持ち上げて冷たい顔で笑った。
『できるのなら…やってみるといい。せっかくの対人戦だ。君がさっき言ったように余裕で制圧してみなさいな』
・・・シリウスのやつ、何かがおかしい。
こんなに薄気味悪い笑い方は初め見た。
俺にはできないと思ってるのか?
いや、十分その力はあるはずだ。大丈夫。
「・・・見てろよ。」
シリウスにそう言い残し、周囲に向かって叫ぶ。
「出てこい!もういるのはわかってる!!俺が相手をする!」
俺の言葉でシリウスはすっと壁を背後にして近くにあった大きい岩陰に隠れた。
俺はその岩の前に立ち、剣を抜く。
そして次の瞬間、数人の獰猛そうな男らが武器を剣を片手に現れた。
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