15 / 174
第1章
15 氷の魅了、その少女
しおりを挟む同い年くらいの女の子が怯えた顔でこちらを見ていた。
え、俺が怖いん?
そう思って、自分的に最大級の笑顔で話しかける。
「あ、大丈夫!ごめん、なんの音かな~って思っただけだから」
「ひぃぃぃぃ!!!!!」
その少女がものすごい悲鳴をあげた。
え、俺別にコワクナイ・・・
俺も俺でその子の振る舞いに戸惑っていると、隣にシリウスが並んできて話しかけはじめた。
『ねえ、お嬢さん。どうしてここに来たの?』
その子は急に聞こえた別の声に驚き、シリウスの方を見た。
そしてシリウスを見た途端、その子は零れ落ちそうなくらい大きく目を見開いて息を詰めた。
シリウスの方がビビられてるのウケる。
けどそれよりも……先ほどのシリウスの問いかけは、この女の子は意図的にここに来たということか?
つまり、自殺希望者。
「あの、君、、、名前は?」
「あ……ヨハンネ…です……」
「ヨハンネ、なんでこの町にきた?知らずに来たのか?それとも知ってて…きたのか?」
俺の質問でヨハンネは明らかに動揺を見せた。
そうか……わざわざ、来たのか……
「………どうして…きたんだ?」
俺がゆっくり静かに聞くと、下を向いていたヨハンネは、力強い瞳で俺と視線を合わして言った。
「死んじゃいけないんですか?」
「…え?なんだって?」
「私が死ぬのは自由でしょう?死のうとしちゃいけないんですか?」
ヨハンネの言いたいことがわからない。
どうして死にたいんだ?
『ねぇねぇ、ちなみになんで死にたいの~?』
シリウスがいつものように話しかける。
ヨハンネはまたシリウスを見て驚いた顔をしたが、目を逸らして話し始めた。
「この町に住めなくなって…両親と妹と4人で別の村に移り住んだんです。けど……その村の人は…急に来た別の町の人間になんて、優しくしてくれなかった。」
ヨハンネは立ち上がって街の広場の噴水の方へ歩き始めた。
「こんな寒さの厳しい地域で…食事なんてまともにない。しかも新しい村で、どんなに土が良くても一から農業を始めて成果が出るのなんて何年もかかる。なのに村の人らは…助けてくれなかった!!!もう無理だってなって…だから…私はここに来て、何か売れる物や残ってる食料がないかを見に来たの…」
『ああ…なるほどね。そして君は元の町がこんな風に変わったことを知ったんだね』
シリウスがそう言うとヨハンネは頷いて白い人間らを見ながら話し始めた。
「そうです。ここにいる……この白く凍った人たちも見たわ。…恐ろしかった。……けど、美しかった。」
ヨハンネは羨ましそうに噴水の中にいる白い人を見つめている。
「こんな風に美しく…この世界で死ねるならこれ以上に自分の死を誇れることはないだろうって思ったの」
すると、ヨハンネは声を振るわせはじめた。
「そう思ったけど、村に帰ったのよ!私にはみんなが…家族がいる!そう思って帰ったのよ!たった3日よ!!村を出ていたのは!!!」
「……帰ったら、3人とも……死んでた」
そうか
もう彼女には帰りたくなる場所がないのか
するとシリウスが楽しそうな声で笑いながら言った。
『すごいねぇ!君1人で村から出たの?あぁ!この町にいる芸獣のお陰でこの辺には芸獣が出ないのか。途中で死ななくてよかったじゃないか!ははっ』
そう言うシリウスに対し、ヨハンネはひどく傷ついた顔をして言った。
「……別に……死んでもよかったわよ!!!なんなの?!そういうことじゃないでしょう?!!」
『え?だって君はこの町で死にたいんだろ?芸獣に殺されるんじゃなくて』
「もう別にいい!!死にたいの!!死ぬのは自由でしょう!?もう邪魔しないでよ!!」
ヨハンネが悲鳴のような声で主張した。シリウスは笑顔はそのままに、消え入りそうに言葉を紡いだ。
- 君は、もう死ねるんだね -
「え、なに?聞こえなかったわ。……もういいでしょ…消えて。この町から出てって!」
『あれ、僕は一度も死ぬことを止めてないよ。別に死にたきゃ死ねばいい。それは自由だ。けれど…こちらには目的がある。それはここの芸獣を倒すことだ。君の死が自由なように、こちらの行動も自由だろ?』
ヨハンネが眉間に皺をよせ、泣きそう顔をする。
俺はどうやってヨハンネを説得するかを考えていたが
ーーー大きな芸素の波が来た
次の瞬間、町が揺れる。
「なんだ?!もしかして芸獣がきちゃっのか?!」
「!! きゃあぁぁぁぁ!!!!!」
「ヨハンネ!!!」
くそ!噴水の影で見えなかった!
