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第1章
7 サントニ町の宿にて
しおりを挟む助けた細見の男性はサントニ町にある宿屋の主だった。
体格の良い方が宿泊費滞納を続けていて、払ってくれと伝えたところキレられたらしい。大柄な男は町の警備軍に捕られられ、溜めていた分と殴った慰謝料分を払うことになる。殴った方は最初から支払っておけば余分に払わずに済んだのにと思う。
その晩は、助けた宿屋の主の驕りで夕食を頂いた。
大きいカリカリのパン生地の中にカボチャや玉ねぎ、羊肉、チーズを混ぜた具材が入っていて、パンを切ると中から香ばしい匂いとともに様々具材があふれ出した。
その他にも山菜とトウモロコシ、ハーブの入ったサラダや、ふわふわのメレンゲなるものとフランボワーズなる果物のケーキも。あと麦を発酵して作ったお酒も。初めての味過ぎて革新的に思えましたね、はい。
民族衣装姿のシリウスと一緒に料理を堪能していると、昼に助けた宿の主が明るい笑顔でやってきた。
「よぉ~兄ちゃん!昼はありがとうな~。それとこちらのお姉様、お越し頂けて…光栄でしゅ…」
シリウスをおねえさま呼びした主は、無事に噛んだ。
それに対し、布越しに妖艶な笑顔を主に向けてシリウスが答える。
『こちらこそ、お部屋ありがとうございます。助かります。』
中性的な声色が好きなのか、主は全身の血を顔に集めたような顔になっている。
「ひえ、いえいえいえ…。もったいないお言葉です…。お2人は帝都からいらしたのですか?」
『ええ、そうです』
「ああ~なるほど、帝都からですか。はるばるようこそ。こちらには何ようで?」
『観光…ですわね。少し、帝都の人混みに飽きてしまって…』
「ああ、なるほど。そうでございましたか。私は1度しか行ったことございませんが、あそこは物凄い人の数ですなぁ。…おっと、ところでお兄さんは帝都では何してるんだい?もしかして軍か?そんな年齢じゃないか……もしかして、学院に通ってたりするのかい?」
主よ。やっと俺の存在を思い出したか。
しかし残念ながら帝都も軍も学院も知らん。
なんだそれは。
どうしたもんかと思っているとシリウスが机からスプーンを落とした。
食器の落ちる音で主がそちらに目を奪われる。
『あら、ごめんなさい。落としちゃった』
「あ!いえいえ!拾いますよ!今新しいの持ってきますね!」
主はにこやかに厨房の方へ向かっていった。
・・・
『はいって言っとけばいいのに』
「いや、その後に話続けられたら次の瞬間嘘だってバレるよ?なあ、帝都とか学院って何?」
麦のお酒を飲みながらシリウスが答える。
『帝都はこのディヴァテロス帝国の帝都のこと、名前はセンチュリア。学院は帝都にある四つの学校のこと。たぶんあの人が言ってたのは第2学院のことかな。第1学院の生徒は絶対ここでは出会わないから』
「……なあ、俺らが今いるのって、どこ?」
実は本当にわかってないんだよね。
さっきからちょっと何言ってるのかわかんない。
シリウスに尋ねると、少し目を見開いて答えた。
『ああ…そうだよね。ごめん、ちゃんと1から説明するね。とりあえず、食べて部屋に戻ろう』
「はい。お願いします。」
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