再創世記 ~その特徴は「天使の血筋」に当てはまらない~

タカナデス

文字の大きさ
上 下
9 / 174
第1章

9 洞窟①

しおりを挟む


サントニ町を出て南に向かうと、ディヴァテロス帝国最大級の洞窟があるらしい。

そこは芸獣がたくさん棲みついているため危険だが、冒険者や商人、小遣い稼ぎをしたい人らがわんさか行く所らしい。狩った芸獣や洞窟の中にある鉱山や薬草を取って売るために。

「わ~本当に大きいな」

洞窟の入り口に着いた。
てっきり門のような入口があるのかと思ったが、今いるのは「洞窟の上」。
大きな穴が地面に空いていてそこから入っていくらしいのだが…洞窟の中が暗くて何も見えない。

「シリウス。本当にみんなここ来るのか?」

なんでそんなことを聞くのかと言うと、周りに全く人がいないからだ。


   また俺騙されてないか?


シリウスは髪と顔に着けていた民族衣装の布を取って、煌びやかな笑顔で答えた。

『もちろん!ただこの洞窟大きいから何個も入口があるんだ。ここはそんな使われてないだけで、洞窟にはたくさん人が来るよ。』


   …なんか言い方怪しかったな?


訝し気な顔でシリウスを見ていると、大きくため息をついて

「まったくしょうがないなぁ。僕が先に行くよも~」

と言い、手に火の球を作りそのまま下の洞窟に飛び込んだ。


   ええ?危なくない??大丈夫か?!


そんな心配をよそにすぐにシリウスから声がかかる。

『はーい。じゃ、降りてきて~』

「え、降りてきてじゃないよ!どれくらい深い?!」

『ん?建物3階ぶんくらいかな?早く~』


   ええ?!あいつ嘘だろ…普通に死ぬだろ!


「おいおい!無理だろ!どうすればいいんだよ!」

『芸の出し方はもうわかるでしょ?最初に戦ったネズミがやってたみたいに、風を下から思いきり噴き上げるように考えてごらん。芸素を意識して!』


お~なかなかの難題だな。ほんと無茶だな。
けどもう俺が何を言っても無駄なのはわかっている。
ここは素直に従おう。


俺は芸素を意識しつつ、以前戦ったネズミに当てられた時を思い出す。
下の空間から風が沸き起こる想像。それに必要な芸素を自分から補う想像・・・

「…行きます!!」

思いきりジャンプして洞窟の穴へ落ちていく。
すると下から風が吹きあがり身体が無重力になる。


   おおお!でけたでけた!


バランスを崩して滑り込み着地になってしまったが、上手く芸ができたことに興奮しているとシリウスが冷ややかな目で見てきた。

『うん。今僕少し助けたからね』


   あ……俺の力ではないのね。





・・・・・・





少し奥に進むと、道がネトネトしてきた。

「なあシリウス、ここなんでネトネトしてるんだ?」

『アリの芸獣の仕業だね。粘液を出すんだよ』

「ここにいる芸獣はアリなのか?」

『そう!このネトネトはアリのお尻から出るものなんだけど、アリの口から出るのは強酸なんだ。当たらないように気を付けてね』

「当たらないようにってどうするんだよ…」


ネトネト道は続いていたが、アリには遭遇しない。
不思議に思いシリウスに聞こうとすると、分かれ道についた。

一つは斜め上、もう一つは斜め下。上下の分かれ道。

「…どっち行くんですか?」

そう聞くと、シリウスは遠くを見るのような目つきをした。そしてシリウスから芸素の波のようなものを少しだが感じた。

「あ!今芸使ったろ!身体強化か?なんか感じた!」

テンション高めにそう言うとシリウスは驚いた顔でこっちを向き、

『へえ!けっこうわかるんだね!君は細かい芸の扱いが上手なんだろうな。鍛冶中にしてた温度調節が活かされてるんだろう。良いことだ。』


   …初めて褒められた!ホメラレタ!!!
   こいつ褒めることもできるんじゃんか~
   スパルタだと思ってたけど、よかった!



         ・
         ・ 
         ・



そんな吞気な事、考えちゃいけなかった。


その後シリウスは子どものような笑顔で、
『じゃあその調子で頑張ってね!』
と言い残し、俺を下の道に突き飛ばした。(2度目)


そしてそこには10を超えるアリの芸獣がいた。









しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

(改訂版)帝国の王子は無能だからと追放されたので僕はチートスキル【建築】で勝手に最強の国を作る!

黒猫
ファンタジー
帝国の第二王子として生まれたノルは15才を迎えた時、この世界では必ず『ギフト授与式』を教会で受けなくてはいけない。 ギフトは神からの祝福で様々な能力を与えてくれる。 観衆や皇帝の父、母、兄が見守る中… ノルは祝福を受けるのだが…手にしたのはハズレと言われているギフト…【建築】だった。 それを見た皇帝は激怒してノルを国外追放処分してしまう。 帝国から南西の最果ての森林地帯をノルは仲間と共に開拓していく… さぁ〜て今日も一日、街作りの始まりだ!!

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

(短編)いずれ追放される悪役令嬢に生まれ変わったけど、原作補正を頼りに生きます。

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚約破棄からの追放される悪役令嬢に生まれ変わったと気づいて、シャーロットは王妃様の前で屁をこいた。なのに王子の婚約者になってしまう。どうやら強固な強制力が働いていて、どうあがいてもヒロインをいじめ、王子に婚約を破棄され追放……あれ、待てよ? だったら、私、その日まで不死身なのでは?

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

「魔王のいない世界には勇者は必要ない」と王家に追い出されたので自由に旅をしながら可愛い嫁を探すことにしました

夢幻の翼
ファンタジー
「魔王軍も壊滅したし、もう勇者いらないよね」  命をかけて戦った俺(勇者)に対して魔王討伐の報酬を出し渋る横暴な扱いをする国王。  本当ならばその場で暴れてやりたかったが今後の事を考えて必死に自制心を保ちながら会見を終えた。  元勇者として通常では信じられないほどの能力を習得していた僕は腐った国王を持つ国に見切りをつけて他国へ亡命することを決意する。  その際に思いついた嫌がらせを国王にした俺はスッキリした気持ちで隣町まで駆け抜けた。  しかし、気持ちの整理はついたが懐の寒かった俺は冒険者として生計をたてるために冒険者ギルドを訪れたがもともと勇者として経験値を爆あげしていた僕は無事にランクを認められ、それを期に国外へと向かう訳あり商人の護衛として旅にでることになった。 といった序盤ストーリーとなっております。 追放あり、プチだけどざまぁあり、バトルにほのぼの、感動と恋愛までを詰め込んだ物語となる予定です。 5月30日までは毎日2回更新を予定しています。 それ以降はストック尽きるまで毎日1回更新となります。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

西園寺わかば🌱
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

処理中です...