奥の道から現れたのは
純白の色をした2つ頭のあるヘビの芸獣
片方の頭は噴水の氷ごとヨハンネを口に咥えた。
そしてもう片方は頭で俺とシリウスを威嚇した。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
魔石と神器の物語 ~アイテムショップの美人姉妹は、史上最強の助っ人です!~
エール
ファンタジー
古代遺跡群攻略都市「イフカ」を訪れた新進気鋭の若き冒険者(ハンター)、ライナス。
彼が立ち寄った「魔法堂 白銀の翼」は、一風変わったアイテムを扱う魔道具専門店だった。
経営者は若い美人姉妹。
妹は自ら作成したアイテムを冒険の実践にて試用する、才能溢れる魔道具製作者。
そして姉の正体は、特定冒険者と契約を交わし、召喚獣として戦う闇の狂戦士だった。
最高純度の「超魔石」と「充魔石」を体内に埋め込まれた不死属性の彼女は、呪われし武具を纏い、補充用の魔石を求めて戦場に向かう。いつの日か、「人間」に戻ることを夢見て――。

世の中は意外と魔術で何とかなる
ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。
神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。
うちのポチ知りませんか? 〜異世界転生した愛犬を探して〜
双華
ファンタジー
愛犬(ポチ)の散歩中にトラックにはねられた主人公。
白い空間で女神様に、愛犬は先に転生して異世界に旅立った、と聞かされる。
すぐに追いかけようとするが、そもそも生まれる場所は選べないらしく、転生してから探すしかないらしい。
転生すると、最初からポチと従魔契約が成立しており、ポチがどこかで稼いだ経験値の一部が主人公にも入り、勝手にレベルアップしていくチート仕様だった。
うちのポチはどこに行ったのか、捜索しながら異世界で成長していく物語である。
・たまに閑話で「ポチの冒険」等が入ります。
※ 2020/6/26から「閑話」を従魔の話、略して「従話」に変更しました。
・結構、思い付きで書いているので、矛盾点等、おかしなところも多々有ると思いますが、生温かい目で見てやって下さい。経験値とかも細かい計算はしていません。
沢山の方にお読み頂き、ありがとうございます。
・ホトラン最高2位
・ファンタジー24h最高2位
・ファンタジー週間最高5位
(2020/1/6時点)
評価頂けると、とても励みになります!m(_ _)m
皆様のお陰で、第13回ファンタジー小説大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます。
※ 2020/9/6〜 小説家になろう様にもコッソリ投稿開始しました。
(改訂版)帝国の王子は無能だからと追放されたので僕はチートスキル【建築】で勝手に最強の国を作る!
黒猫
ファンタジー
帝国の第二王子として生まれたノルは15才を迎えた時、この世界では必ず『ギフト授与式』を教会で受けなくてはいけない。
ギフトは神からの祝福で様々な能力を与えてくれる。
観衆や皇帝の父、母、兄が見守る中…
ノルは祝福を受けるのだが…手にしたのはハズレと言われているギフト…【建築】だった。
それを見た皇帝は激怒してノルを国外追放処分してしまう。
帝国から南西の最果ての森林地帯をノルは仲間と共に開拓していく…
さぁ〜て今日も一日、街作りの始まりだ!!

5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる